「このくにのかたち」を考える(その23)

JAMP-時事通信社- オピニオン寄稿(2019年6月13日 掲載)
         「このくにのかたち」を考える(その23)




 

1.どうすれば地方政治は良くなるのか

 
地方政治が良くなれば、地域は元気になると信じています。どうすれば地方政治は良くなるのでしょうか。
このようなテーマで、去る4月26日、奈良県主催のシンポジウム(平成31年度第1回奈良県・市町村長サミット)を開催しました。講師・パネラーとして、北村亘(きたむら・わたる)大阪大学教授、待鳥聡史(まちどり・さとし)京都大学教授、砂原庸介(すなはら・ようすけ)神戸大学教授といった、この分野の第一人者の方々においでいただき議論をしました。
私からは、議論のポイントとして、(1)良い地方政治実現のためには、首長の「やる気」と「情熱」が絶対不可欠。どのようにすれば、例外や見せかけだけの首長がなくなるのか(2)首長と地方議会との良い関係とは(3)地方議会、地方議員の役割をどのように考えればよいのか(4)地方政治のステークホルダーである住民、有権者との有効な対話をどのように実現するのか。地方政治の場におけるマスメディアの役割をどのように期待するのか。住民の政治への無関心をどのように克服できるのか(5)国の政治と地方の政治との関係、国の政党と地方の政党の関係はこれからどのようになるのか―といった点を提示しました。

2.地方政治の課題は多様

 
講師・パネラーの先生方からは、(1)大阪での都構想をめぐる政治課題と維新の役割(2)地方政治の二元代表制と政党制の意味(3)国政と地方政治における与党・野党の役割の違い―などについて幅広い所見が示されました。  
議論のポイントの幅が広く、まとまった議論は難しいかと思われましたが、参加いただいた市町村長31人、県議会議員8人、市町村議会議員101人の皆さまには、最後まで熱心に耳を傾けていただきました。
率直な質問も会場から出されました。地方政治についての議論はまだこれからという印象でしたが、地方政治の現状と課題から見て重要な論点は、(1)地方分権が進んだことにより、地域における国政と地方政治の役割が変化し、地方政治の重要性が増していることをどのように捉えるのか(2)二元代表制である地方政治における政党の役割は、国政の政党と同じであるべきか(3)首長と議会の対立の諸相をどのように克服するのか(4)有権者である住民と議会との関係をどのように構築するのか―といった諸点が挙げられると思われました。
奈良県内各市町村および県政治の現場の様子はさまざまで、その課題をどのように体系的に整理し理論を構築するかは、結構難しい問題であり、入り口で立ち止まってしまいそうです。

3.住民と地方政治の距離を近くするには

 
このシンポジウムの議論を聞いてまず思ったのは、住民と地方政治の距離を近くすることが大事だということです。市町村政治も県政治も住民との距離は遠いように感じますが、地方政治の住民生活への影響度合いは決して小さくないように思います。
にもかかわらず、地方政治の動向に住民の方々の関心度が低いのは、地方政治の役割や地方議会での議論内容が住民の方に十分知られてないことが、理由であるようにも思います。
もともと、地元ニュースの「量」が少なく、大阪への通勤者が多いこともあり、地元政治への関心度が低いと言われる奈良では、このような傾向に対し、地方政治を良くし、地方政治の民主主義を育てる観点から、どのように立ち向かえば良いのでしょうか。

4.信頼できるローカルニュースの存在は民主主義の基盤

 
最近、米国ニュージャージー州の知事が、ローカルニュース振興のため、7月からの新年度予算に百万ドルを要求、州議会も賛成しており、5百万ドルへの増額も検討しているというニュースを見ました。ローカルニュースが少なくなると、国政の分断の雰囲気が地方に持ち込まれ、地方の住民の意識を分断させるということが理由だそうです。
住民が選挙などに必要な信頼できる情報を入手できない「ニュース砂漠」の危機を克服するため、地元ニュースの質と量を向上させるアイデアを広く募り、中立的な機関を作ったうえで、複数のプロジェクトを支援するということのようです。
また、最近、県を訪問されたスイス国ベルン州の方々からも、ローカルニュースの担い手が弱くなり、地方の住民の政治意識が二極化される傾向があるという話を伺いました。ヨーロッパでもローカルニュースの減少と世論分断の危機が起きていると感じました。
メディアの記事編成の独立性を確保しつつ、ローカルニュースが住民に十分届くことを可能にする道はないものでしょうか。ローカルニュースは民主主義の基盤であると思います。