県民だより奈良トップページへ

奈良 伝承

奈良 伝承
奈良は日本の筆の発祥の地です。
日本の筆のルーツ「奈良筆」は、約1200年にわたる伝統の技法を今に伝えています。
左から、裏千家流、表千家流、武者小路千家流で用いられる
父と娘での作業。愛犬のりくちゃんがいつも2人を見守っている。
sp
奈良筆について教えてください。
sp
 まず分業ではないことが特徴です。原毛の仕入れから、筆を仕上げるところまで、1人の職人がすべてやります。羊やイタチなど、数種類の獣毛を混ぜ合わせて作ります。
細かい作業ですが、使う人にとって使いやすい筆をと、心をこめて作っています。
sp
奈良筆はどうやって作るのですか?
sp
 いくつもの製作工程がありますが、例えば、「形(かたち)づけ」(写真①)では、平均4〜5種類の毛を、寸法を合わせて段々に組み合わせていきます。筆の形や書き味が決まる、微妙な技術が必要な大切な工程です。
「練(ね)り混(ま)ぜ」(写真②)は奈良筆の伝統技法です。簡単に言うと、もつれた毛をときほぐして伸ばし、巻いて、形を整えるという作業を繰り返して毛を混ぜていきます。
 「さらえ」(写真③)は、水に濡れている毛先を刃物と指でさぐり、はねる毛を引き出します。
 「芯立(しんた)て」(写真④)は、ふのりを十分含ませた毛を、穂の太さに分けてコマという筒に通して、太さを決めます。筆は陰干しで自然乾燥させるので、天気次第で仕上げまでの期間が変わります。
左から、裏千家流、表千家流、武者小路千家流で用いられる ①形づけ
sp  
左から、裏千家流、表千家流、武者小路千家流で用いられる ②練り混ぜ
sp  
左から、裏千家流、表千家流、武者小路千家流で用いられる ③さらえ
sp  
左から、裏千家流、表千家流、武者小路千家流で用いられる ④芯立て
sp
小さい頃から家業を継ごうと考えていましたか?
sp
 もともと服飾関係の学校に通っていましたが、中退して何をしようかと迷っていると、家が奈良筆の製造元でした。女性の職人はあまりいないし、父に聞いたら「やる気があればできる」と言われたので、「やってみようか」と軽い気持ちで始めたのがきっかけです。それから28年になります。若い頃は、友達と遊ぶ時間がなくて、よく父とけんかもしました。
sp
これからの目標について教えてください。
sp
 「どんな難しい注文でも、できないと言ったら職人は終わりだ」といつも父に言われていますから、どんなことにも対応できる職人になりたいと思っています。
 今、小学校の社会科の授業で伝統工芸体験を教えにも行っていますが、子どもたちにも奈良筆作りのおもしろさを伝えていきたいですね。
sp
最後に、お父さんから一言。
sp
 娘には、自分の作った筆に何度も注文がくるような、立派な職人になってほしいですね。後継者がいると、世間の目が違うので、娘が家業を継いでくれてよかったと思います。でも、あと20年したら、奈良筆の作り手はいなくなってしまう。それではいけないと思っています。
左から、裏千家流、表千家流、武者小路千家流で用いられる 田川欽造さん
(雅号 欽三)

このページのトップへ