意見書第9号

意見書第9号

    「嫡出推定」に関する民法改正と救済対象の拡大を求める意見書

 「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取り消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」という嫡出推定を規定した民法第772条第2項は、1898年当時、父親の子への責任放棄をさせないため「早期の身分保障」「子の福祉」の観点から設けられたものである。しかしながら、施行より110年あまりが経過し、規定の趣旨とその実態との間に乖離が生じ、出生の届け出が行われず無戸籍となり、不利益を被っている子どもの存在が明らかになった。
 法務省は、2007年5月、無戸籍児の救済のため、離婚後の妊娠が医師の証明書で確認できれば「現父の子」としての出生届を認める通達を出した。しかし、家庭内暴力のため離婚手続きが遅れる例など、離婚前の妊娠でも社会通念上やむを得ないケースが存在するため、通達による救済の対象となるのは、法務省の推定では1割に留まるといわれている。
 家族関係についての意識も変化し、離婚・再婚の増加など、明治時代には予想もしなかった社会変化が生じているとともに、親子関係が科学的に立証可能である今日、離婚前の妊娠を一律に「前夫を父親」とする法規定は、今や不合理なものとなっている。
 1994年に日本が批准承認している「児童の権利に関する条約」7条は、「児童は出生後直ちに登録され、氏名を有し、国籍を持つ権利を保障される」としている。
 よって、国におかれては、子どもの人権と福祉を最優先に、戸籍が事実と異なる記載とならないよう、次の事項を求める。

1 民法第772条の嫡出推定に関しての見直し、関係する子の氏を定める戸籍法や婚姻に関する法律との整合性を図ること等も含め、現実に即した法改正を行うこと。
2 法改正までの間、通達による救済の範囲を広げること。また親子(父子)関係不存在・嫡出否認等の家事調停・審判の手続きの簡略化等、運用面でのさらなる見直しを行うこと。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 平成20年7月11日

         奈 良 県 議 会

(提出先)
 衆議院議長
 参議院議長
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 総務大臣
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