意見書第5号

 

生涯を通じた国民皆歯科健診の実現を求める意見書

 

 現在、我が国における歯科健診は、乳幼児に対しては母子保健法に基づき実施が義務付けられており、また小学校、中学校及び高等学校の児童及び生徒に対しては学校保健安全法に基づき実施が義務付けられており、この年代のすべての国民が歯科健診を受診している。

 一方、成人に対しては健康増進法及び高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、歯科健診が実施されているものの、実施については義務付けされておらず、受診率は極めて低い状況にある。また、労働安全衛生法に基づき事業所において実施が義務付けられている歯科健診の対象も有害業務に従事する労働者に限られている。このため、我が国における成人期以降の歯科健診は十分と言えない現状にある。

 近年、歯の本数と全身の健康状態、歯周病と全身疾患との関係等については、科学的な根拠が明らかになっており、人生100年時代を迎えるなかで健康寿命を延ばすためには、「八○二○運動」の取組をさらに進めるなど、歯を含めた口腔内の健康維持が極めて重要であることから、ライフステージに応じた切れ目のない歯科健診の受診機会を確保する必要がある。

 こうした中、国においては、令和4年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針二○二二」において、生涯を通じた歯科健診、いわゆる国民皆歯科健診の具体的な検討を行うことが初めて盛り込まれ、生涯を通じた国民皆歯科健診の実現に向けた機運が高まりつつある。

 よって、国におかれては、生涯を通じた国民皆歯科健診の実現に向けた具体的な検討を早急に進めるとともに、次の措置を講じられるよう強く要望する。

 

 一 早期に国民皆歯科健診の実現に向けた法改正を行うこと。

 二 国民皆歯科健診の制度設計等に関する具体的な検討を進めるにあたっては、地方自治体をはじめ関係者の意見を十分

   に反映させるための必要な措置を講じること。

 三 国民皆歯科健診の実施に関しては、国において十分な財政措置を講じること。

 四 国民皆歯科健診の実現と合わせて、国民に対して歯と口腔の健康づくり及び歯科健診の重要性についての啓発や健診

   受診後の定期的な歯科受診の勧奨を行うなど、歯科疾患の発症や再発、重症化予防のための総合的な取組を推進する

   こと。

 

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 

  令和5年10月20日

                               奈良県議会

 

(提出先)衆議院議長

     参議院議長

     内閣総理大臣

     内閣官房長官

     財務大臣

     厚生労働大臣

     内閣府特命担当大臣(経済財政政策)

 

 

 生涯を通じた国民皆歯科健診の実現を求める意見書(pdf 105KB)