奈良県の大豆の話

 大豆は、豆腐や味噌、醤油の原料として昔から日本食に欠かせない作物ですが、節分の豆まきでは飽きるほど食べた方も多いのではないでしょうか。今回は、奈良県でどのように大豆が栽培されているかをご紹介します。
 奈良県の大豆作付面積は約150ヘクタールです。水田の畦や畑地の一画を利用して小規模に栽培されることも多いですが、桜井市などでは畑地化した水田で大規模に栽培されています。県内で栽培されている白大豆品種「サチユタカ」は、タンパク質を多く含むため豆腐に適し、奈良県で栽培しやすく収量性も優れています。「サチユタカ」は6月下旬に播種され、8月には薄紫色の花を付けます。開花後は花の付け根から莢(さや)が生長し、中の子実が徐々に肥大します。そして11月初旬には地上部全体が枯れ上がり、葉が落ちて枝に莢が残ります。こうして成熟期に達すると莢は茶色く乾燥し、揺らすとカラカラと音がします。この成熟期を過ぎると、莢がはじけて子実が地面に落ちやすくなるので、収穫は莢がはじける前にタイミング良く行われます。
 ところが、近年では温暖化に伴って全国的に青立ちと呼ばれる被害が増加しています。青立ちとは、莢と子実が成熟して乾燥しても、葉が枯れ上がらずに青い状態で残ってしまう症状です。大規模な大豆圃場ではコンバインで収穫が行われますが、青い葉が残った状態でコンバイン収穫を行うと、葉の汁で子実が汚れ、品質が低下してしまいます。かといって、落葉を待っていては、莢がはじけて減収してしまいます。最近では、青立ちの問題に対して、難裂莢性(なんれっきょうせい)品種と呼ばれる品種が新たに育成されています。この品種は、従来の品種に比べて莢がはじけにくいため、青立ちが発生して収穫が遅れてしまった場合でも、減収しにくいと期待できます。現在、農業研究開発センターでは難裂莢性品種について試験を行い、県内での導入を目指しています。
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 左から白大豆「サチユタカ」、青大豆「あやみどり」、黒大豆

【豆知識】
 奈良県では「サチユタカ」の他に、青大豆や黒大豆が栽培されています。主に天理市で生産されている青大豆の「あやみどり」は、成熟しても子実に鮮やかな緑色が残るのが特徴で、「サチユタカ」と比べてタンパク質は少ないですが甘みがあり、実が柔らかいうちに収穫してエダマメとして楽しむこともできます。また、「あやみどり」の緑色を活かして、薄緑色の豆腐や豆乳も市販されています。そして宇陀市などで生産されている黒大豆は、正月の煮豆などに利用されていますが、最近ではエダマメとしての需要が高く、黒大豆特有のコクのある味わいが人気です。大豆は豆腐などに加工されて小売店に並ぶことが多いですが、直売所などでは地元産の特色豊かな大豆を購入することができます。大豆は保存性が高く、家庭でも煮豆や炒り豆にして手軽に楽しむことができるので、奈良県の大豆を味わってみてはいかがでしょうか。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
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