深める 歴史文献で訪ねる奈良

大和名所図会で見る
今昔
二月堂(奈良市)

東大寺の二月堂は、旧暦2月に「お水取り(修二会)」が行われることからその名が付いています。二月堂は天平勝宝4年(752年)に創建されましたが、寛文7年(1667年)に失火により焼失しました。図会に描かれているものは、その2年後に再建されたものです。二月堂の下には若狭井(わかさのい)が描かれており、「お水取り」ではこの若狭井からくみ取った香水を本尊に供えます。この「水を服すれば、諸病の悩みをまぬがるる」(大和名所図会巻之一)と伝えられています。なお、図会の左下には大仏殿が描かれていますが、これは宝永6年(1709年)に公慶上人によって再興されたものです。

奈良県立図書情報館所蔵 大和名所圖會より
二月堂

ここが見所

二月堂は、図会に描かれた当時の建物が現存しており、平成17年(2005年)に国宝に指定されました。回廊からは奈良盆地を一望することができ、絶景を楽しむことができます。なお、二月堂の前にある良弁杉(ろうべんすぎ)には、「東大寺初代別当の良弁が、幼少時に鷲にさらわれ、木の上に置き去りにされた」という伝説が残っています。