第8回奈良県教育懇談会討議の概要
 
◇日時  平成14年3月29日 13:30〜16:00
 
◇場所  奈良市法蓮町    「春日野荘」(天平の間)
 
◇発言のポイント
 
T 意見交換
 
 
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◇議事概要
 
T意見交換
 
【会長】只今から懇談会の討議に入りたいと思います。それでは、次第に沿って進行いたします。
 最初に、前回に予定していた生涯学習の議論が十分には行えませんでしたので、その続きをということで「地域の教育力の充実」という点に絞ってご議論をいただきたいと思います。
 まず、このテーマの関連資料をご準備いただいた生涯学習課に説明をお願いしたいと思います。
 
【事務局】学校週5日制が、いよいよ4月から始まります。お手元の資料は、完全学校週5日制の実施を踏まえまして文部科学省が実施したものを、速報として取り纏めたものです。本調査は「子供調査」と「成人調査」から成っていますが、「子供調査」から順に浮き彫りにされてきた内容を紹介いたします。
 1番目に、「学習塾に通う子供は、小学校5年生で39%、中学校2年生で50%」と、学年進行で非常に増加の傾向があります。そして、学習塾に通う子供はどの学年も平日が多く、土曜・日曜は少ないという結果が出ています。
 2番目に、「中学生の3人に2人は、ほとんど毎日学校の部活動をやっている」という結果が出ています。また、学校が休みの日にすることについては、中学2年生の60%が学校の部活動をよくすると答えています。
 3番目に、自由時間の過ごし方は、「小学生は遊び・テレビゲーム、中学生はテレビ・テレビゲーム、高校生は話・雑談」が多いという傾向が出ています。
 4番目に、「地域社会とのかかわりは、小学校高学年がピーク」という結果になっています。つまり、顔と名前を知っている近所の人がいる、いつも声をかけてくれる近所の人がいる、いたずらをしたりすると怒る近所の人がいる、公民館や児童館などの行事に参加する、あるいは祭りなどの地域の行事に参加することなどが多いのは小学校5年生で、中・高校生になると地域とのかかわりが希薄になっています。
 5番目に、「増える土曜日の休みは、小学生は野外での活動、中学生は屋内での活動」という傾向が出ています。
 6番目に、「髪を染めたりアクセサリーをするなど、同年代の人たちの行動について、中・高校生は肯定的である」という結果が出ています。
 7番目に、中・高校生は、土・日が連休になっても、地域の小学生たちの世話をしながら一緒に遊ぶ等の項目で「関心がない」と「あまり関心がない」を合わせて半数を占め、地域活動への参加に対する関心が低いという結果が出ています。
 8番目に、「地域の人たちとの触れ合いが多い子供ほど積極的な地域での活動を希望し、日常生活の充足感も高い」という結果が出ています。
 9番目に、「地域の人たちとの触れ合いが多い中・高校生ほど地域活動への関心が高い」といった傾向が出ています。
 少し補足になりますが、平成10年度に当時の文部省が行いました子供の体験活動に関するアンケート調査によると、「生活体験とか自然体験が豊富な子供ほど道徳観とか正義感が身に付いている傾向がある」という報告がありました。
 続いて、成人調査の結果を紹介します。
 1番目に、「ボランティア活動をしている大人は1割程度」という実情であります。
 2番目に、「大人の約半数が趣味やスポーツ等の活動等に参加をしている」という結果が出ています。参加していない方に理由を聞いたところ、「忙しくて時間がない」が最も多かったようです。
 3番目に、「社会のルールを守ったり、人を思いやる気持ち等の子供の徳性を育てるのは、学校や地域社会よりも家庭の役割である」という傾向もあります。
 4番目に、「子供への支援をしてみたいという大人は少なくない」という結果が出ています。協力依頼があった場合に、自分の特技や経験を生かして学校でのボランティアに進んで協力したいという者は少ないものの、できる範囲で協力したいという者が6割程度いるという結果があります。
 5番目に、「子供たちの週末の過ごし方への期待は、家や身の回りの清掃やお手伝い」という回答が最も多いようです。
 6番目に、「完全学校週5日制になったときに行政に期待することは、地域でのスポーツ活動や自然体験活動を盛んにする」が多い。
 7番目に、「社会教育施設等での学習活動への参加が多い大人ほど、若い人たちの行動や行為に厳しい見方をしている」という結果が出ています。
 8番目に、「社会教育施設等での学習活動等への参加が多い大人ほど地域の子供の支援に積極的である」という結果が出ています。
 以上が文部科学省から発表された全国的な結果でありますが、奈良県も概ね基本的に共通する部分が多いのではないかと思います。従って、この場で色々と我々にご指導いただければ有り難いと考えています。
 最後に、子供を地域で育てるという事業の一つとして14年度から奈良県では、新たに「軒先あそび」という事業を進めていきます。これは、地域や学校における子供の集団遊びとか体験活動・奉仕活動を通して、地域社会の一員としての自覚や生きる力を身につけることをねらいとし、先程のアンケートで見られるような課題に対する取り組みの一つであります。
 
【会長】それでは、只今のご説明に関わりまして、ご意見をお伺いします。
 
(「子供のためのボランティアをしてみたい」という声を県教育行政の中でどのように反映させるのか。)
【委員】成人への調査の4点目に、「子供への支援をしてみたいという大人は6割もおられる」という結果であったのですが、同じく、本県の5,000人アンケートでも7割以上のたくさんの方がボランティアをしていいという答えをしておられます。私はこれらの結果は大変なことだと思い感激しています。奈良県では、新年度どのように県の教育行政の中で具体的に考えて行こうとされているのかお教えいただきたいと思います。
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(「軒先あそび」推進協議会や支援センターによる地域活動のコーディネートの過程でボランティアの方々の協力を。)
【事務局】子供のためにボランティアをといった気持ちをお持ちの方にご協力いただくということで、先程申しました地域で子供を育てる「軒先あそび」の事業を進めるに当たり、県や市町村で推進協議会を設置して、さらに支援センターを将来的に創っていこうと考えています。その支援センターでは、色々な地域の活動のコーディネートすることになり、その過程でボランティアの方々のご協力をいただければ有り難いと考えています。
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【委員】NPOのような組織を各地域でおつくりになるということですか。
 
【事務局】NPOになるか行政の中にそのまま入るかはそれぞれの市町村によりますが、とりあえずは現在8市町村で「軒先あそび」の取り組みがモデル事業として進められており、これからそういうような形のものが充実していくだろうと考えております。
 
【委員】ありがとうございました。
 
(完全学校週5日制になったときのスポーツや自然体験の充実をどのようにお考えか。)
【委員】「完全学校週5日制になったとき行政へ期待することは、スポーツ活動や体験活動の充実と情報の提供」ということに関連してお尋ねします。スポーツと、山や川などの自然を体験することが期待されているわけですが、スポーツの充実はどういう形をとり、また、自然体験の充実はどのようにお考えであるのかお聞きします。
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(「軒先あそび」事業の中のスポーツ活動を推進する。また、体育指導員協議会・指導者バンク等を活用しながら地域にフィードバックする。)
【委員】スポーツ活動の充実については、先程、生涯学習課の方から「軒先あそび」事業の説明がありましたが、その事業の中にスポーツの一環もあり、指導者や場所の提供をしながら子供を集めて、週末にスポーツ活動をするという計画です。それ以外に、各市町村におきましても体育指導員協議会とか、あるいは県でも指導者バンク等もあり、それらを活用しながら地域にフィードバックすることも現在考えています。
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(「軒先あそび」事業の中の自然体験活動を推進する。また、青少年野外活動センターでは、キャンプや自然体験の催しを実施。)
【事務局】県では色々な事業がありますが、例えば、先程の「軒先あそび」では、各市町村で、地域の自然を活用した内容を取り込んでいただいております。また、県の青少年野外活動センターでは、大和高原の大自然の中で四季折々の企画をして、親子の触れ合いを求めてのキャンプや自然体験の催しを8回程度実施しています。各市町村では、これからさらにプランとして煮詰まっていく状況です。
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(吉野青年の家が閉鎖されてしまう。県の自然体験の施設を今後どのようにしていくのか。)
【委員】今回「軒先あそび」を計画されているようですが、少し子供たちにも我々にも分かりにくい。
もっと積極的な方針もあっていいのではないかと思います。
 また、自然体験の施設の1つである吉野青年の家が閉鎖されると聞いている。そうすると県立の自然体験の施設は吐山の野外活動センターだけになり、それを充実させていかなければならないと思うが、今後どのようにしていくのかをお尋ねしたい。
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(野外活動センターについては、県としても最大限の努力をして充実を図りたい。)
【事務局】野外活動センターにつきましては、私どもとしても最大限の努力をして充実を図ってまいりたいというふうに考えていますが、今具体的にこれをという言葉で表現できるものはございません。
 それから、いわゆる自然とのかかわりでは、大台ケ原のシカの調査とか自然観察・清掃活動を通して自然保護官の体験をし、環境保全の意義を学ぶ子供のパークレンジャーという国の事業もありますので学校にもPRをして参加を求めたりしています。
 また、あぜ道とせせらぎづくりなどの地域の自然体験活動の場を登録して、その場で色々な活動ができる事業を市町村で行っていただいています。
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(自然体験を充実する具体的な施策を15年度には期待する。)
【委員】青少年に自然体験をさせると言いながら、野外活動センターを具体的に充実する方法を言えないというのが合点いかない。自然体験の場所を少なくしていってるわけで、これは廃止していくかわりこっち側を良くしていくというのが当然の姿であるべきです。本来は、ここも残してさらにもう一カ所を自然体験の場所として探していくのが県の教育方針であって欲しいわけです。それが見られないのは、私としては残念です。自然体験の施設は、子供会、PTA、ボーイスカウトなどの色々な活動に活用できる。もっと積極的に捉えていただき、次の15年度には大いに期待と要望をしておきます。
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(子供に関する教育は学校だけでなく、社会教育にも目を向けた予算措置を。)
【委員】私の見る限りでは、子供が地域の社会についてどう思っているかという意識は、全国的に7、8年前から全くこのとおりで変わっていません。それに対して「県はどう考えてるの」ということをちょっと聞きたかったわけです。我々から見ると、県の教育委員会は子供に関する教育は学校だけしか考えられてないような感じがします。つまり、啓発または参加しなさいという掛け声だけで、予算は全く付けていないという形で進んでこられ、歴代の課長にはいつもご支援をお願いしております。その中でも、6年ほど前には子供会のリーダー養成のための予算を付けていただいて非常に有り難かったことがありました。
 文部科学省は、昨年度から社会教育はもう連携から融合であると提唱されてるわけですが、県のほうは相変わらず学校教育から離れられないという実感を受けております。
 国のアンケートでも、また県民のアンケートでも、全国的に社会教育に対する子供や親の思いというのはこういう結果ですので、新たに学校教育に使うお金の一部を割いてでもやるべきではないかと思っています。
 国のほうからは、単位子供会やNPO団体に対して、それぞれ補助金や助成金という形で頂いておりますが、県としてはそれで良いのかと申し上げたいと思います。やはり、すべて国または文部科学省がするのであれば、奈良県というのは要らないのではないかという話もさせていただいております。
この度、奈良県の教育をどうするかということであれば、やはりもっと素早く対応していただける教育行政というのを望みます。
 また、私どもの子供会活動の課題は、5万弱の非常に多い会員を持っておりますが、それぞれ地区では活動はしていても、県全体でとなると非常によそ事に考えられたりしてしまう傾向があることです。  
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(自然体験を日常的にどうさせていくのかを探らなければ、子供の人間形成にはならない。)
【委員】大人がボランティアに参加する意欲をお持ちではあるが、現実化してない。それを阻害するのは何か、学校教育の在り方、学校の在り方、あるいは地域の在り方あたりから点検していく必要があるのではないかと思います。
 今の自然体験活動の場の提供も、確かに行政が色々な事業を組むのも良いが、自然体験を日常的にどうさせていくのかを探らなければ、集団で行くだけでは、せいぜい年1回か2回になってしまう。本当に子供の人間形成をしていく上での自然体験をどうしていくのかを考えるべきです。その上に立って教育行政でも、今ご指摘あった努力をしていかなければならないと思います。
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(すぐそばにある小川に潤いを持たせること等に、子供を参加させるのも「身近な自然体験」の一つ。)
【委員】「身近に自然体験を」というご意見は、もっともだと思います。奈良県に来て一番驚いたのはきれいな名前の川が沢山あるのに大変汚い。川のほとりを散歩すると癒されるはずなのに癒されない。その地域地域で木を植えたり、みんなが参加して努力すればそんなにお金をかけなくても改善できる。それも一種の自然体験なわけです。例えば、東京都内でも、今、川が随分きれいになって、コイを放流したり、野鳥の戻るようなものを作ったり、畔を歩けるような場所を作ったりしています。だから、奈良県でも身近で自然を感じられるような工夫がもっとできるはずです。もともと奈良県には沢山いいものがあるのに、今そういうもの求めようと思うと吉野川まで行かなければいけないのでは、駄目ではないかと思います。すぐそばにある小川からもっときれいにして潤いを持たせられるはずなので、そこに子供が参加すればもっと何かを生み出せると思います。それには大工事も要らないと思う。ただし、若干の予算は要るかもしれないとは思いますが。
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(山や川で遊ぶことが本人にとってどれだけ必要なことかを教える必要がある。行政による環境作りと子供がひとりでに自ら自然体験していける環境作りの両方が必要だ。)
【委員】今、生涯スポーツがものすごく叫ばれていますが、今の子供は生涯スポーツというのをもっと積極的にやっていこうという気になっていかない。小学校のときから教科書に入れて生涯スポーツの重要性を説く必要があるという意見があるように、山や川で遊ぶのもこれと同じで本人にとってどれだけ必要なことかを教える必要がある。つまり、曽爾高原にどこそこの学校が何人来ましたという実績は聞くのですが、野や山を駆け回るということはこんなに大事なことで、こんなに役に立つのだよと教えてやれば、行事だけで終わってしまうのではなく、もっと自然体験活動に拡がりが生まれると思います。一方では、子供が活動しやすい環境や条件を整えてやらなければならないというのも事実で、行政による環境づくりと子供がひとりでに自ら自然体験していける環境づくりの両方が必要だと思います。
 少し別の話になるかもしれませんが、ある中学校で職場体験を3日間ずつ生徒にやらせて成功した例があります。それは先生とPTAの人たちが、子供たちの在学中に職業体験させようと必死になられたようです。この場合は、熱心さで体験活動をうまくできたということからしますと、何かを仕組んでいく必要があるのではないかと思います。
 茶髪やピアスは悪いことでないという若い子の感覚についてですが、大人の感覚でいくら言っても私は無駄だと思うので、山や川で元気にやらせる中から何かを感じさせ、つかませる方向でやれば良いのではないかと思う。
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(「田んぼの学校」は、身近な自然体験のソフト面の一つ。データベース化して学校、子供会、子供たち等がアクセスして活用を。)
【委員】自然体験に関して、自然の家などのハード面も大切だと思いますが、どのようにして身近な自然を子供たちに体験させるかというソフト面が大事だと思います。
 小学校2年生の私の子供が体験したことですが、昨年の春に「田んぼの学校」というところに行ってきました。この「田んぼの学校」というのは全国組織のようで、田んぼにいる生き物をじかに子供たちに体験させ、私の子はメダカを実際に田んぼに行って捕まえてきました。田んぼの学校にはインストラクターがおられ、メダカの生態について色々習って帰りました。藻を入れておけば水が汚くならないで腐らないということを自然に学んでいますし、メダカも育てております。これも一つのソフトだと思います。
 私の子は明日香まで行ったのですが、田んぼと田んぼの学校を主宰するノウハウさえあればどこの学校でも、あるいは子供会でもできることではないかと思います。きっと全国にはこういうノウハウを持っておられるところが色々あるのではないかと思うので、例えば教育委員会がデータベース化していただいて、学校の先生や子供たちがアクセスして活用できれば、ソフト面の充実になるのではないかと思います。ちなみに、私の子はとても「田んぼの学校」を楽しんだようで、今年もまた行きたいと言っています。
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(「食」を手段とすれば、ひとりでに子供たちがもっと山に行きたいと思うのではないか。)
【委員】最近思うのですが、自然を感じさせる手段として「食」があると思います。先生や指導者が、子供たちの生活の中に自然を取り入れさせようとしても、今の子供の現状の中では空回りしてしまうのではないでしょうか。実際に山に行くと食べれる野草があるわけですが、子供たちは草を食べるなんてとても考えていないわけです。山に行ったらこのようにおいしいものがあるということを知れば、ひとりでに子供たちがもっと山に行きたいと思うのではないかと思います。この「食」というものをもう少し前に出す施策によって、日常的な自然体験をさせることができると思います。
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【会長】それでは、「地域の教育力の充実」につきましてはこの程度で締めたいと思います。多くの貴重なご意見をありがとうございました。
 次に、2番目の議題である「体力低下の問題」に移りたいと思います。
 それでは、最初にこれに関する資料をご準備いただいた保健体育課にご説明をお願いします。
 
【事務局】今回の体力テストの調査は、東京オリンピックを契機にして、国民の体位と体力の向上を目指して昭和41年から全国的に実施されました。学校での体力づくりの指導が、各都道府県、あるいはその市町村で推奨されました。昭和40から50年代に児童・生徒の体力が年々向上し、昭和60年代初頭に児童生徒の体力がピークに達しました。
 しかし、平成に入り、高齢化社会や国民医療の問題が指摘される中で、生涯スポーツの重要性が認識されてきました。学校体育におきましても、生涯スポーツにつながる楽しい体育指導を求められた結果、児童・生徒がやらされているというイメージの強い体力づくりの指導が非難・批判される状況になっていると分析をいたします。
 こういう経緯の中で、この十数年間、児童・生徒の体力がますます低下を続けています。現在では昭和40年代の児童・生徒のレベルになっているのではないかと思います。
 今日のように社会環境や生活環境が大きく変化する時代におきましては、体力はやはり生涯にわたって健康で活力ある生活を送るために一人一人が意識しなければならないものという考え方が特に大事ではないかと思います。
 
 以上の経緯を踏まえながら、お手元の平成13年度における本県の児童・生徒の体力の概要を項目別に説明をさせていただきたいと思います。・・・(項目別概要は略)・・・
 
 以上の結果を簡単に集約させていただきます。本県の小学生の体力は、全国平均と比較してもほとんど格差は見られません。しかし、立ち幅跳びでは全国平均より低い傾向が見受けられます。また、過去15年間の推移を見ましても、全体的には低下傾向が鈍化あるいは向上に転じておりますが、50メートル走や立ち幅跳びで依然として低下傾向が続いているという現状です。これらのことから、本県の小学生におきましては、身体全体を使って俊敏に運動する力が弱いと思います。
 次に、中・高生ですが、昭和60年をピークにしまして、その後低下傾向が続いておりました。しかし、この傾向につきましても数年前から鈍化し始め、今年度につきましては向上に転じたテスト項目も見られます。しかし、高校生の女子の走る力、50メートル走あるいは持久走は依然として低下傾向が続いているという状況です。
 また、児童生徒の運動の実態につきましては、小学校では男女とも学年進行とともに1日の運動時間が延びております。これは、ここ数年の学校における体育活動の充実、あるいは地域スポーツへの参加など、身体の発達に伴って児童の運動機会が広がっているのではないかと推測されます。しかし、一方では、1日の運動時間が1時間に満たない児童の割合は、男子では40%、女子では60%に達しており、積極的に運動する者とそうでない者との二極化が進みつつあると思っています。
 
 このような現状を踏まえ、児童・生徒の体力づくりについて今後の課題を幾つか申し上げます。まず、子供の体力づくりにつきましては、学校だけで行えるものではありません。とりわけ、小学校児童の体力づくりについては、家庭での外遊びを奨励しなければならないと思います。そのためには、保護者に対して体力づくりの大切さを啓発する必要があり、特に本年4月から始まる完全学校5日制のもとでは、親子での野外活動や地域のスポーツへの参加などの保護者の理解を一層求めなければならないと思っています。県といたしましては、平成11年度に県内のすべての児童の保護者に対しまして、啓発パンフレットを配付しました。その後も毎年新入学の児童の保護者にも配付して、家庭での身体活動の勧めを推進しています。
 次に、中・高校生においては、体力向上というのは、運動部活動に大きく依存しています。特に少子化あるいは生徒数の減少、教師の高齢化により運動部活動の運営が非常に難しくなっている現状です。子供たちのスポーツ活動に対する意識もやはり多様化して、運動部活動の今後のあり方が問われる課題等もあるのではないかと思っています。このようなことも踏まえ、県のスポーツ振興審議会で運動部活動のあり方等を色々分析・調査し、本年9月の答申を目指して推進していただいているところです。
 以上、本県の児童・生徒の体力の現状、今後の課題等について説明をさせていただきました。
 
【会長】それでは、ただいまの説明、課題等に関わりまして、ご質問・ご意見等ありましたらお願いいたします。
 
(体力面以外に、精神的な面でのスポーツの良さを子供たちにPRし、広めたい。)
【委員】体力の低下ということ以外に、最近の子供は骨が弱くなって何かするとすぐ骨折してしまうこと、スポーツから養成される精神的な強さや思いやりだとか、スポーツを通して色々と勉強できるものをもっとPRして、TVゲーム等に興じている子供にもスポーツの良さというのを分かってもらい、スポーツ層を厚くできればと思っています。
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(小・中学校でスポーツをしていくには指導者が大事。体育の授業の充実と時間数の確保を。)
【委員】子供たちの体力が低下し、ひ弱い子が多くなってきている。まずその原因の究明をしてもらいたいと思います。
 一つには、今、ご発言されたように、ゲームとかに興じてあまり運動しないということです。
 二つ目には、小・中学校でスポーツをしていくには指導者が大事です。特に小学校の場合は先生にすごく影響され、スポーツの得意な先生の指導者が多い学校では体力が伸びていると思います。奈良県はスポーツをやってくれる先生が大変少なくなってきている。これに関して私が少し心配しているのは、若い先生の募集を大変削っていることです。若い先生が入ってこなくて、お年寄りの先生が増えていくことです。
 三つ目には、教えていこうと思えば費用がかかります。色々な大会に参加させるのに費用も嵩むことも課題です。
 最後に、授業が週5日制になり学力のほうも心配される昨今ですが、体力面でも体育の時間が少なくなるのではないかという心配も出てきます。だから、体力が低下しているのであれば体育の時間をもっと充実させ、時間数も増やし、体育の先生をより多く募集するなどすれば良いように思います。
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(文武両道でやっていける本当にすばらしい資質を持った教員採用を。)
【委員】京都のある小学校を見学に行ったことがあるのですが、小学校3年生ぐらいの生徒たちを、短パンツ一つで元気のいい先生が教えていました。子供たちに大変人気があり、「先生、先生」と一緒に燃え上がっており、すごい授業やなと思いました。終わった後の感想のときに、「あの先生よろしいな。本当に体操パンツ一つで、それこそ裸足で、子供たちとスキンシップを持ちながら一生懸命やっておられる。」と申し上げましたところ、校長先生らしき方が、「最近はあんな先生はもう教師として採用されない」とおっしゃるのです。なぜかというと、「先生の試験受けたら、今は学問できないと通らない。」ということなのです。しかし、それではおかしい。どうなっているのかと大変疑問に思ったのです。若い先生を沢山入れて、もっと、文武両道でやらなければいけないのではないかと思っています。
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【会長】保健体育課長、何か只今の発言に対してご発言ありますか。
 
(外部指導者派遣事業を活用して、部活を中心に手助けいただく。)
【事務局】教師も定数等で色々制限があるわけですが、体育関係につきましては、外部指導者派遣事業というのを活用して、部活を中心に手助けをしていただこうとしています。また、社会体育等につきましても、色々な指導者がおられるわけですが、ただ、部活の時間が大体3時から5時でなければならないという時間的な制限があり、登録していただいている指導者の皆さんは、勤められているということもあり、色々と検討していきたいと思います。
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(奈良県でも、大学生による学校支援学生ボランティアを整備してはどうか。)
【委員】大阪市が学校支援学生ボランティアを整備して、野外活動とか体育的行事、それから学芸的行事、理科実験の補助、音楽指導の補助等々、若手を学校現場に入れていくという試みを始めました。奈良県でもそういうことを試みればいいのではないかということを考えています。大学生がそういう形で子供たちの応援に出ていくというのは、若者にとっても良いことと思います。これは、大学の方でも考えてみたいと思っておりましたので、ご紹介方々発言させていただきました。また、ご意見をお聞かせ願いたいと思います。
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(今の枠組みの中で考えるとすぐ否定的になってしまうが、学生のボランティアを組織するのは、今とても大事。)
【委員】今のご意見に大賛成です。今の枠組みの中で考えると若い教員が採用できないとかすぐ否定的になってしまうのですが、今言われたように学生でもボランティアしたい人がいますので、それをいかに組織するかということが非常に今大事ではないかと思います。これは、是非やって欲しい内容です。
 また、松下さんとかシャープさんにも、沢山有能なスポーツ選手だった人もいるから、そういう人達にお願いできるのではないでしょうか。
 それから、私の近所にグラウンドがあるのですが、ワールドカップを日本でやるのに少年野球はやっていますがサッカーを教えている人があまりいない。これも変な現象だなと思っています。普通だったらサッカーを子供たちに教える人が沢山出てくるのではないかと思うのですが、それも出てこないというのは何か不思議な国だと思っているのですが。
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(子供が怪我したときの問題をどうするか。)
【委員】教える人材は、いくらでもありますが、もう一つ子供に怪我させたりしたときの問題があります。これに対する何か良い方法はないでしょうか。
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(誓約書を交わすなどで、指導者を守ってやる方法が絶対必要。)
【委員】指導者が頑張ってくれているのに、たまたま怪我させたりすれば、その指導者が全部責任を負わなければならないのは、やはり矛盾です。指導者を守ってやる方法が必要です。例えば、誓約書を交わすとか。
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(少子化の問題と進学問題が地域スポーツを阻害している。)
【委員】スポーツ少年団の団員の数がだんだん減ってきているのは、少子化の問題もあります。それから、もう一つは、上級学校への進学に忙しく、スポーツが二の次になっているのではないかと懸念しています。
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(JCとか、ロータリーとか、ライオンズとかの協力を取り付ければ、スポーツ活動や職業体験の支援は得やすい。)
【委員】東京都内の中学校に出前授業で行ったときに、子供が地域の中で商店とかを経験する職業体験活動に、地元のJCが全面的に協力していると聞きました。奈良県でも、JCとか、ロータリーとか、ライオンズとかが、協力してくれれば、スポーツ活動や職業体験の支援をいくらでも受けられると思います。私の聞いてるところでは多分ロータリーもJCもやる気になっていただいていると思いますが、是非よろしくお願いします。
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(ヨーロッパと同じ総合型運動スポーツクラブをこの10年間で進めていこうという計画もある。)
【事務局】スポーツ関係の補足を少しします。日本では地域におけるスポーツクラブは、単一型でずっとやってきました。つまり、指導者はそのクラブチームだけ責任を持って一生懸命やるという形です。今年、文部科学省のほうから総合型運動スポーツクラブをこの10年間で全国の各市町村に一つは設置し、5年計画、10年計画で進めていくという方針が出ています。
 県も14年度に、単一のスポーツクラブを集めて、そこで総合的なクラブチームを組織して進めるというヨーロッパ方式を色々検討しようとしています。それには、県に中心となるスポーツ振興センターを一つ設置して、そこで指導者等も色々考えながら、市町村と連携し15年度から進めていくという方針です。
 これからのスポーツクラブは、学校が中心ではなく、地域で運動クラブ、クラブチームができるように総合的なスポーツクラブの推進を図っていくことになるのではないかと思います。そうなれば、指導者のボランティアは、全部そこへ来ていただいて、そこで高齢者から若い人まで、あるいは高い技術の競技力養成から生涯スポーツの普及まで、幅広くスポーツができるというモデルを目指してこの10年間手がけていこうという状況です。
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(基本的な生活習慣が、健全な心身を作る。JC活動等が起爆となり、ラジオ体操のような健康体操を地域で根付かせてはどうか。)
【委員】私の司法修習生時代に、少年院の入院生たちと地域でソフトボールの試合等々をやったときの経験からお話します。我々は30歳前後で入院生たちは10代後半、年齢から見れば圧倒的に体力が劣るはずなのに逆転してしまうのです。彼らはものすごく体力がないのです。それを少年事件の分析の中で見ていくと、行き着くところが幼児期からの基本的生活習慣の欠如なのです。
 一般的には健全な肉体に健全な精神が宿ると言われてるが、実は逆で、健全な精神に健全な肉体が宿ると言われているのです。語弊があってはいけないが、少年事件の当事者を見ても、基本的生活習慣の欠如により健全な精神構造が幼い頃からできにくくなり、そのことが体力低下をもたらし、心身ともに不健全な状態で大きくなっていってるようです。いずれにせよ基本的生活習慣というものが、健全な肉体はもちろん健全な精神を形づくっていく基盤のような構造をしているという思いがしてなりません。
 これと関連する具体的な話ですが、私ら子供のころは、眠い目を擦りながら胸にラジオ体操のカードをぶら下げて、みんなで地蔵さんの前の広場等に集まってラジオ体操をやった経験があります。体操が終わった頃には目がぱっちり覚めて1日快適に過ごせたわけです。このような健康運動のようなシステムにより、こういった子供への働きかけの積み重ねが、基本的生活習慣を地域ぐるみで育てていき、これがまた家庭の中へも反映していくことになるのではないかという思います。
 先程のご発言にあったJC活動を私もかつてはやっていたことがあるのですが、JCがまず率先して地域活動を企画し、それがある程度軌道に乗った段階で行政に移行させるという実践をしました。だから、JCが起爆になるわけです。JCが一つの事業を創っていって、それが地域の子供たちへの強化活動に当たるような企画でうまくいったものを今度は行政の方へ移行させ根づかせていただくという形を創れないかと思います。もちろん、JCと同じことが、ロータリー、ライオンズ等々にも言えるのではないかと思います。
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(高度成長社会というものが一段落して、今何を考えなければいけないのかということを今考えることが必要。その一つとして、人としてのコミュニケーションの充実を。)
【委員】最近つくづくと、PC時代からコミュニケーションの時代に変わっていっていると感じます。このコミュニケーション時代に、私たちが何を考え何をなすべきかということを基本に立ち返って一度考えてみようと思いました。例えば、アメリカではエレベーターに乗れば全く知らない人であっても「グッドモーニング」と言いますね。そうすると、何十階というエレベーターの中に乗ってるときでも苦痛にならないのです。ところが、何も言わないと、もしかすると何かされるのではないだろうかという猜疑心ばかりが先走ってしまいます。少しの気持ちの持ちようで随分世の中が変わると思うのですが、そのようなことが一つ一つ非常に大事に思います。ここで一つ考えなければいけないことは、我々が今まで求めてきた要求については、ほぼ満足できた状態にある。そうであれば、求めてなかったものや我々に欠けているものを考えてみようという観点で、教育というものを見ていく必要があると思います。
 そういう観点で、私はいつも新入社員に「トイレに行って汚してしまうときもあるでしょう」という話をします。「汚してしまえば、今まではお母ちゃんとかおばあちゃんが掃除してくれたかもしれないが、これから先は違うよ。後に続いて入ってくる者から見れば、少しそれを始末しておくのと始末しないのとでは随分違うね」とお話をします。そう思って飛行機に乗っていて思ったのですが、「机の上を、ちょっと拭いておいてもらえば後の方は気持ちがいいんですよ」と、あの言葉はすばらしい言葉だなと思ったのです。「汚さないようにしてください」とは一つも言ってないのです。実に上手に言ったものだと思いました。
 我々は、高度成長社会を生きるために色々なことを教育されたが、高度成長社会というものが一段落して、今何を考えなければいけないのかということを今考えることが必要な気がします。先ほどから話題に挙がっていることはそのようなことのように私には思えました。
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(基本的な生活習慣やマナーを身につけていることが、社会生活の中で自分の力を発揮していけることになる。)
【委員】ボランティア活動に集まってこられるお母さん方の中で、生活する中での社会的なルールやマナーの重要性が話題になります。ふだんの生活の中で、お母さんがやっていることを子供が後ろで見て育って、掃除をさりげなく、片づけや整理整頓もさりげなく、次の方のためにさりげなく靴をそろえる云々といったことを自然に家庭生活の中で子供が身につけていると、社会生活や人付き合いもやっていけることになるわけです。このことはお母さん方自身にも当てはまり、家庭の中でこのようなことが不十分なお母さんは、ボランティア活動の中でも十分に力を出し切れていないように思います。
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【会長】それでは、まだご意見もあるかと思いますが、この辺で休憩に入りたいと思います。
 
(休憩)
 
【会長】では、3番目の議題「県民5,000人アンケーの集計結果」に入りたいと思います。委員の方々には2月26日付でアンケートの概況速報を送らせていただきましたが、本日はもう少し詳しく資料を用意してありますので、それについて総務課長から説明をいたします。
 
 
【事務局】各設問についての状況はある程度纏めることができたのですが、自由記述はまだ整理の途中なので、本日は主に各設問の結果の概要を今までの流れを含めてお話します。
 
(※ 以下、「県民5,000人アンケート」概況速報を参照
                       →「県民5,000人アンケート」概況速報へ
 昨年の11月6日に中間提言を懇談会から頂戴しました。具体的な改革プランの提言を受けたわけで、この改革プランの提言を中心に県民の方々の教育改革に関する率直なご意見を伺うために、層化2段階無作為抽出により県民5,060人の方々を対象に本年の1月7日にアンケート調査票を発送しました。提出期限を1月21日に設定しましたが、途中の1月16日に督促を兼ねた礼状を発送して、2月7日までに回答があったものを有効回答として集計しました。
 有効発送数5,011人に対しまして回答をいただきました有効回収数がが3,036人で、回収率は60.6%となり、郵送によります調査では稀に見る高い回収率だと思っています。属性については、性別では、男性が39%、女性が57%、配偶者の有無では、74%が有、21%が無、子育て経験では、76%が有、20%が無、地域別では、北和が43.1%、中南和が50.3%ということでした。
 自由記述をアンケートの問29に設定をいたしました結果、1,267人の方が記述をしていただき、有効回収数の41.7%に当たる方々から何らかのご意見をいただいたことになります。
 
 それでは、全体の選択傾向について説明します。問6以外については選択肢が4つあり、偏りなく回答された場合にはそれぞれ25%の選択率が期待されますが、今回の調査を統計的に見ると、25%のプラスマイナス2%、約27%以上であったり、23%以下であった場合には偏りがあると判断できることになります。各設問の賛成率を見ると、最高が教員採用試験についての問21で77.5%、最低でも問7の28.8%で、すべての設問で27%よりも高くなっています。もう一つの見方である「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合わせた「賛成側」の率についても、最高が問21の94.4%で、最低でも62.5%で、これは期待値の50%よりも明らかに高くなっています。それから、賛成率の平均が49.9%、賛成側の率の平均は81.6%ということで、それぞれに非常に高くなっています。
 賛成率がとりわけ高かったのは、問2、問3、問4、問8、問9、問10、問12、問13、問14、問15、問21、問25、問26、問27の14つの設問です。特にこれらの設問に係る教育改革プランについて、より多くの県民の方が賛意を表しているということが言えます。
 
 次に、対象者の属性による比較です。中学校第1学年での英語の完全習得についての問9や補習授業の徹底についての問13は女性の賛成率が高くなっています。これ以外では男性の賛成率が高いかあるいは男女による有意差がないかです。特に学校の経営改善にかかわります設問では、すべて男性の賛成率が高くなっています。配偶者の有無別では、特に学力向上に関わる設問ですべて配偶者有りの方が賛成率が高くなっており、子育て経験の有無別では、学力向上に関わるすべての設問において子育て経験の有る方が賛成率が高くなっています。居住地域別では、賛成率の平均が北和地域で50.8%、中南和地域で49.4%ということで、居住地域による大きな差はありませんでした。年代別の賛成率を見ると、最低の47.7%から最高の54.4%の幅がありますが、60歳代までは年齢とともに賛成する人の数が増加しているという状況です。しかし、「子供の意見の取り入れ」を尋ねた問23は、20歳代で最も高い賛成率となっています。
 
 次に、問7は授業が理解できないことが問題行動の原因の一つであるという意見に対しての賛否を問う設問ですが、これに賛成の人と反対の人とで、それぞれの教育改革プランに対してどういう回答をいただいているかを調べました。その結果、問21、25、26、27、つまり教員に関するこれら4つの設問を除いた21個の設問に対して問7について賛成の回答をした人の賛成率が高くなっています。つまり、問7と各施策との関連性が強いということになるか思います。その中でも、特に関連性の深い設問は、学力向上の6つの設問と就学前教育の3つの設問です。
 
 次に、因子分析の結果を説明します。因子分析とは何かといいますと、統計的な手法を用いて設問の内容が類似したもの同士を纏める作業をいいます。これを行った結果、7つの因子が抽出されました。即ち、教育改革のプランの内容はこれらの7つの柱に纏めることができるのではないかというように示唆されたわけです。その7つの因子を以下紹介します。問15・問16・問17・問18・問19から成る第1因子(学校経営の改善)、問8・問9・問10・問11から成る第2因子(基礎・基本の徹底)、問1・問2・問3から成る第3因子(家庭と就学前教育の充実)、問21・問25・問26・問27から成る第4因子(教員の資質向上)、問12・問13・問14・問20から成る第5因子(指導の個別化)、問7・問22・問23・問24から成る第6因子(意見の取り入れ)、問4・問5から成る第7因子(地域の子育て支援)、以上がその結果です。
 
 次に、求める人間像について説明します。問28に、「将来子供たちがどういう人になってほしいと思いますか」というお尋ねをいたしました。その結果は、多くの県民の方が「思いやりのある人」と「責任感のある人」を望んでいることは間違いのないところです。これらの人間像を概念的及び行動的に明確に規定して教育指導を行っていくことが望まれるのではないか思います。
 なお、選択率が10%以上の項目で、対象者の属性の違いを調べております。1番多かった「思いやりがある人」では、女性が70.9%、男性が62%となっています。それから、年代的には30歳代から70歳以上まで、思いやりについては順次減少していっておりますが、2番目に多かった「責任感のある人」は、30代の方から60歳代まで順次増加をしています。
 
 次に、自由記述での意見や提言について説明します。意見・提言のうちで教育の中身に関するものが最も多くなっておりまして、次に教員に関するものが次いでおります。
 特に目立って多かった意見・提言を項目別にご紹介いたしますと、家庭・親に関わる内容では親や家庭での子供のしつけ責任や家庭教育の重要性を主張するものが非常に多い。
 幼稚園に関わる内容では、教育内容や保育のあり方に改善を求める声が見受けられます。
 保育所に関わる内容では、保育所の増設や延長保育の要望が見受けられます。
 知育・学力に関わる内容では塾に行かなくてもよい学校を要望する声が際立って多く、それと連動して学力低下を心配したり基礎学力の定着を要望するものが多くなっています。
 徳育・人間性に関わる内容では、勉強だけではなく人間性を育てる教育やしつけを含めての人間としての常識を養う教育を求める声と個性化教育を求める声が同程度あります。
 その他の項目では、郷土の財産を活かした奈良県らしい教育を求める意見が多かったです。
 地域連携に関わる意見では、どれもが「学校、保護者、地域が協力して子供を育てていくことが大切だ」とおっしゃっていますが、その中で、PTAが学校に口出しし過ぎるという意見も多くありました。このPTAというのは、おそらく保護者と置き換えてもよいかと思います。
 教員の資質に関わる内容では、サラリーマン教師ではなくて教育者に、あるいは社会勉強の不足だ、あるいはペーパー重視の採用の改善をとか、現職教員研修の充実や免許更新制度をとか、あるいは不適格教員の抜本的な改革、若い先生を等々の声が多く、いずれにしても教員の資質向上を強く求める大きな声を聞くことができます。
 制度にかかわりましては、教員増、それから少人数指導を希望するものが多く、次いで学校週5日制に伴い学力面、生活面での不安の声があります。
 とりあえずは以上のような状況ですが、最初に申し上げたように自由記述は現在整理中で、今後も専門調査部会の先生方を含めて検討を深めていきたいと思っています。
 
 それから、郵送によるアンケートの回収がほぼ終了する時期に、インターネット上のホームページを通じて全く同じ内容のアンケートを行いました。これは2月一杯続けさせていただきました。こちらの方は約80件程度集まっております。これも、只今整理中でもう少しお時間を頂戴したいと思います。
 今後、本調査の総括に当たる部分を委員の方々からご意見を頂戴し、これから纏めていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
 
【会長】只今の説明で分かりにくかった箇所はありませんでしたか。また、アンケートの総括は各委員のご意見に基づいて行いたいと思いますので、それに関するご意見をいただけたら有り難いと思います。
 
(アンケートに対する県民の反応に感動する。それだけに、この結果を重く受け止めるべき。)
【委員】6割の人にアンケートの回答をしていただき、その8割以上の人から提案した方向性の支持をいただき、ボランティア活動をやってもいいという人が7割もいる。自由意見では、1,200人を超える方が意見をきちんと書いてくださり、中には紙を足して書くなどしていただいたのもあるのです。私もいろんな調査をしますが、このようなアンケートはあまり見たことがない。正直言って大変感激しました。私、この懇談会の委員であってよかったなと思いました。昨今、世の中が大変混乱しているわけですが、奈良県民は大変健全で、正しい方向性さえ出せば大変いい県になっていけるということを強く感じました。
 それと同時に我々は、やはりこの結果を重く受けとめなければいけないなと思います。
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【各委員で】まあ、これだけたくさんの人が書いてくださったというのはすごいことげすね。通常ではちょっと考えられない。それだけ関心を持っていただいているということですね。
 
(自由意見の原文のニュアンスを最大限残す工夫をして纏めること。)
【委員】こういうものを集計されるときには、次の展開が大切なので、この中に書かれている心配りだとか責任感というものを大事にして纏めたいと思うので少しボリュームが増えても、はしょらないいでニュアンスを最大限に残すようにしていただきたいとお願いをします。
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【会長】近いうちにこの自由記述のほうも整理し直して、最終報告書に纏めたいと思います。その際の留意点、つまり、こんなことに注意して纏めて欲しいというご意見がありましたらお伺いします。
 
(アンケートの集計結果を本で出版し、多くの人に考えてもらってはどうか。)
【委員】これは、大変貴重な資料です。だから、本にして出版して、多くの人に実態を知ってもらう中で何かを考えてもらう。ちょっとした巻頭言をつけてPRすれば、沢山の人が買うと思います。ご提案しますので、お考えいただきたいと思います。
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【会長】アンケート集計の冊子の配布先は、どのようなところをお考えですか。
 
(アンケート結果を纏めた冊子を、学校や関係機関には配布する予定。)
【事務局】この県民の意見をしっかりと受けとめてもらいたいと思いますので、出来上がり次第とりあえず学校や関係機関にお配りしたいと思っています。どこまで立派な本になるかどうか分かりませんが、読んでもらえるように簡潔に、しかも、このずっしりとこたえる内容を分かっていただけるように工夫したいと思います。
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【委員】大勢の人に知ってもらうという主旨で、私の属している多湖輝先生との勉強会・研究会から本を出すのですが、その中に、奈良県の教育懇談会のアンケートに現れた世の中の動きを少し紹介させていただきたいと思います。
 
(アンケート結果を、公民館、母親学級、県民の中での意見交換の資料にも活用してはどうか。)
【委員】目を通せば通す程、本当に貴重な資料だと思います。学校に配布する以外にも、これを公民館や母親学級で活用したり、県民の中で意見交換をする折の資料にするということも考えてはどうでしょうか。
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【会長】広報について事務局では、何かお考えがありますか。
 
(「県政だより 奈良」にて全県民にアンケートのエキスを広報する。公民館等にも集約版を配置。意見交換は行政紹介する県のシステムの活用を。)
【事務局】140万県民、44万世帯に全部お配りすることはできませんが、全戸配布しています「県政だより奈良」にはそのエキスは必ず載せようと思っています。それから、今おっしゃられた公民館等子育ての方々の目に触れるところへも、必ず置かせていただきたいと思います。
 それから、意見交換したらというようなことがございますが、どの行政機関も機会がある度に、行政紹介するシステムはできています。これを県内の色々な場所でご活用いただける形にできればと思っています。
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(これだけ県民の皆さんが賛成された以上は、教育長の決意披瀝が必要。)
【委員】これは教育長が決意披瀝しなければいけないと思います。これだけ改革の方向に県民の皆さんが賛成された以上は、具体的に「14年度中に何をやります。何をやりました。これは14年度中にはできながかったが、15年度中にはやります。」というように、はっきり出さないと期待を裏切ることになるので、是非それを出していただきたいと思います。その上で、それに対して懇談会の我々も意見を言わせていただきたいと思います。
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【委員】学力調査で少し気になっているのは、教育長は2月県議会で正式にやる予定はないと答弁してますね。これは、一体どういうことか。
 
【事務局】少しそのときの状況を説明させていただきますと、到達度をしっかり把握するために学力調査をすべきだという提言をこの懇談会からいただきました。その後、国立教育研究所が全国での抽出調査を実施しました。この結果は多分県ごとには集計はされないんだと思いますが、全国の児童・生徒についてそういう調査結果が出るので、とりあえずその様子を見るということではなかったかと思うのですが。
 
(地域としての取組みが大きな課題なので、文部科学省のやってる学力調査とは別に考えるべき。)
【委員】そういう論法でいくと、学習指導要領にしろ国で決まっているから県ではもうこれ以上考える必要はなくなってしまう。そうではなく、奈良県としてはどうしていくのか、地域としてどう取り組むのか、ということが今大きな課題となっているわけだからやはり調査が必要だと思います。文部科学省のやってるのは別です。国でやるからいいのだという論法ではおかしい。
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(学力テストというのは、目標を達成するためにやったことを確認するための是非必要な作業である。)
【委員】学校が目標を持つべきだということもアンケートでも大変強く支持されているのですが、私は、学力テストというのは、どの学校がいい悪いとこういうことではなくて、それぞれの学校が立てた教育目標にどれだけ前進したかを調べるためのものであるということをよく考えていただいたら良いのではないでしょうか。それぞれの先生とか校長先生が自分の立てた目標を達成するために習熟度別クラス等色々やるわけですから、学力テストというのは、それらが学力にもどう反映したかを確認する作業だと思います。それが何か地域の学力差がどうだ等の見方をすれば変な話になるのですが、懇談会での議論はそうではなかったと思いますので元々の主旨をよろしくご理解いだたきたいと思います。
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(ドゥー・アンド・リサーチで事務局の方々には、粘り強く取り組んでいただきたい。)
【委員】前回にもR(リサーチ)アンドD(ドゥー)ではなく、ドゥー・アンド・リサーチですよと申し上げたと思うのです。つまり、失敗を通じて、なぜ失敗したのか、じゃ、どうしなければならないかという姿勢が非常に大事だと思います。だから、事務局の方々には、このことを礎にして、粘り強く取り組んでいただくことを繰り返してお願いしておきたいと思います。
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【会長】それでは、本日のアンケートについての審議は以上にして、その他の案件として2つあります。
 1つは、「教育改革のための緊急意見」ということについてであります。本年の1月7日に専門調査部会を持ち、教育改革が効果的に進められるように色々な方策を審議しました。その結果、懇談会を開催する時間的余裕がありませんでしたので、教育懇談会専門調査部会の名前で「教育改革のための緊急意見」というものを、1月24日に藤原教育長へ提出しました。その結果、教育委員会事務局では「教育組織検討委員会」の設置が予算化されました。本来ならば懇談会にお諮りして提案するべきところでありましたが、時間的な問題で事後了承ということになって申し訳ありませんが、懇談会でもご承認いただければ有り難いと思います。・・・(全員承認)・・・どうも有り難うございました。
 それから、二つ目は、来年度の懇談会の大まかな計画についてであります。これは、事務局から説明してもらいます。
 
(懇談会は、義務教育段階の議論を中心に引き続き平成14年度の1年間お願いをしたい。)
【事務局】これからの議論の進み具合でも変更があるわけですので、大変大まかに「平成14年度奈良県教育懇談会実施計画」を提案させていただきます。
 次回、5月頃にアンケート結果を再度ご検討いただきたいと思います。7月、8月、10月につきまして、アンケートの結果でもとりわけ義務教育段階での県民の方々からのご心配が非常に強いという結果が出ていますので、例えば幼児と小学校の接続問題とか、基礎学力をどうしていくのとか、その中での義務教育分野での教員の資質向上や学校経営等を議論していただければ大変有り難いと思います。最後の1月分の予定は、アンケートの結果でも、しつけとか道徳性とか社会性とかというものについて、親がもっとしっかりしなさいよという声が非常に強かったのですが、こういうことも含めて懇談会からアピールしていただければと思いますので、その内容についてのご議論をお願いできればと思います。
 それから、本来なら教育長がお願いを申し上げるべき筋合いのものなのですが、この懇談会は平成12年の8月にスタートをいたしました。9月の1日に第1回を開いております。当初2カ年という計画でありましたので、14年の7月31日で終了する予定ですが、もう少し是非継続して議論をお願いしたいと考えておりまして、引き続き平成14年度の1年間是非よろしくお願い申し上げます。そのことを踏まえての実施計画の概要を説明させていただきました。
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【会長】来年度の計画は14年度一杯までお願いしたいということでとりあえず作成されたものであります。また、議論の進み具合により変更もあり得るものだいうことでご理解ください。
 それでは次回は5月頃に開催したいと思っていますが、また事務局から日程調整の連絡をしてもらいますのでよろしくお願いします。
 
【委員】日程のことでお願いしておきたいのですが、大体各企業ともに3カ月先の予定を決めていくので、その後で日程のご連絡をいただいても出席したくとも欠席せざるを得ないということになったのではいけないと思いますので、早目に日程の決定をお願いします。
 
【事務局】なるべくほんとに早い時期に大まかなご予定だけお伺いするということにさせていただきたいと思います。
 
【会長】それでは、私の役目はこれで終わりました。どうもありがとうございました。
 
【事務局】司会進行、どうもありがとうございました。
本来、教育長が参りまして、是非お願いを申し上げるべきところでございますが、教育長の交代などの作業も立て込んでおりますので、代わって、平成14年度もどうぞよろしくお願い申し上げたいということを改めてごあいさつとして申し上げたいと思います。
 それでは、本日も貴重な時間、お忙しい時期に熱心なご議論をありがとうございました。大変感謝を申し上げて第8回奈良県教育懇談会を閉じたいと思います。
                                        
 
 
 
〔文責は奈良県教育委員会事務局〕
 
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