深める 歴史文献で訪ねる奈良

大和名所図会で見る
今昔
吉野山(吉野郡吉野町)

図会には六田(吉野郡大淀町)付近を流れる吉野川と、遠景に吉野山が描かれています。右上には新拾遺和歌集から、足利義詮の歌が記されています。「けふみれば 川波高し みよしのの 六田の淀の 五月雨の頃」。歌のとおり、流れの速い吉野川の様子が、いきいきと描かれています。吉野山については、図会の別の項で、「吉野山は満山桜樹にして、花時には積雪の朝のごとし。(中略)その名中華に聞こえて天下の名勝なり。」(大和名所図会巻之六)と絶賛されています。

奈良県立図書情報館所蔵 大和名所圖會より
吉野山の桜

ここが見所

今も昔も、吉野山といえば桜の名所です。約1300年前に、役行者が桜の木に蔵王権現の像を彫ったことから桜が御神木とされ、以後植え続けられて、現在ではシロヤマザクラを中心に約3万本といわれています。下千本、中千本、上千本、奥千本と順に見頃をむかえるため、長く楽しめるのが特徴です。