「このくにのかたち」を考える(その20)

JAMP-時事通信社- オピニオン寄稿(2018年3月29日 掲載)
         「このくにのかたち」を考える(その20)




 

1.このくにのかたちを決めているのは憲法 

 このことは当然のことですが、わが国憲法では、第1章の「天皇」の項目以下、「戦争の放棄」「国民の権利及び義務」「国会」「内閣」「司法」「財政」と、国政に関係する骨格列挙されているのに続いて、第8章で「地方自治」の項目が挙げられています。「地方自治」は、このくにのかたちの重要事項のひとつということになります。

 ところが、「戦争の放棄」を規定した第9条の議論が大騒ぎである一方、「地方自治」に関する憲法論議はあまり聞こえてきません。そう言えば、今まで憲法上の問題としてあまり議論された形跡もありません。

2.「地方自治」に関する憲法議論とは

 憲法の「地方自治」についての議論は今まであまり深められてこなかった印象があります。

 憲法第92条には、「地方公共団体の組織及運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」と規定されています。この条文の「地方自治の本旨」の概念、具体的意味が憲法において、それ以上明確にされておらず、地方自治の具体化の過程において、「地方自治の本旨」の捉え方が多義的なまま、国家の行政組織、地方の行政組織、国の政治家の間でバトルが繰り返され、今日に至っているという感じがします。

 「地方分権」は着実に進んでいるように思いますが、憲法の「地方自治の本旨」の概念が指し示すところに従って進んできたかどうかは、検証の余地があるでしょう。

3.憲法の「地方自治の本旨」とは

 われわれ地方の行政の課題に日々直面している者から、日々の諸課題に憲法はどう答えてくれるのかという目で憲法条文を見た時、憲法は正直、何も答えてくれていないという感じがします。

 憲法の条文に替わって、「地方自治法」をはじめとする諸法が、地方自治のあり方を具体的に規定しているのが実情です。

 それでは、憲法においてわざわざ「天皇」をはじめとする「このくにのかたち」の最重要項目と並べて「地方自治」の章を置いている「値打ち」がないようにも思います。

 地方自治に関する憲法の改正議論をする際は、「地方自治の本旨」の概念の明確化とその具体的な方向性を憲法上の言葉で明確にしていくことが何よりも必要ではないかと思います。

4.地方自治に関する憲法論議の進め方

 われわれ知事は、憲法条文規定の利害関係者であり当事者でもありますが、必ずしも有識者ではありません。われわれ知事にとっては、日々の課題に対応する中で憲法の規定に、もっと具体的に方向を指し示し、地方自治についての考え方を明確に答えていただきたいという気持ちは強くあります。

 「地方自治の本旨」という言葉だけでは不十分な感じがします。どのように議論を進めれば良いのかということ自体、難しい課題です。「地方自治の本旨」をさらに具体的、明確に憲法上規定しようとすれば、国の政治家、地方の政治家、国の行政担当者、地方の行政担当者、学者の間で意見が大きく異なってくるものと予想されます。

 憲法論議をより深く、より広く進めるという観点からは、憲法の「地方自治の本旨」に関わる論点についての共通の認識と、それぞれの論点ごとの対立意見の列挙だけがまず必要ではないかと思います。憲法論議のアジェンダの確立が必要ということです。