古事記とは
天皇の正統性と国土統治の由来を語る最古の書物で、全3巻からなります。壬申(じんしん)の乱(672年)に勝利し即位した天武(てんむ)天皇は、その政策のひとつとして古伝承を舎人(とねり/腹心の部下)稗田阿礼(ひえだのあれ)に誦み習わせますが、崩じてしまいます。それを、元明(げんめい)天皇の命で和銅5(712)年に太安万侶(おおのやすまろ)が筆録して献上しました。
上巻の神話部分は天地のはじまりから、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の誕生、大国主神(おおくにぬしのかみ)の地上支配、そして地上を天照に譲渡すること(国譲り)が語られ、天照の孫・邇々芸命(ににぎのみこと)の地上への降臨をへて、その曾孫の神武(じんむ)天皇の誕生までを描きます。中巻は初代天皇神武から応神(おうじん)天皇まで、下巻は仁徳(にんとく)天皇から女帝推古(すいこ)天皇までの系譜と人間の世の物語が語られています。
日本では文字が発明されなかったため、『古事記』は中国の漢字を使いながら、日本語で物語を書こうと努力しています。
『古事記』はその成立が、奈良時代の歴史を書いた『続日本紀(しょくにほんぎ)』に記されていないため、平安時代に作られた偽書であるとする説もとなえられてきましたが、平安時代には失われた「かなづかい」で書かれていることなどから、奈良時代初期に書かれたものであることは動かないでしょう。
- 『古事記伝』(写真提供:本居宣長記念館)