イチジクのあれこれ

 イチジクは県北部を中心に盛んに栽培され、全国でも上位に入る生産量を誇る県を代表する果樹の1つです。
 イチジクの果実ですが、口にしている部分は果肉ではなく、主に花托(肉質の白い部分)と小花(内側のピンク色の部分)です。内部にあるピンク色の粒1つ1つが小花と呼ばれるもので、イチジクの花にあたります。品種による差はありますが、1つの果実に約2000個の小花があるとされています。このように、イチジクは実の内側に花をつけるので、一見すると花が無いように見えることから、漢字で「無花果」と表記されるようになったと言われています。
 県内の田畑や庭先に植えられているのを見かけるイチジクですが、アラビア半島南部が原産です。原産地周辺の野生種やそれに近いイチジクは、実がなるために受粉が必要で、イチジクコバチ(ブラストファーガ)と呼ばれる小型のハチが果嚢内部の花へ花粉を運びます。ハチは実のおしりに開いた穴から内部に侵入し、花に花粉を運びます。一方、日本で一般的な品種である‘桝井ドーフィン’は実がなるのに受粉を必要としないため、イチジクコバチの協力が無くても実をつけることができますが、ハチの侵入経路である実のおしりに開いた穴は消えずに残っています。
 世界の多くの地域で栽培されてきたイチジクですが、国内では露地栽培に加えハウスを用いた施設栽培も行われています。施設栽培では、夏場にハウス内が高温になり果実への影響が心配される上、資材費や燃料代が高くつくことから、本県で栽培は少なくなりました。しかし、露地物よりも早期に収穫でき、風雨による傷みを軽減できるなど施設栽培には多くのメリットがあります。そこで、奈良県農業研究開発センターでは、低コストで高品質な果実が生産可能な施設栽培技術について研究を行っています。
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        イチジクハウス

【豆知識】
 「庭にイチジクを植えてみようかな」と考えておられる方のために、今回は比較的入手しやすいと思われる品種を幾つか紹介します。是非、参考にして下さい。
○桝井ドーフィン
 日本で最も多く栽培されている品種です。収量が多く味もよい優秀な品種ですが、寒さにはやや弱いとされています。
○蓬莱柿(早生日本種)
 やや酸味が強いものの、独特の風味があり、中国・四国地方で多く栽培されています。寒さに強いことから、東北地方で栽培されることもあります。果頂裂果(おしりの部分が割れる現象)が生じやすい品種です。
○ホワイト・ゼノア
 黄緑色の果皮が目を引く品種です。寒さに強く味もよいのですが、日持ちが悪いという欠点があります。
○ビオレ・ソリエス
 フランス原産の品種で、上3品種と比べると入手は難しいです。甘みが強く非常に美味しいですが、病気に弱く、収量も少ないことから栽培は難しいとされています。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
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