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とっておきの奈良
 「其地(そこ)より幸行(いでま)して忍阪(おさか)の大室(おほむろ)に至りし時に…」と『古事記』神武天皇東征の物語や、『日本書紀』にもその名が記される記紀万葉世界の古里、忍阪。
 「この国の未来にかけて、このまま残ってほしい」。名高き万葉学者の故・犬養孝(いぬかいたかし)氏がこう称え、こよなく愛した忍阪の「奥の谷」は、舒明(じょめい)天皇陵など3つの墓がある王家の谷。いにしえの時そのままに、万葉びとの足音が聞こえてきそうな静かな山谷が訪れる人を万葉世界へと誘います。
 谷から里への道すがらには記紀に伝わる“日本最古の悲恋物語”のヒロインにして絶世の美女、衣通姫(そとおりひめ)を祀る玉津島明神(たまつしまみょうじん)や神武天皇ゆかりの巨石など、遥かな歴史の足跡が連なります。
 そんないくつもの伝承とロマンに彩られたこの里のシンボルともいえるのが、国内最古の「伝・薬師三尊石仏」。「この石仏に一目会いたい」と全国から多くの歴史ファンが訪れるという白鳳(はくほう)時代の傑作で、万葉歌人としてもひときわ人気の高い額田王(ぬかたのおおきみ)の念持仏(ねんじぶつ)とされています。ふんわり慈愛に満ちた表情は文豪・川端康成も「ほのぼの温かな美少女」と評したほど。石仏は石位寺(いしいでら)に安置され、里人たちが篤(あつ)き心で守り継いでいます。
「忍阪の町並み」
神武天皇東征の地「忍阪」は、遥かなロマンが息づく記紀万葉の古里。集落の中央で、のぼりがはためく所が、高台にある石位寺。奥の山が、地区を見守る忍坂山。
「伝・薬師三尊石仏」
慈愛に満ちた姿を額田王に重ねる人も。ひとり娘や愛しい人たちが眠る墓近くで、額田王は石仏に祈りつつ生涯を閉じたという説も。
石仏がある石位寺は地区で管理するお寺のため、石仏拝観ご希望の方は下記へ拝観予約をお願いします。 拝観時間:10時〜16時。
問 桜井市観光課
0744-42-9111(代)
   
犬養孝氏揮毫(きごう)「鏡王女(かがみのおおきみ)の万葉歌碑」
ー秋山の 樹(こ)の下隠(したがく)り 逝(ゆ)く水の
     われこそ益(ま)さめ 御思(みおもひ)よりはー
奥の谷の小川のほとり、せせらぎの中にひっそりと建つ。
   
「玉津島明神」
皇位を継ぐはずだった同母兄との禁断の恋は散り…。その美しさが衣を通して輝くほどだったという衣通姫ゆかりの「産湯の井戸」がある、玉津島明神。
   
「忍阪区自治会」
忍坂山をご神体とする忍坂坐生根(おっさかにいますいくね)神社に毎日交代で灯明をあげるなど、神社を大事に風土を守って、心を一つにしてきたのがこの地の人々です。忍阪の魅力を多くの人に知ってもらおうと手作りで発売した三尊石仏・イメージソングや記紀万葉歌のDVDも好評です。
(談:森本藤次(とうじ)区長)
自治会ホームページ「忍阪の風」 team-ossaka.jimdo.com/


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