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ふるさと奈良への便り
 
   山々の稜線(りょうせん)が濃く淡く折り重なり、朝霧が音もなくたなびく。秋には柿の実が色づき、春には緑の中に桜が咲き誇る。標高五百メートルほどの、奈良県宇陀郡室生村の山間の地が、私の故郷(ふるさと)だ。高校時代は勉強もしたが、現金収入を得るために知恵を絞った。裏山の竹やぶで竹の皮を拾い、近鉄の榛原駅前の肉屋へ持っていくと買い取ってくれた。夏休みには見よう見まねで兄とホウレン草を作り、大阪の鶴橋駅近くの青果市場で大人たちに交じって売りさばき、代金で魚を買って帰ると家族が喜んでくれた。
 いつかは家を出て独立するしかない農家の次男坊の私に、故郷の大地は、“生きたお金をこしらえて使う意味”を教えてくれた。いま思えば、あの頃に今につながるビジネスの道を、私は歩み始めていたのかもしれない。
 奈良は、古代史の舞台であり、日本の文明の発祥の地でもある。今ではなかなか帰ることができないが、私は故郷の奈良に帰ると、ほかの土地では得られない大地からのパワーを感じ勇気が湧いてくる。私は、奈良で生まれ奈良で育った若い人たちに期待している。“奈良の地力”を信じ、けっして小さくまとまることなく、スケールの大きな夢に挑戦していって欲しい。

※奈良県宇陀郡室生村は市町村合併により宇陀市へ
 
 

 

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