全国知事会議(平成29年7月27日~28日)に係る知事コメント
於:ホテルメトロポリタン盛岡(NEW WING)
会議の概要
・27日には、「地方税財源の確保・充実」や「地方創生」、「社会保障関係」などをテーマに議論。
・「地方税財源の確保・充実等に関する提言(案)」、「地方を支える『人づくり』のための緊急決議(案)~地方
へ人が『流れる』、地方で人が『輝く』~」等について協議。
・「社会保障関係」では、国における「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」等に全国知事会代表と
して参画している荒井知事より「新専門医制度」について報告。
・28日には、「憲法・地方分権関係」や「スポーツ・万博関係」などをテーマに議論。
・「国民主権に基づく真の地方自治の確立に関する決議(案)」、「地方分権改革の推進について~新たな地方自治
を目指して~(案)」等について協議。
・27日に協議された提言等を含め22の提言等について取りまとめられた。
荒井知事の発言要旨
<地方税財源の確保・充実等について>
・従業員数の比率については、料理飲食等消費税との関係で従業員数の比率が導入された経緯は承知している。ただ
、地方消費税導入当時は飲食料サービスのシェアは全ての「消費に相当する額」の0.1%にとどまっていたため
、従業員の比率で代替する必要があったが、その後の統計の入替により、5%まで増えており、両積みして加算さ
れているのが実情。また、地方消費税が引き上げられると、引き上げ分については従業員数の比率の導入とは無関
係である。従って、従業員数の比率を存置する理由は消滅しているものと考える。
・また、消費代替指標として人口比率を高めることとした場合、配分が大幅に減少する府県がある、との指摘がある
。これについては、一次産業と観光が盛んなところにはこのような傾向が出るが、税制としておかしいと思う。
すなわち、
①一次産業については、例えば、小売販売額の「農業用機械器具小売」、「肥料」、「重油」などは、最終消
費とはいえない中間投入である。
②観光産業については、ホテル、旅館の仕入れの1/4が小売業者からの仕入れであるとの指摘があり、宿泊サ
ービスと二重計上になっている可能性が高い。
③ガソリンについても中間消費を混入したまま小売りとされ、計上されている。
このほか、清算基準の問題点として、モノについては販売地と消費地が乖離している越境消費、耐久消費財等の
問題がある。
サービスについては、医療などの非課税取引の扱いや、コンサルなどの知的なサービス消費の問題があり、後者
はEUなどでは仕向地原則で明確になっている。
更には、商業統計は速報性重視のため荒っぽくなってきている。
「人口」ありきではないが、以上の実態を踏まえ、より納得感のある代替指標として、「人口」を用いることを
提言するものである。
<社会保障制度改革について>
・新たな専門医制度について、報告する。
・新たな専門医制度については、日本専門医機構が統一的なルールに基づき、実施しようとしているところ。地方
では「地域間の医師偏在を助長する」との懸念があり、スタートが1年延期され、現在、来年度春の開始に向け
準備が進められている。専門医の認定は、「プロフェッショナルオートノミー」に基づいて行われることになる
が、医師偏在を阻止するため、国、地方公共団体が関与する仕組みになってきている。
・具体的には 、都道府県間や都道府県内の医師偏在阻止のために、大学病院だけでなく市中病院も研修機関にな
れるようにされた。また、導入後の医師配置のモニタリングを、地方公共団体が関与して行えるようにするなど
の意見が取り入れられており、それを担保するために、都道府県協議会が設けられた。協議会は、研修プログラ
ムの内容や医師の配置について、専門医機構との協議や、情報提供を求めることができることとなっており、今
後、協議会が実効性を持てるよう、見守っていく必要がある。
・今後は、順調にいけば各研修施設が専攻医の募集をこの秋にも開始されることになる。引き続き注視が必要。
・全国知事会で作って頂いた地域医療研究会において、この件についても8月末頃に各県医療政策ご担当者と情報
共有・勉強会をさせて頂きたい。
<憲法における「地方自治の在り方」について>
・憲法改正の議論を行うのであれば、参議院議員選挙について、都道府県単位の選挙区を堅持することは優先順位
がとても高いと思うが、私は合区解消のための手法として、1人区を提案する。合区解消のポイントは、都道府
県単位の選挙区を堅持するという要請、一票の格差を是正するという要請、参議院の定数増を抑制するという要
請、及び、参議院議員については3年ごとに半数を改選するという憲法46条の解釈にかかっていると考える
が、1人区は必ずしも憲法違反ではないと思う。
・また、参議院選挙区の位置づけを明確にするには、都道府県の位置づけを明確にする必要がある。その中では、
地方自治の本旨とも関連するが、国と都道府県との関係、都道府県と政令市をはじめとする市町村との関係を明
確にする必要がある。我が国の都道府県制の中での都道府県の位置づけと、合区解消は連動している。
<地方分権改革の推進について>
・地方分権というと、国の権限が明確に確立されていることを前提としているように思えるが、国の権限が明確
でない場合は、地方分権はないのではないか。
例えば、森林環境管理の目的は、木材生産や防災、動植物生態系の維持、レクリエーションなど多岐的であるが
、国の権限が国の中で分散しているので、包摂的な国法がなく、包摂的な権限の確立が期待できない状況。
国に包摂的な権限がないと、包摂的な地方分権もない。従って、地方分権が地方の権限・責任を確立する唯一の
手段ではない。地方における包摂的な権限は、国法で禁止されない限り条例で作れる(地方創権)、という意識
を強く持つべきではないか。
・最近では、国と地方の権限の調整のため、地方で協議会を作る、という手法が採られているが、協議会には比較
的包摂的な権限が下りてくる傾向がある。
具体的な例としては、路線バス等に関し、地方の協議会で運賃等について決めた場合は、国の権限と同等、ある
いはそれを超える、と定められている。「『従うべき基準』の廃止」の資料の中で、停留所の「停車基準の明確
化と自治体への周知」ということを、国に対して求めているが、これは、地方の協議会で決める仕組みにすれば
良いのではないか、と思う。
・バスとタクシーは、分権の内容が相当違う。タクシーは喜んで地方に権限を下ろす、というのが国の姿勢ではな
いかと思うので、本気でタクシーに関して権限・分権を要求するかどうかについて、市町村の声も確認した上で
、国に提言すべきではないか。