建設発生土に対する適切な対応を求める意見書
主に建設工事に伴い発生する土砂(以下、建設発生土という。)は、発生現場内や他の建設工事等において有効に利用されている一方で、一部において山林等への投棄など不適切な処理が行われ、土砂崩れ、粉じんの飛散、生態系の破壊などの社会問題となっており、広大な中山間地域を持つ本県においても山林等へ建設発生土が投棄される懸念がある。加えて、土地所有者が建設発生土処分業者から話を持ちかけられて安易に土地を貸してしまう懸念があり、田を畑にするとの名目で多量に土が投入され困っている事例もある。
そもそも建設発生土は自然物であり、有用物としての利用可能性があることから、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の対象外となっている。そのため排出者が明確な責任を負わないことから、排出から処分に至るフローが管理されることなく、山林等に安易に埋め立てられてきた時代があった。その後、森林法や砂防法などの法令により、土地の形質変更について規制が行われ、国等が行う公共事業では指定処分が徹底されているものの、一部の地方公共団体においてはいまだに自由処分を行っており、発注者が知らないうちに悪質な受入れ地に搬入されている可能性が否定できない場合もある。建設発生土の不適切な処理は既存法では十分な対応ができないため、問題が生じた地方自治体は土砂条例や残土条例と言われる条例や要綱を制定して対応してきたが、それでも建設発生土の不適正な処理は後を絶たない状況にある。
総務省は建設発生土の不適正処理事案の発生状況や対応状況等の現状を明らかにするとともに、建設発生土の適正処理や有効利用を推進していくための課題を整理し、関係行政の改善に資するための調査を昨年1月から開始した。
よって、国においては、総務省の調査結果をもとに建設発生土に対して適切に対応するよう強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和3年12月15日
奈 良 県 議 会
(提出先) 衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
内閣官房長官
総務大臣
農林水産大臣
国土交通大臣
環境大臣
国家公安委員会委員長(国土強靭化担当)
建設発生土に対する適切な対応を求める意見書(pdf 102KB)