水田果樹導入のために



1.基本技術

(1)排水の徹底
【暗きょ排水】
果樹は、全般に畑地に適しており、土壌水分の高い水田での栽培は、不利な条件です。このため、暗きょを埋設し、地下水位を低く保ち、排水対策を講じる必要があります。施工は、トレンチャーなどで溝を掘り、暗きょ用有孔パイプ(コルゲート管)を通気性の資材(粉殻、玉砂利、暗きょ用発泡スチロールなど)で周囲を充填し、埋設します。パイプは部分的な高低のないようにし、排水側に少し勾配をつけ、集水桝を設け地下水位を一定に保つように調整します。
【明きょ排水溝の設置】
果樹転作田の周辺には必ず明きょ排水溝を作り、雨水や隣接水田からの浸水を防ぎます。根群発達をよくし、有効土層をより多く確保するために、地下水位を下げるとともに、広畝、広巾溝を作ります。
(2)高畝作り
畝立てと排水溝(明きょ)の組み合わせにより、雨水や隣接水田からの侵入水を排除します。地下水位の高い囲場では、できるだけ高畝にし、有効土層を確保します。

(3)深耕・土つくり
水田では、水持ちをよくするため鋤床層(はがね層)が形成され土層が浅いので、水田の果樹栽培にあたっては、この層を取り除きます。また、堆肥や土壌改良資材(ようりん、苦土石灰など)施用して、深耕します。

(4)客土
ナシやブドウ園では広く行われていますが、囲場の一部または全体を客土(盛り土)し、土壌条件の良い果樹園にします。

(5)マルチ
黒ポリマルチは雑草防除に、アルミ蒸着フィルムは、果実の着色促進に利用されます。畝面をマルチすることにより、雨水が遮断され、土壌の過湿を防ぎ排水効果をもたらします。

2.応用技術

(1)ハウス栽培
 水田では、傾斜地樹園地と異なり、冷気が停滞しやすく、凍霜害を受けやすいので、簡易ハウスの導入により凍霜害を防止し、初夏からの収穫期の雨を遮断することで、土壌の過湿を防止し品質向上にっなげます。水田は平坦であり、ハウスの建設も容易です。

(1)イチジク
 イチジクは樹高が低いことから、ハウスの導入が容易で、早出しと収穫期間の延長や裂皮を防止による品質安定などを目的として普及しています。

(2)モモ
 モモの収穫は6月中句から8月で、収穫前の雨で、糖度の低下が起きます。とくに早生のモモにおいて願著で、年により品質がバラつく原因となっています。このため、簡易ハウス栽培で土壌水分を調節することで、水田において食味の良い果実の生産が可能です。

(3)ブドウ
ブドウはもともと乾燥地帯の果樹であり、雨の多い日本での栽培では、病気の発生が多いです。このため、雨よけを含むハウスによる栽培が一般的になっています。今後、水田果樹としての利用が考えられます。

(2)根域制限栽培
 近年、ポット栽培など培地を制限した栽培方法が、普及しつつあります。これは、樹を小型化して、作業性や肥培管理を良くするとともに、糖度の高い高品質果実を生産すること、花芽の着成を良くし、生産安定を図るとともに、結果樹齢を早くするなどのメリットがあります。地下水位の高い水田においても導入可能で、ハウス施設等と併用して搬入設備等と組み合わせ肥培管理をよくすることにより、早期出荷が可能です。囲場も平らなことから、容器の搬入や設備の施工等も容易です。
 ミカンのコンテナ栽培による高糖度果実の生産、サクランボのポット栽培による結実樹齢の早期化と結実安定などが、実用化されています。

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