平成22年度奈良県人権施策協議会 議事録要旨 1 開催日時 平成22年7月6日(火) 10:00〜11:30 2 開催場所    奈良県庁5階 第1会議室    奈良市登大路町30番地 3 出席者    委 員:平沢委員(会長)、寺澤委員(副会長)、野口委員、訓覇委員、播磨委員 松本委員、岩本委員  事務局:宮谷くらし創造部長、堀川くらし創造部次長、楢人権施策課長、        矢辻男女共同参画課主任調整員、増田長寿社会課長、古市障害福祉課長、        百地保健予防課補佐、筒井こども家庭課補佐、山本教育委員会事務局理事、 福田人権・社会教育課長、吉田学校教育課長、上山協働推進課長 4 議  題 (1)奈良県人権施策に関する基本計画の推進について (2)その他   ※配付資料 資料1.奈良県の人権施策に関する事業実施状況及び事業計画書 資料2.人権に関する県民意識調査結果を踏まえた主な人権施策について 資料3.「奈良県人権施策に関する基本計画」各分野別関連指標の推移      資料4.人権相談件数等の推移 資料5.奈良県人権施策協議会規則      参考資料 人権啓発冊子「人権メッセージ・エピソード作品集 つながり」           なら人権相談ネットワークパンフレット(新版)           奈良県犯罪被害者支援ハンドブック           奈良県人権情報誌「かがやき・なら」 5 議事内容 ◎会長及び副会長の選出 協議会規則第3条の規定に基づき、委員の互選により、平沢委員が会長に、寺澤委員が副会長に 選出された。 ◎議題(1)奈良県人権施策に関する基本計画の推進について ◆事務局(久森人権施策課補佐)から資料に基づきポイントを説明。 ○人権施策に関する概況について ・「人権教育の推進についての基本方針」により、具体的には、「人権教育推進プラン」に沿って、 人権教育がより系統的・横断的・発展的に進められるよう取組の充実を図り、研修会や「人権教育 の手びき」等の指導資料を作成した。 ・人権のまちづくりに向けた取組の核となる「人権指導者」の養成とその効果的な活用を図るため、 人権パートナー養成・活用事業を実施し、人権サポーター養成講座及び人権コーディネーター養成 講座の開催や、「人権パートナーバンク」の設置に向け、人権パートナー活用事業検討会議、修了 者フォローアップ研修会を実施した。 ・複雑・多様化する人権相談に対応するため、相談機関相互のネットワーク化を進め、「なら人権相 談ネットワーク」において、各機関の連携・協力を図るとともに、相談員のスキルアップを図るた め、「相談員資質向上講座」の開催や、相談員の立場に立ったきめ細かな相談活動ができる体制整備 に努めている。 ・奈良県の女性の有業者の割合が全国最下位となっていることから、女性の就業等に関する意識や 実態を把握し、今後の施策の検討等に活用するため、昨年8月に、県内在住の20歳以上50歳未満 の女性3,000人を対象に、就業等意識調査を実施した。 ・中央こども家庭相談センターに児童虐待に対応する「こども支援課」を設置し、24時間365日 相談体制を整えている。昨年度からは、総合的な見守り体制が必要であることから、実践的・専門的 な指導・助言を行うスーパーアドバイスチームの派遣支援事業や児童虐待対応スキル向上のための 支援等を実施した。 ・奈良県の高齢者の生活の現状に即し、高齢者が安心して暮らしやすいまちづくりを目指すため、 現役世代や家族も対象とした総合的な対策を実践するため、昨年度「奈良県高齢者福祉計画」を 策定した。 ・「障害者の生活、介護等に関する実態調査」を実施し、本県の障害のある人が直面している課題解決 やニーズに対応するため、「障害者基本法」に基づく「奈良県障害者長期計画2005」と、 「障害者自立支援法」に基づく「奈良県障害福祉計画(第2期)」を統合し、新たに「奈良県障害者計 画」を策定した。 ・地域における自殺対策の強化を喫緊の課題と捉え、「自殺対策緊急強化基金」を造成した。この基金 を活用した自殺対策事業は3年間(21年度〜23年度)であり、本年1月には精神保健福祉センター に「なら自死遺族・こころのホットライン」専用電話を設置するとともに、今後も基金を活用し、 相談支援体制の整備や人材養成等を展開する。 ・内閣府と共催で、「犯罪被害者週間国民のつどい」を開催した。また、犯罪被害者等に必要な時に、 必要な場所で途切れない支援を実施するため昨年度、「奈良県犯罪被害者支援ハンドブック」の作成と ともに、犯罪被害者の置かれている状況等について県民に理解を深めてもらうため、犯罪被害者支援 スポットCMを制作し、現在放映中である。 ○2010(平成22年度)の主な取組について ・障害者権利擁護相談支援事業 人権相談ネットワーク構成機関の連携強化など相談・支援の充実を図るべく、虐待等、障害者の 権利侵 害事案に対して、弁護士と連携し、専門的な知識や助言を迅速に得られる体制を整備するもの。 ・地域包括支援センター機能強化事業 市町村・地域包括支援センターと保健・医療・介護・福祉に関わるさまざまな関係機関との連携体制を 構築し、高齢者への相談体制の強化を図るもの。 ・奈良県協働推進基金運営事業 多様な主体との協働の推進のための事業を展開すべく、民間から広く寄付を募り、団体支援や協働の 推進を図る基金を設置し運営するもの。 ・ひとり芝居による「いじめ」問題啓発事業 芝居の中で観客が一緒に課題の解決を考えていくという実践的な啓発であり、NPO等と協働で事業を 実施するもの。 社会全体の「いじめ」を題材にした「ひとり芝居」の創作、上演を民間団体、 (財)奈良人権・部落解放研究所に委託する。 ・犯罪被害者支援事業補助 (社)なら犯罪被害者支援センターが実施する犯罪被害者支援員の養成事業に対して補助を行うというもの。 ・全国男女共同参画フォーラム開催事業 男女共同参画社会づくりに向けて、広く機運の醸成と地域での取組の推進を目的としてフォーラムを 開催し、できるだけ多くの人に参加してもらい、県民の意識の高揚を図るもの。 ・女性のための再就職支援事業 男女が互いに人権を尊重し、性別に関わりなく、個性と能力が発揮できるよう、女性センターを拠点に、 仕事のブランクが長い女性を対象にして、就活塾を開催し、就職活動についての基礎的知識や情報などを 提供するもの。 ・学校巡回指導事業 家庭や関係機関と連携し、いじめや暴力の予防、防止に向けた施策に取り組むもので、具体的には、 生徒指導第二係を設置し、巡回アドバイザーとして指導主事と生徒指導の経験豊富な教員OBが各学校を 巡回し、助言や支援を行うもの。 ・デートDV防止・DV予防プログラム推進事業 男女が対等でかけがえのない存在として尊重し合う関係を築くためには若年層からの教育・啓発が 必要であり、DVのない社会づくりをめざすため、県立高等学校を対象にデートDV防止プログラムの 出前授業を行うもの。 ◆協働推進運営基金事業について 播磨委員:こういう厳しい経済状況では金は簡単に集まらない。実現可能かどうかという見通しを どのように持っておられるのか。奈良県のNPOに対する施策は他県に比べて遅れており、小さな支援 施策を立てないと、「基金を集めてみなさんにお金を配る」という考えだけでは、不十分でないかと思う。 また、連携とかネットワークと盛んに言われるが、奈良県の行政そのものが縦割りだと思うことがあり、 形式的でない連携をしっかりしていただきたい。 ◆地域連携について 協働推進課(上山課長):平成22年3月に「奈良県協働推進指針」をとりまとめた。地域の様々な課題に 対して、団体・NPO・自治体・行政・学校等が連携して取り組んでいけるようなプラットホームの 構築を目指している。 播磨委員:今、社会状況は、バラバラで孤立したものと、大きな組織しかない状態である。昔は自治会 だとか青年会だとかいう中間組織があって、そこが“つなぐ”役割をしていた。今は、それらが どんどん消滅してしまっており、個と大きな組織をつなぐということが難しい。今、大事なのは、 中間組織を育てるということだと思う。担当課の職員がどんどん現場に出て話を聞き、奈良県の実情に あった中間プラットホームあるいは中間組織を育てる・支援する仕組みを考えていくべきだと思う。 事務局(宮谷くらし創造部長):現在、NPOフェスタというものを平城宮跡で開催している。 県にどのようなNPO団体があるのかを知っていただく機会だと思う。 ◆参考資料の送付について 寺澤副会長:この人権施策協議会では、県の人権に係わる施策のすべてについて協議されるのだから、 「女性の就業等意識調査」といった調査や「奈良県高齢者福祉計画」といった各課の取組については、 調査結果や計画概要を委員に送付するべきだと思う。 事務局(楢人権施策課長):今後は、調査等があったら概要版のようなものを送付させていただきたい と思う。 ◆「女性の就業等意識調査」について 野口委員:奈良県の施策は、意識啓発や啓発活動に重点が置かれて、現実・実態をどう変えていくのか という視点を欠いているのではないか。女性の就業率が低いのは女性の就労意識が低いからだという 捉え方であるため、「だから啓発が重要だ」というふうに施策が展開されていく。 また、日本の社会では年齢差別というものがきちんと認識されていない。だから、女性が働こうとしても   年齢制限のため働く機会が閉ざされてしまう。就労について、「年齢制限を設けるということに問題性が ある」ということに対して、きちんと啓発していき、そして、現実に、面接などで年齢制限が行われて いることに対して、企業に対して働きかけていく。 就労の機会を阻む社会構造、そこにメスを入れていく、そういう取組が大切であると思う。 事務局(男女共同参画課矢辻主任調整員):奈良県の女性就業率は全国で最低ということで、 「なぜ働けないのか」、「女性が働き続けるためには何が必要なのか」ということをしっかり考えて いかなければならないと思っている。 再就職、要するに、以前働いていたけども今は働いていないという人のための事業「女性のための 再就職支援事業」ということで就活塾を秋頃に2回ぐらい開催する予定である。また、女性が 働きやすい職場環境の整理ということで、仕事と家庭の両立や男女共同参画の推進に取り組んでいる モデル企業を募集してその内容を紹介するという事業に、雇用労政課で取り組んでいる。 播磨委員:「いかに働くか」という問題が地域にあり、女性が働きやすい福祉施設や介護施設を養成 推進していくという方法もあるのではないかと思う。また、保育所が見つからないという問題も あるので、保育所の充実といった子育て支援も大事だと思う。 女性が働く意欲があるのに働けないというのは、そうしてしまう社会構造の問題があり、それを しっかり捉えていく必要があるのではないか。 平沢会長:人権というと「啓発・意識改革」というものが主になって、実態とか構造を変えるということが 陰に隠れてしまっていることが多い。女性の就職活動を支援するとか、働きたい女性を支援するという ことも大事だが、実際に就職できるようバリアをなくす、例えば年齢制限とか、保育所の充実といった 「制度に係わる問題」をどのようにしていくのか。意識改革だけではなく制度改革に踏み込んでいくことが 必要である。 事務局(宮谷くらし創造部長):社会保険・年金について、夫の扶養に入ることができる「収入が 130万円未満」という基準、そして税法上の扶養控除を受けることができる「103万円以下」という 基準も女性の就業を阻む制度の一つだと思う。 ◆隣保館運営事業等補助、隣保館職員研修事業補助について 野口委員:特別措置法が失効になって以降、隣保館活動をどうしていくのかということを、奈良県下の 市町村でもいろいろ議論されていると思うが、奈良県としてはどういうスタンスであるのか。 時代は特別措置法が終わったということで、セツルメント活動・隣保事業への力を抜いていっている という状況であるが、社会的な矛盾・貧富の格差は拡がっている。 今こそ、本来のセツルメント活動である隣保事業の重要性が高まっていると思う。 事務局(楢人権施策課長):隣保館においては、近年では、周辺地域も含めたコミュニティという 位置づけになってきており、また、相談事業においては、DVや虐待や高齢者問題など人権をめぐる 多様な問題があり、それに対応していかなければならない。 今までの地区内だけの隣保館活動だけでなく、周辺地域を含めた社会全体を見渡しながら相談事業等を 進めていけるよう助言を行いながら、運営事業等補助の継続について、国に対して要望を続けている。 ◆被虐待児一時保護事業について 訓覇委員:被虐待児一時保護事業について保護延人数2,767人とある。ものすごい数であるが、一時保護等 について機能強化に努めたということだが、ソフト面・ハード面でどのように機能強化に努めたのか。 事務局(筒井こども家庭課補佐):一時保護所に関して、DVの関係については、こども同伴で来られた方 のこどもをケアするため保育士を配置した。また、児童相談所自体が老朽化しているため、相談部門・ 事務所部門も含めて一時保護所の改修を検討している。一時保護所については、いろんな状況の利用者  (男女の区別、虐待児である、非行児である、病弱児である等)がいるので、きめ細やかなケアができる   ようその充実を図りたいと考えている。 ◆警察本部県民サービス課での相談件数について 寺澤副会長:警察本部県民サービス課で受けた相談について、管轄が違うのかもしれないが、その内訳を 情報提供してもらい、県警本部と行政との間で連携していくことが大切だと思う。 ◆ヒューマンフェスティバルについて 松本委員:ヒューマンフェスティバル(10月9日開催)については、PRの期間を従来よりも早めるとか、 ファミリーで参加していただけるような中身の趣向を考えるとか、多くの人に来てもらえるようなものに したい。 ◆学校巡回指導事業について 松本委員:保護者に対して助言をするのか、それとも先生に対して助言するのか。保護者は学校に相談に 行きにくいということがあるので、保護者が相談に行ける窓口の存在を周知させて欲しい。 事務局(吉田学校教育課長):学校巡回指導事業は、中学校を中心に生徒指導担当の主事と、経験豊富な 教員OBとが中学校を中心に巡回し、先生に対して助言を行うものである。保護者に対しての相談・助言 は、学校・学校教育課生徒指導係および教育研究所の相談窓口に来ていただいたらよいのだが、そのこと が、周知されていないようなら、より周知に努めたいと思う。 ◆文化政策について 播磨委員:これだけさまざまな分野で人権に係わる施策があるのに文化政策がないということに疑問を 感じる。啓発中心主義ではなく、知育すなわち知識ではなく感性を磨いていかなければいけない。 「ひとり芝居」による啓発事業は、とてもいいアイデアだと思うが、さらに、それをこども達と一緒に やっていく・作っていくという発想がないといけない。人権のあり方を、演劇やアートを作ることを 通じて学ぶ、そういうことで人権文化を作っていくべきである。 平沢会長:文科省の人権教育の指導方法等のあり方は、今までは人権に関する知的理解がメインだった。 しかし、これからは人権感覚というものが重要で、参加型・協力的な学習をどう広げていくのか ということが議論されている。奈良県の人権施策において、文化政策とかソーシャルインクルージョンの 中にこどもや地域の方が参加していけるような、そのような人権文化を創り出していく仕掛けを どうしていくのかという播磨委員のご指摘である。 今後は、この協議会に文化政策の担当課も出席してもらった方が良いだろう。 ◆資料1「人権施策に関する事業実施状況及び事業計画」の記載方法および事業目的の分類方法について 平沢会長:資料1の29ページより、事業一覧表(2010年度の主な取組)ということで事業名が羅列して ある。このような記載方法ではなく、まずは奈良県の人権施策の推進の全体的な基本方針とか考え方を 記載し、それから「方針に基づく事業にはこのようなものがある」というふうに各事業を示していく ようにして欲しい。 また、事業分類ということで、事業を目的別に10項目に分類してある。以前は3項目だったように思う。 「何のための事業なのか」ということはとても重要なことであるので、なぜ10項目なのか、また、 これ以外に項目は必要ないのか、ということを今後議論していきたい。 ○議題(2)その他 について 特になし                (以上)