第10回奈良県教育懇談会討議の概要
 
 
◇日時  平成14年7月30日 13:30〜16:20
 
◇場所  奈良市鍋屋町「共済会館 やまと」
 
 
◇発言のポイント
 
T意見交換
 
 
 
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◇議事概要
 
 
T意見交換
 
【会長】それでは、只今から懇談会の討議に入ります。一つ目の議題である「小・中学校教育の充実」の中の「幼児教育から小学校への接続の課題」について、討議を始めます。
 まず、この課題の問題点の整理等を、「幼児教育から小学校への接続の課題」というA4で1枚の資料に基づいて、懇談会委員から説明していただきます。
 
 
(幼児教育から小学校への接続の課題としては、「子どものとらえ方」、「基本的生活習慣を身に付ける」、「人と関わる力を育てる」、「ことば環境の充実を図る」、「家庭ではできない自然・社会体験をする」、「親・地域と連携する」、「幼児教育と小学校教育の相互理解を推進する」の七つが考えられる。)
【委員】幼児教育に関しては、この懇談会で以前も話題になり、家庭や幼稚園等の教育機関での教育の在り方にいろいろと問題があるというご指摘があったところです。そこでの議論も踏まえながら、小学校へスムーズに繋げていくために、幼児期にきちんと幼稚園教育がこなさなければならない課題を、7つほど挙げてみました。
 
 まず、1点目は、子どものとらえ方という大きな問題です。
 これは、子どもが小学校に入ったときに生活習慣等のついているべき力がつけられていないという批判があったときに、その子どものとらえ方を改めないといけないのではないかという議論になっているところです。
 分かり易く資料(→資料「幼児教育から小学校への接続の課題」へ)に○×で書いてみたのですが、まず、子どもが大人の思いどおりになるという考え方は改めなければならないだろうということで、ここ10年程の幼児教育は、これを改めるということを前面に出しております。それゆえに、2つ目のように、子どもの興味・関心という名のもとに、子どもの好きにさせるという新しい考え方がかなり出てきたことは事実です。平成12年以降の幼稚園教育要領・保育所保育指針は、この部分に整合性を持たせるのにかなり苦慮して制定しており、これらのどちらも間違いであろうということで、両方に×を付けました。
 それでは、これをどうとらえるべきかということになるのですが、子どもは最初は自力でいろいろなことはできないが、大人が一緒にする、親が一緒にする、教師が一緒にする、友人と一緒にするというように、「共同でする」と資料に書いてあるように、他者とともにしていく中で、自分でだんだんできていくものです。大人の思いどおりになるのでもなく、その子に任せていれば何とかなるというものでもないという考え方が、これから要るのではないでしょうか。  
 それから、もう一つの○は、大人は子どもの精神的な安定のよりどころとして、きちんと対応をしていく必要があるということです。子どもの興味・関心とはいっても、世話をする最も身近にいる大人の影響力は絶大であって、その大人が子どもの拠り所になり、諾否を明確に子どもに示していくということで、子どもは価値観を学んでいくものだというとらえ方が、幼児教育の課題の一つとしてありそうだというのが1点目です。
 
 それから、2点目に、基本的な生活習慣を身につけるという課題です。
 これは家庭で本来つけるべきであるとか、保育所の課題であるとか、いろいろ言われるのですが、全部含めて幼児期にきちんと基本的な生活習慣をつけるということが、その子が将来にわたって生きていく力の基礎として大切であるというとらえ方が必要です。
 たとえ幼稚園であっても、このことが不十分な子ども達にはきちんとそれをつけていただかなければなりません。具体的には、基礎的な体力、生活リズム、それから習慣などを身に付けることになります。
 例えば、前の懇談会で紹介されたように、少年院の子ども達を見て、問題を抱えた子ども達は体力が乏しいという事例や、安定した学習や生活をしていくためには、生活リズムをきちんとつけていかなければという後の山口小学校の事例から、この観点が問われるように思うので、基礎的な生活習慣はきちんとすべての子ども達に身につけていくことを幼児教育の課題として挙げたい。
 
 それから、3つ目は、人とかかわる力が今、非常にひ弱であるということが問題になっています。
 ここ10年、いろいろと批判を受けたのは、一人一人を大切にという名のもとに、友達との関わりということにあまりきちんと対応してこなかった。だから、今、幼児期からきちんと友達と関わっていくことが大切だとされています。
 私達はトラブルはチャンスだという言い方をします。トラブっていればよいというのではなくて、そこできちんと解決を図っていく中で、ルールやマナーも含めて人とかかわる力を、きちんと培っていけるわけです。今、少子化ですし、大人が少ない子どもを囲っていますので、とりわけ集団の中で育つ子ども達にとって人と関わる力というのは、必要な力であろうというのが3点目です。
 
 それから、4点目に、言葉の問題があります。
 早期教育云々ではなくて、いわゆる聞く力と話す力をきちんと子ども達につける。3歳は3歳なりにたどたどしく語りますし、4歳、5歳もそれなりに表現します。文法的には整っていなくても、聞く力と話す力をつけていくということです。
 今、全国で絵本等の読み聞かせ活動がいろいろと取り組まれていますが、言葉というものを詰め込むという意味ではなく、美しいすぐれた言葉環境の中で子ども達に生活させるということを意識したいというのが4点目です。
 
 それから、5点目には、いろいろな体験をさせていきたい。
 特に今、幼児教育で自然体験などを積極的にさせようとしているのですが、家庭でもできる個人的な体験ではなく、家では飼えないものを園で飼ったり栽培したりし、それをグループで世話をするという友人との共同体験をしていけるように、幼稚園・保育所として可能な限り整備していくということ。大人がお仕着せをするというのではなくて、子ども達自身が主体的に体験できるようにしていくことです。
 
 それから、6番目は、親・地域との連携を図ることです。
 親がしんどいから何もできないという発想に立つのではなくて、可能なことを手探りして相談事業や子育て支援をやっていただきたい。最近、評価できるのは、幼稚園・保育所に中学生・高校生が入っていることです。高齢者との触れ合いもありますが、直接レポートを聞いてみると、中・高校生と触れ合うことが幼児と中・高校生の双方に非常によい効果が出ているようです。
 それから、大いに地域の応援を得て開かれた園にしていく。よそから入ってきて何も触れられたくないというのがどうしてもあるわけですが、いろいろな情報やいろいろな人のサポートを得ることによって園の教育力がより増していくことになります。
 
 最後に7番目は、以上6つのことを幼児教育の課題として小学校との交流がいるということです。
 交流は地域によって年1回ぐらいの懇談会があるというレベルから、小学校にあがってから、「あの子は幼児教育のときどうであった」というくらいに具体的な情報を得られる関係まで、千差万別のようです。ここで必要なのは、幼児と児童を直接交流させる。それから、小学校の先生に幼稚園・保育所での保育体験をしていただく。逆に、幼稚園・保育所のほうからは、小学校のほうのTT(ティーム・ティーチング)に参加していただくことを考えているのですが、お互いに年に1回でもよいから教育活動に参加し合っていただくという交流がよいのではないでしょうか。その中で、相互に実践の検討が行え、お互いの本当の連携を図っていただけると思います。ここまでやっているところは全国的に極めて少ないので、幼・小接続というときには、その辺りをきちんとできれば、案外、成果が出てくるかと思います。以上で、提案を終わります。
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【会長】有り難うございました。それでは、幼・小の接続という課題につきまして委員の方々からご意見をお願いしたいと思います。
 
 
(幼児と児童の交流及び指導者としての小学校と幼稚園・保育園との相互体験の導入を。)
【委員】この7番目の考え方は、非常に大事だと私は思っております。と申しますのは、今はコミュニケーションの時代、すなわちネットワークの時代です。ネットワークを作っていくためには、自分達の属していた世界と自分達がこれから属するであろう世界との交流を肌で体験をする。また、そこの教育への参画もするということが、非常に大事な時期を迎えると思います。是非、この7番の項目も皆様方にご関心をお持ちいただきまして、是非導入していただくようにお願い申し上げます。
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【会長】有り難うございました。
 
(どのようにして子育て支援のボランティアの仕組みづくりをするのか。)
【委員】6番目の子育て支援のところですが、県民5,000人アンケート調査でも非常にたくさんの方々が子育て支援のボランティアに参加したいという積極的な意思表明をしておられますが、具体的にどのようにして仕組みづくりをしようとご提案者は考えておられますか。
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【会長】提案者、どうぞ。
 
 
(予め登録していただいたうえで、園がお願いするというシステムで。)
【委員】多いのは、まず登録していただいて、園のほうからお願いして来ていただくという形態です。例えば、奈良市でもやっておられますが、ちょっとした合間の時間に絵本の部屋でお話の読み聞かせをしてくれる人がおられ、お話を聞きたい子はその部屋へ行けば聞けるというように、自分の得意分野で応援をお願いするということがあります。それから、自然体験では作物をつくる人とか、それから野鳥の会の会員のような人がお散歩しながら自然を楽しく語るというように、得意分野を持った地域の方に、予め登録していただいたうえで、園がお願いするというシステムが多いです。
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(もっと「生きる力」を育む方向はないものか。)
【委員】1番から7番目までのお話を聞いていて、基本的な生活習慣を身につけるばかりに、生きる力ということをどうも軽視されているように感じます。もう少し、1歳は1歳なり、2歳は2歳なり、3歳は3歳なりに、学齢に上がるまでの中で、何とか生きる呼吸みたいなものを感じさせるようなものはないのかとかねてより思っておりますが、その点を少し深めていただけたら有り難いと思っておりますが。
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【会長】生きる力というのは、非常にポピュラーな言葉なのですが、中身が具体性に乏しいと、私は思いますが。
 
 
(生活習慣づくりが子どもの生きる力の基礎になる。)
【委員】生きる力ということですが、この生活習慣なり生活リズムというのは、実は子供にとって生きる力の基礎になるのだということをむしろ強調したいと思います。
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(県内の有能なOBを組織化し、その地域の中で働いていただく工夫を早急に。子育て支援の成功する組織モデルを早く作って、県民に公開し協力を求めること。)
【委員】提案者がおまとめいただいたのは、これまでこの懇談会でいろいろ発言されたことが、全体的によく整理され、よくまとまっていると思います。
 生きる力というのは、私はどうも文部省がそのことを言い始めてから教育が悪くなったのではないかという感じを持っていますが、あまりあいまいな表現を用いるのではなくて、このように具体的な形で我々のできることを一つずつやっていくというほうが生産的ではないかと思います。
 それから、5番目の社会体験と自然体験で説明がありましたが、私の会社の先輩でOBになった後こういうボランティアをやりたいという希望を先日事務局にもご紹介もしたのですが、鷲塚委員のところには県内におそらくもの凄く有能なOBの方をたくさんお持ちだと思いますので、そういう方々を早く募って組織化し、その地域の中で働いていただくような工夫をお願いしたいと思っています。これについての議論は大分長くしており、議論ばかりしていてもしようがないので、もう実行する段階ではないかと思います。
 6番目のところは、成功する組織のモデルみたいなものを早く作って、こうしたらうまくいきますよということを県民に広く知らせてあげる。そうすると、おそらくこれまで関わらなかった人も、それだったら私もやろうかということでたくさん出てくると思いますので、是非早目にこういうのをお願いしたいと思います。
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(「聞く力」「話す力」は、親からたっぷり愛情を注がれ安心できる環境が好奇心を生みだし、これらの力を育むと考えるが、これらの力を育む方法論はどうか。)
【委員】4番目の「聞く力」、「話す力」ですが、幼児期の段階でこれらの力をどのように培っていくのか。もしそういう方法論やノウハウがありましたらお教えいただきたいと思います。
 私が自分なりに思いますのは、結局、好奇心の芽を育て、その好奇心が集中力を生みだし、ひいては、「関わる力」、「聞く力」、「話す力」となって表れてくるのではないかということです。それでは、好奇心というものは果たしてどのようにして生まれてくるのかということですが、本来、人間は生物として自分の外界への関心というのは本能的にあるのではないかと思います。抵抗なくそれを生かせるためには、自分自身の存在が安心できる状態、つまり基地みたいなものが存在しているという前提が、好奇心の芽は大いに伸びていくのではないかと思います。これが、ひいては、こういう「聞く力」、「話す力」になって表れてくると思います。
 以上が私なりに思っていることですが、最初のところに戻りまして、この2つの力というものは凄い大事なコミュニケーションの道具ですし、どのように培っていくことができるかを教えていただきたいと思います。
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(「聞く力」の一番のもとは、「語りを届ける」という言い方で話すこと。「話す力」を育てるのは、話したくなる場面を設定していくこと。その場合に、言葉を急いで教えようとしないで、大人は聞いてやること。)
【委員】「聞く力」のほうは、特にここ十数年のところ、幼・小接続の課題として小学校から一番苦情が出ています。そういう実態があることも紹介しておきます。
 さて、「聞く力」の一番のもとは、話しかける大人が子どもに本当にゆったりと、このことを今語っているんだよという「語りを届ける」という言い方で話すのですが、そういう語り方のできる大人のもとでは子どもは聞けるということです。それが音声として発せられているだけでは、子どもの頭を飛び越えるという結果になりがちになります。それを、我慢して聞きなさいというのではいけないのです。3歳児にでも、噛んで含むように語る人というのは子どもに聞かせることができるわけです。
 次に「話す力」のほうは、自分で発見したこととか、自分の世話をしてくれる人とか、自分の仲よしには、やはり伝えたいものなのです。今おっしゃられた好奇心に当たる伝えたい内容と適切な相手があれば子どもは必ず語るものですから、そういう場面を設定していくということが非常に大事になってきます。
 しかし、今、大人が待てないし、聞けないという問題があるのです。というのは、子どもの語彙が非常に限定されているので、子どもがしゃべったときに耳を傾けるよりも先に大人は言葉を整えて代わりに言ってしまうのです。そのときには子どもの意欲が萎えるのです。だから、語彙が整わなく、文法的にも整わないかもしれないけれども、イメージとして子どもは語っているので、そこに耳を傾けようということを大切にしてほしいのです。言葉を教えようとするのではなく、言葉によって人とつながることができ、言葉によって自分を表現することができるという体験を幼児期にきちんとつけていきたいと思います。
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(幼少接続の問題の実態と教員同士の連携の実態はどうか。)
【委員】2点お聞きします。一つは小学校から中学校への場合は、接続の問題はそう感じないのですが、子どもが幼稚園から小学校へ上がる場合は、いろいろな問題が現場では起きているのかをお聞きします。二つ目に、実際に小学校の先生が保育関係の研修をされているのかどうか。その実態はどうなのかをお尋ねします。
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(小学1年生が半年ずれ、小学校から苦情が随分寄せられているのが実態。幼少連携の実際の姿は、相互理解があまりできていないのが現実。)
【委員】問題が起きているものなのかというお尋ねに対しては、小学校から苦情が随分寄せられているというのが最も正確な答だと思います。小学校は戸惑われていて、大体、1年生が半年ずれると言われています。従来4月にできたことが、9月、10月までできないようです。例えば話が聞けない、座っていられない、子どもは走り回る、次々と部屋を出ていくというようなことで、半年ぐらい幼いと言われたり、発達が遅いと言われています。それが高じて、小学校で一番メインの授業やら集団での活動が成り立たないというので、入る前に何とかしておいてもらえないかというのが発端のようです。もちろん、従来にもなかったわけではないが、あまりにもその数が多くなってきたということです。
 次に、幼小連携の実際の姿はどうかという点ですが、お互いにちょっとなすりつけ合っているところもあるのです。つまり、幼児教育のほうは、もっと子どもの育ちというのを考えると、すぐに40分間座れるものではないのだから、その辺りのところをもっと理解してくださいという対応で、小学校のほうは、もうとにかく進路のこともあるし、何とかしてもらわないと困るという対応で、お互いに相互理解はあまりできていないのが現実です。
 具体的にどう取り組み合っているかというのは、先程言いましたように地域によって凄く差がありますが、先程言いました総合参画というところには行っていないので、私は是非その辺りは進めてほしいと思っています。
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(6年間の小学校教育の在り方は、中学校教育にもの凄い影響力がある。幼稚園、小学校、中学校の先生が一堂に会して話し合うのが子どもを育てる。)
【委員】議論のポイントが少しつかみにくいのですが、一番感じていますのは、幼稚園では支援という言葉を意識し過ぎるため、集団で幼児を教育していくという気持ちが非常に薄くなった時期があったと思う。それが、小学校へ上がる段階で非常に問題となってくる。
 1園・1小学校・1中学の地域では、接続でむしろ問題になるのは小学校と中学校との連携の方で、これをどうするか。6年間の小学校教育の在り方は、中学校教育にもの凄い影響力があると思うことがあります。
 私の校区では、幼稚園の先生も中学校の先生も小学校の授業公開に参加するとか、あるいは、いじめ、不登校等の共通の話題で幼稚園と小学校と中学校の3校の先生が一堂に会して話し合うというのが子どもを育てるのではないかと思ってやっています。
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(幼児教育の七つの課題は、同時に小学校の課題でもある。小学校教員が、実際に幼稚園の現場で指導の経験を持つということが今後必要なこと。)
【委員】今、問題提起として発表していただきました七つの項目は、幼稚園や保育所でご努力いただいているわけですが、やはり小学校でもこれらのことは日々大切にしながら指導しています。幼稚園で完全というわけにはいきませんので、小学校としても同じことを取り組むわけです。ただし、ここでもやはり、すべて完全というわけにはいきませんが。毎週1回の全校集会で、1年生から6年生までの生徒のどの辺に焦点を当てて話をしたらよいのかは、校長の非常に大きな課題です。やはり、ただ口で言うだけなら子どもの頭の上を通っていきますので、聞く力を育てるのは話し手の工夫や努力が大切だと思い、視覚的なものも利用したりしています。
 それから、7番で小学校教員の保育体験研修というのをご提案いただいておりますが、これは非常に大切なことと思います。幼・保・小・中の教員組織での授業参観は、ただ、第三者的に見ているわけで自分自身で幼稚園の子どもを動かす等の経験がありませんので、保育体験研修というものは必要なことと常々思っていました。というのは、幼稚園ではお部屋で音楽やごっご遊び等により、自由に動き回ることが多かったところを、途端に4月が来たら机の前にきちんと座って勉強しなければならないというギャップがあるのではないかと思います。だから、実際に幼稚園の現場で指導の経験を持つということが今後必要なことだと思います。
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(企業のOBの方々が教育へのボランティアに踏み出しにくいのは、今の若いお母さん達と話が合わないことにその原因があるが、そこを押して何とかする必要がある。)
【委員】先程の、松下とかシャープとかのOBの方々に教育へのボランティアをお願いするという話に関連するのですが、OBの方々は、皆、老後をいかに楽しみ、どう助け合うか等の活動を大変活発にしておられる。中には、今の教育には問題があり、何か教育のほうに目を向ける方法はないかという意見をお持ちの方も確かにおられる。ところが、子どもさん達と関わりをもったり、いろいろ教えてやったりというようなところになかなか踏み出していないのです。それは、皆さん方は今の若いお母さん達と話が合わないことにその原因があるようです。つまり、自分達が言っても「何を年寄りが出しゃばっているか」という感じで受けとめられてしまう。だから、どうしても自分達だけの活動になり、自分達が楽しむということになってしまうのです。
しかし、今日のご意見をお聞きして、幼児教育の勉強会のようなものを開くと喜んでやってくれると思うので、また言ってみようかなという気が出ました。
 私はスポーツ関係に携わっており、生涯スポーツを進めていかなければと思っていますが、生涯スポーツというのは、その定義が分かりにくく、生涯スポーツと言っても、なかなか手につかない。しかし、小学校の小さなときからいろいろと意識的に指導をしていけば、それはできると思っています。
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(企業等のOBからの支援は、幼稚園に限定するのではなく小学校でも中学校でも高校でも大学でもよいと幅広に考えること。)
【委員】企業等のOBからの支援は、幼稚園に限定すると問題があるので、小学校でも中学校でも高校でも大学でもよいということにしなければなりません。私は、現在、大学に行っていますが、その人が過去に経験したことで知恵を使ってもらうのだと考えれば、たくさんあるのではないかと思います。
 ですから、例えば、理科の実験や植物を栽培するときなどでは、いっぱい指導できる人がいらっしゃると思うし、おそらく松下さんにはそういう人はたくさんおられると思うのです。だから、少し幅広に議論したり、動いたらどうでしょうか。
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(幼児教育の課題も同時に小学校の課題であるという気持ちを持つこと。)
【委員】課題のポイントがつかみにくいという先程のご意見ですが、きょうの私の提案は接続の問題を幼児教育の側からに限定して挙げました。ところが、仮に幼児教育が「聞く」という力をもう満を持して卒園させたとしても、小学校の先生が「子どもに届けよう」という語りをせずに授業を展開されたならば、聞く力はもうそこで萎えるのです。そういう意味では、小学校の側から言えば幼児教育の課題も同時に小学校の課題であるぐらいの気持ちを持っていただく必要があると思っています。そのように考えると、小・中学の接続でも同じ発想が要るのではないかと思います。
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(子育て支援の0Bの方々が若いお母さんと合わないということで、そのまま放置しないこと。「生きる力」という言い方は、今まで見落としてきたことを再構築するための感覚である。)
【委員】先程、「若いお母さんと合わない」というご意見がありましたが、奈良県が考えていかなければならないのはそこなのです。合わないということでそのまま放置するのではなくて、真剣に奈良県の教育を考えるのであれば、「聞く力」や「話す力」をつけるという課題をもっと真剣に話し合いができないのだろうかと思います。また、お母さん自身に聞く力がないと子どもには「聞く力」がつきません。やはり、この辺りの課題もしっかり持つ必要があると思います。
 文部省が生きる力を唱え始めてから教育がおかしくなったというご意見が先程あったのですが、これはおかしくなったのではなくて、今まで見落としてきたことを再構築するための感覚だというようにとらえなければならないと思います。
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【会長】それでは「幼・小の接続」についての討議をまとめたいと思います。この7番での提起が、接続の一番具体的な点ではないかと思います。幼児教育と小学校教育の相互理解を通して、その子どもを本当に理解しなければならないということだと思います。こういうことが、県内でどの程度行われているかを少し調べてみるのも一つの刺激になるのではないかと思います。一つの町村に一園、一校であれば割合うまくいくと思うのですが、幼稚園が幾つかあって小学校が一つになると、接続は本当に大変だと思います。
 それから、2、3、4番の項目に関するようなことは、親学サポートブックのほうでも記述してもらうことになっています。例えば、生活のリズムをつけるには、親として具体的にどのようにし、「聞く力」「話す力」をつけるにはどうすればよいかということを、1歳半とか3歳から5歳ぐらいの年代に応じて、そのポイントをそれぞれ書いてもらう予定です。まだご意見があるかと思いますが、以上でこの接続のテーマを終わりします。          
 
 次の、「基礎学力の向上について」という議題に入ります。この課題と関連して、「第9回教育懇談会討議からの課題の抜粋」というA4で1枚のプリントの1番を取り上げます。1番の課題には、ある小学校の「読み・書き・計算」と書いてありますが、この小学校の資料を事務局で探してもらいました。それを簡潔にまとめてもらったのが、お手元の「山口小学校の実践のポイント」という資料です。この資料についての説明を、事務局の懇談会担当のほうから簡単にお願いします。

 
【事務局】(「山口小学校の実践のポイント」という資料に基づいて、兵庫県・朝来町立山口小学校の読み・書き・計算を中心とする取組を紹介。詳細は省略。)
                            
 
【会長】お手元に2002年1月26日付の日経新聞の山口小学校に関する記事があります。これを見ますと、このような取組が広がっている感じがいたします。
 それでは、前回の懇談会で八つの課題について、事務局のほうで検討していただけることになっておりましたので、1番にある山口小学校の取組に対する見解や今後の本県の方向を、学校教育課から述べていただきます。
 
 
(学習の前提条件となる読み・書き・計算の力を高めることは非常に大切なことで、山口小学校の取組は大変参考になる。また、県教委としても基礎・基本の徹底を期して、国語・算数・英語の基礎的・基本的な内容をまとめたテキストを現在作成中。)
【学校教育課】今、山口小学校の実践のポイントを紹介していただきました。児童・生徒に学力を確実に身につけさせたいと教員であれば誰でも思うわけですが、そのためには、学習の前提条件となる読み・書き・計算の力を高めることは、非常に大切であると誰しも理解しているのではないかと思います。
 県内の各学校でも繰り返し指導や習熟度別の指導などの指導方法や指導体制についてそれぞれ工夫・改善をしているところでありますが、そういった取組を真剣にやっているところにとりましては、まさにこの山口小学校の取組の実践例は大変参考になるのではないかと考えております。
 また、学校教育課でも小学校の国語、算数、それから中学校の英語については、すべての子ども達がそれぞれの学年で必ず身につけてほしいと思われる基礎的・基本的な内容をまとめたテキストを現在作成しているところであります。
 また、本年度から学力向上フロンティア事業も立ち上げており、子ども達に確かな学力を育成するなどの指導方法の改善について、実践研究を行う予定です。そこでも山口小学校の取組なども紹介して参考にさせていただきたいと考えています。
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【会長】それでは引き続き、教育研究所からお願いします。
 
 
(読み・書き・計算の力も含めた基礎的・基本的内容と発展的な学習の指導研究を進めている。子どもに定着しにくい内容及び発展的な内容の指導方法を冊子にまとめ各学校に配付する予定。山口小学校の取組についても今後調査研究していきたい。)
【教育研究所】教育研究所では、読み・書き・計算の力も含めた基礎的・基本的内容の定着を図る指導と、また発展的な学習を進める指導について、繰り返し学習や少人数指導などを含めて、教員の協力を得て実践的な指導研究を進めているところであります。
 具体的には、「小学校における個に応じた指導の在り方」というテーマで、小学校の国語、算数、社会、理科において、特に子どもに定着しにくい内容及び発展的な内容につき、その指導方法を先生方の協力を得ながら研究し、研究授業による検証も経て冊子にまとめ各学校に配付する予定です。
 その中で、先程説明のあった山口小学校の取組についても研究していきたいと考えています。先日来、教育研究所でもこの学校の取組について研究を始めており、学習する前に子ども達が覚えてしまうほど音読するとか、あるいは漢字を教科書学習よりも先に覚えさせる方法とか、あるいは計算練習を時間を計って繰り返す方法等についても研究を始めたところです。学習指導におきましては、本県では学習の意味を理解させながら指導する方法が大切であるということで進めておりますが、今まで研究所で書物等を通じて山口小学校の情報を集めたところ、現時点で判断いたしますと、本来の方法とは異なった方法による取組ということで、今後、調査研究を進めていきたいとしているところです。
 それから、専門調査部会からいただいた「『教科における評価の在り方(小学校)』という成果物が難しい」というご意見についてですが、評価の歴史的な流れをつかむように配慮したつもりですが、各学校が評価方法に今、着眼していることを考えると、前半部分は全体的にビジュアル化するなど、簡潔にする必要があったのではないかと反省しているところです。後半部分の教科別事例研究については、教科ごとに事例を挙げて、それぞれの具体の評価規準を初めとし、単元ごとの評価例、学期ごとの総括から学年の評定までを順に追って具体的に示し、教員にとっては分かり易い内容であると評価をいただいています。
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【会長】只今の説明につきまして、読み・書き・計算を中心として委員の方々からのご意見をお願いします。
 
 
(山口小学校の実践のすばらしいのは、落ちこぼれが全く出ないこと。非常に変化が激しいときにこそ、研究所の役割が非常に高まる。良いと考えられることはどんどん実験的に試して、良い結果の出たことをさらに広めていってほしい。)
【委員】山口小学校の実践がすばらしいと思ったのは、落ちこぼれが全く出ない教え方だ思い、私は非常に驚きました。是非研究していただけるとよいと思います。
 私も研究所という名前のところに席を置いているので思うのですが、非常に変化が激しいときというのは、やはり研究所の役割が非常に高まると思います。存在意義がこれから、かつてなく高くなると思います。文科省の「ゆとり」を進めるときには、研究所の存在意義がほとんどなかったと思うのですが、これからは研究所で研究しておられる理論や世界の最先端の教育のやり方等を奈良県で実際に進めていくチャンスだと思います。
 たとえば、これまで研究された成果を奈良県の教育現場で、一斉に実施はできないとしたら、実験的にでもいろいろ試していただき、その結果を評価し良い結果が出たものについては、さらに多くの現場に広めていくとよいと思います。そして、それを我々県民にも知らせていただけるということを、大いに期待しております。
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(私も、山口小学校の実践は凄いと思った。しかし、本県でも「県民5,000人アンケート」からの課題をもとに奈良県独自の取り組みができないものか。)
【委員】私も、今の委員と全く同じ意見を持っております。というのは、山口小学校の資料を紹介していただきまして、これは大変おもしろい、凄いと思いました。
 しかし、奈良県にもこれぐらいのことを実践できないものかとも思います。というのは、先般のもの凄い5,000人アンケートをとりました。その中で、たくさんの問題を抱えていることが明らかになりました。それらの問題を奈良県独自のものとして自分達で指揮をとって奈良県の学校全体に広めるぐらいのことをしてもよいのではないかと思います。どうも文部省にすべて支配されているような感覚が拭いきれない。奈良県としてやるべきことは、進めていけばよいと思います。
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(懇談会の議論の方向と、文科省の改革の方向とは一致している。)
【委員】先日、文科省のある審議官と一緒にある講演に行ったのですが、本県の5,000人アンケートのことを紹介すれば、そういう現地での動きは、文科省で我々が考えている改革の方向と一致するとしきりに言っておられ大変喜んでおられました。私達が、ここで議論していることは正しい方向であると思います。
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【会長】そのほかに、ご意見ありませんか。
 
(最先端の技術は数学で成り立っているようだ。)
【委員】タンパク質を宇宙で分析するような最先端の技術に携わっておられる技術者とお会いする機会があり、お話を聞いていますと、「あんなのみんな数学や。数学だ。」というのです。結局、数字でそこまで持っていくようなのです。いずれにしろ、物事ということは、「読み・書き・計算」の計算の部分、すなわち、数字がベースになっているように思いますので、少しご参考までに申しあげます。                                      
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【会長】それでは、只今の「読み・書き・計算」の指導につきましては、反対だという方はおられないかと思いますので、その方法なりをいろいろ研究されて、奈良県の子ども達に力がつくようにしていただきたいと思います。
 
(山口小学校の実践というのは、結局シナリオづくり。生徒や保護者に感動を与えるシナリオ作りの研究をお願いしたい。)
【委員】研究をなさる方にお願いしておきたいのでが、結局、この山口小学校の話というのはシナリオづくりなのですね。シナリオをどう作って、人に感動を与えるかという方法論なのです。そこに気をつけてもらって、どうしたら保護者なり、あるいは生徒さん、あるいは子どもさんが感動してこの世界に入り込むかというあたりのところを研究していただければ、大変有り難いと思います。
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【会長】結局、内容はもう決まっていますので、後は方法論になるわけですね。これを踏まえてよろしくお願いします。
 それでは、急ぐようですが、課題の抜粋の3番の「一度、奈良県の教育委員会としても学力とは何ぞやというようなことを考えてはどうか」ということに関しまして、先程と同様に学校教育課、教育研究所にお願いします。
 
 
(「奈良県学力向上推進協議会」というものを設置し、学力とは何かという命題も深める予定。)
【学校教育課】1番のところでも少し触れましたが、本年度から3年計画で学力向上フロンティア事業というものを立ち上げています。この中では、学力向上フロンティアスクールという指定研究学校11校を設けており、この学校における実践研究を支援し、さらにその学校での研究の成果を県内に普及させるという目的で、「奈良県学力向上推進協議会」というものを設置しています。この協議会の中には、学力とは何か、あるいは学力を高める授業、さらに学力を高める評価について研究をするようなワーキンググループを設けて深めたいと考えています。
 先程の1番と重なるのですが、小学校の国語と算数、それから中学校の英語で、本当に基礎的・基本的な内容をまとめたテキストを現在作成しているところですが、このテキストを活用して、児童・生徒が繰り返し楽しく取り組むことで、各学年の基礎的・基本的な内容を習得できるようにしたいと考えています。このテキストは、2学期には各市町村教委に配付したいと考えています。
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(基礎的・基本的な内容を確実に身につけることと、思考力、判断力、表現力、そして創造力も学力ととらえている。)
【教育研究所】学力のとらえ方については、今まで、どちらかというと知識の量を中心とした学力観であった思うので、知識の量のみではなく基礎的・基本的な内容を確実に身につけることは当然として、思考力、判断力、表現力、そして創造力も学力に含まれると考えています。
 教育研究所では、学校の先生方の協力を得ながら、基礎的・基本的な内容を身につける場合に、先程も少し申しましたが、子どもがどこでつまずいているのかを明らかにし、すべての子どもに必要な学力を定着させる指導方法について、今、研究を始めているところです。本年度末には、それをまとめ、各学校での学習指導を支援していきたいと考えています。
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【会長】只今の事務局からの説明に対しまして、ご質問、ご意見等ありましたらお願いします。
 
 
(教育研究所と教育大がそれぞれの研究校に関わりその結果を報告する。お互いによいところを取り合って頑張っていけば改革のスピードが速まる。)
【委員】学力向上フロンティア事業の方向性は、大変すばらしいと思います。幾つか学校を選んでやっておられると思いますが、神奈川県のある新設の学校が、東大の教育学の教授がコンサルティングをしながら学校づくりをして非常に成功した例があるのですが、せっかく奈良県には教育研究所があり、教育大学があるのですから、フロンティアの研究校に対して関わっていただく。例えば、教育研究所が関わっている学校はA、B、C、教育大の先生が関わるのが甲、乙、丙ということで、それぞれが知恵を出し合っていただき、どういうことをやってその結果どうなったかというのを1年、2年、3年後に報告していただくと、改革のスピードが速まると思います。お互いによいところを取り合って頑張っていけばよいと思います。
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(思考力や判断力というものは、基本的なものの上に出てくるわけで、小学校低学年の場合には少し方向として間違っているのではないか。)
【委員】今、教育研究所のほうからは、基礎学力の習得というものだけでは駄目で、思考力、判断力、創造力が必要だとおしゃられました。しかし、私達が常日頃大学生を教えていて思うことは、基礎的な学力というか、考え方、論理力というか、そういうものが全然ついていない。そこから出てくるのは一体何かと思います。思考力や判断力というものは、基本的なものの上に出てくるわけで、今ここで話し合っているのは、小学校低学年のことですから、少し方向として間違っているのではないかという気がします。つまり、特に小学校低学年の場合は、将来創造する基礎的なものをやる時期なので、小学校高学年、あるいは中学、あるいは高校、むしろ大学生で養うような思考力、判断力、創造力等を期待するのは、少しおかしいのではないかという気がするのです。
 特にこの山口小学校の例で申しますと、基本的なことを繰り返し反復することによって、忍耐力や学習意欲、一番大切なのは実は学習意欲ではないかと思いますが、そういうものが必然的に生まれてくるという経験がここに書かれているわけです。ということで、少し方向としておかしいのではないかという気がします。
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【会長】只今のご意見に対して、何か賛成、反対というようなご意見ございませんか。
 
 
(小学生の3年生から基礎学力もないのに、考えさせようとか、発見させようとか、問題を自分で解決しようとかするのは、非常に無理がある。まだまだ総合的な学習時間の展開も、あいまいな形で進行中。)
【委員】総合的な学習の時間を設けたことについて前回も4番で申し上げたのですが、小学校にも中学校にも高等学校にも総合的な学習の時間を設けたこと。小学生の3年生から基礎学力も何もないのに、考えさせようとか、発見させようとか、問題を自分で解決しようとかするのは、非常に無理があるのではないかと思います。あの2時間を使って、それこそ読み・書き・そろばんをしっかりやったほうがよいのではないか。
 しかし、国の指導要領での方針ですので、私の校区の小・中学校でも、「明日香学」というカリキュラムを作ってやっているのですが、やはりまだまだ総合的な学習時間の展開はあいまいな形で進行中です。一つは、総合的な学習時間には、学問的な体系や教育的な体系も何もない。そういうところに大きな問題があるので、これには大反対です。総合的な学習時間は、早くなくなってしまわないかという感じがしています。だから、今の委員の意見に賛成です。
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【会長】関連して、その問題にご意見ありませんか。
 
(「つまずきにも法則がある」といわれるように、これを指導者が心得るのは有効。大学も、自分の持っている研究成果で子どもへの指導成果を上げることが厳しく問われる必要がある。)
【委員】研究所が先程おっしゃられた「子どもがどこでつまずいているのかを明らかにし、すべての子どもに必要な学力を定着させる指導方法を研究する」というのは、非常に効果のある取組になると思います。例えば計算においても共通して間違うところがあり、よく「つまずきにも法則がある」という言い方がされるわけです。これを把握できる先生というのは、きちんと教えていけるということにもなるので、 私は非常に期待したいと思って聞いておりました。まず、これが一つです。
 それから、二つ目に、大学と教育現場とが直接に連携していくという先程のご提案ですが、大学も現職の先生方を院生などでお迎えしたり、学校と共同研究したりしたりはしていますが、やはり大学の持っている研究成果なりノウハウで実際に基礎的な力を子どもにきちんとつけて成果を上げることが厳しく問われる必要があると思います。また、ご相談しながらそういう仕事にも手を出していきたいと思っております。
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【会長】只今、総合的な学習の話が出ましたので、それに関して学校教育課からご説明をお願いします。
 
【学校教育課】総合的な学習の前に、先程ご提案がございました大学との連携の件ですが、フロンティア事業では奈良教育大からお二人の先生、奈良女子大からお一人の先生に強力なアドバザーとして参画していただいております。
 
【委員】それをも公開しながら進めて欲しいと申し上げているのです。また、研究所のほうからも、フロンティア事業に是非参加していただきたいと思います。担当の責任を明らかにしていただきたいと思います。
 
 
(総合学習の時間は「知の総合化を図る時間」であって、「活動あって学びなし」とならぬように十分な留意が必要。)
【学校教育課】はい、分かりました。それでは、総合的な学習ですが、山極先生ご自身も「知の総合化を図る時間だ」という言い方をされておられたように思います。各教科等で身につけた基礎的・基本的な力を実際に生かすための時間だととらえています。
 この時間の展開に当たりましては、「活動あって学びなし」という姿が往々にしてあるわけですが、そうならないように常に留意する必要があると考えています。そのために県教委としては、各教科や総合的な学習の時間の指導計画の作成の手引となるような指導資料であるとか、あるいは毎年実施している県教委主催の教育課程に関する講習会、さらには各学校及び各研究団体が主催する授業研究会への指導主事の派遣などを通して支援を行っています。
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【会長】次に、研究所のほうからお願いします。
 
 
(総合的な学習の時間は各教科で学んだことの総合化を図るもので、双方で車の両輪。総合的な学習は、ねらいをしっかりと定めて進めること。)
【教育研究所】今回の改訂におきまして、各教科領域と総合的な学習の時間の指導などすべての教育活動を通して子ども達に生きる力を育むことを課題としています。そしてこの総合的な学習の時間は、各教科で学んだことの総合化を図るものであると考えています。基礎から積み上げていく教科の学習と総合的な学習をすることによって、例えばいろいろなことを調べたり、まとめて発表したりしていく過程において、「あ、これは国語の力が必要やったな、あるいは算数の力が必要やったな」と、子ども達自身も教師も気づいていくという意味において、教科の学習と総合的な学習は車の両輪であると考えています。
 したがって、各学校におきましては、基礎・基本の確実な定着を図るとともに、各教科と総合的な学習の時間の両方を実施するということで、全体で取り組む必要があると考えています。
 それから、先程学校教育課からもありましたが、ともすれば体験的な活動をさせていると、その総合的な学習の時間のねらいがどこにあるのかを忘れがちになる傾向がありますので、ねらいをしっかりと定めて総合的な学習をしていくために校内研修の充実等の一層の指導を行っていきたいと考えています。
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(元来、総合学習というのは知恵の学習であり、今の総合学習の取組方は再点検する必要がある。)
【委員】子ども達にも確かな学力をつけるということで、いろいろな試みは結構なのですが、遠大な理想を掲げた計画だと思います。それよりも、現実に目の前には、それぞれの年代・学年の子ども達がいるのだということを忘れては困ると思います。何年か先の計画を立てて、これから対応していくのだというのでは子どもは育たない。これを大事にしてほしい。これも大きな課題ではないかと思います。
 今の総合学習は、知識偏重の中で総合学習が生まれてきた。学力として知識も必要であり、そしてその知識を応用する知恵が必要なのです。従って総合学習というのは、知恵の学習だと思うのです。それを難しい理論を持って、いろいろな学者が論じていますが、本当はおかしい。これでは、総合学習をつぶせと言わざるを得ない。その辺もしっかり考えた教育課題の見つめ方や取組方が必要ではないかと思っています。
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(県内で成功している総合学習の事例の報告を。)
【委員】要望なのですが、総合学習について非常に率直なご意見がありましたので、総合学習についていろいろ調べておられる研究所から、県内で成功していると認めた事例の幾つかを、近い日で結構ですから、その事例を是非ご報告いただきたいと思います。
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(動く手、鋭い目、それから考える頭などは教科で十分鍛えられるので、わざわざ総合的な学習の時間を特設する必要はない。うっかりすると体験だけに終わってしまい、何ら学力に結びつかない時間になってしまう。)
【委員】先程の私の発言は、少し言葉足らずだったのですが、地元の中学生向けに「明日香学」という1冊の冊子を作成し、それには明日香の川、明日香の埋蔵文化財、それから社寺仏閣、等々が盛り込まれおり、地元は非常に恵まれた環境にあるからできるのであって、それが本当にアスファルトの運動場を持つような都会ではどういう展開をするのかと心配しているのです。
 やはり私は、特設した時間を設けるのは、反対なのです。理科の授業の中や数学の授業の中で、動く手、鋭い目、それから考える頭など、そういったものを十分鍛えられるのです。わざわざ総合的な学習の時間でその学力がつくように総合の時間を特設するというのは、うっかりすると、単に触ったとか、見たとか、聞いたとかいう時間で終わってしまい、何ら学力に結びつかない時間になってしまうのです。しまいには、修学旅行のガイダンスとか、あるいは生徒会活動の選挙の時間に使われるとかいうようなことにもなってくるのではないかと思います。
 あるいはまた、一方では、文科省は当初、事例として国際理解、環境、生涯教育、人権教育等を例示したので、今、小学校では一番たどり着き易いのは英語教育ではないかという感じもしています。小学生のときに英語というのはどうなのかという議論をしなければならないと思いますし、総合学習には大きな問題があると思います。
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(教科学習ではここまでをやって、総合的な学習ではこれを伸ばすという形になるべき。)
【会長】有り難うございました。
 総合的学習には、どちらかといえばネガティブな感じの発言が多いようですが、やはり総合的学習と教科学習の理論的な枠組みをきちんとつかんだ上で、実施しなければいけないと思います。時間があるからやらなければいけないというのではなくて、教科学習ではここまでをやって、総合的な学習ではこれを伸ばすという形になるべきだろうと思います。やり始めて難航している総合的学習ですが、できるだけ効果が上がるような方法を考えていただきたいと思います。
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(理念も大事ではあるが、子どもに学ばせる具体的な技術をつかむことが肝要、これは総合学習においてもしかり。)
【委員】先程の山口小学校の例から考えるのですが、本屋さんに行くと数冊の本があって、特に代表的なのは、「本当の学力をつける本」という本ですが、これは特別な本ではなく、少し教材の工夫等はあるのですが、何年か前には当たり前に在った実践だと思うのです。読んでいく中で印象的だったのは、少し語弊があるかもしれませんが、理念よりも技術が重要なのだという言い方をしているところです。もちろん理念は大事なのですが、子どもに学ばせる具体的な技術をつかんでいるというのは、本当の強みだと思います。だから、総合を語るときにも、出発のところでは非常に高邁な言葉を使い抽象的な論理に流れて、具体的な技術が必ずしも明確ではないところに実践のしんどさがあると思う。その点、山口小学校の取組は、百マス計算などの具体的な技術で子ども達にきちんと力をつけていったという強みがあります。また、基本的な生活習慣をつける場合にしても、これをきちんとすることが子どもの集中力をつくっていくために是非必要なことだということで、親に朝ご飯をきちんと食べさせてほしいと求めていっていますね。この辺りに、抽象的論理の中で私達が随分見落してきたことがきちんと整理されているのが、逆にこれだけの反響を呼んだのではないかと思うのです。総合と基礎学力との話に戻りますが、子どもを育てる技術をもう少し整理して進めていくことが大切だと思います。
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(「活動あって学びなし」という反省もあるが、子ども達は非常に興味を持って総合学習をしていることは事実なので、それに価値を見つけ出して取り組みたい。)
【委員】総合学習についていろいろとご意見が出ているわけですが、学校現場の我々としては文科省が言っておりますので、少しでも総合学習に何かの価値を見出そうとしながら1学期が終わりました。それぞれの学校の実態はあるかと思いますが、全体的にはやはり体験的な学習が多く学校教育課から先程言われたように、「活動あって学びなし」というような反省もなきにしもあらずと思いますが、活動が主体であるので子ども達は非常に活発に活動していることは事実です。忘れてきた算数の宿題を残ってしなさいと言ってもなかなか子どもは残りませんが、総合学習で残ってやりなさいと言ったら、非常に興味を持ちながらやったり、遊び時間でも運動場で遊ばずにパソコン室や作業場へ行ってやっているのは事実です。
 このように子ども達は非常に興味を持って活動していることは事実なので、それに価値を見つけ出して取り組んでいるわけですが、委員の先生方はどうも反対のご意見が強いようですので、私達はそれに負けないように総合学習をさらに推し進めていかなければならないと思います。また、文科省の審議官もそういう声には負けないで突き進んでいきたいとおっしゃっておられます。
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【会長】それでは、ここで休憩したいと思います。
 
 
(休  憩)
 
 
【会長】それでは後半は、課題の抜粋の2番の「学力調査を国が動いているからやるというのでは、何のために懇談会を設けているかわからない。奈良県で目指すところに合わせた学力調査を実施すること」ということについて、学校教育課のほうからご説明をお願いします。
 
 
(児童・生徒に確かな学力を身につけさせ、本県の教育水準の向上を図るためには、学力調査の実施が必要。)
【学校教育課】学力テストについて前回の懇談会でご指摘をいただき、その後、学校教育課、教育研究所、そして人権教育課と協議しました。
 それで、児童・生徒に確かな学力を身につけさせ、本県の教育水準の向上を図るためには、やはり学力調査を実施して、児童・生徒の学習の到達度を客観的に把握、さらに分析して、それらを学習指導の改善に生かすことが必要だと考えます。
 実施に向けて、調査内容、調査方法、あるいは実施組織の編成等を、関係課及び教育研究所において具体的に検討を進めたいと考えています。
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【会長】有り難うございました。研究所のほうから補足ありますか。
 
【教育研究所】今、学校教育課長がおっしゃられたとおりです。
 
【会長】只今のようなご意見ですので、それでよろしいでしょうか。
 
【委員】検討ということですが、なるべく早いほうが良いと思います。いつごろから始めるのでしょうか。
 
【学校教育課】事業につきましては、予算のかかるものとかからないものがありますが、予算のかからないものについてはできるだけ早急に進めていくことが可能ですが、学力テストを実際に実施するには、やはり印刷費用等の経費が必要であり、予算獲得と並行して進めざるを得ないと考えています。
 
 
【会長】それでは、急ぐようですが、課題の抜粋の5番目の「思いやりのある人、責任感のある人を育てるということがアンケートでは多かったのですが、それについて実際にどうすればよいかということ」についてのご意見をお願いします。これは非常に難しいと思いますが、学校教育課から簡単にお願します。
 
(思いやりや責任感のある人を育てるには、道徳の時間を充実させて子ども達の健全な価値判断基準を醸成していくことにある。)
【学校教育課】思いやりや責任感などというものは、人間としてよりよく生きていくためには大切でかつ普遍的な価値と言ってもよいと思いますが、こういうものを子ども達に育むためには、子ども達に人間として何が良いか悪いかを明確にした指導を徹底する必要があるのではないかと考えています。そういった指導の一つとしては、まず何と申しましても週1時間の道徳の時間を充実させることです。
 まず、低学年では善悪の判断をしっかりできるような指導が大切でしょうし、高学年、さらに中学校と進むなかでは、良いと分かっていてもなぜそうできないのか考えられるような指導や、あるいは人間には弱さに打ち勝つ強さや気高さがあることに気づかせるような指導が必要ではないかと考えています。
 それと同時に、生徒指導の充実という視点も大変大切な部分ではないかと考えています。具体的には、子ども達の健全な価値判断基準を醸成するということが必要で、そのためには子どもが納得できるような適切な生徒指導、学校と家庭が連携した一貫性のある指導ということに留意しながら進めていきたいと考えています。
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【会長】有り難うございました。次は、教育研究所からお願いします。
 
(思いやりや責任感は、自分が親など周りの人から十分に愛されているという実感と幼児期における友達との遊びの中から生まれるもの。)
【教育研究所】学校教育課のほうは、小学校に進んでからの話が中心であったと思います。研究所のほうは、思いやりや責任感のある人を育てるのに、まず、子どもが親など周りの人から十分に愛されているということを実感することによって思いやりや責任感の源となる基本的な信頼感が育まれるものと考えています。そのために、乳児のころから取り組んでいく必要があると考えています。また、子どもは幼児期の友達との遊びを通して役割や分担、そして協調性や助け合いなどの必要なことを自覚していくものです。その過程で責任感や思いやりを醸成できると考えています。このことを、やはり親などから子どもに働きかけていくことが必要であり、この点を踏まえて懇談会からもご指示いただいた親学サポートブックの作成を始めているところです。
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【会長】有り難うございます。只今の説明に対して、何かご意見ありますか。
 
(欧米においては、絶対神と個人が向き合うところから人間としてやらなければならないことが自ずから出てくるが、日本の場合は難しいものがある。)
【委員】道徳の問題は、欧米においては一神教で、神様と個人が直接向き合っているというところから、一つの個人が一つの絶対神に対する帰依として人間としてやらなければならないことという意味で、自ずから出てくる課題だろうと思います。ところが、日本の場合は、絶対神というのはないので、非常に難しいだろうと思います。すなわち、欧米の場合は、一つの絶対神から生まれる罪深い人間の一つの良心というものが一つの基準になるわけですが、日本の場合はそうはいかないというところに非常に大きな問題があるわけです。その辺をどうするかというのは少し答えにくい問題だろうという印象を持っています。
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(思いやりのある人を育てるというのは、究極的には人間尊重ができる子どもを育てること。)
【委員】今、学校教育課と研究所のほうから発言があったのですが、少し整理してほしいと思います。学校教育課は就学以後の子ども達の道徳教育を、研究所は就学前をやっていくということですが、そのように役割分担をしていてよいのでしょうか。思いやりの教育をするのに、学校教育課というのは行政的な面の機能を持っていて、研究所はそれを受けた研究だと思うのです。そうでないと、研究所というのは一体何だとなってしまいます。ここは一つ事務局の中で整理してほしいと思います。
 思いやりのある人を育てるというのは、やはり究極的には人間尊重ができる子どもを育てることだということでしょう。改めて、ちょっと思いやりの定義をお願いできればと思うのですが。よろしくお願いします。
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(「思いやり」や「責任感」を明確にとらえるには、行動的に定義する必要がある。)
【会長】「思いやり」という言葉の元は、英語ではないそうです。英語では、プロソーシャル・ビヘービアと言うようです。一応、向社会性と訳します。それに対して反社会性、非社会性があります。対人関係をこの三つに分け、その中のプロソーシャル・ビヘービアというのが20年ぐらい前からアメリカで盛んに研究されてきました。その前は非行とか犯罪とかの研究だけだったようですが、思いやりみたいな、そういう行動を育てなければいけないということで始まったようです。日本の場合の思いやりというのは辞書を引くと、共感するという意味を含む言葉であります。だけど、共感するというのは一体どういうビヘービアかという定義をどこかで定めないと、教育としては難しいのではないかと思います。思いやりの心があっても、思いやりの行動をしないと、その思いやりのあることがわかりません。というのは、大抵の場合心はあるのですから。例えば、電車でお年寄りがいれば、替わろうかと思うけれども、疲れているから替わるのは止めようとなるので大人の場合は難しいが、少なくとも幼児、小学生ぐらいまでは行動的に定義できると思います。このように、行動として責任感や思いやりをどうとらえていくかが大切ですので、そういう研究というか方向も考えられたほうがよいのではないかと思います。
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(思いやりを育むには、「感動する心」を培っていくこと。責任感は生真面目さであり、これは真剣に物事に当たる経験から育つ。)
【委員】私自身は、教育研究所が先程おっしゃられた内容に本当に共感しています。まず、愛情深く育てられると確かに人間というものは、愛を注ぎ出すことができるとよく言われますが、まず乳児期からそういった体験や環境というものが本当に大事なのではないかということが一つ。それから友との交流や関わりの中から役割としての責任感が育つとおっしゃられたのも、私も同じように思います。
 それからもう一つには、思いやりを育むというのは、「感動する心」を培っていくということも大事なのではないかと思います。責任感につきましては、私の思うところでは、生真面目さではないかと思います。この生真面目さというのはどのように育つかというのは、真剣に物事に当たる経験、頑張れる力ではないかと思います。
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(人間性を育む教育をするには、先生は自分の教科を責任を持ってきちんと教えながら、もう一方では心の在り方を教科の中で伝えていくこと。
【委員】県民5,000人アンケートによりますと、思いやりのある人とか責任感のある子に育ってほしいという親の願いが大変強かったと思います。
 6番目の課題と連動するのですが、やはり子ども達が接する先生方の態度にも非常に問題があると思うのです。目の前に人格者である先生に出会うことが大切で、先生方の資質が非常に問題になると思うのです。やはり先生自身が自分の教科を責任を持ってきちんと教えながら、もう一方では心の在り方を教科の中で伝えていくということが非常に大事だと思います。
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【会長】有り難うございました。それでは、まだご意見があるかと思いますが、時間の都合で6番目のところですが、教職員のモラル低下や指導力不足教員への対応と、7番目の若い先生の採用をすること、この2つを続けて教職員課のほうからご説明をお願いします。
 
 
(指導力不足教員を、判定委員会の結果によりシステム的に研修をさせたり別の仕事に就かせたりしていこうという方向で審議中。教員のモラル向上には、教員の自律的な力を養うとともに処分を厳しくしたり公表の基準を厳しくしていく等の対応も含めて進めたい。小学校では、若い先生の採用をしていく方向で。)
【教職員課】昨年の11月に指導力不足教員等の対応について検討していただくために、「教員の資質向上に関する検討委員会」を立ち上げ、この6月に中間報告をいただき、指導力不足教員等の定義とこれに対応するためのシステムについてのまとめをしていただいたところです。公務員の身分保障ということもあり、不適格教員に対する分限処分件数は全国的に少ない傾向であったのですが、分限処分に至らないまでも指導力に不足する教員を、判定委員会の結果によりシステム的に研修をさせたり、別の仕事に就かせたりしていこうという内容になっています。最終報告を本年11月にいただくことになっており、これをもとに平成15年度からの人事に対応できるよう進めていきたいと考えています。
 また、教職員のモラル低下についてのご意見をいただいておりますが、この4月以来、教職員によるさまざまな不祥事が続いています。こういった不祥事に対応していくために、「教職員の不祥事防止等のための連絡会」の第1回目を本日午前中に行い、さまざまなご意見をいただきました。その中では、先程、委員がおっしゃった「教員の資質向上」は、やはり大事であり、遵法精神を徹底していくということ、また、管理職の在り方が非常に大事であるという意見もいただきました。教員自らが自律的に自己管理できることが大事であるとともに、教育委員会としては、やはり処分を厳しくしたり、公表の基準を厳しくしていく等の他律的な対応も含めた形でも進めていきたいと考えています。懇談会からも「もっと強い立場で対応を」というご助言をいただきました。私どもも強い姿勢で進めていきたいと考えています。
 
 また、7番目の、「若い先生を採用すること」という新規採用者の件ですが、今年度は、小学校で70名、中学校で8名、高等学校で5名、盲・ろう・養護学校で15名、養護教諭で2名の合計100名という採用枠ですが、これからも中学校、高校は生徒数が減っていく状況であるため、若い先生を採用するというのはなかなか難しい状況ですが、小学校は児童数が持ち直してきていることと、退職者数が今後増えていくということもあり、若いすぐれた教員を採用していく方向で進めることができると思っています。
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【会長】有り難うございました。時間の都合上、次回が「教員の資質向上」というテーマになっていますので、詳しい討議は次回に回したいと思いますが。
 
 
(我々は昔の教えというものをきちんと学び直す必要がある。奈良発の道徳の教科書を作ってみてはどうか。)
【委員】最近のいろいろな不祥事を見ますと、私も含めてここにおられる委員の方々ぐらいの社会の指導者にやはり問題があったのではないかと思います。
 それで、先程道徳の時間で教え方にいろいろ苦労されているということですが、昔はやはり儒教だったと思うのです。儒教一色というのもどうかなという気はしますが、やはりもう一度、我々が昔の教えというものをきちんと学び直すことが必要だと思います。それと同時に、奈良は春日大社の宮司さん、薬師寺の好胤先生、京都の石門心学の石田梅岩、四条畷の関西師友協会、等々、とてもよい先生方が周りにおられるので、奈良発の道徳の教科書を作ってみてもよいのではないでしょうか。
                                        トップへ
 
【会長】只今のようなご意見は、次回にまたお願いします。それでは、最後の8番目の課題である土曜日・日曜日のことについて、生涯学習課長からお願いします。
 
 
(軒先遊びの事業、子どもゆめ基金の事業、青少年野外活動センターでの「家族ふれあいキャンプ」「四季を楽しむ家族の集い」を展開して対応。)
【生涯学習課】生涯学習の観点から、奉仕活動、体験活動、さらに文化を味わう趣旨の事業をこれまでに幾つか実施しています。今年度からは地域で子どもを育てる活動推進事業ということで、前回も報告しました「軒先遊び(仮称)」の事業を進めています。これは具体的には、それぞれ市町村で子ども達が異年齢集団の中で群れて遊ぶことにより社会性、あるいは社会力と呼べるような力がついていくことをねらいとしています。こういう子ども達の居場所づくりを行政主導ではなくて、できるだけNPOやボランティア等の方々の支援を得ながら進めていきたいと考えています。この間、専門調査部会から地域のスキルを持った人材活用推進のご提言をいただきましたが、この軒先遊びには地域の人材や保護者にも参画をしていただくということも考えており、そういう人達と交流することによって、子ども達は地域の人達を尊敬し自分の生き方の範としていくのではないかと思っています。
 それから、独立行政法人の国立オリンピック記念青少年総合センターから補助が出ている子どもゆめ基金という事業があります。これは子ども達の体験活動や読書活動などの活動をする民間団体への支援を行うものですが、団体などへこれの情報提供をしながら展開をしています。
 また、青少年野外活動センターで、「家族ふれあいキャンプ」、「四季を楽しむ家族の集い」等、週休2日制に対応して、子ども達が保護者とともに参加をしながら、自然に触れ合い、感性を豊かにしたり、人と人とのつながりの重要性を味わっていけるような事業展開を行っています。
 只今は、3つほど紹介しましたが、他にもまだありこれらの事業の充実を図りながら今後も進めていきたいと考えています。
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【会長】有り難うございました。予定より15分ぐらい延びていますので、これで終わりにしたいと思いますが、きょうのご説明の印象ですが、二つの部署からご説明があった1番、3番、4番ですが、何か少しニュアンスが違うという感じを受けています。例えば、全然違う場所でその二つを聞いたら、全然違うことを考えているんだなということになるかもしれません。次回からは統一した見解で説明をお願いできればと思います。
 
 
(「幼児教育から小学校への接続の課題」は、大学まで通じる非常に大事なこと。山口小学校のように切磋琢磨しながら友達と教え合いながら基礎学力をつけていくことが今後やはり大いに必要。今の日本の教員の資質の問題は、戦後の日本の教育の総決算である。)
【委員】時間が来て申し訳ございませんが、感想だけ少し発言させてもらえればと思います。本日はまず最初に「幼児教育から小学校への接続の課題」をお示しいただきました。これは幼児教育から小学校だけに止まることなく、中学校、高等学校、場合によれば、大学まで通じる非常に大事なことのように思います。といいますのは、私は現在転退学者の多い学校に勤務していますが、基本的な学力、基礎学力に欠けている子ども達の率が高く、ご提案いただいたようなところからついていけなくなっているように思います。
 それから、山口小学校の紹介がありましたが、特に小さいときの基礎・基本、つまり読み・書き・計算が非常に大事だと思います。このことが即、学習の基本に繋がり退学者をなくしていける非常に大事なことだと思います。このように切磋琢磨しながら、あるいは友達と教え合いながら、基礎学力をつけていくことが、今後やはり大いに必要ではないかと思います。今まで、変な意味の平等主義がまかり通っていましたが、その子に合わせた指導をしていくというのが本当の意味での教育ではないかと思います。
 それから、総合学習は、学校週5日制になって時間数が減った中でも2時間ほどしていかねばならなく、小学校、中学校から基礎学力がついた上で、座学から実践へという生きる力をつけるために何とかしていかねばならないという気持ちでおりました。
 それから、教員の資質の問題ですが、今、日本の教員は確かに非常識な面もあろうと思いますが、しかし、これは戦後の日本の教育の総決算が現れてきているのではないかと思います。教員はいろいろ批判を受けておりますが、一般社会人を見てみますともっと悪いのではないか。大変挑発的な意見ですが、同じ人間として考えれば、まだ、教員のほうがはるかに良いのではないかという思いをしています。
 これも、日本には先程から出でおりました道徳、あるいは日本人の生きていく謙虚さやバックボーンが、戦後なくなってきた結果だと思います。その総決算が、道を歩けばごみがいっぱい落ちているような非常に嘆かわしい状況を生み出し、日本人の心を荒廃させているのではないかと思います。そういう意味で、改めて奈良県教育から日本の教育へ発信をしてもらいたいと思います。
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(保護者の目から見ても学校現場の先生は本当にお忙しく、基礎的内容を反復でしっかりやっていただくためにも、県レベルでの採用増をお願いしたい。)
【委員】1点だけ申し上げます。きょうの議論をいろいろ聞かせていただきまして、やはり3人の子どもを持つ母親としては、小学校のうちに基礎的内容を反復でしっかりやっていただくというのはとても大事だと思います。
 3人の子どもの学校の現場の先生方は、本当にお忙しいというのを保護者としてとても感じます。やはり教員の数をもっと増やしていただきたいというのは、いつもいつも切に感じており、現在、県レベルでの採用増を、13か14県ぐらいで実施されているというのを1ヶ月ぐらい前の新聞報道で見た覚えがあります。他県では、幼稚園から小学校への移行がスムーズにいくように、小学校の低学年で教員は1クラス2名にする等の形で教員増をされているようですが。中学校も含めて、全般的にもっと教員増を県の裁量でやっていただければと思います。保護者としてもいろいろな要望が学校にあっても、先生があんなにお忙しそうなら、黙っておこうみたいな感じになりがちですので、是非、これはお願いしたいと思います。
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【会長】有り難うございました。只今の要望に対しての回答は、また次回にお願いします。
 それでは、まだいろいろ残る問題もあると思いますが、次回に回します。それで次回ですが、当初は8月に予定していましたが、10月に変更します。10月15日、火曜日、午前9時30分からがほぼ全員のご都合がよいということですので、この日時に春日野荘で行います。
 テーマは、当初に8月と10月のテーマとして設定した「小・中学校教員の資質向上」と、「小・中学校の経営」です。それで進め方は本日と同様に事務局からご説明をお願いします。つまり、テーマに関わり、今どういうことをやっていて、これからどうしたいというように、現状なり将来の方向なりの説明をしていただき、それに対して委員の先生方からご意見をいただくという方向で進めていきますのでよろしくお願いします。
 
 
【委員】進め方についての要望なのですが、本日は5番、6番、7番、8番については十分に意見交換の時間が取れませんでしたので、次回の11回目には、これらの課題に対してももう一度意見交換の時間をいただきたいと思います。
 
【会長】はい。私も今申し上げようとしたのですが、本日の議事録をまとめて、その中からまた続けてやる問題を整理しながら進めたいと思います。それでは、私の役目はここで終わらせてもらいます。
 
【事務局】司会進行、どうも有り難うございました。閉会に当たりまして、教育長から皆様に一言お礼を申し上げます。
 
【教育長】本日の第10回教育懇談会では、大変熱いご議論をいただき本当に有り難うございました。私としては、耳の痛い中身もあったのですが、できることから着実にやっていきたいと考えておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いたします。
 本日話題に挙がった「思いやり」というのを、私も教育長として時々どこかで次のように話すのですが、もし間違っていればご指摘いただければ有り難いと思います。
 孔子に弟子の子貢が、人生にとって最も大切な言葉を1文字で表したら何ですかと聞いたとき、「恕」だと答えたそうです。「恕」というのを広辞苑で引きましたら「思いやり」と書いてあり、私自身は、「思いやり」というのは相手の立場に立ってみることという思いをずっと持っておりました。
 そして、少し前に「人間の脳のようなコンピューターを作ろう」とされている松本元という方が書かれた本に、人間の脳の情報処理システムというのは、個々人の学習体験によってシステムは作られていくもので、それぞれ皆違い、これは極端に言えば、相手のことを理解できないのが人間だとありました。そのときにハッとしたのですが、「恕」の話と「人間の脳の情報処理システム」を考え合わせると、孔子さんはえらいことを言ったものだと思いました。なるほど、それだから孔子は「恕」と言ったのかなあという思いを持ったのです。たまたま本日の議論の中で、「思いやり」ということが出てきましたのでそれを思い出しておりました。
 また、本日のご議論を聞かせていただいておりまして、今は学習指導要領等で法的にかなり規制されておりますが、校長の裁量権をもっと拡大する方向で、つまり現場に教育を任せていく方向でもっと考えていく必要があるのだという思いを強く持ちました。またそれと同時に、校長先生の力量アップも非常に大事だとも思いました。
 次の11回目も、またよろしくお願いを申し上げたいと思います。皆様方には平成12年の8月1日以来、2年間、委員をお願いしております。もう既に次回の10月15日には、全員の皆様が出席してやろうというお話でございますが、これからまた暫くこの懇談会委員をお願いいたしますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。本日は本当に有り難うございました。
 
 
【事務局】それでは、これをもちまして、第10回懇談会を終わらせていただきます。本当に長時間有り難うございました。
 
 
 
 
〔文責は奈良県教育委員会事務局〕
 
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