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第27回奈良県教育懇談会討議の概要

◇懇談会日時 平成19年12月13日(木)   14:00〜16:30
◇場    所 奈良市登大路町6−2 奈良県文化会館
◇議    事 ・「新たな提言」(案)について

・その他(教育懇談会からのメッセージ等について)


発言のポイント
○中等教育学校については、学校のコンセプトや目標について十分な検討が必要
○異なる校種間の連携が重要
○全国学力・学習状況調査の結果によると、奈良県の子どもたちの教科成績は全国平均より上だが、基本的生活習慣や学習意欲等にも課題がある。
○子どもの心を育てるためには、広い意味での言葉の教育を進めるべき。

◇主な意見

【会長】
 これまでの懇談会の流れを確認する。まず、小中一貫教育、中高一貫教育についてはメリット、デメリットがそれぞれ存在すること。次に、これまでに導入、実施されている事例について検討すると、導入には、いくつかの条件が必要であること、(例えば、教職員の連携が必須であること等)奈良県の状況を踏まえて、どこまでやるのかということ等について協議してきた。
本日は事務局の方で、これまでの小中一貫教育、中高一貫教育についての意見を整理し、「新たな提言」の原案を提示いただいた。この内容について検討していきたい。事務局から提言案について説明を願う。
 なお、今回から事務局として、私立学校の担当である総務部総務課長が出席されている。

【事務局】<資料について説明>                  
「提言案」の概要
 ◆中学校の問題をどう解決するかという課題がある。
 ◆課題への対応として、小中一貫教育や中等教育学校の導入を選択肢として考えてはどうか。
 ◆小中一貫教育や中高一貫教育の導入に際しては、地域性や県民ニーズを十分に考慮したうえで検討を行うべき。

【会長】
 今の説明に対して、ご質問、ご意見はありませんか。
【委員】
 まず、奈良県教育委員会は、奈良県の県立高校をどう評価しているのか聞きたい。奈良県の県立高校は全国でも最もうまくいっていると認識しているのだが、その辺についてはどう考えるのか。
【会長】
 これまで、中高一貫教育については中学校の課題を軸に議論してきたが、高等学校教育との関わりではどうかという質問だが・・・。
【事務局】
 高等学校の評価については学校アドバイザリーチームが学校を巡回しているが、どの高校も特色を掲げて教育に取り組んでいるところ。取り組みの状況はおおむね良好と考えている。
【委員】
 中学校の課題を解決するために中高一貫教育を導入すると、高等学校に影響がでるのではないか。私立学校についてはどう考えているのか。
【委員】
 小中一貫教育を受けている生徒は、中高一貫教育を受けられないと思うが、両方を推進することで良いのか。提言案の問題提起や小中一貫教育の導入に関しても、地域性等の条件を踏まえて推進することについては異論はないが、同じ提言に中高一貫教育校の設置を入れることはやや矛盾があるように思う。
【事務局】
 奈良県内で実施されている中高一貫教育そのものの評価というのではないが、中高一貫教育(特に中等教育学校)のメリットである6年一貫の教育課程や、キャリア教育の分野における可能性については魅力があると考える。また、小中一貫教育か中高一貫教育のどちらか一方だけを一斉に進めるというのではなく、条件によって小中一貫教育又は中高一貫教育のどちらかを導入するという選択になると考える。
【委員】
 こういう条件があれば導入したらどうかという提言であれば良いと思う。


○中等教育学校については、学校のコンセプトや目標について十分な検討が必要
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【会長】
 中高一貫教育に関しては3つのパターンがあるということだったが、その中の中等教育学校については、十分な議論がされていないところはある。
【委員】
 中等教育学校については、私学では大学進学に比重を置いたところが多い。奈良県の公立でもそれを意識して考えるのか。個人的には、そういう学校があっても良いとは思う。
【委員】
 中高一貫教育には確かに問題点もあるが、東京での私学を見ると成功例も多い。全体の底上げも大事だがそれだけでは国際的な競争には勝ち残れない。いわゆるエリートや社会的なリーダーを育成する教育にもっと積極的に取り組むべきである。資源を持たない日本では、人的資源こそが重要。奈良県の県立にもそんな中等教育学校があっても良いのではないか。
【委員】
 最近の医者や弁護士には二世、三世の人が多い。これは、親の教育に対する意識も関係するが、子ども本人の能力よりも親の経済力による部分が大きいのではないか。難易度の高い大学では、多くの学生の家庭が、親も高学歴、高所得であり、中高一貫教育の私立学校の出身者が多い現状がある。したがって、公立高校でも私学の中高一貫校に対抗できる選択肢があっても良いのではないか。親の所得が少なく経済的に私学への進学が困難な子どもたちにとっては、公立の中等教育学校の存在は良いことだと考える。経済的格差が教育の格差にならないようにすることは必要である。ただ、公立の中等教育学校がすべて大学受験を目的とする必要はない。それぞれが特色を掲げることが望ましい。ともかく学校のコンセプトを明確に打ち出す必要がある。
【会長】
 中高一貫校を設置することは、選択肢を増やすということで、それも一つのメリットである。
 中高一貫教育を導入すれば、中学校の問題がすぐに解決するわけではない。どんな子どもを育てるのかというコンセプトのはっきりした学校を設置することが、多様な選択肢につながるのではないか。
【委員】
 これまで均一な教育を行ってきたことは一定の成果があったと思う。しかし、現在の日本の社会やキャリア教育の視点からは多様な進路を選択できるのが望ましい。ただ、県内でも地域的に選択できる範囲が限定されてしまうのではないか。
【委員】
 ここ20〜30年、特色のある商業高校や工業高校はどんどん減少し、普通科の学校が増えている。これは、全体からみるとかなり問題だと思う。中等教育学校を新たに設置するとなるとやはり大学進学をメインにした学校というイメージで捉えられるのではないか。例えば、現行の進学校に中学部を設置するということになるのではないか。その方向性で良いのか疑問に思う。
【委員】
 個人的には、奈良県の県立高校の中に社会的なエリートやリーダーを育成する学校があっても良いと思う。
【会長】
 公立の中等教育学校は、必ずしも大学進学を意識したものだけではないと考えるがどうか。
【事務局】
 県立高校再編計画の中では、特色と魅力ある学校づくりを進めてきたが、その中でも特に、社会や保護者、生徒のニーズに応える学校というのを意識してきた。同時に、生徒が将来自立した社会人として生きていく力を養うことが目的であり、一律に大学進学を目的とした学校づくりはしていない。そのため全体の学校数は減らしたが、専門的な学科やコースは逆に増やしてきている。
 提言案では、公立の中等教育学校で目指すところとして、一つ目はボランティア活動等の体験活動を通して人間性を養うこと、二つ目は基礎的学力を備えた上に、自分で将来の目標を見つけ、社会に出たときに新しい日本や世界を創り出せる力量を備えた人材を育成すること、三つ目は一人一人の個性や能力を伸張させる教育を展開していくこととまとめさせていただいた。
【会長】
 公立の中等教育学校を設置した場合、制度上、選抜の際に学力検査はできないのではないか。そうすると、おのずと私学とは違った形になるのではないか。
【委員】
 なにか、中高一貫校でのモデルとなるような学校はないのか。
【事務局】
 奈良県でもこれまでに十津川村で連携型の中高一貫教育を実施してきているが、地域との連携は他の地域の学校よりもよくとれていると考えている。
【委員】
 教育では知・徳・体のバランスが大切だが、最近は徳育の部分が弱いのではないかと思う。徳育の部分に力を入れた学校はできないか。提言で徳育についても示せないか。
【委員】
 提言案で、地域性を考慮することが述べられているが、例えば小中一貫教育を、子どもの数が減っている地域において、学校の統廃合を第一の目的として進めてはダメだと思う。小中一貫教育の教育的なねらいを明確にし、過疎地だけでなく都市部でも積極的に展開することが重要と考える。
 中等教育学校については、通学範囲の問題があると思う。国立大付属の中学校は広い範囲から生徒を集めているが、県立でやった場合はどう設定するのか。他にも検討する課題は多いし、どのような中等教育学校が望ましいかという点についての議論はまだまだ不足していると思う。
【委員】
 中高は、いきなり一貫というよりも、連携を強化することに尽力すべき。キャリア教育から考えれば、高大連携を重視すべきではないかと思う。
【会長】
 これまでの議論を整理すると、小中一貫教育については、条件が整うところでは導入を進めるべきという意見が多く、中高一貫の中等教育学校については、もう少し学校のコンセプトや目標について明確にする必要があるという意見が多いように思う。また、中等教育学校のコンセプトや目標については、委員の中でもそれぞれ異論があるという状況と考える。
【委員】
 中等教育学校については、どんな学校にするべきなのかという部分を詰めるべきで、そのイメージがないまま進むというのはいかがなものか。
【委員】
 奈良県全体として、私学とのバランスの問題も考えるべきではないか。


○異なる校種間の連携が重要
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【委員】
 中高一貫教育を進めることについては基本的には賛成。中高の連携は重要と考える。ただ、どのレベルまで、どんな方法でやるのかはもう少し議論するべき。
【委員】
 キャリア教育の部分では高大連携が重要。高大連携を含めた提言にしてはどうか。
【会長】                                  
 異なる校種間の連携は大変重要であり、文部科学省も推進に動いているところ。小中、中高だけでなく、高大連携、幼・小・中の連携等の動きも活発化している。特に関西の私立大学は高校との連携に積極的に取り組んでいる。このような動きを踏まえて提言をしてはどうか。
【委員】
 提言の方向性については賛成。ただ、中等教育学校については、引き続いてどこかで研究、検討を継続していくべきと考える。例えば5年という期間を定めて、データを集めシミュレーションするなどの取組をお願いしたい。県でやるなら、私学とはまた異なったコンセプトにも挑戦して欲しい。
【委員】
 中学校の課題についての取組は、この提言に表せない部分においても日々頑張っていただきたい。

<休憩>

【会長】                                  
 では、全国学力・学習状況調査の結果について事務局から説明願います。


○全国学力・学習状況調査の結果によると、奈良県の子どもたちの教科成績は全国平均より上だが、基本的生活習慣や学習意欲等にも課題がある。
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【事務局】
 教科の点数については、国語、算数・数学ともに全国平均をやや上回っている。この結果は、公立学校だけの集計で、私学については文部科学省が別の集計としている。(データとして公表されていない。)
 成績分布のグラフについては、小中学校ともに全国と奈良県ではほぼ同じ形となっている。奈良県は上位層が全国平均よりやや多い。
 基本的生活習慣については、どの項目についても全国平均よりやや劣っているということが読み取れ、課題と考えている。規範意識についても残念だが、3〜5%全国平均より低い。一方、家庭での学習時間は2時間以上家庭学習している生徒の比率は、全国と比べて、小学校では10.5%、中学校では19%も上回っている。奈良県の子どもの家庭での学習時間(塾での学習時間も含めて)が、全国平均よりもかなり多い。通塾率は、小学校で54.2%、中学校では72%で、全国平均より1割強程度多くなっている。
 学習意欲や興味関心の項目では、小中学校ともに、国語、算数・数学は9割以上の子どもたちが大切だと考えているが、好きかという問いについては、全国平均より低い。奈良県の子どもたちは、家庭学習時間は全国平均より高いが、学習を好きでないと思っているという課題が見えると考える。
最後に教員の家庭訪問の実施時間は、全国平均のほぼ2倍近くあり、これだけをもって奈良県の教員が頑張っているとはいえないが、学校が熱心に取り組んでいる状況が現れていると思う。
県立教育研究所では、学力検証改善委員会を設置し、詳細なデータの分析にかかっており、来年2月を目途に報告する予定。学校改革支援プランを作成し、市町村教育委員会や学校へサポートを行っていきたい。
【会長】 
 これについて、何か質問は?
 なければ、次に、奈良県教育へのメッセージについて協議する。奈良県教育懇談会は、今回の提言をもって一つの区切りとする予定であると事務局から説明があった。その区切りに際して、提言とは別に奈良県教育へのメッセージをまとめてはどうかということについて事務局から説明願います。
【事務局】
 奈良県教育懇談会から多くの提言をいただいたが、今回の区切りに際して、現在の奈良県教育の現状を踏まえて、奈良県の教育に関するメッセージをお願いしたい。現在実施している、「新しいスタイルの学校等に関する意識調査」と「平成19年度教育改革取組状況についての調査」結果を整理させていただくので、それをもとに考えていただけたらと思う。
【会長】
 データの整理ができ次第、委員に資料を送付願いたい。
委員の皆さんから、現時点でのメッセージに対して意見はないか。
【委員】
 メッセージの発信相手についての想定は自由か?県民全般、児童生徒、学校など幾つか分けることも考えてはどうか。
【委員】
 徳育等について何か発信できないか。私のところ(私学)は、礼法、作法、華道を教育課程に導入している。公立学校、特に小中学校で教えられたら良いと考える。


○子どもの心を育てるためには、広い意味での言葉の教育を進めるべき。
                                            トップにもどる
【会長】                                  
 従来の日本では生活の型があった。家庭や地域社会がある意味で一体化していたが、その構図が崩れたために、学校への教育ニーズが高まり、負担が増えている。学校の課外活動や特別活動等での生活面の指導が必要な現状がある。
 文科省は、道徳教育について「心の教育」という形態で切り込んでいるが、道徳教育の内容については異論が多くまとめきれていない。また、徳育については具体的な方法論が示されていない現状がある。私は個人的には、言葉の教育がその方法になりうると考える。ものを考えるという作業は、言語で考えることである。豊かな言語を身につけることで思考の広がりや深まりが生み出される。言葉の教育については、できるだけ早い段階でやることが重要。ただ、学校の教科・国語でやろうとすることについては無理がある。日本には、例えば遊びを通して子どもの生活の中に言葉の文化があった。そういった歴史を考慮して展開を考えてはどうか。広い意味での言葉の教育が心の教育や徳育につながると考える。具体的な方法として効果的だと思う。
【委員】
 家庭の教育の力が落ちているのは、諸外国も同様である。日本人は、人間が生まれ落ちたときからその能力は平等ではないということを認識すべき。誰もがイチローには成れない。それを平等に扱おうとすることに無理がある。
 道徳観について外国の教育ではどうなのかというと、典型的なものとして私立の全寮制の学校が挙げられる。外国の私立の全寮制学校では、少数のリーダーが様々な責任を負わされる。加えて学校内の規律は厳しく、ルールを破れば即退学となる。しかし、公立学校に通学できる受け皿は準備されている。リーダーとしてどうあるべきかということについては、自己抑制の教育、公正の教育、社会奉仕の精神を重視し、ノーブレス・オブリージュというか矜持(きょうじ)をもった人間の育成に力を入れている。日本では、いわゆる真のエリート教育をおざなりにしてきた付けが現在の状況をもたらしたと思う。
【会長】
 心の部分の教育を、家庭の問題として、済ましてはおけない状況がある。
【委員】
 会長が言われたように、美しい言葉や品のある言葉を大事にする風土をつくっていきたい。
【会長】
 テレビの視聴率優先のバラエティー番組で使われている言葉が、今の子どもたちの言葉の文化になっている。子どもたちは、その言葉を使って考える事になり、その言葉でしか表せない内容になってしまう。
【委員】
 奈良県には、万葉集を生んだ歴史がある。奈良県独自の「言葉の教育」が考えられないか。心の教育や道徳といわないで、言葉の教育等の形で徳育を展開できないか。美しい言葉を暗唱することは、その言葉を自分に取り込むこと。美しい言葉を自分の中に取り込めれば自己表現の際にその言葉が使える。それによって、人格、品格がつくられるのではないか。
【委員】
 親が礼儀作法や道徳を教えることが期待できなくなってきている現状では、学校における教育はまだ一定の力を持っていると考える。私の娘は、成人だがたばこは吸わない。娘は、高校時代、学校で「たばこを吸うな」ではなく、たばこの害について科学的に説明され納得したと言っていた。本人が納得することによって教育効果はでる。厳しい校則も一定の意味があると思うが、理屈や必要性をきっちり押さえて指導いただけたらよい結果になるのではないか。私は個人的には現在の奈良県の公立学校はよくやっていると思うし、期待もしている。
【会長】
 現代は社会の風潮が学校に大きく影響を与えることは避けられない。学校だけが頑張っても無駄だという嘆きも聞く。しかし、教育は未来に影響を与えることのできる仕事。教育にかかわるものは、学校教育によって社会の在り方を変えられる可能性があることを忘れてはいけない。特に、小学校では、子どもだけでなく保護者への影響も大きい。子どもが変われば親が変わり、社会が変わっていく可能性がある。教育をあきらめてはいけない。懇談会としては、その部分を信じてメッセージを発信したい。
【委員】
 親の経済格差が子どもの教育の格差にならないようにという公立の教育に対する思いを提言に表してもらいたい。
【会長】
 ありがとうございました。予定の時間がきたので、もし他に質問、意見等があれば事務局へ随時伝えていただきたい。
 事務局では、それらの意見を整理し、提言案の修正等よろしくお願いしたい。

(以上)

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