奈良新聞掲載記事集

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令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

甘柿の種は甘柿か?

  みなさんの中には店頭で購入した甘柿が美味しかったので、たくさん食べたいと思い、実の中に入っていた種を家の庭に播いて育て、ようやく実った柿を食べたら渋かったという経験のある方もおられるかもしれませんね。実は、甘柿からとった種を育ててもほぼ全てが渋柿となってしまいます。これはなぜでしょうか、今回は柿の甘渋性の遺伝について紹介したいと思います。親の性質が子に受け継がれることを遺伝と言い、親の性質を子に伝えるために、親から子へと受け渡される物質を遺伝子と呼び、両親からそれぞれ半分ずつの遺伝子が子へと受け継がれます。遺伝子にはその性質が表れやすい顕性(優性)遺伝子と潜性(劣性)遺伝子があります。柿が甘くなる遺伝子は潜性であるため、両親がともに完全甘柿(中に種が入らなくても自然に甘くなる柿)同士でなければ、甘柿はほとんど生まれません。完全甘柿は種類が限られており、雄花をつける品種はさらに限られており、授粉効率も劣るため、甘柿を生産するときは自然落果を防ぐために完全甘柿以外の品種と授粉させています。そのため、店頭に並ぶ完全甘柿の種はほぼ全て渋柿になってしまいます。ただし、完全甘柿と渋柿との組合せでも渋柿の種類によっては子がまれに完全甘柿になる場合があります。その場合、実がつくまでその柿が甘柿か渋柿かが分からず、「桃栗三年、柿八年」というように判定には長い時間がかかってしまいます。そこで、農業研究開発センターでは遺伝子解析技術を活用し、柿の「葉」の遺伝子を解析することで、その柿が甘柿か渋柿かを種を播いてから一年以内に判別しました。これによって、完全甘柿同士の交配だけでなく、渋柿と完全甘柿の交配で得られた個体からも完全甘柿だけを選抜し、県オリジナルの完全甘柿の品種育成に取り組んでいます。

 

【豆知識】

やってみよう柿のオリジナル品種育成
図に記載のように開花直前の雌花に袋をかぶせます((1)、(2))。その後、花が開花するのを待ち((1)の状態で1~2日程度)、交配したい品種の雄花を採取し((3))、花粉を雌花の柱頭の部分につけます((4))。雄花を下に向け軽くたたくだけで花粉は落ちますが、完全甘柿の雄花は種の入りにくい品種が多いので、多めにかけましょう。受粉後に再度袋をかぶせ、約7日後に袋を取ってください。あとは、秋に果実を収穫し、取り出した種をよく水洗して軽く乾かし、紙封筒に入れて冷蔵庫で保管し、4月ごろにまけば1ヶ月程度で芽が出てきます。栽培の状況によりますが、早ければ5~6年程度で最初の実が付くのでそれまで楽しみに待ちましょう。完全甘柿を育成したい場合は、両親ともに完全甘柿で揃えることが必要となりますが、「富有」は雄花を付けないため、「太秋」、「甘秋」等の雄花のつく品種を用意した方が良いでしょう。

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奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。