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人権コーナータイトル
今月のポスター 平成20年度 人権啓発ポスター優秀作品
ポスター
奈良市立大安寺小学校4年 宮本 葉月(みやもと はづき)さん
忘れられない夜

 私には、この春中学生になったTという知的障害のある子どもがいる。生まれた時の体重は842グラムで、一年間は保育器のお世話になっていた。「ちゃんと大きくなるやろか…」という親の心配をよそに、Tはどんどん大きくなり、今では周りの子どもたちと同じくらいにまで成長した。
 数年前、ある日の夜に家族と話していると、話題がふとTのことになった。その頃の私は、Tに対してどこか「不憫(ふびん)だ」という気持ちが拭(ぬぐ)えずにいたのであろう、「Tに障害が無かったら…」というような話をした。すると、Tの姉と兄は口をそろえて「Tちゃんは今のままでいいねん。一緒に遊んでたら面白いもん」と言ったのだ。
 私はしばし呆然(ぼうぜん)とした。自分はわが子の障害に気をとられ、ひとりの子どもとして見ることができず、Tや兄姉たちの思いや願いに気付かずにいたのである。まさに「負うた子に教えられ」であった。
 人をありのままに受け容れるということは、けっして容易なことではない。けれどもそのことこそが、人をゆったりと繋(つな)いでいくのだと思う。
 子どもたちから大切なことを教えられた、そんな夜だった。