第21回 奈良県教育懇談会討議の概要


     ◇日時 平成17年12月12日(月) 9:30〜12:00
     ◇場所 共済会館やまと (奈良市鍋屋町15) 
       
     ◇討議のテーマ
     新たな提言「子どもの社会性の育成に向けて」案の検討


◇発言のポイント


 ○新たな提言(案)の検討(主に、「社会性が身についた子どもの姿」について)

  (事務局からの説明)

  (提案についての討議)

  ・提言に保護者や地域社会へのアピール的内容を盛り込むべき

  ・子どもたちの社会性の育成には、保護者、地域社会等の協力が必要

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◇議事概要           

【会長】
 第18回から前回の20回までの懇談会では「規範意識の向上と社会性の育成について」というテーマで討議を行った。
 前回の第20回では、戦後教育の現状と反省、規範意識と社会性について整理し、「社会性」を規範意識を含む“社会の形成者として必要な資質能力”として討議を進めた。今回は、それを受けテーマを「子どもの社会性の育成に向けて」としている。
 本日は事務局から、これまでの意見を整理した「新たな提言」の原案が提示されたので、この内容について検討したい。

 
(事務局からの説明)          トップに戻る

【教育企画課長】
 <提言案の1枚目の説明>
 この文案は、前文は4つの段落構成とした。
 第1段落では、現在の子どもの状況を、社会性に関わる視点から示させていただき、テーマである「子どもの社会性の育成に向けて」が必要な背景を示した。
続いて、第2段落では、現在のような状況が、なぜ生じたのかということについて、社会の風潮、学校や教員の置かれた状況等を中心としてまとめた。また、大人が自信を持って子どもたちに規範や価値を語れなくなってきているのではないかという課題を提示した。
 第3段落では、第2段落を受け、戦後の日本の教育の在り方の反省とともに、教育は子どもたちに教科等の知識、技能を修得させるだけでなく、国家・社会の形成者を育成する責務をになっていること、それゆえに、子どもたちに、権利を教えるとともに、権利は相互尊重のうえに成り立つものであり、権利と義務、自由と責任は、表裏の関係にあることを教える必要があることを示した。
 第4段落では、以上の内容を踏まえて、子どもの社会性を育成するに当たってのポイントを、
 @子どもの発達段階に応じた達成課題を設定し指導すること
 A言葉だけでなく、多様な体験によって義務や責任等を学ばせる環境をつくること
 と示した。

<2枚目の説明>
次に、教育懇談会が考える、社会性を身につけた子どもの姿を例示した。
これは、ひとくちに「社会性を身につけた子ども」と言っても、具体的なイメージがないと、実際に指導目標や計画を設定することが難しいと考え、あえて示したもの。
 ここにあるような子どもの姿が、社会性を身につけた子どもの姿を十分に示しているかということについては、検討いただきたい。

参考資料(会議資料の一部)
 ○社会性が身についた子どもの姿
  ・礼儀正しく、節度のある子ども
  ・思いやりと感謝の気持ちを示せる子ども
  ・規則を尊重し、他人や社会のために行動できる子ども
  ・自他の生命を大切にする子ども
  ・責任感のある子ども
  ・正と不正を判断し、正しいことを行える子ども
  ・友だちと協力し合って物事をやりとげることができる子ども
  ・自国及び他国の歴史・文化を尊重できる子ども
   ※現行の、中学校生徒指導要録の行動の記録の評価項目及びその趣旨等を参考として作成

 以上を前文として、次の欄に、県教育委員会、学校、市町村教育委員会への具体的な提言(案)を示した。
                      
 
(提案についての討議)      トップに戻る

【会長】
 討議に先立って、平成14年の県民5,000人アンケート調査の「求める人間像」についての結果を示す。礼儀正しい22.8%、思いやり65.3%、責任感のある人48.5%、他の人の役に立つ人8.8%等の数値が出ている。
 では、「社会性が身についた子どもの姿」の内容や、重要度と並び方の順序等についての意見をお願いする。

【委員】
 「社会性が身についた子どもの姿」を考えるとき、現在の世相等から考えると、自他の生命を大切にすること、正と不正を判断し、正しいことを行えることが重要である。また、自国及び他国の歴史・文化の尊重に、“慣習”も加えてもよいのではないか。

【委員】
 「社会性が身についた子どもの姿」という表現に違和感を感じる。社会性を身につけた=大人、というイメージがある。

【委員】
 子ども=社会性がないと考えるのは変ではないか。子どもの段階で社会性がなくてよいとは考えられない。子どもにも、それぞれの年齢や発達段階に応じて身につけるべき社会性はあると考えるのでこの表現でよいと思う。

【委員】
 「社会性が身についた子どもの姿」というより「社会性を身につけた子どもの姿」としてはどうか。

【会長】
 事務局で文言について検討をお願いする。

【委員】
 思いやりや感謝を示せる子どもを育てることは、人権意識とも関わる。生命尊重の次ぐらいに置いてはどうか。

【委員】
 小学生では、生死の直接的なイメージを十分に持てていない。したがって、小学校現場では、集団生活の中での思いやり、協調性を中心として教育を展開している。小学生のもっている自由のイメージは、「何をしてもよい」が大半。責任については全くと言っていいほど意識できていないのが現状。

【委員】
 中学校では、規範意識やルールを守ることが指導の中心になっている。

【委員】
 高等学校では、進学を念頭に置いた教科指導が中心。あいさつや言葉遣いについては、もっと指導をする必要があると感じている。これから、社会に出る生徒ほど必要と考える。

【委員】
 戦後教育は、教科等の内容の充実ばかりに力を入れてきたのではないか。家庭でも学校でも、子ども自身に学ぶ意味を問いかける姿勢で向かい合い、子どもが自ら考え判断する力を養うべきである。

【委員】
 第2段落の学校の状況や課題についての部分の表現が厳しすぎないか。また、「社会性が身についた子どもの姿」で、自国及び他国の歴史・文化を尊重することは重要だが、その前に、郷土や地域の文化や歴史、慣習についても、理解し尊重する姿勢を養うべきである。
 “思いやりと感謝の気持ちを示せる子ども”という表現についてだが、“示せる”だけでいいのか。心の伴わない形だけのものになってしまわないか危惧する。“大切にできる”等の表現ではどうか。

【事務局】
 郷土学習については、現在、学校教育の中でかなり具体的に行われるようになってきていると認識しており、あえてここでは表現しなかった。“示せる”については、子どもたちにはすでに思いやりや感謝の気持ちがあるとして、それを次の段階の“行動へ移そう”という意味を込めて具体的な表現にした。また、案の「社会性が身についた子どもの姿」の並べ方は、具体的なものから抽象的なものへという順である。家庭教育への啓発については、教育委員会だけでなく、奈良県家庭教育啓発推進実行委員会等の組織でも広く取組まれており、今回の案ではあえて触れなかった。

<提言に保護者や地域社会へのアピール的な内容を盛り込むべき>
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【委員】
 家庭や地域社会へのアピール的な文言はあってもよいのではないか。
 第3段落の表現で、“教えなければならない”とあるが、子どもに“自覚をさせる”というような表現ではどうか。  

【事務局】
 家庭教育についてのアピールは、平成16年度の教育懇談会からのアピール「望ましい勤労観・職業観の育成に向けて〜子どもを自立した社会人に育てよう〜」と内容的に重複しないか。また、これから作成する社会性育成プランは、現場の状況と合致させたものにする必要を感じている。

【委員】
 現在の日本の社会状況は、あまりにもアメリカ的になってきていないか。何でもそれでよいのか、踏みとどまって考えなければならない。ヨーロッパ的なしつけの文化についても見習うべきだと考える。日本人としての思考の拠り所を、歴史・文化・慣習の中から考える必要がある。

【委員】
 外国との比較をもとに考えて、これからを生きる子どもたちには、ソーシャルスキル、特に高いコミュニケーション能力が必要である。

【委員】
 個人的には、イギリス風の教育を評価しても良いと感じている。

【会長】
 前文の第2、第3段落の表現については事務局で工夫をお願いする。
他の部分について、意見はないか。

【委員】
 県教育委員会への提言の3つめに、TVゲーム(ビデオゲーム)の問題も入れられないか。長時間ゲームを行うことによる脳の発達や社会性への弊害についての報告も増えてきている。

【委員】
 提言案は、前文の戦後の経済的な豊かさと価値観の多様化という部分に焦点をあてたものになっていて明確だと思う。「社会性が身についた子どもの姿」も奈良県教育懇談会が考える姿として示したい。この、子どもの姿の例は、本当は大人への課題を示しているとも考えられる。また、法規範、金銭、消費等については、社会背景を考えて適切な指導が必要であるが、法では正義か否かまでは判定できない状況があるのも事実だ。知識や技術ではなく理念が伝わるようなプランが必要。

<子どもたちの社会性の育成には、保護者、地域社会等の協力が必要>
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【委員】
 最近は、何でも自分をまず第1にする風潮がある。社会の皆さんのお陰で、自分が生きているということを認識すべきで、世の中の役に立つ人間になることの大切さを教えたい。

【委員】
 学校現場で社会性育成のためのプランを実施することを考えた場合、時間や教員の人数等の条件面で限界がある。

【委員】
 学校がすべて抱え込むのには無理がある。したがって、地域、家庭、学校が連携して取り組むべきである。この連携を広げようというのが今回の提言の趣旨。学校や先生方に全ての荷物を背負わせようという趣旨ではないし、それは無理だと考える。

【委員】
 案は、施策に関わるものをということで教育委員会、学校への提言として示されているが、社会全体で子どもの社会性を育成すべきという姿勢を示すためには、家庭や地域社会への提言をいれるべき。昨年のアピールでも出したが、何度でも働きかけるべき。

【委員】
 学校、家庭、地域社会の連携を、どう具体的にやるのかが問題。市町村教育委員会側へだけでなく、学校や地域社会の側へも、市町村教育委員会ともっと連携を密にするようにという提言があれば良いと思う。

【委員】
 保護者や地域の中には、市町村教育委員会や学校が保護者に何をして欲しいのかをもっと発信して欲しいという声がある。それらを踏まえて、市町村教育委員会や学校は、主体的にもっと行動を起こすべきである。

【会長】
 今日いただいた意見をもとに、提言をまとめたい。詳細は会長にお任せいただきたい。


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