深める 歴史文献で訪ねる奈良

西国三十三所名所図会でみる
今昔
世尊寺(大淀町)

世尊寺(大淀町比曽)は聖徳太子の創建と伝えられ、もとは比蘇寺と呼ばれていました。図会の文にも「この地は原(もと)比蘇寺の旧趾なる」とあります。図会に描かれている伽藍は比較的簡素なものですが、創建当時は東塔・西塔を備えた薬師寺式伽藍であり、現在でも両塔の礎石を見ることができます。なお、東塔は豊臣秀吉によって伏見城に移築、その後に徳川家康によって三井寺(大津市)に移され、国の重要文化財となっています。本堂と太子堂は、現在も図会と同じ場所にあり、図会が描かれた当時を偲ぶことができます。

早稲田大学図書館所蔵 西国三十三所名所圖會より
阿弥陀如来坐像

ここが見所

世尊寺の本尊であり、本堂に安置されています。図会の文中に、「当寺の本尊に安置するものは、比蘇寺の霊仏にして」とあるように、比蘇寺の時代から伝わるものです。6世紀半ばに、欽明天皇が海に浮かんでいた楠から造らせた、という伝説があります。