「奈良県民教育フォーラム」の今年のテーマ「生きるということ」と偶然にも同じ題で書かれた作文。それは昨年8月、突然、呼吸困難となる発作に襲われた中川隆弘さんが県立奈良高等学校の3分間スピーチ用に綴ったものでした。病魔と懸命に戦いながらも本年7月に亡くなった隆弘さんの作文を紹介します。
 

           生きるということ       
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          県立奈良高等学校 平成18年3月卒業生 中川 隆弘

 先日、24時間テレビがありました。皆さんは見られましたか。僕は見まし
た。そして、すごく感動しました。24時間テレビを見られた方も、見られな
かった方も、両方の方にお聞きします。「生きる」ということは何だと思い
ますか。

 僕がこのことを考えたのは、24時間テレビの少し前のことでした。夏休み
の終わりに僕は病気にかかりました。病名は分からないし、たぶん別に大し
た病気ではないと思います。その病気というのは、明け方頃に突然呼吸がで
きなくなるというものです。そうして息をしようとしているうちに、だんだ
ん意識がなくなってしまうのです。僕は何を考えたのか、親にそのことを黙
っていました。すると、案の定、次の日もなりました。
 2日目の初日と違うところは、意識がとんだ後、親が倒れていることに気
付き救急車やレスキュー隊を呼んだところです。僕は全く意識がなく、全く
覚えていないのです。落ち着いて考えると「よく生きてるなぁ」と、つくづ
く思います。それと同時に、気を失った僕を見ても焦らず、適切な行動をし
てくれた親に言葉では言い表せないほど感謝しました。なぜなら、親がいな
ければ僕はこの場にいなかったかもしれなかったからです。

 話は戻りますが、「生きる」ということを僕自身まだ分かりません。一つ
言えることは、「生きる」ことは「死なない」ことだということだけです。
2日にわたる発作の間、僕が思ったことは、「死ねない」−ただそれだけで
した。僕は自分がどんな病気でこれからどうなるか分かりません。でも、健
康ならもちろん、たとえ悪い病気でも、命ある限り「生きたい」−そう思い
ます。そして、「生きること」の答えをいつか見つけたいと思います。皆さ
んも皆さんなりの答えを見つけてください。

 最後に、これだけは覚えておいてください。皆さんの周りには親がいる、
兄弟・姉妹がいる、友達がいるんです。僕は今回のことで自分を支えてくれ
ている人の大切さを知りました。だから、周りの人を大切にしてください。
そして、ご自分の命を大切にして「生きて」いってください。