国宝 興福寺五重塔 調査工事

 興福寺五重塔の修理については、令和2年9月~令和4年9月にかけて、修理工事実施を前提とした破損調査・耐震診断等の調査工事を行ないました。調査結果から修理工事の方針・内容を決定し、修理工事に着手しております。

 

痕跡の調査

 文化財建造物の修理工事では、必ず建物の調査を行います。調査によって、過去の修理の痕跡などから、建立当初から現在までの変遷が分かるため、非常に重要な作業となります。興福寺五重塔の調査では、壁や柱部分に赤色の塗装の痕跡を発見しました。今は、ほとんど塗装がはがれてしまい黒っぽい色に見えますが、かつては今の中金堂のような赤色で塗装された塔であったと考えられます。

痕跡

耐震性能診断

 文化財に指定されている建造物は、元の形状を後世に伝える必要があるため、建築基準法の適用が除外されています。しかし、人が出入りする可能性がある建物では、安全性の確認が欠かせません。そのため、文化財建造物の修理の際には、耐震性能の診断も行うことになっています。興福寺五重塔の修理でも、ボーリング調査、常時微動計測や人力加振時などの振動計測などの調査結果を基に、耐震性能の確認を行いました。その結果、興福寺の五重塔は耐震性能を有することが明らかになりました。千年以上も前の建築技術が優れていることを、現代の科学が証明したことになります。

耐震診断2