Ⅲ.古事記に登場するアイテムたち

第三章では、『古事記』にでてくるモノにスポットをあて、物語と関連がある考古資料などを集め、展示します。

竪櫛 [大阪府巨摩遺跡]
展示期間:10/18〜12/14

櫛は縄文時代から用いられている。縄文時代から古墳時代の櫛は、簪のように縦に長い(竪櫛)。現在と同じように髪を梳くために使われたほか、髪飾りとしても使われた。火の神を産みやけどを負って亡くなった妻の伊耶那美命に会うため、黄泉国を訪れた伊耶那岐命。「黄泉神と相談する間、私の姿を見ないで」と言った伊耶那美命はなかなか戻らない。伊耶那岐命は待ちかね、自分の左のみずらに挿していた湯津津間櫛という櫛の歯を一本折って、それに火をともして明かりにし、御殿に入り、恐ろしい姿に変わり果てた妻の姿を見てしまう。

勾玉 [奈良県新沢千塚500号墳]
展示期間:10/18〜12/14

「古事記」に勾玉が登場する場面はとても多い。天照大御神は暴れ者の弟、速須佐之男命を待ち受ける際、完全武装し、多くの勾玉をまとった姿で登場する。速須佐之男命が潔白を立証するための誓約を交わす場面では、天照大御神から勾玉を受け取り噛み砕くと五柱の男神が現れる。天石屋戸の場面では、八尺瓊勾玉を貫き通した長い玉の緒を作らせ、賢木の上の枝に懸けた。また、天照大御神は天孫降臨の際に邇々芸命に八尺瓊勾玉、鏡、草薙剣を授け、やがて三種の神器として今に伝わるとされている。
装身具であり祭祀にも用いられたとされる勾玉は奈良県の新沢千塚の出土品にもみられるように、材質はヒスイやメノウ、水晶などが多い。

弾琴男子椅座像埴輪
[神奈川県蓼原古墳 横須賀市指定文化財]
展示期間:10/18〜12/14

椅子に座り、膝の上に四弦の琴を乗せた男子像。髪を三方に分け、両耳で束ねて美豆良とし、残りの髪を後方で束ねて垂髪とする。頭には帽子をかぶり、首には勾玉をあしらった首飾りをかける。
帯中日子天皇(仲哀天皇)は、熊曾を討つために神のお告げを伺おうと琴を弾いた。神は、息長帯比売命(神功皇后)に降り託宣を下されたが、天皇は内容に誤りがあるとして聞き容れず、琴を弾くのをやめてしまった。神は怒り、天皇はにわかに崩御されたという。また、大長谷若建命(雄略天皇)は吉野で嬢子に舞を舞わせ自らは琴を弾き、「呉床座の 神の御手もち 弾く琴に 舞する女 常世にもかも」という歌を詠んだ。
琴をひく埴輪は全国で数点出土しているが、奏でる者の多くが男子の姿であることも興味深い。