第15回奈良県教育懇談会討議の概要

     ◇日時 平成16年1月22日 9:30〜12:00
     ◇場所 奈良市鍋屋町15 共済会館やまと 大会議室「平城」
     ◇議事 (1)教育懇談会からの提言に関する取組について
         (2)職業観・勤労観の育成について
         (3)その他


◇発言のポイント
 ・親学サポートブックの作成・活用について(教育研究所)
 ・小学校の学習到達度調査の実施状況について(教育研究所)
 ・研修講座実施とその自己評価について(教育研究所)
 ・教員の経営学に関する大学院研修について(教職員課)
 ・教員採用での面接の充実と模擬授業の実施について(教職員課)
 ・「まほろば創生・なら教育特区」について(学校教育課)
 ・「奈良県教育の日」及び「奈良県教育週間」の取組結果について(教育企画課)
 ・奈良県立高等学校入学者選抜検討委員会報告について(教育企画課)
 ・各学校での教育改革の取組状況調査結果について(教育企画課)
 ・学校評価とその公表等について(学校教育課)
 ・教育課程の弾力化に期待
 ・学校が子ども会や地域ともっと連携し、学校開放を進めよう。
 ・学校評議員制度や学校評価について、県や市町村がもっと支援をしよう。
 ・奈良市では、平成16年度から学校評価が更に進みます。
 ・外部評価の在り方を考えよう。
 ・自己評価、外部評価の在り方を整理して、評価を生かす取組をしよう。
 ・「いきいき・なら体験事業」については、親からの評価も参考にして進めよう。
 ・退職教員や企業のOBなどによる地域ごとの教育支援活動ができればすばらしい。
 ・奈良県における「職業観・勤労観の育成」についての取組状況(学校教育課)
 ・子ども参観日の取組や職場体験の拡大により、子どもの視野を広げよう。
 ・「いきいき・なら体験事業」はボランティアも含む幅広い活動
 ・「いきいき・なら体験事業」のねらいが地域や保護者に理解されることが大切
 ・社会で人知れず努力することや嫌なことでも続けることの大切さを子どもたちに教えよう。
 ・職場体験学習では、事前・事後の十分な指導が必要
 ・若い人には、生きるということの意味を問う気持ちをもってもらいたい。
 ・職業観・勤労観の育成には、小・中・高等学校の12年間を通したカリキュラムが大切
 ・自分を律するものとしての職業観の育成も必要
 ・小学校や中学校から将来の職業に向けた進路指導が必要


◇議事概要

【会長】 教育懇談会の討議に基づく提言に関する県教育委員会事務局の取組状況について、事務局各課・所から報告願います。
                           
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(親学サポートブックの作成・活用について)


【教育研究所副所長】 「親学サポートブック」は、昨年の5月以降に各市町村で実施した1歳6カ月児健診で保護者全員に配布したほか、市町村の教育委員会、保育園、幼稚園で開催されている家庭教育に関する学習会への参加者、さらに、家庭教育部が実施した「子育て企業フォーラム」の参加者等に配布し、活用いただいています。これまでに、1万6,000部を配布しましたが、好評につき増刷し、1月13日現在で1,940冊を販売しました。また、学習ビデオを作成して、すでに奈良テレビで放送しています。来年度は、保護者の子育ての悩みなどに答えるため、親学サポートブックQ&A編や実践編といった番組も作成していきたいと考えています。また、親学サポートブックについてのアンケートを2年後の3歳児健診時に実施したいと考えているところです。
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(小学校の学習到達度調査の実施状況について)

【教育研究所副所長】 「達成目標の明確化、学習到達度調査」については、本年度は小学校5年生の国語と算数の評価規準を作成し、予備調査を実施しました。来年度、本調査を実施し、その結果をもとに、授業改善のための資料を作成するなどの取組を行う予定です。
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(研修講座実施とその自己評価について)

【教育研究所副所長】 「教員研修の充実」については、「教育現場のニーズを的確に把握し、教育改革に伴う研修講座を開設するとともに、研修講座等の評価を行い、その結果を公表すること」という提言に基づき、新任校長研修で、国立教育政策研究所の総括研究官を講師に招き、学校組織マネジメントの在り方、学校組織改革等についての研修を実施しました。研修講座の評価については、参加人数と講座の活用可能性の両面から評価し、改善につなげていきます。
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(教員の経営学に関する大学院研修について)


【教職員課長】 「教員研修の充実」についての提言を受け、特色ある学校づくり、学校経営においてマネジメント力等が必要であることから、大阪府立大学大学院、経済学研究科において、3名の教員が2年間、経営学の研修をすることになります。
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(教員採用での面接の充実と模擬授業の実施について)


【教職員課長】 「面接試験の一層の充実、模擬授業の充実等の措置を講じること」については、15年度の採用者選考試験から2次試験の面接時間を25分に延長し、うち10分を模擬授業に当てて、教員としての資質や意欲を見ることとしました。
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(「まほろば創生・なら教育特区」について)

【学校教育課長】 「高校の特色化に向けて、各学校の教育目標に応じて特色ある学校設定教科・科目を設置するなど、教育改革の一層の弾力化を進めること」との提言をいただいています。昨年8月末に「まほろば創生・なら教育特区」の認定をうけましたので、今年4月から3校を対象にして、弾力化を図る予定です。西の京高校、斑鳩高校では、本県の豊かな文化遺産、観光資源を活用して、地域の活性化に貢献できる生徒の育成を目標に掲げて、日本史学習の重点化を図ります。これを進めるに当たり、高校と大学、教育研究機関や文化施設等との連携や県の観光資源データベースの作成、校外でのフィールドワークなどを検討するとともに、校外活動における単位認定についても考えています。
 次に、本年4月に日本で初めての理数科単独高校としてスタートする青翔高等学校において、科学教育の重点化を進めます。大学院生によるサイエンスアドバイザーの導入も計画中です。
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(「奈良県教育の日」及び「奈良県教育週間」の取組結果について)

【教育企画課長】 「教育の日の設定」という提言を受け、15年度に11月1日を「奈良県教育の日」と定めて、取組を進めてきました。「奈良県教育週間」については、本年度は、10月26日から11月1日とし、県の教育委員会と教育の日実行委員会の共催により、「奈良県教育の日」記念大会を開催しました。また、実行委員会構成団体や市町村の教育委員会による関連行事、そして各学校・園での取組等を行っていただきました。各学校・園での取組は、79%の学校(園)で行っていただきました。授業公開は、62%の学校(園)で実施されました。
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(奈良県立高等学校入学者選抜検討委員会報告について)

【教育企画課長】 「高校の特色づくりに向けての入試方法の改善」につきましては、昨年7月に設置した奈良県立高等学校入学者選抜検討委員会から、本年1月6日に報告が出されました。現在、分割選抜、一般選抜、第2募集による選抜の3種類の選抜を行っていますが、報告では、分割選抜にかえて特色選抜を導入することが提案されています。また、特色選抜、一般選抜において、調査書と学力検査点との比重を弾力化して、各学校で定めるようにすること、特色選抜において、問題作成も含めて各学校が独自の選考方法を取り入れることなども提案されています。県教育委員会では、この報告を踏まえ、関係者の意見を聴取しながら検討を進め、今年度末を目途に、入学選抜の方法についての方針を定めたいと考えています。

【会長】 県教育委員会からの報告について、何かご質問、ご意見がございましたらお願いいたします。

【委員】 東京では、ほとんどがトップダウン型であるため、改革のスピードが非常に速いのですが、奈良はどちらかというとボトムアップ型で、県民の意向を聞いた上で進めておられます。ちょっと時間はかかりますが、素晴らしいものになっていると思います。先ほどの親学サポートブックも教育学者の多湖輝先生から、「これは素晴らしい、東京でも活用したい」と注文をいただきました。今後も実効をあげてほしいと思います。

【会長】 教育改革に関する各学校の取組状況アンケートの結果について教育企画課長から報告をお願いします。

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(各学校での教育改革の取組状況調査結果について)


【教育企画課長】 懇談会からの提言を受け、各学校で進められている教育改革について、昨年10月に小・中・高等学校及び障害児教育諸学校に対して調査を行い、すべての学校から回答を得ました。以下、全校種での結果について報告します。
 まず、『学校の経営改善に向けた取組』の「年度当初に1年間の学校の具体的な教育目標と計画を策定し、保護者・地域の人々に公表していますか。」に対しては、63.8%が公表していると答えています。方法等については、保護者向けに学校だよりを出しているという学校が最も多く、学校評議員会での公表が多く見られます。
 「年度末に年度当初に掲げた目標を評価し、保護者や地域に公表しますか。」については、公表すると回答した学校が20.3%と低い数字になっています。
「教員は年度当初に具体的な1年間の学級経営又は教科指導についての具体的な目標と計画を作成し、校長に報告していますか。」については、64.3%が報告しています。
「それを自己評価し、校長に報告しますか。」では、43.0%が報告すると回答しており、年度末に一年間の総括会議をもって報告している学校が多くあります。学校独自の様式で評価表を提出する学校もあります。
 「保護者や地域社会等の外部評価を受けていますか。」については、37.0%が外部評価を受けています。学校評議員から意見を聞く学校が77校で、うち、35校が高校です。
『学力向上についての取組』の「基礎・基本を定着させるためにどのような取組をしていますか。」に対しては、小学校で最も多かったのが反復学習で120校。少人数指導が75校ありました。中学校で最も多かったのが少人数指導で35校。高校では、放課後、土曜日、長期休業での補習で26校です。
 「各教科の各単元・題材ごとの具体的な達成目標を設定した上で、指導を行っていますか。」については、82.2%の学校が行っていると回答しました。具体的な評価規準を作成し、それを達成目標としている学校が多くあります。相対評価に代わって絶対評価、いわゆる目標に照らしての評価が実施されている中で、この評価規準の作成は必要不可欠であり、そのことが達成目標の設定と連動してきているものと思われます。
 「習熟度別学習」については32.1%の学校で実施されています。教科は、どの校種でも算数、数学が最も多く実施されています。学年では、小学校では5年生、中学校では3年生、高校では1年生が最も多くなっています。
 「小学校高学年において学級担任制の弾力化を行っていますか。」では、37.6%が行っていると回答しています。科目では、図工、学年では5年生が一番多く、市部と郡部に分けて数字をみますと、郡部の方で弾力化が進められています。
 「図書タイム」は、70.1%が設けています。特に小学校は77.0%と実施率が高くなっています。
『授業改善に向けた取組』の「授業改善のために校内で相互に授業を公開し、評価し合う機会を設けていますか。」に対しては、78.7%が設けていると答えています。学年や教科ごとに1人の教員が授業を公開して、その後、研修会を行う形が多く、教員全員が研究授業を行う学校は少ないようです。
 「授業改善のために、児童生徒の意見を取り入れていますか。」では、50.6%が取り入れていると答えています。方法として、アンケート実施が62校、自己評価カードを活用している小学校が24校となっています。
 「保護者や地域の人々に授業を公開する機会を設けていますか。」では、小・中学校のすべての学校で、授業参観が実施されています。
「さまざまな分野で活躍されている地域の人材を講師として、授業に導入していますか。」に対して、90.6%の学校で実施していると答えています。特に、総合的な学習の時間では、様々な経験を踏んでこられた地域の方々をゲストティーチャーとしてお招きする学校が多く見られます。
 『その他』については自由記述で回答してもらいました。
 まず、「各学校では、どういう教育改革に重点的に取り組んでいますか。」について、小・中学校ではともに1番に「地域連携」、「開かれた学校づくり」、2番目に「基礎・基本の定着」があげられています。高校では「教育課程の特色化」が一番多くなっています。これは、高校再編計画に伴い、すべての学校が特色や活力、魅力のある学校をつくる取組を進めていることを反映しています。
 「その取組でどのような成果が上がっていますか。」に対して、数値をあげた回答では、「授業参観への参加率が90%に上がった。」、「算数が好き、だいたい好きと答えた児童の数が89%になった。」(ともに小学校)などの回答がありました。
 「教育改革を進める上で、どのような課題がありますか。」については、どの校種とも一番多かったのが、「教員の意識改革」です。
 最後に、「教育行政全般に対しての意見」を伺ったところ、多様な回答がありましたが、「教職員と予算の増」が最も多く、「校長の権限・裁量の拡大」、「教育改革へのとまどい」などの意見もありました。

【会長】 それでは、学校の自己評価及びその公表に関して、学校教育課長から、お願いします。
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(学校評価とその公表等について)

【学校教育課長】 「自己評価及びその公表」についてですが、先日、文部科学省調査結果が発表され、学校評価の実施とその公表についての実施数等が公表されています。まず、自己評価の実施ですが、全国平均の88.3%に対して、奈良県は74.5%の実施率であり、全国44位と低い数字になっています。各校とも当然、年度末には自己評価を行っているわけですが、評価方法やシステムを明確にしていない等の理由から、実施していないと回答した学校もあったようです。次に自己評価を行った学校のうち、評価結果を公表している学校については、奈良県は16.9%で、全国の41.5%に対して低い数となっています。
 2つ目の「外部評価の実施及び公表」ですが、外部評価の取り入れは、全国平均では、44.1%、奈良県では19.5%で、これも36位と低い結果になっています。高校では、全国平均が36.7%、奈良県が68.9%で、これは学校評議員制度が活用された結果と考えます。
 学校評議員の設置については、全国平均が66.7%で、奈良県は、24.5%、これも低い数字です。高校では全国平均が75.6%で、奈良県は97.8%となっています。
 また、奈良県では、平成14年度から学校の評価システムの確立に関する研究に取り組んできました。これまでの成果や研究実践校の取組を早急にまとめ、来年度当初には、学校評価についての奈良県としての基本方針と実施要項を出したいと考えています。

【会長】 取組状況、調査結果及び学校評価に関する報告についてご質問、ご意見がありましたらお願いします。
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(教育課程の弾力化に期待)


【委員】 「まほろば創生・なら教育特区」(高校における教育課程の弾力化)は、すばらしいアイデアだと思います。資料に「世界に光る奈良県づくりに貢献できる人材の育成」と書かれていますが、奈良の歴史に誇りをもたせるように教えるとともに、奈良の歴史などを英語で世界に発信できるようにしていただくといいと思います。
 このような子どもたちが、奈良を訪れる修学旅行生等と触れ合うような仕組みをもっとつくるといいですね。
このことでいい結果がでれば、中学校、小学校にも広げていただくといいと思います。私が東京の中学校での出前授業で奈良の話をすると、子どもたちが日本の歴史にとても誇りを感じたと感想文を寄せてくれました。
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(学校が子ども会や地域ともっと連携し、学校開放を進めよう。)


【委員】 「学校の経営改善に向けた取組」の回答のなかで、学校の先生が指導目標や具体的な計画などを校長に報告しないケースもあるようですが、学校の中のシステムがうまく働いていないのではないでしょうか。それから、「重点的に取り組んでいる学校の教育改革」には、多くの学校が「地域との連携」をあげていますが、子ども会から見ると、学校は、まだ非協力的ではないかと感じています。先月、近畿の子ども会の大会でも同じような意見が出ていました。学校週5日制が実施されてからも学校と子ども会との関係はあまり変わっていません。たくさんの先生に子ども会に来てもらい、そして学校開放も進めてもらいたいと思っています。
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(学校評議員制度や学校評価について、県や市町村がもっと支援をしよう。)

【委員】 統計の方法にもよると思いますが、学校評価、特に自己評価はほとんどの学校が実施していると思います。実践集録、研究紀要なども大事な1年間の評価であり、そのようなことも視野に入れて調査をしなければならないと思います。
 学校評議員は、学校評価の窓口になるだけのものではなく、開かれた学校をつくるための応援団だと思います。奈良県の小・中学校では学校評議員制度が定着していません。県や市町村が学校評議員制度の導入についての要領等をつくって支援しなければならないと思います。
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(奈良市では、平成16年度から学校評価が更に進みます。)


【委員】 この調査の各質問が、懇談会提言の文言そのものによるもので、方法等を明確に示して質問したものではなかったという前提があるようですが、年度当初に学校が教育目標を立てない、学級担任が学級経営目標を立てない、1年間の評価を報告しないなどということは、実際にはあり得ないことだと思います。
奈良市においては、本年度1年間をかけて校長会で学校評価のための資料を作成し、平成16年度から学校評価を進めていくことになります。
 それから、学校の自己評価とその公表ですが、これについても1年間の取組を冊子にしていない学校はないと思います。それを全家庭へ配布しなくても、来校者や地域の求めに応じて配布しているわけですから、それを自己点検の結果の公表だと見ていただくこともできると思います。
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(外部評価の在り方を考えよう。)

【委員】 私も学校評議員に任命していただいています。進学者数のように具体的な数字で表れるのであればわかりやすいのですが、何をもって評価するのか、また、外部評価による成果はどのように表れるのかということになると難しいですね。外部評価がどうあるべきかをしっかり考え、例えば、「生徒さんが礼儀正しい」など、この学校の特色はこれだといえるものを強く出していただき、2年、3年たてば特色となっていくことが求められると思います。
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(自己評価、外部評価の在り方を整理して、評価を生かす取組をしよう。)

【委員】 各学校が、自己評価というものをどのようにとらえているのかという問題もありますが、自己評価が十分できなかったと思っている学校への支援が必要だと思います。実施したことをそのままにしておくのではなく、振り返ってもう少し分析すると貴重な自己評価になります。学校には必ず実践があり、成果物もあります。それをどうとらえるかということが大切です。学校が自信をもって自己評価を公表できるように応援していくことが必要ではないでしょうか。
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(「いきいき・なら体験事業」については、親からの評価も参考にして進めよう。)


【委員】 「いきいき・なら体験事業」で職場体験やボランティア活動が行われていますが、この事業を親たちはどのように見ているのかということも、今後の課題にしなければならないと思います。親は、もっと子どもの将来を大きな見地からみて職業体験を考えるべきだと思いますが、親からの評価も参考にしながら奈良県全体の方向付けをして進めてもらいたいと思います。
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(退職教員や企業のOBなどによる地域ごとの教育支援活動ができればすばらしい。)

【委員】 この回答を見ますと、学校が地域等からのサポートを求めていることを強く感じます。私は、大和郡山市などの不登校児童生徒への支援をとても評価しているのですが、奈良県も地域ごとの教育支援NPOを活性化してはどうかと思います。奈良教育大学の卒業生に地域別にスタッフをお願いして、教員を引退された方、企業のOBなどを中核として組織し、教育支援NPO活動を進めていけば、そこから変わっていくのでないでしょうか。
 先ほどの理数科の青翔高校についても、いくつかの企業がこの高校をバックアップするということになったら、いい学校ができると思います。みんなでいい学校をつくろうという思いを具体化していきたいですね。

【会長】 今後のアンケートについては、今のご意見を参考にして、実態がよくわかるような質問項目を考えて、続けて実施していただけたらと思います。
次に、今回のテーマ「職業観・勤労観の育成について」に関連する資料があります。これについて説明をいただいて、あとの討議でご意見をいただきたいと思います。それでは、最初に事務局から説明をお願いします。
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(奈良県における「職業観・勤労観の育成」についての現在の取組状況)


【学校教育課長】
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(説明の概要)
小・中・高における職業観・勤労観の育成について

1 各学校段階での指導内容

 小学校
  各教科等の指導に当たっては、…自らの将来について考えたりする機会を設ける
  社会科:「わたしたちのくらしとはたらく人々」、「産業から見た県の特色についての学習」等
  生活科:「町たんけん」、「かぞくのしごと」、「やさいをそだてよう」等
  家庭科:「楽しい食事」、「近隣の人々」等
  道徳:働くことの意義理解、生き方についての考察、自分さがし、勤労の尊さ、奉仕の喜び
  特別活動:学校行事における勤労生産・奉仕的行事
  総合的な学習の時間:自分の生き方の考察

 中学校
  生徒が現在及び将来の生き方を考え行動する態度や能力を育成することができるよう、学校
 の教育活動全体を通じ、ガイダンス機能の充実を図ること。
  技術・家庭科:コンピュータを利用した職業に関する情報の検索
  道徳:勤労の尊さや意義の理解、自分の特性や職業についての考察
  特別活動:勤労の尊さや生産の喜びの体得、望ましい勤労観・職業観、職業や生き方につい
       ての考察、ガイダンスの機能の充実、勤労生産・奉仕的活動
  総合的な学習の時間:自分の生き方の考察

 高等学校
  就業やボランティアにかかわる体験的な学習の指導を適切に行う勤労の尊さや創造すること
 の喜びを体得、望ましい勤労観、職業観の育成、社会奉仕等の精神の涵養
  公民科:人間としての生き方在り方についての自覚
  特別活動:学ぶことの意義の理解、望ましい職業観・勤労観の確立、ボランティア活動、ガイ
       ダンス機能の充実
  総合的な学習の時間:自分の在り方生き方の考察

2 事業

 (1)「いきいき・なら体験事業」「職場体験やボランティア活動をとおした豊かな心の育成」
  平成12〜14年、県内の全中学2年生を対象に実施。現在も大半の中学校で継続中。
  特別活動を中心に総合的な学習の時間などで実施、卒業生等招いた体験談・面接
 (2)職業意識啓発事業「職業意識の形成」(雇用労政課)
  平成13年度に行った高校卒業生の就職に関する意識調査において、多くの生徒が「在学中に
 職業訓練や職場体験学習をしたかった」と回答したことを受けて事業化。
 (3)インターンシップ(就業体験)「職業選択能力、勤労に対する見方考え方の育成」
  専門高校を中心に実施。平成14年度は、14校で実施し795人が参加。
 (4)中高生仕事ふれあい活動支援事業「職業に対する意識の高揚と職業への動機付け」
  平成15年度から実施。雇用・能力開発機構の委嘱事業。中学校9校、高校6校が、「私のしごと
 館」の活用やインターンシップなどの体験活動を実施

3 課題
 @子どもたちが夢や希望をもって、将来の生き方を考えることが難しくなってきている。
 A子どもたちの職業に対する意識や理解が、現実から遊離したものになってきている。
 B進路指導が、進学指導や卒業時の出口指導になりがちである。

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【会長】 統計資料等がありますので説明をお願いします。

【教育企画課長】 先ほど説明しました教育改革についての各学校の取組状況調査において、中学校、高等学校等に、職業観・勤労観の育成の観点から、企業、産業界への要望等を調査いたしました。「職場体験学習を拡大するため協力をいただきたい」(中学校)など多くの回答があります。
他に添付した資料は、「青少年の育成に関する有識者懇談会」(内閣官房長官の諮問機関)からの報告書(平成15年4月)に添付された資料です。
 この有識者懇談会の報告書では、例えば、これまで子どもたちは守られ、与えられ、導かれる受動的な存在というように大人は見てきたが、子どもたちをもっと自立させていく方向で考えるべきであるなど、青少年観の転換の必要性や教育施策と雇用施策との連携といった施策の総合化などが提案されています。そういうことも含め、懇談会で討議していただければと思います。

【会長】 それでは、職業観・勤労観の育成に関してご意見をお願いします。

【委員】 学校が企業や産業界に対しての要望としてあげているものの中に、「企業のあり方の改善」がありますが、これはどういう意味でしょうか。

【教育企画課長】 3年以内の離職率が50%というデータがありますが、企業に生徒が就職した後の育成の在り方、企業での教育の在り方についてもう一度考えていただきたいという要望がいくつかありました。
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(子ども参観日の取組や職場体験の拡大により、子どもの視野を広げよう。)


【委員】 奈良県キャリア教育プランに大いに期待したいと思います。
そこで、提案ですが、「奈良県教育週間」に子ども参観日を実施し、子どもが親の職場を見学するというのはどうでしょう。また、企業だけではなく、県や市町村の仕事をもっと子どもたちに見せるインターンシップをしてはどうかと思います。
 「いきいき・なら体験事業」ですが、富山県や兵庫県では5日間やって非常に効果が上がっていると聞いています。奈良県は3日間ですが、その辺も研究していただけたらと思います。
職場体験先については、ちょっと幅を広げて、外交、警察、消防などに子どもたちの目を向け、視野を広げることも大切です。
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(「いきいき・なら体験事業」はボランティアも含む幅広い活動)

【委員】 福祉関係の施設での体験だけを指して「ボランティア活動」と呼ぶことがあるようですが、これも同じように職場体験だと思います。私は、ガールスカウトでボランティア活動をしていますが、ボランティア活動は、心の問題、心の教育だと思っています。子どもたちには、まず、人を幸せにすることを考えていきましょう、そのために自分は何をするかというと、健康な体をつくることと、そして、すべての人を愛することができる心とスキルを身に付ける。そのことによって、自分の特性を見つけ、自分に合った職場体験先を選ぶことができると思います。
 老人介護に行けばボランティア活動というように受け取れますが、そのあたりはいかがでしょうか。

【学校教育課長】 ご指摘のとおりと思います。当然、ボランティア活動という場合、そこに臨む気持ちの問題が大切と考えています。この事業は、基本的に職場体験が中心になっていますが、企業・事業所だけでなく、もっと広範囲に、子どもたちに社会体験をさせ、活動内容に幅をもたせるいう意味でこのようなネーミングをし、職場体験・ボランティア活動を実施しております。
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(「いきいき・なら体験事業」のねらいが地域や保護者に理解されることが大切)

【委員】 私が経営する美容院で中学生の職業体験をお引き受けしたときのことです。子どもが、働いている大人たちを見て、「思っていたよりも真剣やな」というふうに思ってくれたことが大きな成果でした。ところが、保護者の方から「子どもを美容師にしようと思ってない」というクレームをいただきました。
心を育てるという意味で、「いきいき・なら体験事業」が行われていると思いますが、そのねらいが家庭や社会にうまく受け入れられていない。地域や親の意識についても考えていかなければならないと感じました。
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(社会で人知れず努力することや嫌なことでも続けることの大切さを子どもたちに教えよう。)

【委員】 高校を卒業して就職した人たちの離職率がこんなに高いとは思っていませんでした。やはり、忍耐力がだんだん薄れてきた結果だと思います。嫌なことでも続けていくことの大切さを教えるためには、家庭の教育が大事だと思います。お父さん、お母さんの働く姿を子どもに見せ、社会を支えている大人たちが、いかに真剣に努力しているか、その裏には、人には知られない努力や忍耐があることを子どもたちに直接示すことがとても大切だと思います。
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(職場体験学習では、事前・事後の十分な指導が必要)

【委員】 中学校では1年生から進路にかかわって生き方を考える進路指導をするのですが、3年生になると、どうしても進学指導が中心になる傾向があります。中学校長会では、特別活動等で職業観を育成するための進路指導資料をつくっていますが、各学校で進路指導計画をきちんと立てて、系統的に指導を行うことが大切だと思います。
 職場体験はたいへん成果を上げていますが、保護者の方からは様々なご意見をいただきます。職場体験でいい影響を受ける子どもが非常に多いのですが、わずか3日の体験で、「仕事ってこんなものか」ということにならないよう、事前事後の指導が大切だと思います。
学校では、様々な職業の人を招いて生徒に体験談を聞かせるなどの事前指導を行うのですが、私の学校では、卒業生を含めいろいろな職種の人を探し、生徒に話をしていただいています。「職場では、困ったことや嫌なことがいっぱいあるけど、しかし、そこは辛抱やで。そこでけんかするともうだめなんや。」「自分が前からしたかった仕事だから誇りをもって続けている。」など、彼ら自身の生の言葉で子どもたちの心に響く話をしてくれます。
 中学生と話をしていると、親の仕事を知らなかったり「会社員をしています。」「何か商売をしています。」くらいの理解しかありません。これは、親も仕事のことで子どもと話し合う時間をあまりもっていないからではないでしょうか。
 親とのつながりを大切にすることも考え、本校では2年生の冬休みに親と仕事について考える課題を与え、3学期に職業を知るための講座を設けています。消防署員、警察官など様々な職種の方に来ていただいて10講座ほど開設しています。
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(若い人には、生きるということの意味を問う気持ちをもってもらいたい。)

【委員】 私は、敗者復活ということを大切に考えていくべきではないかと考えています。人間には成功も失敗もありますが、失敗をして敗者復活がなければもう終わりなんですね。それなら、だれもが敗者になりたくないという気持ちになります。失敗から復活するという考え方が先ほどおっしゃっている忍耐強さに戻ってくるのではないかと思います。
 若い人には、生きるためには何をしなければならないのか、生きるということはどんな意味があるのかということを、もう一度、問いただそうという気持ちをもってもらいたいと思います。
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(職業観・勤労観の育成には、小・中・高等学校の12年間を通したカリキュラムが大切)

【委員】 小学校での職業観・勤労観の指導については、2つ問題があると思います。6年生に、将来何になりたいのか、どんな仕事につきたいのか、あるいはどんな夢をもってるのかを尋ねると、半数以上の子どもたちから夢をもっていないという答えが返ってきます。ここに大きな問題があるのではないかと思います。学んできたことと、夢をもてないということとのずれが、かなり大きいと感じました。
 もう1つは、小学校、中学校、高等学校の教育のつながりに、段差がありすぎるのではないでしょうか。各段階でそれぞれに応じた教育が行われていても、そのつなぎの部分があまりスムーズでないように思います。そういう点で、12年間を見通したカリキュラムを示していただいて、子どもたちを育てていくことが大事なことだと思います。子どもたちに、実現できるような夢をもたせ、それに向けて学校も家庭もサポートしていけるような体制が必要だと思います。
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(自分を律するものとしての職業観の育成も必要)

【委員】 企業が社員の採用に当たって求めることは、人とコミュニケーションできることが一番の条件です。その次に健康、その次は目標をもって挑戦すること、この3つが大切な条件といわれますが、全くそのとおりだと思います。
 また、諸外国の人々は、宗教によって自分を律するといわれますが、日本の場合、宗教に代わるものが仕事ではないかと思うことがあります。自分がしている仕事への誇りによって自分を律している人が多いのではないかと思います。
 そのように考えると、宗教観に匹敵するぐらいに日本の子どもに職業観をしっかりもたせなければならないと思います。
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(小学校や中学校から将来の職業に向けた進路指導が必要)


【委員】 中学校を出て働いている青年から「僕は、自分が何に向いてるか全然わからなかった。だから、多くのことを体験したくて、いろいろな職業を経験してきた。今、考えてみると、小学校・中学校の段階から進路指導をしてもらうことが必要だったと思う。」という意見を聞く機会がありました。今している勉強が、社会人になったときに、どんなところで生きていくのかなど、もう少しわかりやすく教えてほしかったということが、その青年の言いたかったことだったのだと思いました。

【会長】 大変貴重なご意見をありがとうございました。次回も引き続き、このテーマで討議をしたいと思います。
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