平成21年度第1回奈良県人権施策協議会 議事録要旨 1 開催日時 平成21年6月9日(火) 10:30〜12:00 2 開催場所    奈良県庁5階 第1会議室    奈良市登大路町30番地 3 出席者    委 員:平沢委員(会長)、寺澤委員(副会長)、野口委員、杉井委員、佐々木委員、        播磨委員、高橋委員、松本委員、森下委員  事務局:宮谷くらし創造部長、松田くらし創造部次長、仲尾人権施策課長、        加藤男女共同参画課長、増田長寿社会課長、古市障害福祉課長、        荻田健康増進課長、福西こども家庭課主幹、正垣国際観光課長補佐        山本教育委員会事務局理事、福田人権・社会教育課長、吉田学校教育課長 4 議  題 (1)奈良県人権施策に関する基本計画の推進について (2)その他  ※配付資料    資料1.奈良県の人権施策に関する事業実施状況及び事業計画書 資料2.人権に関する県民意識調査報告書 資料3.人権に関する県民意識調査報告書(概要版)      資料4.「奈良県人権施策に関する基本計画」各分野別関連指標の推移 資料5.人権相談件数等の推移      5 議事内容 ○議題(1)奈良県人権施策に関する基本計画の推進について [事務局から資料に基づき、人権施策に関する概況、2009(平成21)年度の主な取組 などのポイントを説明後] ◆犯罪被害者支援ハンドブックについて  播磨委員 知的障害の人の再犯、あるいは、犯罪被害が大きな問題となっており、「ハン ドブックにルビをふる、絵を多くする」等、わかりやすいものを作ってもらいた い。  事務局(久森人権施策課長補佐) できるだけ活用していただきやすい、わかりやすい内      容のものにしたい。 ◆地域生活支援センターについて  佐々木委員 福祉の保護が及ばないために刑務所と社会を行ったり来たりする障害者の方      のために、今年度から国が、地域生活支援センターを各都道府県に設置するとい      う事業を開始したが、どうなっているのか。       地域生活支援センターができれば、刑務所を出所し、社会復帰した方に対する      無料の電話相談窓口「ひまわりテレフォン」を活用してもらいたい。  播磨委員  自立支援協議会では、いろんな人たちが加わって自立をどうやるかという議      論をしないといけない、地域やコミュニティで解決する方向でないと、センター      は形骸化する。  事務局(古市障害福祉課長) 地域生活支援センターについては、本県では、法務省主催      で県や教育関係者などとの打ち合わせをしたばかりで、今後の展開がまだ見えな      い。       相談については、県域ごとに相談の拠点づくりに向け、弁護士会に、拠点ごと      に専門的な相談にのっていただける弁護士の選任を働きかけた。       自立支援協議会については、県の自立支援協議会では、各県域に相談や地域ネ      ットワークづくりをする県域マネージャーをおき、地元の声を聞いて取り組みを      進めている。さらに、事業所や福祉事業所、親の会や当事者の会の方も入った福      祉連合体の代表を県の自立支援協議会のメンバーに入れたらどうかと思っている。 ◆人権啓発について  播磨委員 NPOなど民間と組まないと効果が上がらない。例えば、美術館で視覚障害の      人がボランティアの人の言葉により鑑賞するところを目の当たりにして、県民が      「大事だ」とわかる。  平沢会長 人権に関する県民意識調査で、人権関係の研修会やイベントに参加する回数が      多い人ほど人権意識が高いと思われる結果も出ており、幅広くやっていくことは      必要。また、違いを尊重する普遍的な人権のアプローチが、通り一遍の説明で流      されることが多く、本当に違いを認め合うということに迫るために何ができるか      を打ち出すことが必要。人権相談で把握できた今の生の声とか苦しさとかを啓発      に活かす工夫が伴っていない。  野口委員 啓発のポスター作りやパンフレット作りにはいっさい金は使わないで、現実を      変えることに力をいれるような大胆な発想が必要。現実の共生での利害のぶつか      り合いに踏み込まないと現実は変わらない。行政には無理があり、現実には市民      団体、NPOなどの団体のいろんな啓発を支援していかなければいけない。  事務局(宮谷くらし創造部長) 協働推進の意味から、行政だけではダメなので、ボラン      ティアとか自治会とか学校、大学、企業を巻き込んで、もっと裾の広い啓発をし      ていかなければならない。  事務局(久森人権施策課長補佐) 啓発は通り一遍の内容ではなくて、具体的な問題の解      決につながる実践的な啓発を考えていく必要がある。 ◆人権パートナー養成・活用事業について  野口委員 予算、時間数、プログラム内容はどうなっているのか。    事務局(安本人権施策課係長) 予算は300万円。「サポーター養成講座」は12講座      のものを2地域で開催、「コーディネーター養成講座」は10講座。内容につい      ては、プロポーザルで業者から提案を受け、審査会で審議したうえで、業者を決      定した。活用にあたっては、地域や社会の人権に関するニーズを把握し、そのニ      ーズと実際に育った人権パートナーとの接点を探して、それをパートナーバンク      として実現したい。今年スタートするが、まず養成を徐々に増やし、その中から      パートナーバンクに登録する方も徐々に増やし、何年かにわたって続けていきた      い。 播磨委員 人権と向き合うと、利害がぶつかって一筋縄ではいかないことが多いが、それ      を超えて課題を解決していく能力をつけないといけない。  野口委員 12講座とか10講座では不十分。業者委託では、かなり金をかけて、しっか      りとしたプログラムをつくっていただきたい。1年目で、いろんな問題点などを      洗い出し、2年目にもっといいものにしていくという構えで取り組んでいただき      たい。  平沢会長 何年間も養成講座を受け続ける人が固定化して、なかなか指導者になっていか      ない。また、NPOや運動体関係の人たちと、講座がバラバラになっているので      はないか。  寺澤副会長 トレーニングといった面がみられない。人権啓発講座を講座的なものから脱      却させる方向性を考えざるを得ない。 ◆協働事業について 播磨委員 奈良県にはNPOを支援する、育てる仕組みがない。また、厚労省が、障害者      アートを仕事にするプロジェクトにお金を出しており、県がアイデアを出してお      金を取って来ないといけない。  平沢会長 現実を変えるような市民や市民組織の取り組みそのものが、非常に大きな啓発      効果をもつから、いろんな協働の取り組みも知らせてもらいたい。  事務局(宮谷くらし創造部長) いろんな方、NPOの団体からの事業募集で、吉野町の      NOLAから、ニート、ひきこもりの方を集めて、休耕田を無償で借りて赤米を      つくり、販路を開拓して自立していくという提案や、元薬物依存者の方の支援団      体で、薬物依存を経験した人が、薬物依存を止めるように指導する提案などがあ      った。行政にできることは限られており、協力して働くという関係などに取り組      みたい。今、議論をして協働の推進の指針をつくっている。 ◆企業への啓発について  松本委員 人権擁護委員が企業に啓発に行こうとしても、断られることが多く苦労してい      る。三重県では入札のときに人権研修の評価項目があり、「そんな苦労はない」      と聞いた。  野口委員 社会的貢献が重要な企業評価となってきていることをもっと広めていく必要が      ある。企業が社会的貢献をやらなければいけないと感じる仕組みを、行政がつく      っていくことが重要。  事務局(宮谷くらし創造部長) 社会貢献活動をした企業が、入札の際に評価点数が上が      るというのは全国的な仕組み。社会貢献活動は清掃などが多く、人権関係はあま      り入っていない。 ◆高齢者虐待、認知症について  杉井委員 児童虐待の問題、DVの問題と比べて、高齢者虐待の問題は啓発等で少し弱い。      厚労省が認知症のサポーターの100万人キャンペーンをしているが、奈良県で      はどのようにしているのか。       京都では、学校教育の中でも道徳教育と結びつけて、認知症の問題、老いの問      題を講座として取り入れるようにプログラム等を組んでいる。認識とか気づきと      いうものも学校教育から積んでいかなければならない。  事務局(増田長寿社会課長) 高齢者虐待防止として、地元の市町村が第一に虐待の実態      が分かるため、市町村から通告していただくシステムを取っており、県は、市町      村相互間の連絡調整や市町村に対する情報の提供等、必要な助言を行い、高齢者      虐待に対する正しい理解と虐待防止の趣旨の徹底を図るための研修事業を行って      いる。       認知症については、認知症を正しく理解するための研修などをしている。また、      家族に対する支援ということで、認知症の家族の会に電話相談窓口を委託し、あ      わせて、認知症のフォーラムも開催する。サポーターについては、20年度末ま      でに6,000名ぐらい養成をしてきた。 ◆自殺対策、自殺者数の統計について  高橋委員 今年、自殺予防対策で内閣府から3年間にわたって100億円の基金が出たと      思うが、奈良県ではどうしているのか。       また、小学生高学年や中学生でも、「死んでも生き返る」という認識をもった      子どもが多いように聞く。子どもに対する生きる教育とか、生死の教育を本格的      にやってもらいたい。  寺澤副会長 自殺者数が3万人以上と、数が踊っているが、実際はカウントされずに、流      されているケースがたくさんあるのではないか。  事務局(荻田健康増進課長) 自殺対策については、3年間で基金を積み立て、協議会や      センターの立ち上げ、電話相談の充実等を考えているが、今検討を進めている。      市町村からなかなか手が上がって来ないが、今後、幅広く声をかけてやっていき      たい。       自殺者数3万人以上は、警察が出しているもので、都道府県で亡くなられた方      の集計結果のようだ。厚生労働省の人口動態調査は、市町村における死亡者を分      析して市町村が積み上げて報告したもので、自殺率において奈良県は、平成18      年、19年は47番目で低い県であったが、20年は42位になったと思う。社      会のあらゆる状況の中で自殺者が増えているのかもしれない。 ◆その他  森下委員 行政側からいえば、人権に関わる問題は、なかなかNPOや地域住民の方々の      参加が得られない。予算的には、保護司会でも、ボランティアでやってもらって、      まだそこに自分たちで会費を集めて活動していかなければならないという現状。  寺澤副会長 奈良にも宗教者の連帯会議があって、宗派を超えた人たちの生とか死に対す      る真摯な営みに対する連帯とか支援をしていただくと喜ばれると思う。  野口委員 来年の予算の折衝のときには、調査の結果を踏まえて、どう施策に反映してい      くのかということを盛り込んでやっていただきたい。 ○議題(2)その他 特になし。                     (以上)