平成24年度 第1回県立学校教頭会 教育長挨拶


はじめに

 人事異動で各学校の体制も変わった。昇任教頭が23名で、全体の3分の1以上(23/60名)と、大幅な入れ替えとなった。校長や事務長と一体となって、学校の活性化を目指した学校経営の一翼を担っていただきたい。また教頭としての立場と役割を理解し、有能なフォロワーとなって校長を補佐してもらいたい。

 さて、今年度の予算は、昨年9月に発生した紀伊半島大水害からの復旧・復興を最重要課題として「災害に強く、希望の持てる」地域を目指し、取組を強力に推進していく。とりわけ、県立学校においては、生徒の心理的ケア等を行うために非常勤講師の配置やスクールカウンセラーの派遣を継続する。

 さらに、南部地域に高校生の部活動合宿や勉強合宿を誘致する「南部地域での高校生部活動・勉強合宿促進プロジェクト」を実施し、南部地域の復興を支援したいと考えている。

 その他、詳細は後ほど説明があるが、厳しい財政状況の中、奈良県教育のために必要な予算については、何とか確保できたのではないかと思っている。今後はそれぞれの事業の目的を十分認識し、当事者意識を持って執行していくことが重要と考えているのでよろしくお願いしたい。


1 教頭に期待すること

 本日、組織を念頭に置いて、校長から皆さんに伝達するスピードを知るためにアンケートさせていただく。先週の校長会の内容は聞かれたと思うが、聞かれたか。経営学者バーナードによれば、「共通目的を持っていること」「コラボレーション(協働意欲)があること」「コミュニケーションがとれていること」の3つがあれば、2人でも組織になる。しかも、2人の有する力は、2以上である。

 この3要素の1つであるコミュニケーションがどの程度とれているか知りたい。もし、聞いていないなら組織になっていない危うい個人集合となる。

 本日は、「組織」と「経営」を中心に話をする。

 先ほども述べたが、今、奈良県もお金が不足している状況だ。ゆえに人付けも増えない。こういうときに教育委員会や学校が県民のニーズに応えていくためには、組織力と経営力しかない。

 ドラッカーによると近代経営は次の6点に集約されている。1点目は、「効果・効率を求める」こと。2点目は、「目標の選択」で、何ができて何ができないか、何故それをして何故それをしないのかを整理すること。3点目は、「具体的目標値の設定と計画的達成」である。教育ではよく情緒的あるいは定性的な目標が設定されるが、これらは目標を達成できたか否かはチェックできない。目標を達成するための手段を考え、さらにその手段を実現するための2次的な手段というふうに3、4段階ぐらいまで細かい手段を考えていくと、具体的で客観的な数値目標が見えてくる。そうした数値的目標(=定量的目標)を達成するための計画を作る必要がある。ただし、達成したかどうかチェックできないと目標値とは言えない。「目標」ではなく、「目標値」を設定してください。4点目は、「目的達成のための組織作り」である。現状の組織が目的達成にマッチしているか改善の余地があるのかを確認し、強い組織作りをお願いしたい。5点目は、「目標に対する人的加配と資源配分」で、目標に従ってこの部署には何人、予算をどれくらい配分、ということである。6点目は、「リスクマネジメント」である。これは起こる可能性のあるリスクを事前につぶしておくことです。学校行事や人事等で「想定外のことが起きた」ということを聞いたことがあるが、本当にリスクマネジメントができていたのか疑問である。

 昨年10月に「わくわく まなび フェスタ」が研究所で開催された。実施に当たっての「危機対応マニュアル」には、病気や怪我の発生から、身体障害者や地域住民への対応まで考えられるあらゆるリスク回避が記載されていた。

 学校現場では、どうだろうか。
 具体的な話をすると、今年度、高校に支援の必要な生徒が3名入学した。入試は勿論のこと、今後の生徒への対応について、学校全体で検討が十分行われているか。加配もつけた。有効な活用を願う。

 昨年度、校長と同様に教頭ヒアリングをした。共通の話題があれば意見交換も活発に行われると考え、職業高校や特別支援学校等のくくりでグループ分けをした。感想を言うと、全体として非常にいい意見が色々出て、心地よい緊張感をもって私も臨むことができた。

 今年度も実施する。日頃より校務に忙殺されているので、事前の宿題はない。その場でテーマを与え、議論する中で皆さんの日頃の蓄積を見てみたいと考えている。グループディスカッションなので、必ず意見を言わなければならない。そのような環境の中で情報交換を密にし、よい関係を構築してもらいたい。

 私自身、時間的制約があり大変苦しいが、何とかやりくりして有意義な時間としたい。


2 人材育成について

 (1)はじめに

 ご存じのように、県立学校で50歳以上の教員は全体の50%以上を占めている。この10年間で、ベテランの教員が退職すると彼らが有している豊かな教職経験つまり知識や技能等を継承することが困難になる。

 言うまでもなく、学校経営において人材育成は優先すべき課題である。最大の教育資源は人材であり、教員そのもの。教員の質が高まると教育力が向上し、それが子どもの成長につながる。

 しかし現実には、教員間の希薄な人間関係やジェネレーションギャップなどが横たわっており、相談なしに行動する若手教員、聞かれなければ教えない先輩教員がいると聞いている。

 そもそも、教員は人に教えることが好きな人が就く職業である。それが、部活動指導や生徒指導への対応など、自分の周辺のことに忙殺され自己研鑽が後回しになっているのが現状ではないだろうか。自己研鑽ができなければ、自分に自信を持つこともできず、他人へのアドバイスも遠慮がちになる。

 このような現状を打破する一助として、昨年度、研究所が校内研修の充実に向けた実践事例集『育てる 育つ 校内研修』を作成した。同じ県立学校の仲間が作成に当たっている。各校の実情に合わせた人材育成の「仕掛け」づくりに取り組んでもらいたい。


 (2)ミドルリーダーの育成について

 また、人材育成の一環から、昨年10月28日付けで、教職員課からミドルリーダーの育成について文書を発信した。この課題を解決するためには、次代を担うミドルリーダーを早期に育てる必要がある。

 校長の指導の下、中堅教員に対して校内OJTの推進はもとより、広く研修の機会を確保するとともに、部長等への積極的な登用に向けて校長と連携し、普段から教員とコミュニケーションを図って人材の発掘に努めていただきたい。


3 学校経営計画について

 すでに、学校教育課から平成24年度の「学校経営計画」の提出について、依頼したところ。学校経営計画は、校長が学校の経営ビジョンを明確にし、学習指導、生活指導、進路指導等の教育活動の目標とこれを達成するための具体的方策及び数値目標を示すもの。この計画書の作成について、直接教員と連携を取るのが皆さん方である。学校改善を図るマネジメントサイクル(PDCA)の仕組みを用いた学校経営計画をお願いしたい。

 そこで、学校経営計画の内容は、「教育基本法」、「学習指導要領」及び「本県の学校教育の指導方針」等に基づくとともに、学校経営計画の目標は、教職員の人事評価における学校の組織目標である。これは、自己申告評価制度による個人目標のベクトル方向を示すものである。

 学校の経営目標は、教育委員会のスローガンと結びつき、教育委員会と学校が組織として同じ方向を向いていなければならないことを認識しておかねばならない。このベクトル合わせができておれば、どこからも揚げ足を取られることはない。


4 教育委員会事務局の主な組織の見直し及び取組について

 今回の組織の見直しは1件である。「まなびの支援」というリーフレットを見れば、今教育委員会が何を課題にし、何を解決しなければならないかということが明らかになる。一度しっかり読んでもらいたい。今県教委がどちらの方向を向いているのか明確に分かるはずである。

 組織の見直しについてであるが、組織としては人権・社会教育課を人権・地域教育課に改称した。今日、児童・生徒の規範意識・社会性の課題に対しては、学校だけでなく家庭や地域が協働して総力を挙げて克服しなければならないことから、地域の教育力の向上に向けて取り組むため、人権・社会教育課を人権・地域教育課に改称し、併せて、社会教育係を地域教育係に改称した。

 1年間、よろしくお願いしたい。


    教頭会アンケ-ト(PDFファイル)