令和5年5月8日就任式あいさつ

1 新知事就任の意義

 このたび、県民の皆さまから信託をいただき、奈良県知事に就任いたしました山下真です。私は戦後の公選知事として6代目となりますが、これまでの5名とは大きく異なるタイプの知事となります。まず、初めての民間出身であり、初めての市長出身です。また、選挙で現職知事に勝っての就任は1951年以来となります。

 このことから、奈良県庁では選挙の結果で、政策や慣例が大きく転換されるという経験はこれまでしたことがないのではないでしょうか。今回、そうした政策や慣例を必要に応じて変えていくことを選挙で訴え、それが県民の皆さまによって支持されましたので、奈良県政は今後大きく変わっていくことになりますし、変えることが私の責務です。

2 県職員に求める心構え

 ただ、県職員の皆さまにご安心していただきたいことは、県民目線に従った当たり前の方向に変わるだけということです。県民からお預かりした税金を決して無駄にすることなく費用対効果を意識して使い、すべて行政サービスという形で県民に還元します。一部の方のために優先して使うことはありません。県職員の皆さまには、憲法に「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と定められている通りに働いてもらうだけです。

3 仕事のやり方の見直し

 県職員の皆さまには、これまでの仕事を原点に立ち返って一から見直してほしいと考えています。原点とは次の通りです。

(1) そもそも、その事業は必要なのか。県民や県内企業に対し、何か福祉の増進や利益をもたらすのか。

(2) 事業が必要だとして費用対効果が見合っているのか。

• 地方自治法2条14号 地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。

• 地方財政法4条1項 地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。

 との規定を改めて想起して欲しい。

(3) その事業の便益は、県民や企業等に対し公平に行き渡るのか。

(4) その事業は、法律や条例などの明文のルール、さらに判例などの明文以外のルールから逸脱していないのか。公正と言えるか。

(5) その事業は、県民に対してすべて明らかにしてやましいところはないのか。透明性を確保できるのか。

(6) 事業の発注にあたって、競争性を確保できているのか。

以上の、必要性、費用対効果、公平性、公正性、透明性、競争性この6つの視点に基づいて、皆さんの仕事を一から見直してほしいと思います。

4 情報公開

 透明性に関連して、山下県政においては、県政情報は原則公開とします。情報公開条例、個人情報保護条例で非開示とされるもの以外はすべて公開します。非開示事由の解釈も厳格にします。そして、情報公開請求に対して受け身に対処するだけなく、県から積極的に県民に情報を提供していきます。

5 私と職員との協働での仕事の進め方

 現場の職員が一番実務を知っています。ですので、現場からの業務の改善策、新規の事業提案を待っています。特に、管理職ではない職員が一番事業の詳細を知っていますので、そこからの提案を待っています。これまでの前例、慣例にとらわれず、改革案をどんどん出してほしい。改革案の出てこない部署の評価は低くなるかもしれません。そのために、各部署で徹底的に議論をして欲しい。議論のないところに良いアイデアは生まれません。そして、議論の視点はあくまで県民目線です。上司ではなく、県民のほうを見て議論して欲しい。もちろん、改善すべきところが何もないのに、無理してでも改善策を出せと言っているのではありません。ただ、何も改善すべき所がない部署というのはないのではないかと思います。

 改革案を出す際、決して失敗を恐れないで欲しい。失敗のないところに成功もありません。私の知事選もそうです。失敗してもマスコミ対応、議会対応については、知事が矢面に立ちます。

6 当面の課題に関する方針

(1) 令和5年度予算

 全く骨格予算ではなく、荒井前知事が当選することが前提となっています。公約実現のため、予算の一部執行停止を指示します。最終的な方針は6月上旬までに示しますが、それまでの暫定措置として、本日、一部の事業について予算執行の一旦停止を庁議で指示します。そして、最終的な方針を決定するための査定を実施します。その詳細は追って総務部から伝達します。

(2) 関西広域連合に全面加入します。関係部署はすぐにそのための手続に着手してください。

7 人事の基本的考え方

 一言で言えば、実力主義、信賞必罰です。年功も加味するが、実力が優先します。入庁年次が下の者が上司になることが珍しくなくなるかもしれません。

 また、私は自分に対するイエスマンばかりを重用するつもりは全くありません。荒井県政衰退の理由の一つはそこにあると思っています。私に対しても、どんどん意見を述べてください。徹底的に議論しましょう。

 人事に関連して、職員の皆さんの働き方の問題について触れます。昨年5月、県職員の過労自殺に対して奈良地裁で県の損害賠償責任を認める判決がありました。こうした悲しい事件は決して繰り返してはなりません。職員の皆さんにはサービス残業を一切禁止します。そして、きちんと残業時間を把握した上、職員の健康管理の視点から、残業が一定時間内に収まるよう全庁的に管理します。

8 奈良県の発展に向けての決意

 奈良県は、わが国発祥の地であり、3つもの世界遺産に恵まれ、歴史も自然も豊かな上に、大都会にも近いという利便性もあります。しかし、これまでの奈良県はこれらの素晴らしい潜在力を活かしきれていないと私の眼には映ります。私は、社会や経済の変化に対応して変えるべきところは変え、先人が守りぬきそして後世に伝えていくべき貴重な遺産や伝統は全力で守り、奈良県をあらゆる面で発展させていきます。戦後初めてと言っていい県政改革の取り組みですから、最初は多少の混乱もあることでしょう。しかし、5年、10年、15年のスパンで見れば、奈良県は必ず発展していきます。

 何卒、職員の皆さまのお力をお貸しください。皆さんの協力がなければ、県政改革は成し遂げられません。奈良県政が大きく変わるその瞬間に職員として関与できるのは、公務員人生にとってとてもラッキーなことかもしれません。やりがいのある仕事となるでしょう。どうぞよろしくお願いいたします。