県民だより奈良トップページへ

奈良 伝承

奈良 伝承
始まりは奈良時代。骨太な竹骨に紙を貼り渋を塗っただけの「渋団扇(しぶうちわ)」が、後に透かし彫りが施され風雅なものに。現在は、池田含香堂(いけだがんこうどう)で唯一作られ、奈良県の伝統的工芸品として指定されています。
sp
奈良団扇について教えてください。
sp
 色鮮やかな手漉(す)き和紙に、奈良風物や正倉院の文様など伝統の透かし彫りを施した、軽くて丈夫な団扇です。実用性にも優れ、また、インテリアとしても美しいアイテムなんです。多くの方に日常品として使ってほしいと思います。
繊細な模様を描き出す「透かし彫り」は、かなりの力がいる作業。
sp
どうやって作るのですか?
sp
 膠(にかわ)を塗った和紙を5色に染め、湿気の少ない寒い時期に自然乾燥します。乾いた和紙を20枚重ね合わせ、上に型紙を置き、透かし彫りの模様を和紙に写します(型写し)。次に、和紙の束を台の上に置き、細い先の小刀で模様の型通りに一気に突き彫りします(透かし彫り)。透かしの入った和紙と団扇の骨に自家製のりを付け、貼り板で叩(たた)くように表裏1枚ずつ、模様がずれないように貼り合わせます(叩き貼り)。これが一番難しく細心の注意を払います。
 のり付けの終わった団扇は一昼夜自然乾燥させ、2枚合わせの竹べらで、骨が浮き上がるように筋を立て(念はぎ・筋立て)、手元と呼ばれる骨と柄の継ぎ目の部分に透かし模様に合う模様紙を貼ります(手元貼り)。裁断用の刃物で外周の余分な骨や紙を切り落とし、裁断された団扇の縁に紙や絹を貼り、全体を美しく仕上げます(ふち取り)。
型写しの作業
天井に張った紐の上にのせ、団扇を乾燥させる様は華やか。
sp
奈良団扇を継ごうと思ったきっかけは?
sp
 26年前にここに嫁いできました。当時は店番だけでしたが、夫は13年前に他界し、義父(4代目繁さん)が忙しく仕事をしているのを、見様見真似で手伝っていました。家族ですから自然な形でね。私がやらなければと思うとしんどいと思うんです。その義父も2年前に他界しました。
すべて手作りの道具
sp
奈良団扇を継ごうと思ったきっかけは?
sp
 「たくさんある中の1本でも、それを買うお客様にとっては1本の奈良団扇」と、夫に教えてもらいました。なので、お客様に喜んでいただけるよう、仕事中は気を抜かず、気合いを入れて仕事をしています。そして、21歳の息子が後を継いでくれそうです。そんな気持ちになってくれた息子に感謝。伝統工芸を先代から代々継いできた両親に感謝。伝統工芸を守っていただいていることに感謝。全てのバランスが揃ったことに感謝の気持ちです。
義母のアヤ子さん(左)と共に奈良団扇を伝承する俊美さん
池田含香堂
所 奈良市角振町16(三条通り)
tel 0742-22-3690
fax 0742-22-7122

このページのトップへ