座談会:「職場」は再び輝ける私だけの「フィールド」

仕事のブランク、家事や子育てへの影響…
さまざまな不安から、再就職に踏み出せない女性がいるかもしれません。

一方で、県内には男女ともに働きやすく働きがいのある職場づくりを進める企業がたくさんあります。
再就職を果たし、それぞれの「フィールド」でいきいきと働く女性も増えています。

今号では、自分の活躍の場を見つけた女性社員と、よりよい職場づくりを目指す管理職に、それぞれの立場から再就職について語っていただきました。  

 

 

座談会メンバー紹介

 

第一生命保険株式会社 奈良支社 橿原南営業オフィス
松田 仁美さん「仕事を通して子どもの成長を実感できた」

松田仁美さん

●入社8カ月
20歳/専門学校卒業後、介護福祉士して勤務。
結婚を機に退職し専業主婦へ
30代~/同級生のお寺を手伝う
42歳/加入している第一生命の担当者のすすめで就職
生涯設計デザイナーとして勤務中
●子ども2人(8歳、13歳)

 

株式会社 天平庵 天理店
森川 聡子さん「おもてなしのスキルを身につけて、パートから正社員へ そして店長にステップアップできた」

●入社10年5カ月
20代/トリマーとして勤務した後、写真店に再就職。10年間勤務後、閉店のため退職
30代/株式会社天平庵へ再就職
40代/株式会社天平庵 天理店店長として勤務中  

 

佐藤薬品工業株式会社
坂口 真喜子さん「これまでの経験を遺憾なく発揮できる居心地よい職場を作っていきたい」

●短大卒業後、佐藤薬品工業へ就職。現在、総務部担当係長として、社会保険、採用関係の手続き業務を担当

 

社会福祉法人 明徳会
総合老人福祉施設 テンダーヒル御所
山本 忠行さん「一人ひとりが必要とされていると感じながら成長できる職場づくりを進めたい 」

山本忠行さん

特別養護老人ホームを中心とした福祉施設を運営。施設長として全体的な施設の管理を担当

 

 

 

松田さんと森川さんはどのような経緯で再就職されたのでしょうか?

 

松田:結婚する前は介護職員として働いていました。介護職を目指した理由は入院していた祖父をケアしてあげることができればと思って選びました。
結婚を機に退職したのですが、「夫の年金だけで大丈夫なのか?将来どうなるのだろう」と、老後について考えるようになりました。そんな時、自分が加入している第一生命の担当者さんから、「一緒に働きませんか」と、お声がけいただいたのです。「保険の外交なんて絶対無理!」と思ったのですが、お話を伺うと福利厚生もしっかりしているし、将来的にも安定しているかなと思って就職しました。

 

森川:かつてトリマーとして働いていたことがありました。飼い主さんと交流を図る仕事ではあるのですが、あくまでも施術が中心で、天平庵のようにお客様の心に踏み込んだおもてなしの経験はありませんでした。
お客として行った天理店で対応してくださったスタッフのおもてなしが素晴らしく感動し、「この会社で働きたい」と強く思ったのです。本社に「募集していないですか?」と自分から問い合わせ、面接していただいたことが働くきっかけです。

 

 

 

再就職に際して不安はありましたか?


松田:不安しかありませんでした(笑)。両親からは「大変やろう」と反対されましたが、「どの仕事も大変。ただ、人によって大変と感じるところが違うだけ」と考え説得しました。
入社直後から研修が始まり、生命保険の基本や商品知識・税務などについて一から学びました。その次はお客様対応についての研修、それが終わってはじめてオフィスで勤務できるのです。今は上司や先輩に指導を受けながら働いています。
段階を踏んだ研修制度が整っているので安心です。

森川:和菓子販売は贈答、ご進物用に熨斗が必要だったり、お客様の希望に添った対応が求められます。お客様を観察して要望に応じたきめ細やかなおもてなしのスキルが必要です。
最初、パートからスタートだったので将来が不安でしたが、ベテランの先輩から指導を受けながら、熨斗の種類や包装のやり方など販売に必要なスキルを身につけていきました。そんな勤務態度や意欲を評価していただき、正社員になれたのでうれしかったです。

 

 

企業として再就職の方をどのようにサポートされているのですか?


山本:
職員のニーズに対応し、子育てしやすい職場環境を整えています。
正職員のままで時短勤務できる仕組みを設けたり、子どもの看護や親の介護のための休暇制度はもちろん、参観日・保護者面談など2、3時間程度の休みで事足りるような用事に対応できるように、有給休暇を必要な時に時間単位で取得できる制度を採用しています。
 

坂口:平成25年に事業所内託児所「Satoにこにこ園」が開設されました。従業員のお子さんなら就学前(基本的に3歳まで)まで入所できます。1年間の育児休業を取得後、復職する際に待機児童になることを心配することもありません。
また、所定外労働・時間外労働・深夜業の制限など、制度も充実(法定より拡大)しているとともに、会社全体として子育て支援に対する理解が高いですね。学校行事や子どもの体調不良などで急に休まざるを得ない場合であっても、周りでフォローする環境が整っていると思います。



 

座談会の様子

 

 

子育てしながら働くことで生活に変化はありましたか?

  

松田:小学校3年生(8歳)と中学校1年生(13歳)の子どもを育てています。面接時に、担当の方から家事と子育てをしながらできる仕事と背中を押してもらい、入社しました。実際に急に子どもが熱を出した時などでも休みやすいので助かっています。また、長期休暇の際などは子どもを職場に連れていけるのでありがたいですね。
仕事をするようになって子どもと距離を置くようになると、愛おしさが増しました。お互いに思いやる気持ちが強くなって、子どもも私の仕事に興味を持ち応援してくれるようになり、仕事を通して子どもの成長を実感しています。
 

坂口:弊社の場合、1年の育児休業を経てほぼ100%の割合で復職しています。私も育児休業を取りました。復職先は元いた部署が基本です。仕事も人間関係もわかっているのでみなさん安心して戻られています。
時短勤務については、法律に定める範囲を大きく超えて子どもが小学3年生の始期に達するまで取得できます。私自身も子育て中のため定時勤務が基本ですので、効率的に業務を行うように心がけています。また、帰宅後の限られた時間の中で意識的に子どもとの時間を大切にしています。

 

   

再就職を目指す女性にエールをお願いします。

 

森川:年齢とともにどうしても仕事を覚えるのが遅くなってくるので、不安ですよね。でも、「教えてください」と甘え上手になれば周りの人は教えてくれます。我が社では50代で入ってくる人もいます。シニアの方はOA機器の扱いが苦手だったりしますが、まず、できることからはじめてもらうようにしています。
意欲があれば大丈夫!そんな事業所はきっと身近にあります。

松田:仕事探しをしていると、「事務だから」「営業だから」といった先入観を持ちがちですが、まずはそういった先入観を捨てるのが大事かなと思います。何が大変かは、人によって捉え方や感じ方が違うだけです。どの仕事も大変ですが、その中で自分に合った業界や職種を探せばいいと思います。

坂口:弊社は昨年、人事制度を見直して専門職系、総合職系と分かれて自分のキャリアを選択できる制度を設けました。将来的にはそれぞれの希望に応じた働き方を人事の方でサポートできたらと考えています。子育てや親の介護と向き合いながら自分のペースで仕事をしたい人も安心してキャリアを選択できます。
今後の目標は、中途採用の社員が遠慮なく発言できる環境づくり。社員みんなにとって居心地がよい雰囲気を作っていきたいですね。
 

山本:介護の仕事の場合、職員が利用者さんの長所や自立してできることを理解していないと、利用者さんに必要な支援ができないと思います。そのためには職員が長所を伸ばせて受け入れられている、必要とされていると感じながら成長していける、そんな職場でなければと考えています。
だから、資格はなくても介護に対して「人と関わっていることがうれしい」「高齢者のお世話をすることに喜びを感じる」といった前向きな気持ちが大事。必要なスキルは採用後からしっかり学べますので心配せずに一歩踏みだしてみてください。

 

 

再就職なさったお二人に
今後の目標を教えてください。

 

松田:がんばった分だけお給料に反映されるので、家族で旅行や食事などに行きたいです。家族の生活の充実と老後の安定を目標に、長く働き続けたいですね。

森川:私は上司に認めてもらってステップアップできました。店長としてお店の売り上げが上がれば表彰され褒賞金をいただけて、みんなで食事に行けるのでがんばりたいですね。14名いるスタッフを束ねて、若いスタッフが目標にしてくれる店長になりたいです。

 

 

みなさん、ありがとうございました。

朱雀門ひろばにて