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子どもたちのために、今地域は何ができるか
 「全国学力・学習状況調査」の結果から、奈良県の子どもは、「体力はすべての種目で全国平均を下回っている」、「学校のきまりを守らなければならないと思っている児童の割合が全国平均より低い」、「地域活動に参加している児童が少ない」などの状況が明らかになりました。
 子どもを育てることに関しては、家庭や学校だけでは限界がでてきています。地域のみんなで子どもを育てる環境が必要となっているのではないでしょうか。
 子どもたちのために、地域は何ができるか、今回の特集で考えてみましょう。
アルミ缶で炊飯(食育) アルミ缶で炊飯(食育)
 
車いす体験(小学校の総合学習) 車いす体験(小学校の総合学習)
県の子どもの現状
(「平成21年度全国学力・学習状況調査」から体力については、「平成20年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」から)
47都道府県の中での順位は以下の通りです。
●子どもの学力
小学校13位・中学校10位
●子どもの体力
小学校41位・中学校47位
●子どもの生活習慣と考え方
○朝食摂取率
(小学校全国42位、中学校43位)
○家の人との朝食
(小学校45位、中学校47位)
○家の手伝いをする
(小学校42位、中学校36位)
○就寝時間が遅い人の割合
(小学校2位、中学校1位)
○いじめはいけないと思っている
(小学校44位、中学校45位)
○学校の決まりは守る
(小学校46位、中学校46位)
●子どもの地域活動
地域の行事に参加している
(小学校38位・中学校43位)
就寝時間が遅い子どもの割合 午前7時30分以降に起きる子どもの割合
朝ごはんを食べている子どもの割合
以上の結果から、奈良県の子どもは
・学力は、全国平均を上回る水準だが、基本的な生活習慣や、規範意識の定着が十分でない。
・学習意欲・体力・社会的関心が全国平均よりも低い。

ということがうかがえます。
この背景として、
・核家族化による個性重視の生活スタイル
・塾通いなどによる遅い就寝時間
・家族と過ごす時間が少ない

などが考えられます。
子どもを取り巻く環境は?
家庭
奈良県は専業主婦率が全国平均より約11ポイント高くなっています(※1)
一方で、県外就業率が全国1位であることから、働く親が家庭で過ごせる時間が少なくなる環境におかれています。そのため、父親の子育てへの参加不足がおこり、妻の子育て不安・負担感が増加しています(※2)

学校
学校現場では、いじめや不登校、学級崩壊、暴力行為などが問題になっています。特に暴力行為の発生率については、全国ワースト2位という結果も出ています。

地域
かつては大家族や地域社会のつながりの中で、社会性や自立心を培うきっかけがありました。しかし今日、その機会が失われつつあります。



県ではこのような現状を重視し、「地域の教育力再生委員会」を発足し議論を重ね、昨年12月、課題や方策をまとめた報告書を発表しました。報告書では、これから目指すべき姿として
知・徳・体のバランスのとれた生きる力を備えた子どもを育て、自立した社会人を育成する
子どもの関係を通して、地域でくらす人たちがつながる新たなコミュニティーを再生・創造する

としました。そこで提案された具体的な方策について次で紹介します。
※1専業主婦率が高い
※2妻の子育ての心理的・精神的な不安・負担感が増加
 具体的な方策 
通学合宿
地域の公民館等で、異なった学年の子どもたちが、3泊4日くらいの期間、寝泊まりしながら学校に通う取組です。食事作りから掃除・洗濯など、生活するうえで必要なことを自分たちでする中で、家庭や家族の大切さに気づいてもらうことが目的です。
また、地域の方々にも協力していただくことによって、地域で子どもを育てる意識が高まることも目指しています。
合宿の1日(例)
 県民だより編集部が聞く 
「なぜ今、通学合宿が必要なの?」
県協働推進課担当:尾畑主査
 今の子どもたちは、社会や集団の中で自分を律しながら生きる力が低下していると心配されています。その原因は、ゲームなど遊びの変化やそれにともなう人間関係の希薄化、地域社会や自然の中での体験不足などが考えられています。
  「通学合宿」では、身の回りの日常生活に関することや体験活動を学年の違う子どもたちや地域の方と協力しながら行うことで、何かを学び取ってほしいと思います。
  地域の方には、食事作りや宿題などのお世話、防災訓練や郷土芸能体験など地域の実情に応じた体験プログラムなどで、ご協力をお願いしています。この合宿を通じて、子どもたちと地域のつながりが強くなればと思っています。
“見直そう!家庭と学校協働プロジェクト”
 学校と家庭・地域が協働して、「生活習慣」「規範意識」「学力」「社会性」「体力」を身に付けた子どもの育成を目指すプロジェクトです。今年度は県内5校をモデル校に指定して実施します。
・家庭での規則正しい就寝、起床
・ノーテレビデー(テレビをつけない・テレビゲームをしない日をつくる)
・読書活動の推進
・体験活動の充実
などの取組を行います。また、取り組んだ内容を検証し、その成果を県内各校に広めていきます。
その他の方策
・子育てに難しさを感じている親のための支援プログラム「ノーバディーズ・パーフェクト
・総合型スポーツクラブでのスポーツ機会の提供
・学校の空き教室利用による体験学習の場の開設
・実態調査
などを進めていきます。
ノーバーディーズ・パーフェクト
(完璧な親なんていない)=
0〜5歳までの子どもをもつ親のための講座。子育ての悩みや関心があることについて話し合う。
県で新たに方策を進める一方、地域での取組によって、子どもたちに社会性や規範意識が身についている事例があります。地域で頑張っておられる方々の取組を紹介します。
集団登下校や食育活動などで、人のつながりを 合宿の1日(例)
奈良市富雄地区自治連合会
会長 安達 孝雄さん
私たちの町をこうしたい!! 夢を描こう
 平成16年の小学生誘拐殺害事件で大切な命を守れなかった反省から、集団登下校活動を始め、見守りや声かけをしてきました。敬老会などの地域活動も、子どもと地域住民のふれあいの場となっています。
 子どもたちが高齢者に「いつも見守ってくれてありがとう」というメッセージを送ったり、卒業する6年生がボランティアさんに「集団下校のリーダーになる5年生を、よろしくお願いします」と頼んだり、人を気遣う気持ちが着実に育っていると感じます。
 大人が、「まちを良くしたい」と願い実行すれば、きっと子どもたちにも良い影響があると思います。
合宿の1日(例)
総合型スポーツクラブで運動・スポーツの機会を提供 合宿の1日(例)
芝運動公園スポーツクラブ(桜井市)
クラブマネジャー 中西 康代さん
楽しみながら、自然に社会性や生活習慣も
 総合型地域スポーツクラブは、子どもから高齢者まで、初心者からベテランまで、地域の誰もが個々の目的に応じて、気軽に運動・スポーツを楽しむことができる組織です。
 そのなかで、子どもたちは準備・片付けを自主的に行っています。逆立ちなど何度もチャレンジを繰り返しやっとできた時は、みんなで喜び合う場面なども目にします。体力だけでなく、人に対する優しさや思いやりながら支え合う心が培われているようです。また元気に運動するためには、食事や睡眠をしっかりとることが必要になり、規則正しい生活習慣を身につけることにも役立っています。
 今後も、運動・スポーツを通して、子どもたちの成長を支えていきたいと思います。
合宿の1日(例)
問 県協働推進課
tel 0742・27・8713
fax 0742・27・6139

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