意見書第5号

意見書第5号

 

地域公共交通維持のための財政支援の拡充を求める意見書

 

奈良県は、昭和40年代より、大阪都市圏のベッドタウンとして、県北西部を中心に新たな街が形成され人口が増加してきた。しかし、本県のみならず全国的にも人口減少・少子高齢化が進行しており、これまで公共交通の主な利用者であった通勤・通学客が減少する一方、高齢者や運転免許・マイカーを所有していない方の買い物・通院などの足の確保が喫緊の課題となっている。加えて、交通事業者を取り巻く厳しい経営環境の中で、全国的な傾向として、交通事業者の従業員が高齢化しており、このままでは将来の地域を支える公共交通の担い手がいなくなる恐れがある。

公共交通は、国民生活及び経済活動にとって不可欠なものであり、まちづくり、環境、保健、医療、福祉、教育などの諸施策の基盤である。人口減少・少子高齢化の進展、限界集落や買い物難民などの地域コミュニティーの崩壊、地球温暖化をはじめとした環境問題への対応など、公共交通の果たすべき役割は年々重要になっている。

そのような中、国において平成25年12月に交通政策基本法が制定され、昨年2月に交通政策基本計画が閣議決定されるなど法整備が進められている。しかし、地域公共交通確保維持改善に関わる平成28年度予算は、実質減額といえる厳しい現状である。その一方で、利用者の安全を崩壊させる恐れのある自家用ライドシェア(相乗り)の合法化などが検討されている。1月15日に長野県碓氷峠で発生した15人の尊い命が犠牲になった貸切スキーツアーバスの凄惨な事故の原因が、不十分な安全対策にあったことは明らかであり、安全・安心の公共交通をディスカウントすることはできない。

加えて、欧米では公共交通に対する公的補助は持続可能な都市政策として正当化されており、補助金の割合が50%を超えるケースも多く見られ、公共交通の利便性を向上させている。

今、安全で便利な公共交通がその機能を十分に発揮し、真に活力ある地域や経済社会をつくっていくためにも、公共交通に対する財政支援の拡充が求められている。

よって本議会は、地域公共交通維持のための財政支援の拡充を強く要望する。

 

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 

   平成28年3月25日

                                       奈良県議会

 

(提出先) 衆議院議長

      参議院議長

      内閣総理大臣

      内閣官房長官

      国土交通大臣