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平成18年9月26日
 
第23回 奈良県教育懇談会討議の概要


     ◇日時 平成18年8月30日(水) 14:00〜16:45
     ◇場所 春日野荘 (奈良市法蓮町757-2) 


  ◎新しく公募委員を加え、15名で再編成された委員による最初の懇談会


 (1) 開会あいさつ 矢和多教育長
 (2) 委員紹介
 (3) 会長及び副会長選出
 (4) 会長あいさつ(要旨)
 (5) 懇談会の運営について
 (6) テーマ
     「奈良県の教育改革の取組と現状」
     「今後の学校教育の在り方」
 (5) 議事概要
  

(1)開会あいさつ 矢和多教育長
 本日は、ご多忙のところ奈良県教育懇談会にご出席をいただきありがとうございます。また、8月1日付けで皆様に委員を委嘱させていただきましたが、皆様のご承諾をいただきましたことに改めてお礼を申し上げます。

 さて、8月1日から近畿一円で全国高等学校総合体育大会(インターハイ)が開かれ、奈良県ではアーチェリー、登山、バドミントンの3つの競技を開催しました。本県の代表選手も頑張り、ソフトテニス、陸上競技、レスリング、ボクシングでは優勝、他多くの競技で入賞を果たしてくれましたが、この大会には、選手以外にも多数の高校生が運営に協力してくれました。汗だくになりながら、会場の準備や競技の進行に献身的に働く補助員の姿には感動しました。

 先日(25日)、全ての日程が終了しましたが、他府県の役員の方々から競技補助員の高校生の姿にお褒めの言葉をいただきました。子どもの社会性の欠如が指摘されるこの頃ですが、多くの選手や補助員の生徒が頑張っている姿を見て、健全に育っている高校生に、ほっとするとともにうれしくなりました。

 一方、本県でも幼児・児童・生徒にかかわる犯罪や事件が起こるなど教育的課題は山積しています。全国的にも教育をめぐる状況は、大変大きな変動の中にあります。国でも教育基本法の改正や教員免許状についての検討がなされたり、各府県でもシステムの見直しを含め、教育についての議論がなされております。奈良県でも、いろいろな取組を進めている所ですが、取組の基本になる方向性や骨組みが大変重要であると考えています。

 昨年末に、県は奈良県の30年後をみつめ、県民の皆さんと共有する県政の道しるべとして「やまと21世紀ビジョン」を策定し発表いたしました。このビジョンでは、「安心」「元気」「誇り」「憩い」「未来」「地域経営」の6つの将来ビジョンを描き、教育委員会は「未来」を構成する「学び」の分野を中心に、「自立した社会人を育む」ことを目標として、様々な事業を展開していくことを計画しています。アクションプランでは、具体的な数値目標も設定していますが、施策としてどのような形で、その目標を達成していくかということには十分な工夫が必要だと考えています。特に近年、教育の守備範囲は大変広くなってきているように感じます。子どもを自立した社会人を育てるためには、学校教育だけではなく、地域、家庭が連携協力することにより多角的にアプローチをしていくことがますます重要になってきたと感じています。

 この奈良県教育懇談会は平成12年度に始まりました。奈良県にふさわしい教育施策、奈良県教育のあるべき方向について多くの提言をいただき、その提言に基づき施策を展開して参りました。この度、懇談会が6年目を迎えるにあたりまして、もう一度原点にもどり、県民目線から教育改革を論じていただこうと、公募による委員募集を行い、懇談会を委員15名で再編成させていただきました。
 以前からの委員の方も新しく委員になられた方もそれぞれのお立場から、奈良県の教育の在り方に関しまして、施策の方向性と具体的な工夫の両面につきまして、忌憚のないご意見をお出しいただけたら幸いです。教育委員会としましては、この懇談会の御意見をしっかり受け止め、施策に生かして参りたいと考えております。どうかよろしくお願いいたします。

(2)委員紹介 (名簿 参照)

(3)会長及び副会長選出
   会 長:辻本 雅史(つじもと まさし)
       京都大学大学院 教育学研究科 教授 専門は日本教育史
   副会長:中西 幸雄(なかにし ゆきお)
       県立教育研究所 顧問

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(4)会長あいさつ(要旨)
 

 目の前の子どもたちは、間違いなく20年〜30年後の私たちの社会を支えることになる。教育の問題、子どもを育てることは、我々の未来を創る仕事であると言えるのではないか。そう考えると、教育はまさに他人事ではないということになる。子どもたちをめぐる環境は昔と比べて大きく変わってきている。子どもの心も変わってきている。これは、現在の大人社会の問題、社会の矛盾というものが、一番弱いところ、つまり子どもの社会に影響を及ぼしていると考えざる得ない。では、社会を変えないと教育は変わらないのかというと、逆に、子どもたちに働きかけることで、未来を変えていけるのではないかと思う。教育から社会を変え得るという可能性を信じて議論していきたい。
 この懇談会には、いろんな立場の方が集まっておられるので、それぞれの立場から、様々な視点で議論いただき、改革の方向性を探っていきたい。

(5)懇談会の運営について
 次の事項について奈良県教育懇談会の総意により委員全員が合意した。
  @ 懇談会は各委員のフリートーキングで行う。
  A 懇談会は非公開とする。
  B 議事概要及び議事速報について
   
 懇談会の懇談内容・結果については議事概要を作成する。議事概要は、
    事務局が作成し、会長が確認する。また、議事概要では、委員等の発言者
    の氏名は記入しない。
     議事概要とは別に議事速報を作成する。議事速報は懇談会終了後すみや
    かに事務局が作成し、会長が確認する。議事速報は懇談会終了後その日の
    内に、会議資料等と共に報道資料として報道機関に提供する。報道機関の
    対応は、原則として事務局において行う。

  C 情報公開請求について
     請求があった場合、懇談会の議案、資料、議事概要、議事速報は、原則
    として全部 開示とする。ただし、開示することにより懇談会の円滑な議事
    運営が損なわれるおそれがあると会長が認めたものは非開示とする。
  D インターネットについて
     奈良県教育懇談会のホームページを設け、懇談会を開催する都度、その議
    事概要を登載する。インターネットでは、県民からの意見募集も行う。

(6)テーマ
  「奈良県の教育改革の取組と現状」
  「今後の学校教育の在り方」

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(5)議事概要

【会長】 本日の議案は「奈良県の教育改革の取組と現状」と「今後の学校教育の在り方」の2つ。
 1つ目の議案、「奈良県の教育改革の取組と現状」について、私を含めて新任の委員も多いので、教育委員会事務局から概要を説明願いたい。

【事務局】 教育懇談会も節目を迎え2期目となる。これまでの 懇談会からの提言を再確認する意味からも、奈良県の教育改革の取組状況について説明させていただく。 なお、内容についてのご質問等は、担当課からご返答させていただく。

 <資料確認後 教育企画課より説明>

<概略>

○やまと21世紀ビジョンの概要
 4つの指標 ・学習到達度調査の目標達成率 100%
       ・子どもの問題行動の件数 2004年度の10分の1
       ・新規学卒者が職場に定着した割合 70%
       ・生きがいづくりや技能向上のため学習したことのある
        社会人の割合 80% 

○教育改革 進行中2006より(リーフレット参照
 「子どもを自立した社会人に育てるために・・・」
 「子育てや子どもの教育に責任を持つ社会作りを・・・」
 ◆県民参加の教育改革   ◆家庭や地域の教育力の向上
 ◆基礎学力の定着     ◆社会性の育成
 ◆基礎体力の向上     ◆子どもたちの豊かな学びのために
 学校サポート体制の構築

○教育懇談会の提言と取組 (別紙資料 参照
 @学校の在り方にかかわる課題
 A教員の在り方にかかわる課題
 B子どもの状況にかかわる課題
 C家庭や地域にかかわる課題

【会長】 今のご説明について、何か質問はありますか。

【委員】 懇談会の提言に対して教育委員会が、どう具体的に取り組んでいるかという全体像はわかった。ただ、それぞれの事業ごとの達成目標や、達成率といったものの成果を、もっと県民に知らせるべき。

【事務局】 まず、取組についての達成目標や達成度をどう設定するのかということがなかなか難しい。先頃、学習到達度については次の学習指導要領の発表時に、国が示すという報道があったが、大変な作業だと思う。奈良県としても、国の動きを見ながら検討してまいりたい。成果等の公表については、ホームページ等を利用して出来るだけ努力していく。

【委員】 懇談会の提言に対する取組の成果がもっとはっきり分かる資料を提示していただきたかった。成果は、ずいぶん出てきていると考える。例えば、PHP出版社が出した本の中でも、親学サポートブックについて評価されている。ただ、成果の出ていない部分についても、なぜかということを検証して欲しい。体力向上については、まだまだ結果が出ていないと思う。また、奈良県でやっている教員の大学での経営学研修は全国的にも珍しい取組なので、その成果については是非教えて欲しい。大学との連携等の事業成果についても具体的に示すべきである。

【会長】 事務局は、成果の整理と公表について検討していただきたい。他に、質問はありませんか。

【事務局】 各々の事業の内容や結果については、担当各課に問い合わせいただければ回答できる。

  <休憩>

【会長】 それでは、2つめの議案「今後の学校教育の在り方」にうつるが、 前半の奈良県の教育改革の状況を念頭に置いて、委員の方々のお考えを簡潔に述べていただきたい。
 近年、学校の役割が、従前とは大きく変わってきたのではないか、また、社会や保護者のニーズに応えていないのではないか、といった声が聞かれるが、これからの奈良県の学校教育について学校はどうあるべきなのかということを中心に、 本日は第1回目ということなので、論点をあえて絞ることはせず、フリートーキングの形式で進めたい。
 考えるポイントとして、子どもにとって「よい学校」とはどんな場所なのか、教員にとって働きがいのある学校とはどんな場所なのか、保護者が喜んで子どもを通わせたい学校とはどんな場所なのか、地域住民が誇りに思える学校とはどんな場所なのか、主体的な学びのある学校とはどんな場所なのか、そんな学校をつくって行くにはどうしたら良いのか、今後の公立学校の役割とは何か、今後の奈良県教育についての課題は何なのか、等々をキーワードにしてみてはどうか。
 懇談会として、最終的に具体的な提言をしていくことは念頭に置いていただきたい。

【委員】 まず、第1に学校教育を検討する場合に、「親の教育」という問題を是非取り上げて欲しい。最近の教育に関する事件等をふりかえると、子どもが犠牲になっていると感じる。親(保護者)への働きかけが不可欠と考える。学校が親へ働きかけるという部分と、親と学校が一緒に子どもを育てるという両方で検討していただきたい。第2に、初等教育、中等教育、高等教育に分けてそれぞれの課題を整理して進めていきたい。第3に、前半でも意見があったが、取組の結果の評価をアンケート等で是非やって欲しい。

【会長】 「親の教育」については同感である。付け加えると、現在「親になるための教育」が欠落しているのではないか、と考える。

【委員】 大学では、子育て広場という保護者を対象にした取組も実施している。

【委員】 問題のある子どもの親ほど、そういった取組には参加しないという実態がある。ある程度の年齢に達している親を指導することは、事実上不可能に近いのではないか。また、公立高校の教員の中には、生徒が塾へ行くことを前提にして、受験等については塾まかせにしてしまっているところもあるのではないか。

【委員】 子どもたちの授業を聞く力が低下していると感じる。先生方は、生徒のレベルに合わせようとして内容を精選したりプリントを作る。すると、生徒はますます努力しなくなるという悪循環が起こっている。歴史の授業などは先生がくれるプリントだけやればよいというような雰囲気がある。また、親に対しては、学校の先生の側に遠慮がすごくある。親に対してストレートに意見を言えないのが現状。公開授業というものを実効性のあるものにして欲しい。

【委員】 大学生の状況をみると、目標のはっきりしている子どもは落ちこぼれていない。

【会長】 子どもたちの学習意欲が低下しているということについての問題提起だが、なぜ学ばなければならないのかということを子どもたちに納得させることができるかということについてご意見はありませんか。

【委員】 親子、生徒と教員の関係が馴れあい的になっていると思う。親子の関係においても、条件依存的な愛情の示し方になってるのではないか。例えば、何か評価できることがあればほめる、無ければほめない。評価によって愛情を示す。最近では、親が評価を外部のものに頼ってしまい、親が主体的な評価をしなくなってしまっている。親が自信を失っている状況があると感じる。表現が悪いが、親や先生が子どもに媚をうるというか、好かれたいという姿勢が強すぎ、子どもに主体的に向き合えていない。
「親学」という表現はわかりやすいが、子どもはいろんな環境の影響を受けるものなのでもう少し範囲を広く考えてもいいのではないか。

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【委員】 現実世界には、表と裏があるということを、子どもにもストレートに示すべき。いいことばかりではなく悪いことも示した上で、やってはならんということを明確に教えるべきではないか。
 家庭教育については、現在いろいろな団体が行事を企画運営しているが、県の教育委員会がもっと前面に出て強力に進めて欲しい。予算などの問題があるかもしれないが、必要なことは行政が力を入れて姿勢を見せるべきだと思う。いろいろな団体がやっているからいいんじゃないかという議論があるかもしれないが、強力に推進する姿勢を示す意味で県教育委員会自らが主催する行事があってもいいと思う。

【委員】 そういう意味では、東京都の教育委員会なんかは実践している。

【委員】 親子の関係ということで意見を述べたい。現在、親と子の関係がますます疎遠になってきていると感じている。国の指導では保育園での保育時間延長の方向が示されてきている。親が働くという環境については好ましいことかもしれないが、親子関係にとっては疑問に感じる。保育時間の延長は親と子どもの接触時間がどんどん短くなる事を意味する。病児保育(病気の子どもも預かる保育)も広がってきているが、病気の子を預けてしまうという制度ができれば、親子の絆はもっと希薄になってしまう。女性の労働環境の問題、男性の育児協力の問題は難しい問題だが、今進められようとしている施策は、親子の絆という点からは疑問に感じる。

【委員】 学校の役割の見直しは重要。連合1万人アンケートによれば、子育て支援の充実が35.5%、少人数の教育の充実は12.5%が希望している。親子の絆の問題も考慮して、県として基本的な姿勢をどうするのかということを考えるべき。他にも、障害児教育(特別支援教育)やIT教育の充実についても、その方策を考えるべきかと思う。特に、IT教育は全国的にも奈良県は低位にいる。ソフト、ハード両面で整備を進めるべきと考える。

【委員】 奈良県の学校の事を考えていく場合、私立学校の状況も考慮していただきたい。また、この懇談会では、教育と宗教に関する議論を避けないで議論したい。
また、奈良県の出生率は大変低いが、データにあまり振り回されすぎないように実態を見ていきたい。(出生率データの対象は15歳から49歳の女性)奈良県の実態をよく表せるデータを独自で集めてもよいと考える。

【委員】 10代後半の生徒を指導しているが、頭ごなしに怒るということはやらない。相手の自尊心を傷つけないように指導している。マイナスを直接指摘はしない。同時に、親への感謝ということを強調する。そうすると、態度が変わってくる。小さな子どもからやることも大事だが、今大きくなっている子どもを変えることも大事。社会や他人への感謝、「ありがとう」「おかげさま」ということを大事にしたい。経験では、生徒は、あいさつ等をキッチリやるようになってからは、他のこともしっかり出来るようになった。

【委員】 小学生の実態をみれば、近年、授業中うろうろ立ち歩く子が増えている。小学校入学以前の教育が重要ではないか。絵本の読み聞かせに関わったが、聞くことの出来る子は、落ち着いて学習にも入れる。そういう意味では、就学前における関わり方も重要。

【委員】 学校、教員の責任についての批判はあると思うが、教育改革とは他人事ではない。各々がそれぞれの役割をしっかり果たすという基本的な姿勢が重要。その立場から、各々の組織、学校、保育園、塾、会社、幼稚園等を見つめることが大切。その中で知恵を出し合う雰囲気を作っていくことが重要。例えば、家庭のしつけが悪いから学校が大変という意見もあるが、そうではなくて、それぞれの立場から協力して何ができるのかということを考えるべき。血縁関係が崩れつつある現実も踏まえていかないといけない。

【会長】 今日は、それぞれの立場から、自由にご意見をいただいた。少しテーマが拡散したように思うが、委員の皆さんから多くの問題提起があった。
 教育を行うには「信」が重要。江戸時代は、子どもを自由にさせておいて、駄目なことを体験的に教えていた。信がなければ、それは伝わらない。また、宗教の話も出ていたが、教育には人智を越えたものに対するおそれの意識、超越的な価値をもたなければうまくいかないと考える。公教育の中でどう扱うかということも議論していきたい。
今日の議論を整理して、次回につなげていきたい。

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