令和3年度の主な工事
鐘楼の解体

この鐘楼は、玉置神社の梵鐘が昭和31年 (1956)に奈良県指定文化財※となったことを受けて、昭和33年(1958)に新築されたものです。
社務所に設ける素屋根(工事用足場)と干渉する位置にあるため、本殿前方へ曳家を行う予定でしたが、令和3年7月に腐朽により柱が折れ、全体が南に傾斜してしまいました。このままでは曳家することができないため、一度全体を解体することとなりました。
解体にあたっては、元の位置がわかるように、部材ひとつずつに番付札を打ち付けます。併せて写真撮影や 実測を行い、十分な記録を作成しておきます。社務所の修理完了後に、元通り復旧する予定です。
※梵鐘はその後、国重要文化財に指定され、現在は十津川村立歴史民俗資料館に寄託されています。
社務所・台所実測調査

社務所及び台所が重要文化財となったのは 昭和63年(1988)のことですが、それ以来、大規模な修理を受けていないため、この建物には正確な図面が存在しません。
まずは、修理の基本となる平面図・断面図・立面図・天井見上図の4点を作成するため、丹念に寸法を測っていきます。現代では CAD で作図することがほとんどですが、重要文化財の修理では、これらの図面は紙と墨で手描きすることとなっています。デジタルメディアは保存が難しいのに対し、紙と墨は、環境が良ければ何世紀も保存できることが経験的に知られているからです。完成した図面は国に納められ、修理前後を記録した最も信頼のおける図面として、恒久的に保存されます(「保存図」と呼ばれています)。
作業小屋建設
玉置神社は斜面地にあり、作業に十分な面積を確保できないため、猿飼地内(車で20分ほど)に作業小屋 を建設しています。自動かんな盤等の工作機械を据え付け、主な加工はこちらで行う予定です。
史料調査
修理にあたっては、過去の修理歴や地域の変遷を知ることも重要です。建物の調査と並行して、古文書や古写真の確認も進めています。
修理前写真撮影
通常はデジタルですが、重要なカットは大判フィルム(4x5) にて撮影します。竣工後にも同一カットで撮影し、修理箇所がわかるようにします。