平成30年10月26日(金曜日)知事定例記者会見

司会:
 おはようございます。
 それでは、ただいまより知事定例記者会見を始めさせていただきます。
 本日は、発表案件が2件ございます。知事から発表いただきますので、よろしくお願いします。


地域伝統芸能全国大会「地域伝統芸能による豊かなまちづくり大会なら」を開催します!
《資料》 (新しいウィンドウが開きます。)

知事:
 地域伝統芸能全国大会の奈良大会を来年9月28日、29日に開催します。

 地域伝統芸能全国大会のようなお祭りは随分長く毎年されておりますが、この初期にかかわりまして地方で開催したこともあります。地域伝統芸能を観光振興の関係でやり始めました。伝統芸能が、このように観光だけでなく、伝統芸能の保存、また活用で定着してきたように思います。伝統芸能をテーマにして、地域の観光振興、地域振興を図るという手法ですが、来年9月に奈良県で開催するという報告です。

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奈良公園周辺の渋滞緩和に向けた社会実験
《資料》 (新しいウィンドウが開きます。)

知事:
 奈良公園の渋滞緩和に向けましたパークアンドバスライドの実証実験のご報告でございます。今年の11月3日と4日ですけれども、マイカーや観光バスの利用者には、なるべく、混む奥の方へ来ないで大宮通りの西でとまっていただいて、直行バスで奈良公園に来てもらおうという社会実験です。

 今までは奈良市のJR駅前の駐車場で同種の実験をしておりましたが、それに加えまして、他に3つの駐車場を追加しまして、そこで駐車をしていただいた方には木簡型の一日バス乗車券を配布します。このような駐車券です。これ自身は大変好評ですけれども、遠くへ駐車していただいた方には、この木簡の切符を、これがあれば一日バス乗り放題ということですので、それを乗車される全ての方に、お子様も含めて無料配布するということですので、奈良公園のこの周辺を見て回ろうかという方には大変お得なやり方ということになります。普通は500円でこの木簡切符を売っております。この木簡切符自身は、宣伝になりますけれども、外国人の方のお土産にすごく好評です。これ自身は大変売れておるものですけれども、これを、駐車は遠くに、中心地へ通うのはバスでというベニスみたいなことを、ベニスは、駐車は遠くへ、市内へは水上バスでというやり方ですけれども、それほどダイナミックではありませんが、やり方は同じような手法です。

 課題の駐車場の確保とその通行の足ですけれども、今度の社会実験では、新しく大宮通りの直行バスを20分間隔で運行いたします。今まで青バスと言っておりましたのは、JR奈良駅に着いておりましたが、これを西のほうの、例えば平城宮跡とか、あのあたりに停められますと、直行で奈良公園まで来られるということです。それを20分間隔で運行いたします。

 来年度に向けて、この直行バスを本格運行するための調整を続けております。奈良交通と警察と調整中です。それと、来年度になりますとバスターミナルができますので、青バスと赤バスの乗り継ぎは、もしこれがありましたら乗り継ぎ、青バス、赤バス両方いけます。ならまちなど、あるいは若草山なども行けます。市内の乗り継ぎバス、市内循環が我々は定番でありましたが、奈良公園と大宮通りバスを作ることによって観光客の方の利便を図ろうということ、それと渋滞緩和に結びつけばという試みです。

 そういたしますと、奈良公園だけでイベントというのはなかなか難しい、奈良公園と平城宮跡、両方をイベント会場にしようと今試みておりますけれども、平城宮跡、奈良公園を結ぶ大宮通りもいろんなイベント会場に、特にホテルができますと、天平広場ができますと、市役所前のホテルも大きなイベント会場になると思っておりますので、大宮通りがそのイベント通りに発達すればと考えております。来年は、ムジークフェストを開催する時に「ぐるっとムジーク」というようなバスを走らせて、その間に時間に合うようにバスを乗り継いでもらう。こちらで終わってぐるっとバスに乗れば、次のムジークフェストにこの木簡であれば行けますよというような、「ぐるっとムジーク」というテーマでバスを走らせようと考えています。この奈良公園と大宮通りが中心ですが、もう少し田舎のほうでもそのような試みをできたらしていきたいと思っております。発展形についても少し申し述べました。

司会:
 ありがとうございました。
 それでは、発表案件に関しましてご質問をよろしくお願いいたします。

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質疑応答

奈良公園周辺の渋滞緩和に向けた社会実験

時事通信:
 単に渋滞緩和にとどまらず、奈良公園周辺と平城宮跡周辺の、奈良の観光力の総合的な向上ということが一つ目的かなと思いますが、交通と観光、これをやることによって知事が持っている期待や、こうしていきたいという思いがありましたら、お願いします。

知事:
 観光地の移動手段は、世界中どこでも大事なことですけれども、自転車とか随分発達してきております。今日、自転車は言いませんでしたが、自転車も同じような役目を果たしております。奈良市の観光の大きな弱点は、奥の方に東大寺大仏殿のような有名観光地があって、そこに集中して渋滞が発生する。渋滞を解消するのに道路を造っておりませんし、大駐車場を奥に造ったわけでもありませんので、課題は、できるだけ離れたところへ駐車してもらって移動してもらう。なるべく歩いてもらうというのが、長く歩かれるのではなく、観光地の見どころは町中散歩が大きなアトラクションです。世界中どこでも町中散歩がアトラクションですけれども、その機会がなくて、大仏殿を見て帰るというような通過型観光の、さらに激しい通過型観光になってきているというのが内心じくじたるものでしたが、それを改善するという面がこの狙いの中にはあります。渋滞緩和と観光行動を改善するというのが大きな狙いです。

 そのためには別のアトラクションを作らなければいけないということで、町中散歩ではならまちの充実が一つのテーマ、これは赤バスのエリアです。平城宮跡を西のほうに造るチャンスがありましたので、平城宮跡を造るということもチャンス。それからその前にコンベンションホールですけれども、新しいホテルとコンベンションホールを造る。天平広場はアトラクション会場になる予定ですけれども、そのような大きな3つ。また、昔の話になりますが、近鉄奈良駅に屋根を造るということも、小さな広場らしくはありませんが、アトラクション会場というような構成でずっと進んでおりました。

 仕上げ的になってまいりますけれども、その通りを結ぶバスが大事でしたので、今年、渋滞緩和が激しい正倉院展などに合わせてやろうかということです。自転車の利用とか、駐車場への殺到を抑制するという予約制にすることも徐々にしてきておりますので、無予約でランダムに来られるバスはなくなりました。時間に合わせて来られるので、殺到して混むというラッシュがなくなりましたので、そのような効果も見えております。完璧にいくかどうかはまだわかりませんが、そういう努力を積み重ねてこの渋滞緩和を、来られた方に、やはりさっと来て、うまく歩いて、帰ってもらうというのが大きなポイントです。

 その中で、わずかでも歩いてもらうということが大きな観光地のポイントで、そのまちの散策と食事、土産物を買っていただくということは観光地で定番ですので、奈良県、奈良市の観光は1人当たり消費額が極めて低いという統計が出ておりますので、その改善にも資することができたらと思っております

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地域伝統芸能全国大会「地域伝統芸能による豊かなまちづくり大会なら」を開催します!

奈良新聞:
 来年の地域伝統芸能全国大会、何か奈良県らしい特色や何か仕掛け、これから考えることになるのでしょうが、チラシを見てもやっぱり地元の祭りというか芸能みたいなのが中心になってるみたいですから、県の場合、大立山まつりでも伝統芸能をやったり仕掛けもしておられる。そういうものを生かしていくのかとか、何か独自色をどこかで出すのかとか、そういうイメージ、プランはありますか。

知事:
 これができた時は、地域のお祭りを観光素材にしようという試みがあったように思います。当時の運輸省と通産省が共同で開発したイベントでした。両省が予算をつけて始めたものです。奈良の大立山もこういう発想を受けてのことだと私としては思いますが、これだけ長く続いていますので、地域の伝統芸能を観光素材にしよう、その保存に力を貸そうということが随分進んできましたので、伝統芸能自身がお役目を大分果たしてきて、もう良いのではないかという話もあるように聞いています。

 これに刺激されて、各地で同種のお祭りが自主的に行われてきていることも確かですので、奈良県は、随分後のほうでご指名がかかって、しますということで、最初ではなくて、最初は多分、奈良県は伝統芸能をあまり開発することもなかったのかもしれませんが、伝統芸能の嚆矢(こうし、物事の始まり)といいますか、有名になったのは郡上八幡の、踊りの名前は何だったか、郡上八幡で夜通しやるお祭りが観光客がすごく集めておられます。今も集めておられますが、あれが一つの見本になったように思います。ああいう、郡上八幡って本当に田舎ですけれども、郡上八幡の踊りがある時は、町中がすごいことに、夜通し踊る日が今はもう2日になったそうですけれども、それと歌ができました。有名な方の何か随分はやった歌が、そのような大観光名物になったというのを皆目指しましょうというようなプロモーションでしたので、各地で成功しております。

 今のご質問の、奈良でどうするかということですが、田舎のお祭りをもっと奨励するようにできたらと。これは伝統芸能がお祭りのようなものですけれども、そのイベントを絡めた地方の山の中での観光アトラクションといったようなことをこれから伸ばしていけたらと思っております。大立山をすることで、ススキ提灯なんかも元気になってきたとか、いろんな伝統芸能にスポットが当たるようになってきております。県としては、そのような奈良県内の、奈良市内から大分遠いところでのお祭りにスポットを当てて、ショーアップするようにしたいと思います。それが、できればこれをきっかけに続くようになれば、そこが定番になればと思います。郡上八幡の踊りは本当に、何かそのほかに阿波踊りとかいろんなものが地方の踊りでアトラクションをしているケースが随分あったと思いますが、奈良はそのような全国的な注目を浴びるほどの踊りは今まで作り上げてなかったと思いますけれども、観光の一つの大きな素材になる可能性もありますので、これをきっかけに奈良の田舎の踊りを観光の一つのイベントにできたらという試みもしたいと思います。

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奈良公園周辺の渋滞緩和に向けた社会実験

毎日新聞:
 この大宮通りの直行バスですが、来年度に向けて、運行を調整中とおっしゃいましたが、今回はその2日間だけの試験的な試みですが、来年度どんな時に直行バスを考えておられるのかということと、他の路線も含めて、このぐるっとバスの可能性をどのようにお考えか教えてください。

知事:
 来年度は通年運行にしたいと思います。その原形が今度の実験運行で入っているということです。直通運行というのと、赤バス、青バスの接続ということですが、来年度は赤バス、青バスの接続が県庁前からバスターミナルができます、バスターミナルでは接続いたしませんが、大仏前の駐車場は、今、予約制にしておりますが、あそこをこのバスターミナルに持ってくる。全ての団体バスはバスターミナルに持ってくる。まだ警察との調整中でありますが、構想という段階の話ですが、来年度の構想は、今、大仏前に入っております団体バスは、全てバスターミナルの駐車にするということです。それと、青バスは通年運行で、休日15分、平日30分だったと思いますが、これは通年であります。赤バスは休日運行だったと思いますが、15分間隔で、若草山の山麓バスも走りますが、3本系統になるというような構想で、まだ奈良交通と調整中であります。その乗り継ぎは、大仏前駐車場でしようということです。したがって、県庁前のこの入る駐車場はなくなって、県庁前で今、乗り継ぎを青バス、赤バスでやってますが、これが大仏前駐車場へ移るという構想で、今、調整中です。それを奈良交通と警察のほうで調整がつきますと、来年からの実行と考えております。

 予算は、今は青バス、赤バスは県の予算で1億円ぐらいで出しておりますが、多少増える見込みがあります。間隔も違ってきますし、平日運行を通年にするとまた違ってきますので、そのルートも、青バスがJR奈良駅へ入らないようになりますので、ルートもちょっと違ってきます。それと平城宮跡に入るルートが多少違ってまいります。来年度からの実行ではありませんが、その先で西大寺の南口が整備されますと、南口がこの青バスの起終点になればと思います。西大寺駅から春日大社までの青バス、100円バスが運行されるということになれば、この大宮通りのイベント通りが随分よくなる。それと、平城宮跡の広場へのアクセスも西大寺からのアクセスも良くなると思っております。そのような構想でずっと調整を続けておりますので、もう少しかかりますけれども、特段の見える支障があるということではありませんが予算も要りますので、また予算でお願いしないといけない面もあります。

毎日新聞:
 通年運行ということは、年がら年中走らせるという理解で良いわけですか。

知事:
 年間、青バスは休むことなく運行するということになります。

 赤バスは休日運行です。

司会:
 よろしいでしょうか。ほかにご質問ございませんでしょうか。
 それでは、その他の質問も含めましてよろしくお願いいたします。

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奈良高校の仮設校舎設置について

奈良新聞:
 教育委員会で奈良高校の仮設校舎を建てる方針が立てられまして、それはもう知事部局に報告があって、その対応も考えていらっしゃるのか、教えていただけますか。

知事:
 対応の仕方について報告してくださいというように、この前申し上げました。意見聴取されたということは聞いているところです。私直接にではありませんが、担当部局が聞いています。教育委員会はこうしたいという報告はまだいただいていません。

奈良新聞:
 仮設校舎自体を建てるという方針は出てるんですけども。

知事:
 教育委員会で、確立したんですか。

奈良新聞:
 確立はしていないです。

知事:
 いや、報告はいただいていませんということです。確立したかどうか、取材は教育委員会にしてもらうとわかると思います。私にはまだいただいてないということです。いや、もう既に聞いておられるのかと思って、聞こうかと思った。聞いてるの、方針ができたということを。

奈良新聞:
 仮設校舎を建てるという方針自体は聞いてます。

知事:
 もう発表されたの。

奈良新聞:
 はい、昨日。

知事:
 それは聞いていませんでした。報告はいただいていません。途中のご報告なら、別におかしいことではないと思いますが。

奈良新聞:
 それに対して知事のお考えは。

知事:
 報告をちゃんといただいてから対応したいと思います。いや、間接的にそういう方針だよと聞いて、それではというようにはなかなかできないのが普通だと思いますので。

奈良新聞:
 中間報告も受けてないんですね。

知事:
 受けていません。

奈良新聞:
 全く受けていない。

知事:
 はい。

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地方法人課税の偏在是正について

時事通信:
 税制改正の話、総務省が法人事業税を一部国税化して、それを譲与税にする形で地方に配分するといった案を軸に検討されていると一部報じられていますが、そういう方向性に対する知事のお考え、評価、いかがでしょうか。

知事:
 法人事業税の偏在是正の一環でありますが、消費税が上がるときに現在の地方法人特別譲与税はなくなると。それでなくすのか、それにかわるものをつくるのかという課題だと認識をしています。賛成でない大都市が多少おられると思いますが、他の都道府県、東京都以外は大体賛成であろうかと思います。奈良県としては、法人事業税の1人あたりの収入額が全国で一番低いと。東京都の6分の1か、8分の1か。

時事通信:
 多分6倍です。

知事:
 6倍ですか。6倍の差がありますので、賛成です。

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ジャポニスム2018 パリ訪問について

奈良新聞:
 パリから帰国されたのは昨日ですか。春日若宮おん祭りの行列にも参加されたと思うんですが、その感想を聞かせていただきたいと思います。

知事:
 パリのプロモーションに出席してまいりました。関経連と一緒に「奈良・関西の夕べ」というレセプションをしたり。狙いは万博の宣伝をすると。奈良の万博の関係では、大阪でやるということですが、大阪の周り、奈良だけではありませんが、京都など文化的な要素のあるまちも近くにありますよということを暗に知ってもらうという狙いはありました。そのようなお役目で行ったと認識をしています。

 奈良のプロモーション自身は、ジャポニスム2018のフランス・パリでのプロモーションの一環でしたが、ジャポニスム2018というのはフランス人に随分人気があります。春日若宮おん祭の行列は2日間あったんですが、初日の方は、ルイ・ヴィトンの美術館なんかが中にある大きな公園で、昔よりも随分にぎわいのある公園でしたが、日曜日の午後で、かつ天気がよかったということもあって、3万人近い人がその行列を見に来られたと聞いております。

 その日は私、参加できなかったのですが、県の担当者が「ステージ前の芝生が全部埋まった」と。行列は遠くへ行くと大変なので、行ってその周りをまわって帰ってくる。その行列の横に人がざあっと並んであふれるようだった。白馬に人が乗ってそこで歩かせると、万が一ちょっと動くと周りに立っておられる人に危ないんじゃないかということで、人は乗らないで、後を連れて歩かれたというようなぐらいの盛況でした。2日目も、その通りにも人が並んでおられました。1日目が、県の担当者も鳥肌が立ったと言っておりましたが、ものすごいあふれるほどの、それほどすごい反響だと聞いております。

 私が行きました2日目も、関西の屋台がたくさん出ておって、人気があって行列ができていたのはたこ焼きとたい焼きですね。2つとも、私が行った日も行列ができておりましたし、最初の日はすごい行列ができていたということです。それと、ギメ東洋美術館は行かなかったんですが、まだ仏像展示は来年になります。それとパリ日本文化会館での春日大社宮司の講演やおん祭の出演もありました。昼間は、縄文展というのをやっていて、奈良のことじゃありませんが、縄文展がすごい人気で、大使館の人たちはジャポニスム自身がすごい盛り上がりで大成功だと。

 フランスの人は割と日本の文化が昔から好きな面もありますから、それと大使に説明していただきましたが、世界中どこへ行っても中国料理はあるわけですが、パリは中国料理店よりも日本料理店のほうが多くなったと言われるぐらいに、日本食ブームということで、信じられないぐらいの、「せめて中華料理店でもあれば日本人はどこでも旅行できる」というような時代から見ると、もう日本料理店のほうがパリに多いのかといってびっくりするような話を大使が言っておられました。それほど日本への関心は強い中でのジャポニスム、それと春日若宮おん祭ということでした。

 比較しちゃあれなんですけど、武田信玄のよろい衣装も出ておられましたが、パリの人は精神的な、スピリチュアルなものが好きだからというような反応があったと聞いております。その奥深さというのを、おん祭の約900年の伝統とか、静かに歩くのもですが、そのようなものも受けるんだと、お祭りでも、例えば阿波踊りとかねぶたとかも出ておりましたが、ああいうようなのも楽しいんですが、静かに歩くというのも大変受けるような土地柄かなと、身びいきではありますけれども、そのようにも思いました。来られる人の層がもう全然違ってた、その熱さが、わあっと集まられるのは、興味がおありになるんだなと。子供も見てるんですよね。子供もああいう伝統芸能的なものを見ているので、いろいろ行ってみないとわからないものだなというのが春日若宮おん祭の大きなポイントです。

 それから、夜、レセプションを関経連と一緒にいたしましたが、随分人が来ていただきまして、万博誘致の関係者も含めて来ていただきましたので、両方とも効果があったように思います。

 それからパリ市内にジュンク堂書店という本屋さんがあって、そこでは奈良のフランス語の案内書が山とあったのが、2日目でもう全くなくなっていたようです。奈良の案内者が、近鉄奈良駅でなくなるよりも激しくパリでなくなっていたということを聞きまして、うれしいことです。「奈良の発信を直接もっとしたらどうか」というアドバイスを受けました。ジャポンという大きなガイドブックの中で、奈良は2、3ページしかないということですが、奈良の受けがそんなにいいんなら、もっと奈良の発信を、フランス人が書く青ミシュラン(ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン)という旅行ガイド、それには割と分厚く奈良はたくさん書いているんですね。日本の業者さんがつくるジャポンというのは、奈良は少ないというような感じです。フランス人は、こういう古都の精神的な内容を深く察知する能力が日本人よりあるんじゃないかなという、いつも思っておりましたが、そんなことを頼りにして奈良の深い意味のあるところをうまく発信できたらと。まだうまくできてない面もあろうかと思います。そのような感想を持ちました。

 プロモーションで行った際に大使館からいろいろブリーフをいただきまして、それがちょっと印象的でしたので簡単にご紹介したいと思いますが、先ほどの法人事業税の譲与税配分にも関係しますが、大使館でのブリーフは、マクロン政権(マクロン=フランス大統領。任期2017年5月14日~現在)が頑張っているよという報告でした。マクロン政権の頑張りというのは、日本では余り報道されないようですが、マクロン改革がチャレンジしているという報告でして、特に新聞にも多少出てましたけども、労働、働き方改革ですね。ドイツで働き方改革が、今のメルケル首相の前のシュレーダーがやってドイツが力強くなったのを横で見ておりまして、フランスは社会民主党政権、社会党が強い政権でしたが、マクロンの時代になって社会党がもう壊滅しているんですね。それにはびっくりしました。昔はジョスパンとかミッテランが社会党の大統領でありましたので、そのような社会民主主義がヨーロッパ全体強かったんですが、社会民主主義はもう全体でなくなってきているのと、フランスでは社会民主主義が壊滅しているような報告を受けてショックでしたが、それはSNCFというフランス国鉄の改革をしようというマクロンの提言も大きなことで、日本の国鉄改革に匹敵するような改革になり、労働者の優遇措置の改善ということになりますが、フランスでは公務員の優遇措置の改善というのもタブーのような国であったように記憶しておりますが、それにマクロンがチャレンジしようとしているのはびっくりいたしました。そこそこ反応がいいという話で、改革の本番がこれからだと聞き、びっくりいたしました。

 その背景にあるのは、フランスはもう既に20%を超える消費税率がずっと続いております。消費税で、安定して行ってきたのは社会保障改革だったと思いますが、フランスの社会保障改革は日本もそうですが、高齢者の社会保障、高齢化する中での医療改革が大きな改革の中心ですが、フランスは少子化対策でも随分成果を上げてきたように聞いております。そのため少子化、出生率の改善がフランスではすごく続いております。

 どうしてフランスはそんなに出生率が上がったのかという報告も受けましたが、第2子、第3子の手当が違うということと、婚外子と婚内子の差をつけないというのが大きなポイントかなと。日本は婚外子は子供じゃないみたいな扱いをするところがまだ残っておりますが、婚外子をそのように扱わないというのはとても大きなことで、婚外子率が4割か、5割近いほど多いということです。結婚同然ということで、ただ届けていないだけだとも聞きます。そのような改革がフランスで成功するかどうかですが、マクロンは働き方改革、特にグローバル化の中で労働力の質を上げよう、強化しようというような労働の改正に手をつけていますが、特に解雇条件の緩和ですね。フランスでは解雇がとても難しいことです。解雇が難しいということは、若年労働者が参入できないと。もう若年労働者がその産業に入ってこられない、産業内の高齢化が進む、入れ替えができないということですので、若年者の失業率が高い、高齢者は低い、こういうアンバランスがフランスにはあるわけです。それを改善しようという、今まで懸案であったフランスの労働条件を改善しようという大きな仕掛けをされていると聞いてびっくりいたしました。

 その背景にある政治は、左右が分かれておりまして、左がとても強く、社会党が強かったのを、左と右を連帯して、真ん中で右でもなく左でもないというのと、右も左もというのがマクロン政権の特徴であるように思います。支持率は、最初はとても高かったのが下がってきていますが、大統領制ですので任期中は絶対安全だという国柄ですので、その中での改革の成果というものは、割と各国、世界中注目しているんじゃないかなというのが大使館の報告でした。

 今、左のことを申しました。右のほうの難民受け入れに関する右派、超右派のほうの扱いがどうなるか。各国難民の受け入れ度と、オポチュニスト(日和見主義者)と言われる政治勢力の台頭と、難民の受け入れ度の大きいところはオポチュニストの台頭が激しいという論文も新聞に出ていましたが、その難民の受け入れとも関係して、右のほうに偏らないように、右の方の一部、保守派の一部もその改革の中で取り入れようという政治の姿勢だそうです。うまくいけばフランスがまた強くなる面もあろうかなという印象を受けました。日本の税制改革に今、関係いたしまして、消費税がずっと20%を超えて安定した社会保障をされているのと、その改革の余力があるというのが私にとって印象的です。日本は改革の余力は、働き方改革をされていますが、改革の余力がある間に改革ができればなとも思う次第です。

 フランスの大使館、またOECD(経済協力開発機構。本部はパリ)の政府代表部にもお世話になりました。この訪問の中で、OECD本部の事務局の次長へも訪問いたしました。フィンランドの首相をした女性(マリ・キヴィニエミ氏。2014年事務次長就任)が事務次長になられているんですね。OECDと奈良は、観光統計の会議を奈良で3年ほど前にしたことがありますが、今後ともOECDのアジア展開も奈良を拠点にして展開したい、連携をしたいというような話がございましたので、積極的に取り組むことができたと。これはUNWTOという国連世界観光機構の事務所が奈良にあるということを彼らはよく知っていますので、その国連機関と、観光振興、地域振興の大きな軸にしようというのが一つで、OECDの報告書をたくさんいただきました。その中で、イベントによる地域振興という本がございましたが、まだ読んでませんので、また読ませていただきます。

 そのほかもいろいろ行きましたが、かいつまんだ報告は以上でございます。

奈良新聞:
 奈良の出展ブースはどうだったか、あと奈良の奥深さを発信する方策としてどのようなことが考えられるか、考えているのか教えてください。

知事:
 奈良市と奈良県が2つ出展ブースを出しており、資料がもう随分なくなっていました。資料の展開なので物売りはしていなかったように思いますが、とてもいいポスターが貼ってありまして、カスパッド・スピリチュエル、精神的な散歩道というので飛火野の写真がありました。それがすごくよかった。カスパッドとはプロムナードとか散歩道というような意味らしい。飛火野のね、鹿がぽつっとあって、その写真がすごくいい写真、ああ、これいいなと、僕らでも思いました。そのポスターが「2枚あったのを1枚もらわれてった」と担当者は言ってました。だから奥深さの展示の仕方が、そのような景色でも展示できるんだなという実感を持ちました。奥深さというのは、我々の意識している奥深さを超えてフランスの方々に感じ取っていただいているのかなと感じましたので、そこに持ち出す勇気というか手間というのは要るような感じがします。行ってみて初めて、ああ、このように感じてもらう人たちもいるんだなということがその経験上わかってくるということじゃないかなと思いました。

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フランスやヨーロッパからのインバウンドについて

毎日新聞:
 非常にパリの反響がよかったということですが、インバウンドの取り組みですね、その情報発信をもっとしたらというアドバイスも受けたこともあるので、今後、県として、特にフランスをてこにヨーロッパからインバウンドとして取り組む何かお考えって具体的にどんな手を打たれるお考えですか。

知事:
 そうですね、観光のプロモーションの仕方をどのようにするか。

 一つはプロモーションをしないで、来てもらう人のリピーターを養成するというものです。奈良に観光に来てもらってサービス悪いと困るから、東京のプロモーションの反応の勉強の一つですが、談山神社とか室生寺の写真がすごくいいやと、しかし実際行ってがっかりしたよという評も聞きました。それは泊まるところがなかったり、食べ物がまずかったりというのがあると聞きました。それはこちらの責任で、実地で改善しないと、来てリピーターがつながらないというので、吉野山もまずいというような話を一緒に聞いてます。

 そのため、プロモーション一辺倒だけじゃいけないというのが、まず最初の出発点の段階でありました。それは来た人に「身がわりリピーター」と言っていますけども、次にリピーターが来るようにという観光サービスをするのが第一、どこでも第一と思いずっとやってきました。だからプロモーションは二の次だという感覚は正直ありました。

 奈良の人は、有名にさえしてくれたらもうけるのにと、こういうことをじかに言われたこともあります。『いや、サービスを良くして、もうけてもらえばいいんだよ』というように内心では思っておりました。サービス悪いというのが評判になると、ろくなことがないというのが正直なところです。食のサービスが悪いと言われ、泊まりのサービスが悪いと言われ、動きの動線が悪いと言われて久しい観光地奈良です。

 そのため、その改善に一生懸命というのが実情でございます。それがだんだん来てもらって満足がある程度できてくると、プロモーションもあわせてやろうということで、並行して首都圏ではやっておりました。どちらが先かにはなりますが、首都圏のプロモーションは春日大社にしろ、遷都1300年にしろ、大きなヒットになったと私は思います。プロモーション自身はヒットになったと思います。

 遷都1300年、春日大社の1250年、また興福寺中金堂あるいは薬師寺、あるいは法隆寺と、そういうイベント仕立てのできるプロモーション素材はたくさんあるということが一つであります。海外プロモーションも多分、ミシュランで書いてあるところをたどって奈良へ来られる方も多いんじゃないかなと感じて、ミシュラン様様のようなとこがございます。あれを見て、相当奥深く書いてもらっていると思います。ミシュランには都市のランクがあり、三つ星のランクが最高ですが、日本ではその三つ星ランクはそんなにありません。京都、奈良が三つ星、大阪、神戸は二つ星です。この差も結構あると思います。

 大阪がお客さん来るのは、関西空港のターミナルがあるからだと思います。観光地としては奈良三つ星、大阪二つ星です。このように、ミシュランの評価は大阪より奈良のランクが高いと言うことを、何かパリから帰ってきたらえらい自信持ってこう言うなと思われるかもしれませんが、海外の評判は、特にミシュランを読まれる方はそんなことだというようなことで、その反応にもそれであらわれているのかなと感じております。

 そういう戦略でサービスを良くすることは、とにかく奈良の観光客を増やすことは、まだ変わらないと思います。サービスは完璧ではありませんのでですね。それが基本ですが、並行してプロモーションも大事だなと思っています。ミシュランだけに、ミシュランのフランス語だけに頼るわけにもいけませんので、それなりのプロモーションをしないと、というふうに思います。

 奈良プロモーションについて、首都圏での反省から見ますと、東京の旅行案内のブースには毎日160以上の観光地の季節ごとの旅行商品がざあっと並べられますが、その中で奈良ということを書いてあるのは一つも、一冊もありませんでした。参議院のときに最初の一冊目をつくったんですけれども、奈良は、京都、大阪、神戸、奈良、小さな字で4つ目に書いてあるのが普通でした。だから外国の評判と東京での商品販売とは全く差があったということです。

 それは宿泊施設がなかったというのが大きな、旅行案内には宿泊施設込みで、宿泊所の宣伝みたいなのが日本の旅行案内でありますけれども、とにかく宿泊とれないと、特に外国からは宿泊をとれないと来てもらえません。とりわけ宿泊所がパリなり外国で売れないと泊まってもらえません。だから観光地があっても、大阪から行けばいいというだけの観光地になるだけですから、滞在型じゃないのを売りに出すということになります。やっぱり宿泊所がこういうのがありますよというのと、コンベンションができますということです。

 ただ、現時点ではコンベンションもできませんでしたので、コンベンションは別の売り方になりますが、コンベンションの売り方はまたプロモーションの大きな要素であります。コンベンションを売っていくということができますと、観光地として多少バランスがとれた観光地になってくると思っております。

 その中でのプロモーションでありますので、くどく言いましたが、受け皿をちゃんとつくるというのが相変わらず基本だと思います。その上でのプロモーションは、インバウンドをとってみますと、コンベンションも出てきました。それと奈良というのを独自のプロモーションをする余地が出てきたというふうに思い始めております。どのようにするかはまた考えて、コンベンションと奈良独自プロモーションというのは、やっぱり宿泊も込みで宣伝できたらと思っております。それと奈良の奥のほうにも行ってもらえるような商品ができたらなと思います。

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ホテル誘致について

毎日新聞:
 宿泊施設についてですが、先日、国の統計が出てました。ホテルと旅館の客室数が、奈良は500ちょっとふえて、伸び率5%超、そこそこの伸びでした。しかし結論から言うとまた今回も全国最下位ということでした。それで特に大阪を見ると今年1年間で、9,000ぐらいやっぱり客室ふえているという結果です。さらに力入れて、ふえているということです。

 今回の結果のまず受けとめと、今後さらにホテルの誘致という点に力入れていかれると思いますが、ここの辺どのようにお考えですか。

知事:
 奈良の観光地としての弱点は、皆さんもっとご存じなのかもしれませんが、やはり宿泊施設のトップクラスがないのが大きな弱点でした。しかし、今、建設中でありますが、まだまだあっても受け入れることができる観光地だと思います。また、そういう施設があったほうが奈良というのは魅力ができる観光地であると思います。

 したがって、ホテルがいろんな場所にもっと誘致することができたらと思っています。やはり観光地としての充実は複合的に果たしていかなきゃいけないと思っています。

 その中で進んでいるリニアの奈良市附近駅が、20年後になりますが、できると大きなインパクトになると思います。20年後には立派な観光地として、もうでき上がっていることを期待いたします。それに向けてリニアがあと5年で来るからそれホテルつくろうかという、そういう悠長なことではあまりいかないと思います。20年後を目指していろんな立地環境を整備していくことが大事かと思います。

毎日新聞:
 長期的にはそれでいいのですが、短期的には何か、さらに手を打たれるお考えはありますか。

知事:
 今までいろいろ引き合いがずっと続いておりますので、県有地でいろいろホテル化を進めてきましたが、もう県有地だけでなしに、あと民有地あるいは市有地などの話は続いております。奈良県は、その投資家とのマッチング、土地所有者あるいはこのマッチングを随分やってきておりますので、そのマッチング勢力を強化して体制をつくってきております。

 その情報を定期的に会議をして集めて、ホテルのマッチングを経験いたしましたが、資料を配って見てもらうだけじゃ、なかなか動かないですね。

 トップセールスというか、向こうの投資家にじかに当たるのが結果的に効くという面もあると思います。森トラストさんもいろいろ当たる中で、森トラストさんのとこにも聞けましたということで、やっぱり投資を直接される方にアタックをかけるのが大事かというふうに思います。

 奈良は、そういうなのをやってなかった県であります。むしろ排斥してきた県ですので、県が動くのがやっぱり大事だったのかなと思います。誰か動く、誰でもいいので、誰か動く人がいないとと思います。

 高山なんかは観光協会の協会長がそうやってセールスをずっとかけておられました。民間の人でもいいんですよね、ある程度地元の旅館業がある場所はなかなか難しい面があるのですが、吉野みたいなところは、新しい投資がないと観光地というのは競争に負けてしまいますので、名が通った観光地はいつもこういう波になりますので、こう落ちてきたときに、またこう次の波が来るように、新しい投資が来るように、皆全ての観光地がそのように努力を重ねておられますので、そのような波がまたぐっと来ますので、まあまあ下がり潮と上げ潮が両方重なってきますので、上げ潮の部分の努力を続ける必要があろうかと思います。

 その担い手は誰かということになりますが、奈良県の周りでは県がやるのも一つだろうと思い、マッチングの努力をしております。

 また、マッチングですので、調整ないし進行の話は、また発表はそれぞれがされることになると思います。情報は多少知っておりますけど、余り進行中のはいつ壊れるかわからない面もありますので、最終的に発表されるまで予断を許さない面もございます。

 聞いている情報がうまくいきますと、まだ数年ホテルの客室数は伸びるように思います。

 それでも今、奈良のホテルは後ろから2番目の46位です。

 そこから45位までなるのはまた大変なことです。45位は佐賀、47位が徳島、46位が奈良です。

 45位を抜かすのにはまだ何千室もふえないと佐賀を超えないというような状況です。

 まだまだ46位が定着みたいに感じておりますが、これだけの観光素材がある中での46位というのは正直情けなかったなと思っています。

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東京オリンピック公式記録映画監督について

奈良新聞:
 もうこれは知事に感想だけお聞きすることになると思います。観光もですけど、文化、奈良の精神的な、というところでふっと今思いついただけなんですけど、2年後ですか、東京オリンピックで河瀬監督が記録映画監督になるということで、何か感想おありかどうかお聞かせください。

 そういう奈良の精神文化的な映画をつくり続けてきた人でもありますし、ちょっと奈良とのかかわりも多いしということで感想はございますか。

知事:
 オリンピックの公式映画監督というのはすごいポストなんです。パリから帰ってきて新聞の切り抜きで、森さんと武藤さんの間に河瀬さんが立っている写真が出て、ああ、すごいんだなと思いました。びっくりするほどすごいことだと思います。

 それは日本の文化というのを河瀬さんの感性で紹介されるきっかけになるんじゃないかと思います。日本の文化は割と奥深いですので、奈良からとってみれば、奈良の文化の特徴は国際性だと思います。日本の歴史の中で一番国際性が、明治維新よりも国際性が強く、しかもうまくいった時代だというふうに私は思っています。

 戦争もしないで独立性を保ったというようなことはうまくいったということです。しかも、いいとこ取りと言われますけども、唐中心のいい文化を取り入れて、というのは国の意思でした。そのように何か器用なことをやってのけた政権だったと思います。そんな政権は二度となかったと思います。明治維新もそうでもなかったと私は思います。

 そのような国際性を、奈良にある文化財が証明しております。中央アジアあるいはヨーロッパ風の文化財があるということは、そのような証拠の一つになると思います。

 そのような日本の文化形成の歴史を一朝一夕に表現するのは難しいことだと、それが我々の精神の中に取り込まれて、この中で考えているのはどこの要素が入っているんだろうかというのを探索する人もいるわけです。

 たとえば本居宣長みたいに唐心と和心、大和心を分けるとする器用なことも、なかなかもうできないような時代になっていると思います。

 だから、河瀬さんが奈良の田原とか吉野とかの片々たる地域での感性を日本文化の解釈にどのように持っていかれるのか興味津々なところはあります。

 日本の縄文が受けるというのも不思議なことだと我々は思う面もございます。またある面すごいなというのは、縄文が1万年続いたと同じような文化の形態が1万年続くというのは珍しいんだそうです。征服があったり、飢餓があったり、自然災害があったり、1万年続くということは自然災害を克服したり、征服とか人種の入れかえがなかったということの証明だそうでございます。そのような自然災害にもめげず安定した社会を築いてきたというのは、どういうふうに世界史の中で表現するかという面もあろうかと思います。

 この日本の文化を解釈するには、彼我を比較して、外国ではどうなのかを比較する上での日本の文化の位置づけということがもっと行われた、俺たちは俺たちだというだけでは何かどこを、自分たちをどのように意識しているかわかんないというのがいつの時代でもあります。閉じこもりのときは、俺たちは俺たちだけですが、ものすごい広い、オープンな社会になってきています。オープンな社会になると、おまえとこはこうだ、うちはこうだと寛容性が彼我の比較から出てくる面があると思います。違うのもあるんだなと、うちはこんなように違うけど、向こうは違うんだなというのがあるんだなというような社会になってきます。フランスかぶれして帰ってきたかもしれませんが、フランス人は違いを国内でもだかえていますので、その外国の違う文化に対して寛容とか興味津々というのはおもしろいところです。

 俺たちの文化と違う文化というのを、寛容だというのを、無理して寛容じゃなしに、寛容だというのはものすごい、そもそもおもしろいんだ、興味あるんだということの取り入れは日本人にない面のように思います。そのような寛容さと自己認識の文化の発信とは裏腹だと私は思います。

 河瀬さんがどのように日本の文化を発信されるかというのは、興味、私の観点からはそういう意味で奈良の国際性と結びつけて、どのように今の時代を日本の文化を発信されるのか興味深いことです。

 これはオリンピックの発信、日本の文化をオリンピックでどのように発信するのかというのとも結びつきますが、本当は、そのスタンスはまだ余り明確に出ていないように思います。

 時々東京に行って文化庁の長官など、誰がオリンピックのセレモニーのプロデューサーになるんですかということを聞くんで、まだ決まってないと思いますが、どのように文化を発信するかというのはとても大きなテーマです。

 開会式は世界に映像が流れますので、それがどのように日本の文化を表現されるのかといったようなことが、その程度が問われるような感じがいたしますが、興味持っているところであります。

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正倉院展

読売新聞:
 明日から正倉院展が始まりますが、国の機関の主催ということで、奈良県としては渋滞の緩和ですとか、どちらかというと受け身な体制なのかなと思うんですが、今回、菊人形で少し関連のことをやっておられますけれども、20万ぐらいの観光客が来るというせっかくの機会を、県として今後何か生かしていくというようなお考えはないのでしょうか。

知事:
 今の正倉院に興味を持たれるというのは、正倉院は奈良の文化かどうかちょっとわからないとこがあります。正倉院は天平文化が残っているというような感じがしますが、奈良に残っているというので誇らしいとこだと思っています。桓武天皇のおかげだと思っています。桓武天皇がお坊さん来いよと言ったら、正倉院もみんな行ってたかもしれません。桓武天皇が奈良のお坊さん、南都は来なくていいよとおっしゃったので、泣く泣く残らざるを得なかったので奈良の文化、当時の文化が今、奈良に残っている。なかなかそういうものはないですね。文化ができても、その地には残らないという文化の地が多いわけですが、残っているものを今生きている我々としてどう利用するか。当時の奈良にあった文化を我々現在を生きている者が深く理解しなくてはいけないという課題があるように思います。

 よく奈良人の奈良知らずと言われますが、あるいは奈良に来られた方も、奈良をよく知っていただいて、むしろ新しい感覚で教えていただきたいというふうに思うところはあります。奈良に住んでいると、子供のころ、あるものはどこでもあるんだと、ありきたりに見えるところがあります。奈良の鹿は、どこにもないのに、どこにも鹿はいるもんだと思ったり、大仏さんはどこにもあるんだと思って、東京に行ったら全然見当たらなかったというのは、東京に行って初めて奈良にあるが、ほかにはないものがたくさんあるということがやっとわかったというようなことです。子供のころはそれしか世界にないわけですから、みんなあるのだと、奈良は独特でも独特じゃないんだと思い込んでしまうところがあります。これはどこでも同じことだと思います。それは行き来がない地域で残っているからだと思います。

 街道筋は色々な人が来ますので、何だ、こんなところは、他ではありきたりだぞと言われたり、めったにないぞと言われたり、耳で入ってきますので、ほかは皆見聞しなくても行きずりの人から教えてもらうことがたくさんあると思います。街道筋の人は耳が肥えているわけです。奈良は街道筋、伊勢に行く街道が残っていますが、その後発達した街道というのはありませんので、奥深いところで住んでしまった。奈良みたいなところは、今は外に窓を開こうと思ったら開けられるし、閉じようと思ったら閉じられる。ところが、先ほどの宿泊施設ではないが、閉じこもってやろうよというメンタリティーが強いということは今も多少というか、大分残っているとこがある。それを回復しないと奈良の文化は自己認識が出ないというふうに思っています。受け身とおっしゃったのは、多分そういう意味が本質的にあるんじゃないかなと。発信まで至らないというのは、自己認識が十分じゃない、こんな良いものを知っているのに、ほかの人にも教えたいといったような発信のパターンになればいいのですが、これは発信するとお客が来るよという悲壮的な発信と、これはこういう意味があるんだからほかの人にも知ってほしいと、これは日本文化全体もそうです。こんな日本文化、こんないいのがある、私のエネルギーになっているのだから、ほかの人のエネルギーにもしてほしいというようなタイプの発信と迫力が違うわけです。奈良だけでなく日本文化自身もそのような面があろうかと思います。私の望みからすれば、奈良の文化の持ってきた、過去の文化ではありますけども、良さを我が物にして、それをいいよというふうに発信をすることができれば、受け身ではなくなると思う。

 奈良の文化の発信は、最近では、会津八一に代表されますように、新潟の人が発信してくれたり、奈良の発見は、亀井勝一郎さんが、奈良の古寺を巡礼して日本の文化の本質を、敗戦後、傷ついた日本人の心を癒やす奈良を発見してくれたというようなことがあります。様々な高齢化に向かう中で、奈良に来て癒やされるという人もたくさんいますので、奈良を素材にした色々な文芸作品も出るかもしれません。それを我々奈良の者はなかなか、奈良に住んでいる者はなかなか奈良のものを発見して作り出すことができない面はあるかもしれません。パリでの発信も同じですけど、本質は何なのかということを発信できたらと思います。本質は何なのかということはよくわからないところがあるが、ギメでの仏像展示もそうで、今度の春日若宮の発信も同じですが、スピリチュアルだという、精神的な面がありますよというと何となくわかる面もある。どのような精神構造かといっても、なかなか日本人自身がそういう考えを持っていないからわからないのですが、違うでしょう、精神的な感覚が随分ありますよと、来てもらうともっとスピリチュアルになりますよといったようなことを向こうで言うんですよね。

 ほかの観光地と違うのは、奈良の何か残された、神や仏様がたくさんおられるので、自然と精神がすごく気持ちいいですよ。精神的な癒やしといいますか、ありますよというようなことをわっと宣伝する。人の解釈によるので、そういうような宣伝の仕方が定着するのかどうか、発信の仕方というのはポイントかと思いますが、奈良のポスターが出ていますけど、大仏殿、桜、それからあれは鹿ですか、そういう何となく即物的なのが多いが、精神的なものを映像で発信するというのは、先ほどの河瀬さんの話ですけども、なかなか難しい面がある。パリの奈良ブースで見たポスターは、ここに掲げてある全てのポスターと全く違う。あれは何かすごかったなと私は思いました。だから発信の仕方というのが一つ。

 奈良に来られて、正倉院に来られる、正倉院は関心の的でありますので、正倉院だけ見て帰られる人も多いが、この機会に奈良のほかのところも回っていただけたらというように、このぐるっと見て回られるだけでもまたちょっと違う。その後の正倉院と違う文化が、日本の文化はずっと長いし、味わいがあります。中世も違う。我々このような仏像を我が物のようにしておりますが、ヨーロッパの人、外国人から見ると、どうして仏教が日本に定着したのと、こう内心は皆思っておられます。その仏教、仏教と我がことのように宣伝するのですが、インドから中央アジアを通ってきた。中央アジア経由して来たというのはすごい味わいのもとだと思います。それをどのように表現するのかなかなか難しいなというふうに思います。私ができる仕事ではありませんが、奈良の素材というのは奥深いものですから、それが発信できるようになれば、すごく奈良にとってもいいことだと思います。

 奈良のあるものは、国宝も多いのですが、なかなかうまく見て回れないという難点がありますので、この大仏一つ見て帰るというだけではないよということをうまく、正倉院だけでなく、正倉院というのは、実際は正倉院の建物は中に入っていて見れないのですが、正倉院自身がまちの中で見れるようになればいいなと思ったりもします。いろいろ答えには全くなっていませんけれども、おっしゃった質問の意味はよくわかりますので、それに向かって格闘したいと思います。

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県立高校耐震化

NHK:
 県立高校ですが、今回、論点の一つが耐震化をするまでの間の安全確保というのがあって、耐震化に時間がかかるのでそれまでどうしましょうかというところですが、それについて、奈良高校の校長先生は考えていなかったということをおっしゃって、謝罪してましたが、本来やっぱり耐震化することと、それまでの安全確保というのはセットで考えるべきと思うんですが、県立高校ではどうもそうではなかったと。こういう今の事態をどういうふうに受けとめますでしょうか。

知事:
 校長先生とか教育委員会が考えていなかったとおっしゃるのは残念ですね。その一言ですね。私どもの立場からは、考えておけばよかったのにということです。考えていれば、予算の相談にも来ていたと思います。教育委員会の立場がないじゃないですかね。私からのコメントは、ありません。残念ですねということですね。教育委員会制度がある上で考えなければいけない人は誰だったんですかという。これはさらに塩を塗るようなことですので、そうは言いませんけれども、残念ですねと思います。

NHK:
 その間、生徒さんも教職員の方も、そういう校舎で過ごさざるを得なかったと、もう卒業された方もいるでしょうけど。

知事:
 残念ですね。教育者の方、頑張らなければいけなかったですね。

NHK:
 今後、奈良高校の耐震化で何か仮設校舎、プレハブなのかわからないですが、何億円単位とかで出てきて、あるいは他も補強しますみたいな話をしていて、億円単位でその事業費かかってくると思いますが、それは報告があり次第、補正予算で対応していくというお考えですか。

知事:
 そうですね、ちゃんと対応が出てくれば、対応案が出てくれば、議論して対応したいと思います。

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知事選について

奈良新聞:
 もう知事選挙まで半年ぐらいになりまして、腹づもりも決まっているのかなと。先ほど、ぐるっとムジークの話も出ていて、出馬するのかなという、何かそういう感触があるんですけど、もう何かそこら辺はどうですかね。

知事:
 感触があるのですか。いや、腹づもりは全くできていませんが、腹づもりないのに来年のことを言うのはおかしいじゃないかとおっしゃらなかったけど、どういうわけだというふうに突っ込まれるわけでありますが、我々の仕事はムジークだけではなく、リニアのことなども、何度やってもリニア来るまで20年かかりますので、完成まで仕事ができるわけじゃ全くありませんが、その都度、その都度せないかんことがたくさんあります。来年のことは今年練らないと、来年のことを出てきてその場で考える、先ほどの校舎じゃありませんけど、前倒しでどんどん練っていかないと対応の知恵が出ないのが我々の仕事ですので、一つ一つこの渋滞対策にしても、バスターミナルができるならば、バスターミナルができることによって渋滞緩和をどのように発現させるのかという検討はしておりましたので、その結果がぐるっとムジークのような、あるいはぐるっとバスの再編のような案でしたので、その都度考えることを精いっぱい考えるだけのことです。

 来年のこと、再来年のことを考えたら選挙に出るのかとはおっしゃっていないが、その全く関係はないというふうに思います。来年のことを考えたり発表したりするから、何か立場に関係するのかということじゃ全くない。そのようなことをしなくてはいけない立場だというふうにずっと思っていますので、それだけのことです。来年やる仕事を今考えるのが今やる仕事ということであります。

奈良新聞:
 選挙のことはまだ考えて……。

知事:
 腹構えがあるかという質問から、考えてないかという質問に変わったわけですが、考えていません。

司会:
 ほかにご質問はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、これで知事定例記者会見を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

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(発言内容については、読みやすくするために、広報広聴課で編集しています。)

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