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日本語を文字にするのは難しい私たちがいま使っているひらがな、カタカナは、『古事記』ができた奈良時代にはまだありませんでした。そもそも日本語には文字がなく、中国の漢字を借りて漢文で書いていました。日本語....

日本語を文字にするのは難しい私たちがいま使っているひらがな、カタカナは、『古事記』ができた奈良時代にはまだありませんでした。そもそも日本語には文字がなく、中国の漢字を借りて漢文で書いていました。日本語で話し、漢文で書く。しかし漢文は外国の言葉の表し方なので、文法も言葉も違う日本語を表現するのはとても難しかったでしょう。『古事記』は、もう一人の編へん纂さん者である稗ひえ田だの阿あ礼れが、語り継つがれてきたことがらをうたい、太おおの安やす万ま侶ろがまとめていきました。太おおの安やす万ま侶ろは序文で「上いに古しへにおいては言葉もその意味もともに素そ朴ぼくで、漢字で記しるすとなるとそれは困こん難なん」と、日本の書物として日本語をどう文字に表したらいいか悩なやみます。実は、漢字を使って日本語を表そうという試みは前からあり、安やす万ま侶ろはそれらをもとに、日本語として読める文章を探さぐりました。独自に工夫して生みだした文体悩んだ末にたどり着いたのが、「訓くん」と「音おん」をいっしょに混まぜて、読んだり書いたりする方法です。「訓」というのは、漢字がもっていた意味と同じ日本語をあてはめて読む方法です。対して「音」というのは、漢字の発音だけを利用して、日本語の音を表す方法です。できるだけ日本語の語順で読めるようにもしていて、独どく自じに工夫した様子がみてとれます。こうして完成した『古事記』には4万6427字の漢字が使われています。しかも本来の漢文とは違う日本語の響きを残した書き方になっています。安やす万ま侶ろは、日本語の確立に貢こう献けんした一人といっても過言ではないでしょう。悩み1日本語の書き言葉がまだできていない▼訂正古訓古事記(ていせいこくんこじき)明治3年(1870年)刊(奈良県立図書情報館蔵)29