株式会社 天平庵(桜井市)
お客様・お菓子・仲間・地域
4つを大事にする心が仕事の軸に
2006年に三輪の地で和菓子販売からスタートした、株式会社 天平庵。
創業12年にして銘菓「大和三山」などの定番商品を生み出し、今は和菓子にとどまらず洋菓子の販売も行う「おいしいお菓子の会社」として、社員124名、店舗は奈良県下に7店舗、東京都に2店舗を展開しています。老舗の多い奈良において、創業12年で店舗を9店舗にまで拡大された天平庵とはどんな会社でしょうか。
(天平庵本店。その土地のイメージにあった店舗づくりをしているそう)
お客様に感謝を。待ち時間もくつろぎの時間に
お話を伺ったのは、営業企画の橋口菜穂子(はしぐちなほこ)さん。各店舗で店長としての経験を積み、現在はマネージャーとして販路の拡大に努めていらっしゃいます。
「『せっかく来てくださったお客様には、ご要望どおりにおいしいお菓子を買っていただきたい。』創業者である庵主のお菓子づくりへの熱意、お客様が来てくださることへの感謝の気持ちを原点として、今の天平庵の姿があるんだと思います。」
足を運んでくださったお客様に、気持ちよく過ごしていただくことを第一に。天平庵ではご注文後にお茶を出しますが、それもお客様をもてなす工夫のひとつです。購入していただいた商品を包む際には、どうしてもお客様に待ってもらう時間が生まれます。それをただの待ち時間にするのではなく、くつろぎの時間に変えたい。そんな思いから、お茶出しが始まったそうです。
「暑いなか来てくださったお客様には、お茶を飲みながら涼んでいってほしい。寒いなか来てくださったお客様には、温かいお茶でぬくもっていってほしい。また、いつも誰かにお茶を淹れる側の主婦の方には、お茶でゆっくりくつろいでほしい。そう思ってお出ししています。」
(橋口菜穂子さん)
お菓子に込められたこだわりと愛情
「新商品が出たときは、みんな自分で買って食べています。選び抜かれた素材の良さやおいしさを伝えるには、素材や製法についての理解ももちろん大事ですが、自分がお客様の気持ちになって食べてみて、そのうえで持った感想が一番大事かなと思います。」
「お菓子を大切にする心」とともに提供されるお菓子には、従業員のこだわりと愛情が詰まっているようです。
「奈良の皆様に愛され、奈良の代表となるお菓子を天平庵で育てていければ嬉しいですね」と橋口さん。奈良発信のお菓子を全国のお土産屋に並べることで、奈良自体への関心を高めてもらい、奈良の活性化にもつなげていきたいそうです。
(季節の商品をディスプレイ。
「今年は栗が一押しです!」)
(大和三山)
がんばった「仲間」を「仲間」が選ぶ
天平庵ではともに働く従業員のことを、「仲間」と呼んでいます。社内の回覧にも「仲間の皆さんへ」という表現が使われているそうです。
「従業員は一緒に会社を支えていく仲間だという庵主の考えと聞いています。正社員、パートタイマーと立場の違いはありますが、みんながいてくれるからこそお店を開けられる。全員が大切な仲間です。」
天平庵は女性の役員や店長がとても多いそうです。それはお客様にとって親しみやすい人を、仲間にとってともに働きやすい人を選んだ結果であるとのこと。天平庵の人事評価では、「360度評価」という制度が取り入れられているそうです。
「年に2回、一緒に仕事をしている仲間全員がそれぞれを評価しあうという制度です。評価の中身を見ることができるのは役員だけなので、本心からの意見を記入することができます。その人の頑張りを一番よく知っているのは、いつも一緒に働いている仲間です。日々の頑張りをしっかりと反映できる良い方法ではないでしょうか。」
仲間のがんばりを認め合う。「従業員」ではなく「仲間」と呼び合う、天平庵だからこそできることかもしれません。
仕事が「私らしさ」を明確にしてくれる 女性ロールモデル 橋口菜穂子(はしぐちなほこ)さん
引き続き、橋口さんに働く女性としてのお話を伺いました。
- 天平庵でお仕事をされることになったきっかけは何ですか。
「もともと、食べ物関係の仕事をしたかったんです。説明会に参加したところ、事業内容・勤務地ともに自分の希望と一致していると思いました。天平庵だからこそチャレンジできることも多いのではという期待も込めて、入社を決めました。」
-
入社されて、実際に「チャレンジ」となったことはありましたか。
「異例ではありますが、採用2年目に店長として販売部に配属されました。その時点で既に店長としての力が備わっていたというわけではなくて、配属されてから店長を目指す道のりが始まったんです。」
店長として関係を築いていくのにかなり苦労されたとのことですが、他店の先輩店長の支えや販売員さんとのコミュニケーションを通して、多くの学びが得られたそうです。「当時はとにかく必死で大変なことも多かったですが、今振り返ってみるとそういうがむしゃらな時期も楽しかったかなと思いますね。」と橋口さん。
「店長となった当初に、メンバーから『もっと感謝の気持ちを伝えてほしい』と言われました。それ以来、仲間へ感謝の気持ちを伝えることをとても大切にしています。」
- 店長になってから、育児休暇を取得されたそうですね。
「出産後、1年間育休を取りました。保育所に娘を預け復帰しましたが、5日目に保育所に預けていた娘が肺炎にかかってしまって、3週間ほどまた休まなければいけなくなりました。そのときもお店の仲間はすごく心強くて、急なお休みにも関わらずお店を守ってくれたんです。もう、『ありがとうございます』『お疲れ様です』の感謝の気持ちだけでしたね。」
人生のなかで予測不可能なイベントは誰にでも起こり得るもの。不測の事態に直面したとき仲間からのサポートがあると仕事を続けていきやすい、と橋口さん。
- 仕事をしていく上で大事にされていることは何ですか。
「やはり、一番がお客様であること。お客様がいてくださってこそ、私たちがあるので。二番目にお菓子で、三番目に仲間ですね。この順番はすごく大切です。仕事をしていて自分のなかで優先順位がわからなくなったときは、この順番に立ち返って考えるようにしています。」
- 将来のキャリアに悩む女子大学生に向けて、メッセージをいただけますか。
「私自身は仕事をずっと続けてきたことで、“私らしさ”を見失わずに生きてこられたかなと思います。結婚や出産を経ても仕事を続けていることで、社会とのつながりを感じます。また、両立する中で、経験が仕事にも活かせればと思っています。天平庵がライフイベントと仕事を両立しやすい会社になれるよう、私自身もお手伝いしていきたいと思っています。」
編集後記
-大学生プロジェクトメンバーより-
「立場の違いはあれども、全員が大切な仲間であることに違いはない」
育児休業から復帰する人がいれば役員がサポートし、やむを得ず休暇が必要となる人がいればお店の仲間がカバーに努めるという天平庵。ともに働く仲間と互いに思いやりながら仕事ができる環境というのは、当たり前のようでとても得がたいものではないでしょうか。
「自分は大切にされている」「頑張りを認めてもらえている」と感じることのできる職場だからこそ、心からの笑顔でお客様をおもてなしすることができるのだと思いました。
橋口さんのように、「自分自身の軸になっている」と自信を持って言えるような仕事に就くことができれば、とても素敵だと思いませんか?「仲間と一緒においしいお菓子で奈良の魅力を広めたい。」そう思った方は、ぜひEXPO会場にお越しください。
株式会社天平庵
主な業種 食品の製造販売
所在地 奈良県桜井市吉備576-1
従業員数 正規職員30人(女性22人)
事業内容 和洋菓子の製造販売
HP https://www.tenpyoan.com/
取材担当 奈良女子大学3年生 濱口真優、1年生 石丸早紀
記事作成:平成30年10月26日