県政だより奈良

奈良のむかしばなし
 
神野山の天狗

イラスト

鍋倉渓
鍋倉渓。岩は青葉山から飛んできたものという伝説が残る

ツツジが満開になる五月
ツツジが満開になる五月。山は多くの観光客で賑わう

 大和高原の東部、山添村にひときわ秀麗(しゅうれい)な姿を見せる神野山。標高、約620メートル。山の東北側に、奇観(きかん)で知られる鍋倉渓(なべくらけい)がある。実に不思議な光景で、黒々とした大小の岩が、山腹の谷に沿って累々(るいるい)と川のように連なっているのだ。 その昔、この山に天狗が住んでいた。 
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 神野山は、もとは頂上に杉の木が1本にょきっと立っているだけのはげ山だったという。南西の方角にある青葉山は、緑豊かな美しい山容で、そこにも天狗が住んでいた。
 ある時、ふとしたことから両方の天狗たちが大げんかを始めた。怒った青葉山の天狗は、山の岩や、木、草をどんどん神野山に投げてきた。そのうち、神野山は草木でいっぱいになり、岩は鍋倉渓をつくった。
 勝った神野山の天狗たちは、やんやの声をあげて大喜び。山麓(さんろく)の里人(さとびと)たちも喜び、山に登って天狗たちにお酒やご馳走(ちそう)をたくさんふるまったという。
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 鍋倉渓は、長さ約650メートル、幅25メートル。地質は角閃斑糲岩(かくせんはんれいがん)。すすけた鍋底を思わせるのが名の由来とか。
 見上げると、視界のずっと上まで続く黒い岩の川。その両側にはヤマザクラ、クヌギ、コナラなどの新緑の若葉がにおい立つ。
 岩に耳を近づけると、奥底から、あっ、やっぱり、聞こえる。「コロコロ、シュルッ…」。伏流の水音だ。軽やかで、心地よい。岩の隙間(すきま)がたまたま水琴窟(すいきんくつ)のようになっているのだろうか。
 山頂付近は、広々としたツツジの群落。古くから、ツツジの咲く九十八夜の頃、里人らは、かつて、山の天狗にお酒やご馳走を捧げたように、「神野山登り」をしたという。今も、紅色の花が満開になる5月、山は多くの観光客で賑わう。

神野山へは…

問
山添村企画財政課
TEL
0743・85・0416

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