第9回奈良県教育懇談会討議の概要
 
◇日時  平成14年6月7日 15:00〜17:00
 
◇場所  奈良市法蓮町「春日野荘」(飛鳥の間)
 
◇発言のポイント
 
T 意見交換
 
 
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◇議事概要
 
T意見交換
 
【会長】只今から懇談会の討議に入りたいと思います。まず最初に、「奈良県の教育改革に関する『県民5,000人アンケート』調査報告書」が、各委員の協力によりこのようにでき上がりました。ご協力有り難うございました。
 それでは、この報告書作成の実務を担当していただいた事務局の方から、本報告書の概要について説明をお願いします。
 
 
【事務局】先生方に大変お世話になった結果、お手元に、緑色の調査報告書とピンク色の概要版ができ上がりました。それでは、その概要を報告させていただきます。
・・・(以下、報告は略。以下を参照。)・・・
 
「奈良県の教育改革に関する『県民5,000人アンケート』調査報告書」
 
 
【会長】只今の報告に関する質疑は、二つ目の議題と関連させて、後ほど一括して行いたいと思います。
 それでは、2番目の議題に移りたいと思います。お手元の「教育懇談会中間提言に対する平成14年度事業」というB4、2枚の資料は、懇談会から提言した教育改革プランを平成14年度からでも進めていくことが可能なように、事務局の方で準備いただいた事業計画を一覧表にしたものです。
 只今の調査報告からお分かりのように、25の改革プランについて、県民の多くが賛同しているという結果になりました。従って、いよいよこの改革のプランに従って実行していく段階に来たのではないかと考えられます。
 そこで、この事業計画の説明を担当課長・副所長からしていただきたいと思います。
 
 
【事務局】生涯学習課、教職員課、学校教育課、教育研究所からそれぞれが担当する事業の計画を、資料「教育懇談会中間提言に対する平成14年度事業」に基づいて説明。・・・
説明は略。議事資料の「教育懇談会中間提言に対する平成14年度事業」を参照。・・・
 
【会長】どうも有り難うございました。それでは、只今から10分間休憩に入ります。
 
 
(休憩)
 
 
【会長】それでは、後半はアンケートに関する討議と中間提言に対する各課の事業についての討議をお願いしますが、時間の制約上、できるだけ事業に関するご意見、つまり、さらにもう少しこうすれば良いのではないかという、できるだけ具体的なご意見をいただきたいと思います。
 
 
(改革内容の少なくとも8割ぐらいは3〜4年のうちに実行すべき。「読み・書き・算数」をうまく教える研究が必要。小・中・高・大のタテの交流を積極的に。奈良県で目指すところに合わせた学力調査があってしかるべき。)
【委員】私は、このアンケートは本当にすばらしいものであったと思います。先週、文部科学省の人とお会いする機会があり、このアンケートのことを話しましたら、「こういうアンケートをしていただいて大変うれしい」と大変な評価をいただきました。文部科学省としては、できるだけ現場に決定権を委譲し、自己責任を持って、このように現場でしっかり考えて進めて欲しいとおっしゃっておられました。私は、このようにきちんとまとめられた会長と事務局に大いなる敬意を表したいと思います。
 それから、すぐにこうしていくつかの事業のご準備をいただいたのも非常に良いことだと思います。
ご準備いただけなかった他の項目についても、何年後ぐらいにはやるのだという決意を教育長から後でお聞かせいただければ有り難いと思います。やはり出しっ放しだと、みんなは絶望しますので、このように8割の人が賛成してるので、少なくとも内容の8割ぐらいは3、4年のうちに実行すべきだと思います。
 それで、最近ある小学校の先生が書かれた本を読んで、「読み・書き・算数」を非常にうまく教えておられるのを大変感心しました。その小学校では、例えば漢字指導において、5月までに1年間で勉強すべき漢字を先に全部教えてしまい、後は繰り返しをすることによって高い定着率が生み出されているのです。そこの小学校の児童達は、卒業後も非常に高い学習水準に到達していくという結果が出ているそうです。是非、そういった研究も教育研究所等はもっとやっていただいたらどうかと思います。
 それから、私が教鞭を執っております大阪大学の国際公共政策研究科の大学院の教授達が、小学校や中学校に出かけて行って授業をしているのですが、是非奈良県でも、小学校、中学校、高校、大学のタテの交流をもう少し積極的にやっていただくと、教育効果が上がるのではないかと思います。
 最後に、14年度事業の「2.学力向上」のところで、「全国的な学力調査の推移を注視」と書いてあるのは、誠にいかがなものかと思います。というのは、「3.学校経営改善に向けて」のところで教育目標を立て公表しようとしているのですから、奈良県で目指すところに合わせた学力調査があってしかるべきであるにもかかわらず、国が動いてからやるというのでは、何のためにこういう懇談会をやっているのかという気がしますが、いかがでしょうか。
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【会長】有り難うございました。只今のご意見に関連するご意見がございましたらお願いします。
 
 
(学力調査については、県教育委員会としてどう取り組むかの姿勢の問題。)
【委員】今のご発言に関連してですが、「文部科学省の学力調査の推移を注視」というのは、研究所だけの問題ではなく、奈良県教育委員会としてどう取り組むかの姿勢の問題だと思います。かつて奈良県でも、同和地区の子どもに関する学力傾向調査をやってきた実績もあり、無理なことではないわけです。何が学力調査の実施を困難にしているのかを明確にし、教育長もお見えですので、県としての今後の方向を明らかにしてほしいと思います。
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【会長】有り難うございました。只今のご発言に対して何かご意見がございましたら、お願いします。
 
 
(学力の定義をしっかり押さえた上で、一度正確に学力調査すべき。)
【委員】私がメンバーの一人である学力向上フロンティアの会議でも、「やはり学力というものは、1回しっかりと調査すべきだろう」と申し上げました。学力が低下しているか否かについては、今それについての資料がないように思う。小学校では特に分かりにくいと思うので、やはりしっかりした学力調査をやるべきだと思うのです。
 ただ、気になりますのは、学力というものは、文部科学省は意欲とか関心とか興味とかを含めてトータルに学力だというのですが、ところが、実際の調査ではペーパーテストになってしまう。したがって、学力調査というのではなくて、試験に対する成績の結果ではないかというような感じがします。だから、学力というものの定義をしっかり押さえた上で学力調査を行い、積極的に取り組んでいただきたいと思います。
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(懇談会で提起している学力調査は、予め定めた基礎・基本事項の到達度を確認するためのもの。)
【会長】只今提起されました学力の定義については難しい問題があるということですが、この懇談会で考えていた学力調査は、いわゆる基礎・基本的な学力であったと思います。だから、各学校あるいは県で基礎・基本的な事項を明確に定めて、それについて、どの程度到達しているかという一斉学力調査であったと思います。只今の学力調査の件で、他に何かございますか。
 ないようですので、その他のご意見をお願いします。
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(自分の仕事から考えると、国語と幾何(算数)、読・書・算の訓練が基礎学力の中身である。)
【委員】実は、学力とは何だろうと考え、自分が携わっている法律の仕事から分析してみました。そうすると法律の仕事の中身は、考えてみるに専ら国語と幾何になるのです。というのは、論理的にほぐして組み立て、そして、それを表現するという仕事を私は絶えずやっているように思います。それは、正味のところ国語と幾何という感じがするのです。小学校でいえば、国語と算数です。論理的にほぐし、何が問題点かを捉え、それを組み立てて、いかに分かりやすく表現するかというのは法律の仕事だけに限らず大抵の職業でもそうだと思います。これに対して、理科や社会というのは、いろいろな分野へチャレンジする好奇心や興味などの芽を育て上げていく役割をするものだと思います。私は、自分の仕事からこのように考えますので、読・書・算の本当に基礎的なところの訓練を繰り返し受けて、幼いころから身に付けていくことが、社会人になって仕事をこなしていくときの本当のパワーになると思います。これが基礎学力の中身ではないでしょうか。
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(学年別に「学力とは何ぞや」ということを、奈良県の教育委員会としてきちっと整理を。)
【会長】有り難うございました。確かにおっしゃるとおりだと思います。本当は「学力とは何ぞや」ということから出発していかないといけないと思います。10年程前の改定以来、興味、関心、意欲まで学力に入れられたわけです。むしろそれが大事だと。本当は計算ができるとか、漢字が書けるとか、そういうことがまずできないと、なかなか興味、関心、意欲までいかないし、興味、関心、意欲というのは評価することすら難しいと思います。一度、奈良県の教育委員会としても、「学力とは何ぞや」、例えば、小学校低学年の学力はこういうものだということをきっちりと考えていただくと非常に有り難いと思います。それでは、ほかのことでも結構ですがお願いします。
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(「思いやりのある人」が飛び抜けて求められており、このことと学力とを結びつけた取組を。)
【委員】「求める人間像」を問うアンケートで、「思いやりのある人」が飛び抜けて1位となっており、思いやりのある人が求められている。そのことと学力とを結びつけて教育委員会で取り組んでいただきたいと思います。
 今のお母さん方は、子どもの学力や体力が低いと聞くと、自分の子どもに非常に辛く当たってしまうことが多いようです。それは将来の不安から来るのだろうと思いますが。それが小さい子どもであれば虐待してしまったり、小学生だと塾通いに煽ってしまう。中学生だと、家庭教師を必死で探してしまう。子どもが自由に伸び伸びと自分らしさを見つけにくい環境にある子ども達が、奈良県には非常に多いということを見据えて、教育委員会で取り組んでいただければと切望します。
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【会長】有り難うございました。只今出ました「求める人間像」の1位が「思いやりのある人」、2位が「責任感のある人」。奈良県の県民は、その二つに価値を置いているわけです。そういうものと学力との関係とか、あるいは、そういうものを育てるのにはどうしたらいいかというご意見であったと思いますので、この点も検討していただければ有り難いと思います。
 
 
(教育委員会はもっと強い立場で、教職員のモラル低下や指導力不足教員への対応をすべき。もっと若い先生の採用を。クラブ活動への費用面の助成も必要。)
【委員】最近、教員の新聞沙汰になるような破廉恥行動がちょっと目立ってきています。今、教員のモラルの低下を、教育委員会はどのように感じておられるのかと思います。指導力不足の教員の処遇についてのアンケートでも85%ぐらいの人が、「ふさわしくなかったらそれなりの対応を考えるべきだ」と考えられていますが、教育委員会はもっと強い立場で対応していかねばならないと思います。地教委との問題もあるわけですが、やはり県教委が指導力を持ってやっていただきたい。
 それと、教職員組合に遠慮しているような気もいたします。遠慮などせずに是非力強くやっていただきたいと思っています。特に、教職員の異動の際に、普通は10年勤務すれば異動になるわけですが、受け手がないから異動させられないということが現実のようです。このようなことはあってはならないことだと思います。
 それと、生徒が少なくなっていく関係上、若い先生の採用が大変少なく、先生が高齢化するという問題があります。子ども達には、勉強以外の指導もしてほしいと思うので、例えば体力の向上のためのスポーツの推進、あるいは文科系のクラブの推進をしていただく先生方ももっと採用しなければならないのではないかと思います。いろいろな先生に聞いておりますが、クラブ活動をすると非常に費用が嵩み保護者の負担も大きく、「これ以上できません」ということもあるようです。これへの対応として、社会教育あるいは学校教育の一環としてもっと補助していかねばならないのではないかと思っています。
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【会長】有り難うございました。只今は教員にかかわるご意見あるいはご質問でしたが、何か関連してご意見ございませんか。
 
 
(イマジネーションを育てることによって、創造力や自らやる力が育つ。これには、自然を取り込んだ授業が有効。)
【委員】この度の5,000人アンケートから沢山のことが見えてきて、示唆を受けることが大変多いと思っています。
 さて、生きる力の一つとして創造力というものがありますが、このクリエイティブという創造の根のところには、イマジネーションという想像があると思います。教員も子どももこのイマジネーションが育っていないような感じがします。よく小学5年生で大きな転換期があるといわれるのですが、そこまでの幼児教育や初等教育での子育てを非常に大事にすべきで、そうでないとイマジネーションが広がらなく、社会の中でついていけなくなるのではないかと思います。
 大学生についても、「大学生が未熟であり、やる気がなく、学力低下も見られる」ということが、先の懇談会で出ていました。自らやる力というのは、イメージを広げることができるかどうかにかかっているように思うので、イメージが広がればクリエイティブになっていくわけです。企業が求めている人間像というのは、そうではないかと思うのですが。そうしますと、初等教育、義務教育段階での育て方は、自然を取り込んだ授業を組み立てることにあると思います。どの教科でもそのようなことを、もっと研究しても良いのではないかと思います。
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(どういうことをすれば、イマジネーションが育つかの研究が必要。)
【会長】有り難うございました。只今イマジネーションを育てることが大事だということでございますが、確かにそのとおりだと思います。できればそれぞれの学年で、どういうことをすればイマジネーションが育つかという方法論を教育委員会なりで考えていただければ有り難いと思います。
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(「公立幼稚園の子育て支援」以外にも、小学生とか中学生も含めた地域の教育力を高めるような奈良県プランを。)
【委員】アンケートの中で、子育てボランティアに参加していいという方が非常にたくさんおられたということで、大変意を強くしています。だから、14年度事業での「公立幼稚園の子育て支援」以外にも、小学生とか中学生も含めて、地域の教育力を高めていくということが必要ではないかと思います。「学校崩壊」とか「教育改革国民会議で何が議論されたか」という本の著者である川上亮一さんと話をしていて、「自分が一番教師として悩んでいるのは、地域の教育力が低下したことだ」と言っておられました。自分が未熟な先生であった若い頃でも、地域の中の人達が絶えず彼のところに来たり、子ども達に先生の言うことは聞かなければ駄目だと支えてくれて、そのことが教師としての使命を果たせる素地にあったのだが、今はそういうものがすっかりなくなってしまったとおっしゃっておられます。逆に、地域が先生をけなしたりしますから、余計に教育力がなくなってしまうということをしきりにおっしゃっておられました。ですから、私は、地域全体の教育力をどのようにして向上させるかが大変大事だと思うので、幼稚園だけでなく、小学校も中学校も含めて、地域の子どもをみんなでレベルアップをしていくという工夫が要るのではないかと思います。
 そういう意味では、週5日制になったことについて、今回はあまり議論しなかったし、答えを出していないのですけど、奈良県ではコミュニティーチャー・プランもやっておられ、こういうものと週5日制や夏休みとかを積極的に結びつけて地域の教育力を高めるような奈良県プランを作ってみることを是非やっていただきたいと思います。
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【会長】只今、週5日制になったということで、それについて、教育委員会としては、何か差し当たりのプラン等ございましたらご紹介お願いします。
 
 
(コミュニティーチャー・プランによる授業は生徒達の反応も良く、他の授業にも拡がりを見せる。一層強力に進めていく。)
【事務局】コミュニティーチャー・プランを学校5日制との関わりの中でもっと活用するようにとのご意見でございますが、県の後期実施計画の中でも平成17年度までに県立高校全校で実施することとしています。これは是非とも推進していきたいと考えています。コミュニティーチャー・プランによる授業は生徒達の反応も良いことから、他の授業にも拡がり教育効果を上げることができるものと考えており、一層強力に進めていく所存でございます。
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【委員】5日制とコミュニティーチャー・プランとの関わり合いはどうですか。
 
 
(5日制導入に伴う総合的な学習の時間の中で、コミュニティーチャー・プランの一層活用を。)
【事務局】5日制導入に伴う新しい学習指導要領の中で、総合的な学習の時間が実施されます。この総合的な学習の時間の中でコミュニティーチャー・プランが一層活用されることと期待しております。
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【会長】有り難うございます。
 
 
(地域の教育力の向上を目指し「子どもの人権学習支援事業」をスタート。同和地区の子ども達のいわゆる学力低下傾向を何とかしなければと過去に2回実施した学力調査について。)
【事務局】地域の教育力の向上ということに関わって、人権教育課で今年スタートさせた「子どもの人権学習支援事業」という事業があります。この事業は、三つのポイントを持っています。一つのポイントは子ども達がいろいろな人権に関わる学習をするときの講座、二つ目は家庭・地域を繋いだ交流事業、三つ目は地域の子育て事業です。これら三つをポイントにして新たな事業を組み立てました。何分にも1年目ということで、どういうスタイルになるのかちょっと分からないわけですが、只今ご提言いただきました地域の教育力を重視するということに関わって、今後も工夫をしていける事業だと思っています。
 それから、学力調査のことですが、先程出ましたので、ご説明を申し上げておきたいと思います。奈良県では同和地区の子ども達にいわゆる低学力傾向という基礎学力に関わる課題がありました。それを何とかしなければということで、昭和54年、55年に第1回目の学力傾向調査を行いました。これは約5,000人規模でした。その後、第2回目として平成6年に、10,000人規模の学力傾向調査を実施しました。ここでは同和地区の子ども達だけにポイントを当てるのではなく、例えば、都市部と山間部、大規模校と小規模校、生活保護家庭と全体、等々いろいろなパターンで比較をしました。いろいろな傾向が出てきました。例えば一つは、いわゆる学習理解度の高いところに一つの山ができて、学習理解度のしんどいところにもう一つの山ができるといういわゆる二極分化の形状が現れました。当初はこれを同和地区の子ども達の傾向だと思っていたのですが、追跡をしてみますとどうもこの頃の子ども達全体の傾向になりつつあるようです。この辺は、私達が大事にしなければならない課題の一つだと思っています。
 それからもう一つは、自分は社会の中でどのような存在なのか、周りからどう見られているのかという自己概念の有り様や、自分は将来このように生きていくのだという将来展望といったものが、学習理解度と関係しているという結果が出ました。だから、今後、こういうことも的確に掴みながら調査をやっていくということを含みながら、研究所の方で方向を書いていただいているのだろうと思います。
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(地域の教育力を創成するために、今年度「軒先遊び推進事業」を展開。)
【事務局】生涯学習課でも地域の教育力を創成するために、今年度、国費を活用しての事業で「軒先遊び推進事業」というのを展開しようとしています。これは、子どもの居場所づくりを何とか進めようという事業であり、それぞれの地域の団体や自治会の方、それから、社会教育関係団体の方々にコーディネーター的な役割を担っていただき、子どもと関わりもってご指導いただくという内容です。その中から、先程の委員からご提起いただきましたさまざまなイマジネーションへの展開にも繋ぐことができればと考えております。
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(先生方の職場の緊張感に問題がある。基礎・基本をどのようにして定着していくかという指導法をもっと真剣に考えること。山極氏自らが、総合学習を先行させるのではなく各教科の指導を力説。教師は支援ではなく、やはり指導が必要。外部講師もよいが、教員自らが教育内容を作っていくべき。)
【委員】先程、委員から教員のモラルについての厳しい指摘があって、私達地教委も非常に責任を感じています。やはり私は、先生方にも職場の緊張感に問題があり、これがいわゆるモラルの低下を引き起こしていると思うのです。いろいろな教育改革の中で一番変わらなければならないのは先生ではないかと思っています。その場合に、やはり基礎・基本をどのようにして定着していくかという指導法なり、どのように学力をつけるかということをもっと真剣に考え、そのための研究もしてほしいと思うわけです。
 先の全国の教育長会で、かつて文部省初等中等教育局視学官であった山極隆先生の講演がありました。先生は、今回の改定のプランを立てられた人のようでありますけども、総合学習が先行しては駄目だとおっしゃっておられます。それより以前に、各教科の指導をどうするかということをまず考えなければならないと力説しておられたわけです。そしてまた、授業研究におきましても、今までは支援という言葉が多過ぎたのではないか、もっと指導ということを徹底しなければならないとおしゃっておられました。だから、研究会をやっても、先生の指導に対して厳しい批判は出ないで、子どもの動きが良かったとか悪かったとか、よく発言したとか、そういう視点でしか見れていないという指摘もされておられたと思うのです。もう少し教科の指導というものを職場全体で取り組んでいただきたいと思います。ボランティアで社会人教師を導入するのもすばらしいことでありますが、NHKがやっている「ようこそ先輩」のような方法を学校の先生自身が導入すべきではないかと思います。いつの間にかいろいろなボランティアや外部の講師がやってきて、学校の先生はそれをアレンジしたりマネージメントするだけでは大変なことになってしまうと思うのです。やはり先生方自身がまず学校の教育をしっかりと守っていくことです。土曜日、日曜日については、家庭へ返す。これは教育委員会等の責任において、生涯学習の視点から行事をやっていけばよいのではないかと思います。
 私、女子大の附属中学・高校で勤めていたのですが、戦後からずっと先生方には研究日がありました。いわば週休2日制の先取りだったのです。私と同室の理科の先生方は、お2人ともザリガニで学位を取られた。その次の方は、プランクトン研究で学位を取られた。学位をとることが必ずしもいいことではないですが、2日の休みをフルに活用するといろいろなことができるということです。そういう視点で先生方もこの5日制のスタートに教師である自分自身を変えていこうという気持ちを持っていただきたいと思います。
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【会長】まだまだご意見もあろうかと思いますが、予定の時間となりましたので、本日の討議はこれで終わりたいと思います。また次回にご意見をいただければ有り難いと思います。
 それで、次回のテーマは、予定通り「小・中学校教育」とします。とりわけ、幼児教育から小学校への接続の問題及び基礎学力向上の課題を中心に、次回は討議をお願いしたいと思います。
 開催日時は、日程調整の結果、7月30日火曜日の13時30分からと致します。場所は、「共済会館 やまと」となります。ただ、県議会の日程と、万が一重なってしまった場合には、事務局のほうから日程変更の連絡をしていただくということにしておきます。それでは、私の役目はこれで終わりにさせていただきます。
 
 
【事務局】司会進行、どうも有り難うございました。それでは、閉会に当たりまして矢和多教育長から皆様に一言お礼を申し上げます。
 
 
【教育長】この4月から教育長を拝命いたしました矢和多でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、終始熱心なご討議をいただき有り難うございました。
 教育懇談会からいただいております中間提言、あるいは、この「県民5,000人アンケート」の結果をしっかりと受け止め、奈良県らしい教育改革を積極的に進めていきたいと思っているところでございます。
 25の教育改革プランの提言をいただきましたが、直ぐにでも取り組める内容につきましては国の事業も使いながら14年度から対応させてもらっております。条件整備などが必要で直ぐには難しい項目につきましては、事務局としても前向きに検討しながら逐次対応していきたいと考えておりますので、またいろいろとお教えをいただきたいと思います。それでは、今後のご指導をお願いいたしまして、閉会の挨拶に代えさせていただきます。本日はどうも有り難うございました。
 
 
【事務局】それでは、これをもちまして、第9回懇談会を終わらせていただきます。どうも有り難うございました。
 
 
 
〔文責は奈良県教育委員会事務局〕
 
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