第17回奈良県教育懇談会討議の概要


       ◇日時 平成16年6月23日 14:00〜16:30
       ◇場所 共済会館やまと 

◇発言のポイント

・日本国憲法は「勤労の権利と義務」どのように規定しているか。
・かつての日本の資本主義発展の背景となった、職業倫理や社会基盤を取り戻し、21世紀に相応しい倫理観を築こう。 
・挫折しながらも苦労して成果を得た人から学び、職業観をはぐくもう。
・日本が活気をもつには、一人一人が目標設定を明確にし、自分で考え決定することが必要
・与えられた環境に感謝する気持ちをもち、周りの人のために働ける喜びを感じることが大切
・内面からの変革は難しいが、新しい仕組みを作っていくという発想が必要
・日本では個人が大事にされるが、自分が所属する集団や社会を大切にすることも必要
・小学校までに人間としての基本となるものを学んで自分のベースをつくれば、その後は自分で夢の実現への努力ができる。 
・子どもたちに、その道一筋の熟練者に出会わせ、働くこと、生きることを学ばせたい。
・小学校での道徳等での「勤労観・職業観の育成」の取組や、家庭との連携について
・中学生になっても小さいときの夢をもち続け、伸ばすことのできる環境づくりを。
・一生懸命に仕事をすることが成果を生むことを見せることが大事。特に身近なところにおられる方を子どもたちに紹介してもらいたい。
・多くの学校では、提起されている問題について取り組もうとする姿勢がある。その学校の校長先生をもっと支える議論も必要
・過激なゲーム等が子どもに与える影響について、大人が認識しなければならない。
・地域の人材を学校教育に導入する際に、低学年から高学年、小学校から中学校への接続を円滑にするカリキュラムの工夫が必要 
・人と人とのつながりや帰属意識は小さいころから刷り込まれるものであり、「家」の在り方についても議論されるべきである。
・日本の歴史や社会をどう教えるか。
・高校での、子どもの問題と親の問題等
・中学校での職業体験学習では、子どもは価値ある体験を積んでいる。
・これからの企業はコミュニケーション能力を求める。
・子ども会活動には、親の協力をお願いしたい。
・放課後等に学校を地域に開放する取組を進めてもらいたい。

◇議事概要                       トップに戻る

◇教育長挨拶
【教育長】  平成12年8月に設置しました奈良県教育懇談会も、ほぼ4年を経過し、本日で第17回を数えることになりました。その間、委員の皆様には、本県教育の充実と発展のために、熱心な議論をいただき、また貴重な提言をいただきました。あらためてお礼申し上げます。
 そうした提言を踏まえながら、県教育委員会では、奈良県らしい教育改革の推進に向けて、着実な歩みを進めているところです。
 本年度に入り、4月下旬に県立高校入学者選抜制度の改革方針を発表いたしました。入学者選抜方法の改善に関しては、本懇談会から、高校の特色づくりに向けて、内申点や学力検査の得点配分の弾力化、生徒の目的意識を評価する、高校ごとの独自の選抜方法の導入などの提言をいただいておりました。
県教育委員会では、別に検討委員会を設置し、その報告を受けた上で、改革方針として、生徒が自らの目標や適性、興味・関心に基づいて進路選択ができる「特色選抜」の導入を柱とした入試改革の方向を示しました。
 そこでは、生徒の意欲や特技を評価する「作文・小論文」「面接」「実技検査」など多様な検査を実施すること、また学校独自作問の導入や調査書点と検査点の配分の取扱いを弾力化することなど、各高等学校がその特色を生かした選抜ができるよう、柔軟な入試制度を目指したところです。
 これは、県立高校の再編がスタートし、各高校が特色化、魅力化、活力化に向けて取り組んでいることに対応するものであり、同時に「とりあえず進学」という意識や出口指導に偏りがちであった進路指導から、子どもたちが、自らの適性や将来の生き方を考えた上で、学校選択ができるような進路指導に変えていこうとするものであります。
現在、本懇談会で「勤労観・職業観の育成」をテーマに、子どもたちが自ら将来のことや生き方について十分に考え、目標をもって進路を切り開いていく力を身に付けることの重要性等について議論いただいているところですが、高等学校入学者選抜制度の改革と合わせて、県立高校再編計画の着実な推進、勤労観、職業観の育成を目指したキャリア教育の推進に取り組むことで、子どもたちが自分の目標を持ちながら学び、将来、自立した社会人として育つ教育を進めてまいりたいと考えております。
 ところで、先日、長崎県佐世保市で起きた小学校6年生の死亡事件は、我々にとって大きな衝撃でした。小学生が小学生を殺害したこと自体が大きな衝撃ですが、ほぼ1年前に起きた、中学1年の少年が4歳の子どもを誘拐し、殺害した事件を思い起こし、これまでの大人の常識では考えられない子どもの行動に呆然とする思いです。昨日も、東京で中学2年生の女生徒が5歳の男の子をマンションの5階から突き落としたという事件が報じられています。こうした事件を未然に防止するために、教育に何ができるのかということを真剣に考えなければならない時代になったと感じております。
 インターネットの利用やカッターナイフの所持などについての議論もありますが、問題の本質はもっと深いところにあるのではないかと考えています。事件の背景や対応について、学校だけではなく、家庭、地域社会を含め、大人が知恵を出し、力を合わせて考えていかなければならない問題と受け止めています。
 かつて、私たちは、人との付き合い方やコミュニケーションの方法を集団の遊びや周囲の大人との関係の中で学んできました。また、先祖を大切にすることや家族のありがたさを知らぬ間に両親から教えられてきました。時には、けんかもし、反発をしながらも、多くの人に支えられて生きているという実感や周囲の人に感謝するという気持ちを育ててきたように思います。
 しかし、今は、そうした子どもたちを囲む社会が崩れ、日常生活の中で、体験を通した人間関係が希薄になり、一方で様々な情報やバーチャルな世界が氾濫し、子どもたちの価値観が形成されにくい時代になっていることを感じます。
人間の脳の情報処理システムは体験を通して作られるといいます。私たち大人世代の体験と今の子どもたちの体験がかなり異なっている、そのことが子ども理解を難しくしているのではないか。世代間の違いはいつの時代もあったわけですが、人間の基本的な部分での体験の違いが、現在の子どもをめぐっての問題につながっているのではないか、そうした視点を大切にしながら、今の社会や大人の在り方を見直す必要があると考えています。
 また、社会的な背景、文化的な背景に加えて、脳科学者からは、「パソコンやTVゲームに長時間興じると、創造力や理性などの人間らしさに関係する脳の前頭前野(ぜんとうぜんや)と呼ばれる部分の機能が低下し、いわゆる『きれやすい子』になる」という説も出されています。文部科学省では、TVの視聴時間などのライフスタイルと脳の働きとの関係などを調べる「脳科学と教育」プロジェクトを始めたということですが、そうしたデータの収集、科学的な分析も必要だろうと思います。
 いずれにせよ、今、私たち大人が子どもたちの姿を直視し、改めるべきところは改める、やるべきことはやるという共通認識、あるいは危機感を持つことが必要です。そうした意味で、本懇談会で「教育とは何か」という本質論について議論いただき、様々な御意見をいただくことは大変重要なことと考えております。
 年度が変わり、5名の方々に新しく委員を委嘱させていただきましたが、今後とも、それぞれの専門のお立場からのご意見、御協力をいただくことをお願い申し上げて、ご挨拶とさせていただきます。


◇議事概要                         トップに戻る
【会長】 前回の懇談会(第16回)では、県民に向けたアピール「望ましい勤労観・職業観の育成に向けて〜子どもを自立した社会人に育てよう〜(案)」に修正・追加など事務局で検討・整理したうえで発表する予定をしていました。しかし、「勤労観・職業観の育成」は教育の本質にかかわる大きな問題であり、引き続き議論を深めていただくことが適当であると考えました。
 そこで、5月6日に専門調査部会を開催し、3名の委員の先生にお願いして、法、倫理、経済の面から「勤労の権利と義務」について御意見をいただきました。そのまとめを事前送付資料として各委員にお送りしていました。そこで、最初に3名の方から補足説明等をお願いし、引き続きフリートーキングを行いたいと思います。
 
<補足説明>                        トップに戻る

(日本国憲法は「勤労の権利と義務」どのように規定しているか。)

【委員】 日本国憲法には「勤労の権利と義務」という規定が置かれています。背景となる経済体制により「勤労の権利と義務」の捉え方は違ってきますが、旧ソビエト連邦では勤労は強制的な義務に近いものであり、また、名誉でもあるとされていました。 
 日本国憲法での「勤労の権利と義務」の解釈ですが、一つには、不労所得による生活者に対して、我々が法的にできることは、せいぜい道徳的な避難を加えることくらいであり、社会に迷惑をかけていないのであればそれでいいという捉え方です。しかし、今一つ、憲法の規定は、一方で資本主義経済を認めながらも、他方で「勤労の義務」として法的に意味ある規定として捉えるべきだという考え方があります。
 ところで、資本主義の発展には、人、モノ、金だけでなく、その推進力となる魂が必要であったと思います。その魂が、西洋では、キリスト教理念として利潤追求は卑しいことではなく、勤労の美徳として正当化されるという、いわゆるプロテスタンティズムであり、それが大きな後押しとなったわけです。
 日本の場合、そういった思想的な背景はありませんでした。主に下級武士が、国を支える意欲や職業意識をもって資本主義を進めてきたのですが、彼らも、西洋のカルヴィニズム、プロテスタンティズムに対応するものをもっていたのではないかと思います。そういったものが戦後の日本国憲法第27条の「勤労の権利と義務」の規定につながっていると読みとりたいと思います。
 先ほど申し上げましたが、不労所得生活も法的には前提とされてはいますが、憲法の精神からすると、生活するために勤労する必要がない人も、勤労に従事し、それによって得られる所得を社会国家的施策のために提供するという心構えが要請されるわけです。
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(戦後に否定してきた、かつての日本の資本主義発展の背景となった、職業倫理や社会基盤を取り戻し、21世紀に相応しい倫理観を築こう。)

【委員】 経済の発展に必要なものは資本の蓄積なのですが、資本論やアダム・スミスだけでは何となく釈然としない部分があります。やはり、マックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」に著されているように、社会倫理があったから資本主義が発達してきたのだと思います。
 日本は、ヨーロッパ、アメリカ以外で唯一の資本主義化、近代化に早く成功した国ですが、日本には、陽明学や石門心学など、職業倫理を広く教えるという社会的な基盤があったことが、その大きな背景であったと思います。
 ところが、戦後の体制の中で、そういったものを強く否定するような意識をつくってしまったところに大きな問題があると思います。今後、それを取り戻し、21世紀に相応しい倫理観をどうしたら築けるかを考えていかなくてはなりません。 
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(挫折しながらも苦労して成果を得た人から学び、職業観をはぐくもう。)

【委員】 私は、学生がどんな人を尊敬しているのだろうかと思い、聞いてみたところ、6割の学生が「尊敬する人はいない。」と答えました。そして、15%ほどが「父親」と答えています。先生を尊敬できる学生は幸せです。父親は一緒に暮らしていて、よくない面も見えるだろうし、父親を尊敬するのはどうなんだろうかと不思議に思ったのですが、結局、彼らの視野が狭くて目の届くところしか見ていないのかもしれません。彼らが個人として人を見て、すごい人だなと感激する経験があって初めて職業観が形成されるのではないかと思います。
 苦労を重ね、挫折しながらも成果を得た人、例えば、野口英世や本田宗一郎、松下幸之助など、絶望からはい上がって立派な人間になれることを現実に学ばなければならないと思います。
 自分の将来・未来への創造力が健全な勤労観・職業観をはぐくむことになるのではないでしょうか。

<フリートーキング>
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(日本が活気をもつには、一人一人が目標設定を明確にし、自分で考え決定することが必要)
 
【委員】 今月、中国へ行きましたが、中国の人々は物事に燃えていて、日本にはない活気を感じました。日本がそのような活気を取り戻すためには、一人一人が目標設定をはっきりさせることが大切であり、その目標設定は、自分で考え、決定することが必要です。

(与えられた環境に感謝する気持ちをもち、周りの人のために働ける喜びを感じることが大切)

【委員】 私も先月中国へ行って認識が新たになったことが2点あります。
一つは、日本は恵まれすぎて大切なものが見えなくなっているということです。具体的にいいますと、働くところがあるのに喜びや感謝の気持ちが足りない。
 もう一つは、ものの有り難さを感じる心、謙虚さがないのではないでしょうか。中国の女性は、意見をはっきりと言いますがとても謙虚です。
 先日、78年間続いたあやめ池遊園地が閉園しました。子どもたちは、遊園地がなくなることは不満でしょうが、同時に、自分たちで新たに遊びを考え出そうという考え方や、遊園地への今までの感謝の気持ちをもたなければならないと思います。偶然や何かの縁で与えられている環境に感謝するという人間が本来もっている感覚が陰りかけてきたのではないでしょうか。
 人は、何のために働くのか、お母さんが働いている間に自分は何ができるのかなど、周りの人たちのために働くことの喜びが消えつつあります。あやめ池遊園地の閉園のときに、私たち母親の間で、もう一度根底から子どもを育てる体制をつくって、みんなでつながろうということを提案しているところです。
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(内面からの変革は難しいが、新しい仕組みを作っていくという発想が必要)

【委員】 昨今、子育てについては、精神面から崩れてきたのではないかと感じています。子どもは小さいころには、愛情をもって育て、自立する時期になれば外に放り出す。そうして子どもが、友だち関係や周りの人との人間関係をつくっていきます。これは理屈ではなく、自然に学んでいくものだと思います。
 日本は、今まで、大陸からの影響によって変わってきました。また、外圧によって変えられてきたともいえます。ですから、何らかのモチベーションがなければ内面から変わっていくことは難しいのではないでしょうか。古くなった仕組みでもちこたえるよりも、特区など、新しい仕組みを作るという発想が必要だと思います。

(日本では個人が大事にされるが、自分が所属する集団や社会を大切にすることも必要)

【委員】 誰のために働くのか、誰のために勉強するのか、誰のために生きているのかを分かっていることが大切であり、かつては、みんなが心のよりどころをもっていたのではないかと思います。
 諸外国を見ると国力を伸ばすため、また、減退させないために教育や様々なことを一生懸命している。ところが日本では個人を尊重することが大事なんですね。今の子どもたちに一番必要なものは、帰属意識を確立することだと思います。自分が所属する集団や社会を大切にすることがもっと必要なのではないでしょうか。

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(小学校までに人間としての基本となるものを学んで自分のベースをつくれば、その後は自分で夢の実現への努力ができる。)

【委員】 テレビで104歳の禅僧の宮崎さんという方が紹介されていました。この方は、やんちゃ盛りの11歳のとき、預けられている先の和尚さんが毎日座禅をしている姿を見て自分もまねをしてみようと思ったということです。そして今も座禅を続けておられます。
 小学校くらいまでは、人間としての基本となるものを学ぶことでベースをつくっておくことです。そうすれば、その後、自分で夢をもち、その実現のためにどうするのかを自分で考えていくのではないかと思います。

(子どもたちに、その道一筋の熟練者に出会わせ、働くこと、生きることを学ばせたい。)

【委員】 若いときに、熟練者に出会うことは大切なことだと思います。かつてはその道一筋の人がたくさんいました。鍛冶屋や竹屋などが小学校の帰り道にあり、私はそれを見て手仕事やものづくりの魅力を感じたものです。子ども心に、作ることは、仕事であり、生きることなんだなと感じました。
 今は、そのような人が少なくなって、子どもたちが生活の中で出会う機会があまりありません。学校の授業の中でそのような一筋の人の魅力と出会わせることが必要だと思います。

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(小学校での道徳等での「勤労観・職業観の育成」の取組や、家庭との連携について)

【委員】 小学校での子どもたちの活動は、委員会活動、学級活動など、学級のため、みんなのために「働くこと」の連続であろうかと思います。
 勤労観・職業観の育成についてはすべての教科・領域で扱っているのですが、例えば、道徳教育においては、「神戸の震災の中でボランティア活動にかかわった子どもが、一人暮らしのおばあさんに感謝されたことにより、自分も感激したという体験」、「6年生の子どもが保育のボランティアに行って園児に喜んでもらえてうれしかったこと」など、子どもの心に響く教材を用いて進めています。また、子どもが自分を振り返り、成長に生かす、また、学校と家庭が連携して子どもの心をはぐくむために文部科学省が作成した「心のノート」には、働くことを、自分のためだけでなく社会の役に立とうという気持ちを高めることをねらいとした教材もあります。
 以前は、2年生、3年生になったら、消防署等の仕事を見学に行くといった扱いでしたが、今は、「生活科」や「総合」の時間に地域の名人さんを招いたり訪ねたりする授業が、かなり行われるようになりました。
 このような学校の取組は、家庭での子育てとの連携をとって行うことが大切であり、学校の指導と家庭での考え方が一致して初めて効果が出ると思っています。そのような話を「つぶす子育て、伸ばす子育て」というテーマで、担任の教員が親に話をする場を設定し、繰り返し話をしてもらっています
 両手に荷物を持ってドアの前に立っていると、ドアを開けてくれる子どもがいます。これは、その子どもが家庭でのお手伝いなどで体験したことによってできるのだろうと思います。親は自分の姿を見せながら、子どもに小さいときから何でもやらせることが必要だと家庭に発信しているところです。

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(中学生になっても小さいときの夢をもち続け、伸ばすことのできる環境づくりを)

【委員】 子どもは、小学生くらいまでは大きな夢をもちますが、中学生くらいになると自分の夢をもち続けて伸ばしていくことができにくくなることに問題があると思います。
 今は、学級40人という人数ですが、デンマークのようにもっと少ない人数の中で先生と夢を話し合えるような状況をつくることがが望ましいと思います。

(一生懸命に仕事をすることが成果を生むことを見せることが大事。特に身近なところにおられる方を子どもたちに紹介してもらいたい。)

【委員】 最近の子どもたち、若者の間では、楽をしてお金が儲かるのが一番といった風潮があります。バブル期の悪い側面が今の青年の考え方に反映していると思います。賃金や効率のよさではなく、ものづくりでも福祉でも一生懸命仕事をしている人、コツコツとする努力が成果となることを見せることが必要だと思います。子どもに見せたいテレビ番組の一つに「プロジェクトX」が挙げられています。それはもちろんいいのですが、そこに出てくる遠いモデルよりも、もっと近いところにあるモデルを見せる取組ができたらいいと思います。宮大工の故西岡常一さんも奈良県の方でしたが、奈良には、他にもすばらしい人がたくさんいらっしゃるはずですので、子どもたちに紹介してもらえたらいいと思います。
 
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(多くの学校では、提起されている問題について取り組もうとする姿勢があり、校長先生をもっと支える議論も必要)

【委員】 小学校のお話にもありましたが、出前授業に行くと、各学校で、今、求められていることを進めていこうする姿勢が見られます。これがずっと続くと学校はかなり変わっていくのではないかと思っています。偉人伝や伝記を読む活動も高まってきています。学校は、提起された問題について応えようとしていると思います。
 しかし、校長先生と一般の先生との意識のギャップが大きく、校長先生をサポートするための議論も必要ではないかと思います。

(過激なゲーム等が子どもに与える影響について、大人が認識しなければならない。)
また、子どもの世界ではPCゲームが盛んに行われていますが、今、いろいろ起きている問題の原因にゲームがあるのではないかと感じています。過激で怖いゲームソフトが多く、その影響はどうなのでしょうか。これらのゲームの過激性については、大人が認識し、今後考えていかなければならない問題であると思います。

(地域の人材を学校教育に導入する際に、低学年から高学年、小学校から中学校への接続を円滑にするカリキュラムの工夫が必要)
 
【委員】 学校が地域の名人などを導入して、人やその価値に学ぶことは、かなり進んできてうれしく思っています。学校の教育に外部の力を積極的に導入することはいいことだと思います。
課題は、学年を通したカリキュラムを整えることであり、低学年から中学年、高学年へ、小学校から中学校へ移るときの接続を円滑にすることが大切だと思います。

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(人と人とのつながりや帰属意識は小さいころから刷り込まれるものであり、「家」の在り方につ いても議論されるべきである。)

【委員】 戦後の復興の時代をリードした戦前育ちの人たちに続いて、新憲法の下で育った私たちは、まだ戦前の残り香があります。でも、今の若者の世代になると、徹底した民主主義、自由主義を教えられ、個人主義の中で育っています。家族や身近な人とのつながりは以前と比べてどうなのでしょうか。人と人とのつながりや帰属意識というものは、小さなころから、肌が触れ合うレベルからの刷り込みのような形で育てていかなければならないものだと思います。
 「修身斉家治国平天下」 といわれますが、教育も家庭から始めることを大事にし、家というものの在り方について議論することも意味があることだと思います。

(日本の歴史や社会をどう教えるか。)

【委員】 日本の歴史や社会、日本人とは何かということの教え方については、昭和30年代から変わって来たように思います。中国や韓国が教えてきた日本の歴史がどう影響してきたか、自分の国の歴史をどのように教えるのがいいのか、私たちが判断しなければなりません。現在使用されている日本の歴史の教科書を実際に読んでみて議論したいと思います。

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(高校での、子どもの問題と親の問題等)

【委員】 ものの置き場にもうるさかった父親に、ものを大切にすることなどを、厳しく教えられましたが、小さいころから教わったことは、よく身に付くもので大切なことだと思います。
 今の高校の現状をいいますと、周囲からは「今の若者は・・」といろいろ言われますが、いい子どもたちはたくさんいます。むしろ、何かあったとき、それは親の問題であることもよくあります。たとえば、学校に対して「学校の規則が厳しすぎる」といってくる保護者の方がいらっしゃいますが、社会人に育てるという視点からも、親は子どもへの接し方について考えなければならないところがあります。 
 学校で職場体験学習として、授産施設との交流をしています。施設での作業を教えてもらいながら子どもは素直な面を発揮しますし、生徒の障害者への理解が深まり大きな成果を得ています。

(中学校での職業体験学習では、子どもは価値ある体験を積んでいる。)

【委員】 子どもたちの姿がよく見えていないことが、教員、親ともにあると感じています。学校の職員には子どもに接すること、子どもを知ることの大切さを繰り返し言っています。
 私の中学校では、勤労観・職業観の育成の取組として、「総合」の時間に二百数十名の2年生が職場体験学習を行っています。期間は2日から3日間、長いところで4日間、職場の数は100カ所を超えます。学校が行き先を探すのではなく、各自が自分の行くところを探して自分でお願いに行くことにしています。長期欠席の生徒もいますが、その子たちも含め、全員が参加できています。また、普段、学校での掃除がきちんとできない子が職場実習ではトイレ掃除もしっかりしてくるなど、価値ある体験を積んでいると思います。

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(これからの企業はコミュニケーション能力を求める。)

【委員】 今は、サービス、情報の時代だといわれています。これから、企業は、コミュニケーションを大切にしなければなりません。スタンドアローンではなく、一人一人がシステムに興味を持つことが大事です。人と人とのコミュニケーション、スキンシップが大切だと思います。


【会長】 それでは、奈良県教育懇談会からのアピール「望ましい勤労観・職業観の育成に向けて〜子どもたちを自立した社会人に育てよう〜」について前回に頂いた御意見をもとに追加・修正等をおこないました。それに加えて意見がありましたらお願いします。

(子ども会活動には、親の協力をお願いしたい。)

【委員】 子供会活動については、子どもが参加したくても親が忙しくて協力的でないということがあります。私たち子ども会としては、保護者の方ともしっかり話をすることに重点を置いて活動したいと思っています。

(放課後等に学校を地域に開放する取組を進めるといいと思います。)

【委員】 放課後等に公立の学校を地域に開放し、PTAや地域のお年寄りの方など様々な人と子どもたちの活動が定着しているところがあります。そのようなことも一緒に進めてもらえるとよいと思います。

【会長】 奈良県教育懇談会からのアピールの修正等については、会長にお任せいただきたいと思います。この後、事務局とともに検討して、学校教育関係者、家庭、企業・職場等に向けて「アピール」としていきたいと思います。

【事務局】 ありがとうございました。
 これまでは、教育懇談会からの提言は県教育長に対して提出いただいていましたが、今、ご了解いただきました原案につきましては、懇談会からアピール文として広く県民の皆様に対して発表していただくということでお願いしています。【学校教育関係者】については、各学校(園)、市町村教育委員会、その他の教育機関へ、【家庭の皆さん】については、PTA団体等を通して、【企業・職場の皆さん】については、経済団体等を通してお願いをしていきたいと考えています。その他、県の「県政だより奈良」等にも掲載し、多くの県民の方々にこの問題について考えていただきたいと思います。
 懇談会提言に基づく教育改革の取組状況については、県教育委員会の教育改革事業の報告や市町村や学校の取組状況アンケート調査結果の報告等をしてきました。本年度は、委員の方々に、実際に学校の教育活動を見ていただいたり、保護者(児童生徒)や教員との意見交換をしたりできる場を持っていただき、これまでの教育改革のための提言が現場でどのように生かされているか、また、何ができていないかなどについて検証、議論をいただき、今後の教育改革に向けて助言等をいただけたらと考えています。

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