令和6年9月18日(水曜日)知事定例記者会見

【発表案件】
「教師にゆとりを!こどもに笑顔を!プロジェクト」が進む奈良県で教員になろう ~教員の採用人数を増やし、正規教員の割合を高めます~
 
【質疑応答】
大和高田市立病院建替に関する市の方針について
奈良県立民俗博物館の民俗資料の収集と保存について
過去に寄贈を受けた植物標本の誤廃棄について

 

 

 

 

 

司会:

 おはようございます。ただいまから知事定例記者会見を始めさせていただきます。

 本日の記者会見は、ユーチューブ、奈良県公式総合チャンネルでライブ配信するとともに、配付資料もホームページに掲載しております。

 本日の知事からの発表案件は、「教師にゆとりを!こどもに笑顔を!プロジェクト」が進む奈良県で教員になろう、の1件でございます。

 それでは、山下知事から発表いただきます。よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

「教師にゆとりを!こどもに笑顔を!プロジェクト」が進む奈良県で教員になろう ~ 教員の採用人数を増やし、正規教員の割合を高めます ~

 

 

 

 

知事:

 先般、教員業務支援員や、学習支援員、土日のクラブ活動の地域移行に関して、新たに市町村負担分を県が肩代わりして負担することで、教員業務支援員や学習支援員については、昨年度と比べて、今年度はかなり配置が進んだというお話をさせていただいたところでございます。そういう教員をサポートするスタッフの拡充に加えまして、今般、奈良県の教員定数に占める正規教員の割合というのを増やすために、公立小・中学校の教員の正規職員の採用数を増やしていきたいと考えております。

 資料を1枚めくっていただきますと、公立小・中学校等の教員定数の標準に占める正規教員割合の令和5年度の全国データがございますけれども、全国平均は91.9%であるのに対しまして、奈良県は、全国ワースト2位の83.8%という状況になっております。教育に対して、非常に熱心なご家庭が多い本県におきまして、この数字はいかがなものかと私は思っておりまして、これを92%ぐらい、全国平均並みには上げていきたいと考えております。次の資料を見ていただきますと、教員採用試験での採用人数を増やすことで、正規教員の割合を令和5年83.8%を令和12年には92%、7年かけて全国平均並みにしていきたいと考えてございます。具体的には、令和3年度から令和7年度の5年間におきましては、1,560人の採用だったわけですけれども、これを令和8年度から12年度の5か年では、160人、5年間で増やしまして、1,720人を採用したいと考えております。なお、採用人数は、小・中・高、それから特別支援学校の合計でございます。

 採用数を増やしていくとともに、質が落ちてはいけませんので、奈良県の教員採用試験に応募してくれる人を増やしたいと考えておりまして、そのための取組も新たに検討をいたしました。その資料をご覧いただきますと、まず、多くの方に受験していただくために、60歳まで受験可というのは既に採用している制度でございますけれども、今年度実施の試験から、大学3年生でも試験を受けられるようにしまして、既に大学3年生で教員採用試験に17人が合格をしております。それから、多様な人材に受験いただくために、教員免許がなくても受けられる枠というのを設けております。従前から社会人選考というのは、教員免許をなくして行っておりまして、令和6年度で2人合格しておりますけれども、大学院を卒業した方につきましては、教員免許がなくても新たに採用するという制度を今年度から実施しておりまして、2人合格をしております。こうした方々は、特別な教員免許を取得していただくという、特別な資格を取得していただくということで、教壇に立っていただけます。それから、来年度から新たに実施する取組といたしまして、中学校の英語や高等学校の英語の1次試験におきまして、教科専門試験は実施をせず、代わりに英語の技能検定、いわゆる英検や、TOEFL、TOEICの点数をもって、その英語の試験の得点とすることも来年度から開始して、採用試験を受けやすくする取組でございます。

 それから、その次の資料でございますけれども、奈良県教育委員会でLINEの公式アカウントを持っており、これまでは、こういった地域でこういう科目の講師を募集しますというようなお知らせが、情報発信の中心だったのですが、それだけではなくて、新たに教員の魅力を分かってもらうために、動画を作成してそれを発信する、あるいは、こうしたLINEに登録していただくために、大学の教育学部の新入生の説明会とかに行って、LINE登録を呼びかけるといったこともしていきたいと思っております。それから、従前からやっている取組といたしまして、教員を目指す県内の高校生、大学生を対象に、奈良県次世代教員養成塾というのをやっておりまして、これについては引き続き実施していきたいと考えております。

 私からの発表は以上でございます。

 

司会:

 それでは、本件に関しまして、ご質問がございます方は挙手にてお願いいたします。

 読売新聞さん。

 

記者(読売新聞):

 前回の発表の教職員の皆さんの負担軽減と、今回の採用人数を増やすことも負担軽減や教育の充実を目指していくということだと思いますが、こういった負担軽減や教職員の充実を達成していって、どういった県内の教育状況、教育環境を目指していきたいか、知事の思いをお聞かせいただけますでしょうか。

 

知事:

 教育の質というのは、教員の質でかなりの部分が決まると私は思っております。もちろんこれまで進めているような、トイレとか、あるいは学校の校舎の環境改善もそうですけれども、教える教科の知識とか指導力は当然のことながら、やっぱり一人一人の生徒に向き合って真摯にその子の成長のために教師として何ができるのかということを探求して実践する、そういう情熱と責任感のある教師が多いということが、教育の質を高めることになることは明らかだと思っております。そのためには、もちろん講師の先生にもすばらしい先生はたくさんおられるのですが、やはり任用期間が限られているということになりますと、どうしても一般的に言うとモチベーションがそんなに高まらないのではないか、例えば学年主任や教務主任とか、あるいは、教頭、校長という道は、講師の先生には開かれておりません。講師の先生も、本当は正規教員になって、ちゃんと責任を担っていきたいと思っておられる方が多いと思います。いろんな家庭の事情とかで自ら講師を選んでいる方とかもおられるかもしれませんけれども、本当は正規教員になれれば、あるいは、正規教員になりたいという人が一定数いると思うので、その方々に道を開いて、責任を持ってもらうとともに、やる気というか、モチベーションを高めていただきたいということで、それが奈良県の教育の質の向上につながって、奈良県で学ぶ子供たちが将来、我が国を背負って立つ人材に育っていっていただけるのではないかと、そんな期待を持って、こうした取組を進めているわけでございます。

 

司会:

 ほかに質問はございますでしょうか。

 奈良新聞さん。

 

記者(奈良新聞):

 全国的に見ても、全教員数に占める正規職員の割合が低いということについて、どういうふうに分析されているかを教えていただけますか。

 

知事:

 原因としては、昭和50年代の後半に奈良県の人口が急増して、小・中学校の子供さんの数が急激に増えた時期というのがございます。この間に大量に教職員を採用しています。そうすると、その児童生徒数のピークが過ぎると、今度は教員がだぶつきぎみになるというか、子供の数が減るとそんなに新規採用しなくても足りるという状況になりますよね。そうすると、大量に採ったときを過ぎると、逆に、採用数を絞っていったことで、小・中学校、高校もそうかもしれませんけれども、教員の年代にばらつきがあり、平準化されてないという問題がありました。そこで、教員の年代構成が平準化するまで、意図的に採用数を抑制してきたという面があるという報告を受けております。

 

記者(奈良新聞):

 その教員採用試験の応募者を増やすための取組は全国的に珍しいものかどうかを教えていただけますか。

 

教職員課:

 資料に上げておりますとおり、何個かありますが、まず、受験年齢につきましては、多くの団体で年齢制限をなくしておりますので、本県についても、後からにはなりますが、年齢制限なしとさせていただきました。3年次選考につきましては、昨年度ぐらいからすごく増えておりまして、令和7年度では、都道府県や政令指定都市で49団体が既に同じように3年次選考を実施しております。引き続きまして、大学院選考につきましては、令和5年度の採用試験ですけれども、これにつきましては、大学院の在学者、進学者に対して一部を免除しておるのが8団体あるという状況で奈良県も今年度から取り入れております。社会人選考につきましては、令和7年度の採用試験ですけれども、25団体が社会人経験のある人に対する選考を実施しております。

 

司会:

 ほかに質問はございますでしょうか。

 朝日新聞さん。

 

記者(朝日新聞):

 そもそも費用負担はどのぐらい増す想定でしょうか。

 

教職員課:

 まず、今度、採用試験を行って、その試験に合格される方がどんな方か、年齢や経験により給与の額が大きく異なってきますので、現時点で正確な額を算出するというのはちょっと困難な状況でございます。

 

記者(朝日新聞):

 ただ、少なくともこれぐらいはというところの概算はあるのでないのかと思いますが、10%、正規教員が増えるという形になると、それに伴ってという概算もないという感じですか。

 

教職員課:

 いろんな条件によって額は変わりますので、今、この額ということはございませんが、あくまでもシミュレーションというところでお話しさせていただきますと、現在、講師の方の年齢が37、8歳ですので、この方々が正規教員であった場合であれば、年間で五、六十万円分の給与が上がることになります。増員枠に、この年代の方全員が、正規になっていただいたらという条件で算出させていただくと、おおむね5億円程度という算出になります。年齢によって異なりますので、ここはあくまでも一条件における数字ということでございます。

 

記者(朝日新聞):

 確認ですが、年間で5億円程度の増となる見込みという想定でよかったですか。

 

教職員課:

 はい、そのとおりでございます。

 

記者(朝日新聞):

 あと、5倍ぐらいで推移してきたという経緯があるかと思いますが、採用人数を増やすことによって、きちんと競争原理が働くのか、適格性を欠く人が入ってくるのではないのかといったような心配も一部あったり、あとは、言っていた年齢構成がどうなるかというところもあるかと思うのですが、5年間でこの1割程度増やしていくというところの、その予想されるようなデメリット面というのは、どういった形で排除できるとお考えか、教えてください。

 

知事:

 その辺は、採用人数を増やすことによって、質が低下しない範囲はどれぐらいかということで、今お示ししている5年間で160人増という数字を導き出したと報告を受けております。

 

記者(朝日新聞):

 分かりました。ありがとうございます。

 

 

 

 

大和高田市立病院建替に関する市の方針について

 

 

 

 

司会:

 それでは、その他のご質問も含めて、ご質問がございます方は挙手にてお願いいたします。

 朝日新聞さん。

 

記者(朝日新聞):

 大和高田市の市立病院の建て替え移転についてお伺いさせていただきます。堀内市長が先日、コンサルの調査の結果を踏まえて、県の産業会館があるところへの移転、新築移転が事業費の観点から一番望ましいということを議会のほうでお示しされたと聞いております。これまでの大和高田市と県との協議の経緯とともに、そのような結果を踏まえて、知事として、大和高田市側の意向に今後協力されるご意向があるかどうか、また、何らかの条件があるかどうか、その辺りのご認識を伺えますでしょうか。

 

知事:

 まず、基本的な立場としては、大和高田市長が市議会の同意を得た上でここが適切だというふうにおっしゃってこられれば、県としては、それを尊重する立場にあるというふうに考えております。一方で、県としては、市町村の財政があまり悪化しないようにするために助言する責務を負っており、医療圏ごとの病床数の管理や、その病床の配分とかいったことについても県のほうが権限を有しておりますので、そういった観点で、大和高田市立病院の建て替えについては、一定の意見を申し述べる立場にあるのかなと考えているところでございます。

 まず、その1点目の財政シミュレーションなんですが、つい昨日、大和高田市の市議会議員9人ほど連名で、意見書が私宛てに出されました。それを用意してますので、配ってもらえますか。

 ここに指摘されてることについて考えますと、まず1つ目の丸で、産業会館というのがまだまだ建物としても利用できるし、利用している人もいるので、産業会館をやめるということになると、地域住民サービスが低下するのでないかというような点があります。この点については、先般、日本共産党奈良県委員会のほうから、大和高田市立病院の建て替えに伴う奈良県産業会館の用地譲渡を行わないことを求める申入れというのも、これも昨日、いただいたところでございます。ですから、産業会館がなくなることについて、それが県民サービスの低下につながらないかという点が1点と、それから、2つ目の丸で、大和高田市から出てきたシミュレーションは、最終的に320床分の病院の建物を全て建て替えるという前提で、中長期的に考えると産業会館での建て替えというのがコスト的に一番メリットがあるという考え方に立脚していると思うんですが、耐震性のない建物というのは、そもそも本館と言われている部分だけと聞いております。具体的には、本館が昭和45年の建築で、既に建築後54年たっており、そこは耐震性がないと聞いております。ここが164床だそうです。東館というところは、平成11年に建てておりまして、こちらは築年数が25年で、耐震性はあると聞いております。ここは156床と聞いてございます。南館というのは、もっと新しく、これは放射線の治療するところですけど、平成27年築で、築年数は9年ということで、その耐震性の観点から問題があるのは、その本館の164床分だけだということと聞いております。この意見書にも書いてありますが、ひとまずその本館部分についてのみ、現地に土地を買い増しして、建て替えをすれば、耐震性の問題はクリアできるとあります。平成11年に建てた東館は、まだ築25年ですから、まだ10年、20年、あるいは30年ぐらいは使えるかもしれません。そしたら、その10年、20年、30年後、20年、30年は少なくとも使うと思いますが、そのときに建て替えるとして、156床がそのまま、果たしてこの中和医療圏で要るのかという問題がございます。この意見書で指摘されているのは、まず、本館だけ建て替えて、東館はそのまま使って、東館の建て替え時期が来たら、そのときの必要病床数を考慮して、もうちょっとコンパクトにするならするということにすれば、中長期的な事業費も抑えられるのでないかということがここに書いてあります。こういった視点は、県としても将来のこの中和医療圏における病床の在り方を検討する立場にありますので、考慮が必要かなと思っております。

 それから、3点目の財政シミュレーションの話なんですが、市議会で配られた資料を見ますと、これは大和高田市が進めようとしている産業会館を購入して建て替える案を前提に、このシミュレーションつくっているんですが、令和15年までの財政シミュレーションで、人件費を含む物件費というのが令和6年で93億2,400万なんですけど、それを令和15年までに76億7,600万にすると。約16億5,000万削減するという内容です。果たしてこれだけの削減ができるのかということですよね。実現可能性というのが問題になると思うし、この意見書にも書いてあるんですけど、実質単年度収支が令和13年から15年にかけて、3年連続で赤字になるというようなことでございますので、今、市が進めようとしている案で建て替えた場合に、病院は立派になったけども、ほかの部分で市民サービスが低下しないのかとか、大和高田市の財政が中長期的に悪化しないのかという観点も、県としては気にせざるを得ないかなというふうに思っております。

 それから、このシミュレーションでは、大和高田市が産業会館の土地建物を購入した場合、これは移転補償費も含み、16億3,000万というふうにはじいてるんですが、県のほうで試算したところ、到底これでは足りない、最低5億は上振れするだろうというふうに判断してますので、その点でも、この財政シミュレーションにはちょっと問題があるのではないかというようなことがございます。今申し上げたような点をじっくり県のほうでも検討させていただくとともに、しかるべき時期に堀内市長から面談の申入れがあると思いますので、そのときに県の考えをお伝えするという流れになろうかと思います。

 

記者(朝日新聞):

 ありがとうございます。

 まずは、大和高田市議会のほうでコンセンサスが取れるのかということと、仮に取れたとしても、知事、県としては、今おっしゃった3点ぐらいの大きな観点で精査する必要がある案件で、すんなり移転オーケーとかということにはならないという受け止めでよいでしょうか。

 

知事:

 ただ、私が今指摘させていただいたような問題をきちんと大和高田市議会でご議論いただいた上で、それでもいいんだということで、市議会のほうで議決が得られるということであれば、それは基礎自治体の判断というのを尊重する立場にあると思いますので、それは尊重しないといけません。ただ、産業会館の市民サービスの低下という点をどうするかという問題はあろうかと思います。いずれにせよ、9人が問題点を指摘しているということで、17分の9ということですので、今、私が感じてるような懸念を市議会で議論した上で、果たして賛成多数になるのかなというのはちょっと疑問な気はします。

 

記者(朝日新聞):

 ありがとうございます。

 

 

 

 

奈良県立民俗博物館の民俗資料の収集と保存について

 

 

 

 

記者(毎日放送):

 奈良県立民俗博物館の資料保存についてお伺いします。1点目なんですけれども、7月30日の定例会見で、3Dスキャンによる民具のデジタルアーカイブを残すということについて詳しくご説明されていましたが、現場では、実際に民具の3Dスキャンをしてみて、民具の形や大きさによっては、どうしても完全にはスキャンが難しいといった課題点も出てきているんですけれども、そうした現場の声についてはどのようにお考えでしょうか。

 

知事:

 その現場の声というのは、どなたがおっしゃっているんですか。

 

記者(毎日放送):

 実際にスキャンをされた博物館の方です。

 

知事:

 私はそういう情報に接していませんので、今のご質問にはお答えいたしかねますが、もし技術的に難しいということであれば、3Dではなく、2Dでスキャンする方法もあろうかと思います。

 

記者(毎日放送):

 分かりました。

 2点目ですけれども、7月30日の定例記者会見で、安易な一括廃棄には当たらないということを念押しでお話しされていたと思うんですけれども、今、価値が出ていなくても、もしかしたら今後、価値が出てくるかもしれないような収蔵品の廃棄を懸念するといった声も一部から上がっていますけれども、そうした声についての受け止めはいかがでしょうか。

 

知事:

 今、価値がないけど、将来、価値が上がってくるということがちょっとよく理解できないんですけど、それはどういう意味ですか。

 

記者(毎日放送):

 ルールを決めた上で、今、価値がないと判断して廃棄してしまった後でやっぱり価値があったというように、後々になって価値が出てくるかもしれないものについて、今の価値観で廃棄を決定していいのかという懸念の声も上がっているんですけれども。

 

知事:

 今は価値がよく分からないけど、将来、価値が上がってくるというのが、具体的にどういう場面を想定されているのかをもうちょっと詳しく言っていただかないと対応のしようがないと思います。学者さんがおっしゃってるようでしたら、その学者さんがおっしゃっている具体的な意味をもう少し明確にしてご質問いただかないと、私としては、今、価値がないとされていて、将来、価値が出てくるというのがどういう場合なのかが全く見当つきませんので、その質問にはちょっと答えにくいですよね。

 

記者(毎日放送):

 例えば、研究が進んで、価値がないとされていたものに価値が出てくるといったこともあると思うんですが。

 

知事:

 では、昭和の時代の民具について、研究が進んで、今、価値がないとされてるものが将来、価値が出てくるというのは、どういう場合なんですか。

私は、それに対してはこういう対応、これに対してはこういう対応という答えをすべき立場にいると思います。そういう具体的なケースを想定してご質問していただかないと、今、価値があるかどうか分からないけど、将来、価値が出てくるかもしれませんと漠然と言われても、私は、民俗学者ではありませんので、そういう曖昧な質問には答えられないです。

 

記者(毎日放送):

 分かりました。

 賛否両論あると思うんですけれども、そうした声を踏まえて、現時点で、今後どのように進めていかれるか、お考えを改めてお聞かせください。

 

知事:

 既に定例記者会見でご説明させていただいているとおり、まず、いつ誰からもらったのかも全く分からないといったものがありますよね。先ほどのご質問に対して、私なりに類推して解釈すると、いつどこで誰からもらったかも分からないとなると、民俗学の研究上、その資料の価値を位置づけることがなかなか難しいじゃないですか。例えば、この農機具が、他の農機具とどういう関係にあるのかということを考える場合に、Bについては、いつどこで誰からもらったか、どの地域でどれぐらい使っていたかが分かっている。でも、Aについては、それすら全く分からないという場合に、その関連を研究することは難しいですよね。民俗学者の方は、1個1個の形とか使い方が違うということに価値があるというふうにおっしゃるんですが、いつどこで誰からもらったかも分からないようなものを、どうやって4万5,000点ある民具の中で位置づけるのか。そうしたものは、やはり価値を評価するのはなかなか難しいと思います。ですから、そういう抽象的な前提でご質問されても、私には答えられないし、そもそも、そういった、いつどこの誰からかもらったか分からないというようなものについては、やはりなかなか学術的にも価値を評価するのは難しいんじゃないかと思います。例えば、そうしたことも含めて、どういうものを保存して、どういうものは保存する必要がないかという基準を、栃木県や鳥取県北栄町では既に設けていて、具体的には、除籍処分をしています。そうした先進自治体の例を参考にして、学識経験者の意見も聞きながら、きちんとルールを策定していくということになります。もちろん、それは民俗学の研究者の方々に、これならばちゃんと民具の農機具の研究に将来的にも差し支えないというようなご意見をいただきながら、その上で、ルールに従ってアーカイブ化もして、廃棄すべきものについては、2Dもしくは3Dで記録に残した上で廃棄していくということになろうかと思います。

 再度、流れを説明させていただきますと、まず、そもそも、いつどこで誰からもらったかという目録が、4万5,000点について全部できていません。中には、いつどこの誰からもらったか分からないものもあるので、その分からないのはどれなのかというのを特定していきます。目録を作る際には、全部デジカメで写真を撮るので、その時点で2Dでは保管いたします。その上で、既存の自治体の例を参考にして、収蔵のルールを定めた上で、さらに廃棄せざるを得ないものが出てくれば、3D、もしくは2Dで保存した上で廃棄をします。残すものについては、きちんと民俗博物館を整理して保存していくということになります。

 

記者(毎日放送):

 いつどこでもらったか分からない民具の価値をつけるのは難しいという点は、おっしゃるとおりだと思うんですけれども、一方で、誰からもらった資料か分からなくても、例えば、同じ形の民具や農具が数多くあることで、ある時代には、そういったものが多く使われていたということが分かるということもあると思うんですけれども、その辺りはいかがですか。

 

知事:

 では、それは、そこに存在するだけでそういう価値があるんでしょうか。

 

記者(毎日放送):

 そうですね。数が集まるということで、そういう価値の判断基準にもなり得るということです。

 

知事:

 存在するだけでは、学術研究ではないですよね。4万5,000点ある民具を、全て民俗学の観点から体系立てて、何らかの研究成果として残して初めて学術的な意義があるんじゃないですか。もちろん国宝とか、重要文化財とか、そういうものは存在するだけで価値がありますけど、同じようなものが幾つも、何万点とあるというときに、民俗学者がおっしゃるように、形状が少し違うから価値があるというんだったら、私はそれを学術論文にまとめてこそ価値というものが出てくるんだと思います。ただそこに保管しているだけで価値があるとは、私は思わないです。過去、奈良県立民俗博物館の資料を基に、そういう論文が執筆された例があるかを調べたところ、1例あるのみでございました。

 

記者(毎日放送):

 では、収蔵庫にあるだけで、学術論文にならない場合は、それは価値がないと判断するということですか。

 

知事:

 いや、これは例えばです。私は民俗学の専門家ではないので、言葉尻を捉えて報道はしていただきたくないのですが、民俗学的には存在するだけで価値があるという学説もあるのかもしれません。そういう学説があるのかどうか私は知りませんけれども、私は政治家として判断しています。なぜ政治家として判断しなければならないかというと、収蔵できる品数には限りがあるわけですよね。スペースに限りがあるから、どこの自治体もこういう問題に直面しているわけじゃないですか。限られたスペースとか財源の中で、どういうものを残していくかということを、我々、自治体も悩んでいるし、恐らく学者さんや文化庁も悩んでいると思います。毎日放送さんのお話を聞いてると、私には全部残さなきゃいけないんだと聞こえるんです。でも、それは物理的に不可能です。ですから、きちんとルールをつくって、残すべきものは残すという作業をこれからしていくんですが、特段、学術的研究をしなくても存在するだけで価値があるんだというご見解もあるかもしれません。私は民俗学の専門家ではないから分かりません。ただ、政治家として判断するならば、4万5,000点の農機具が民俗博物館の本館とプレハブ、そして旧高田東高校と旧郡山土木事務所にある。その旧高田東高校や旧郡山土木事務所の土地建物は、収蔵品を保管するために解体せず置いているわけではないです。仮置きのために提供しているわけですから、いずれ収蔵品を出していただかなくてはいけない。出すに当たって、新たな施設を造るとなると、ざっとした試算では8億円かかるようです。全て保存することに価値があるから、8億円かけて残す、それは民俗学者の皆さんは、ぜひともそうしてほしいっておっしゃるかもしれません。存在するだけで価値があるという学説に立った場合ですよ。存在しているものについて、学術的な調査研究をして、論文を書かなくても存在するだけで価値があるんだと。所有者や、いつどこで誰からもらったか分からないものが将来分かるかもしれないから、それも含めて保存しておくことに価値があるとおっしゃる学者の先生がおられるとして、それはそうかもしれませんが、政治家の立場からしたら、その学説に立った上で、8億円かけて、全ての4万5,000点の収蔵品を収蔵するというのは、政策判断としてはないなと思っています。なぜならば、もっと県民の皆さんの生活に直結する子育て支援とか、教育とか、福祉とか、医療とか、そういうところにお金を使ってほしいという声が私は多数派だと考えます。4万5,000点を存在するだけで価値があるという学説に基づいて8億円かけて全て収容するための施設を造るよりも、もっと別のところにお金をかけてほしい、道路を直してほしい、川の草刈りをしてほしい、そうしたところにこそお金を使ってほしい、というのが私は県民の大多数の考えだと思うので、政治家としてそういう考えに立って判断をいたします。一部の学者の先生のご見解については、学術的観点からは、それは尊重しなければならないと思いますが、県は大学とか研究所ではないので、存在するだけで価値がある民具があるのであれば、大学、文化庁、国レベルで保存する方法を考えるべきではないでしょうか。奈良県はそれだけをやっているわけじゃないですから。

 

記者(毎日放送):

 分かりました。ありがとうございます。

 

 

 

 

過去に寄贈を受けた植物標本の誤廃棄について

 

 

 

 

記者(朝日新聞):

 県に寄贈された植物標本を奈良県立大学が廃棄してしまった件で、先日、知事名での回答書という形で文書を手渡されたかと思います。今回の件に関しての知事のご認識、改めてお聞かせいただければと思います。

 

知事:

 県立大学及び県の所管担当課が記者会見で申し上げたとおり、貴重な植物標本が誤って廃棄されたことにつきましては、寄贈を受けた県としては、大変申し訳ないと思っております。

 

記者(朝日新聞):

 その際に、県としては、そもそも寄贈を受けたこと自体が遠因となったというようなあたりと、団体側が求めている自然史研究の拠点とか、収集の拠点みたいなものを県側が引き受けるような考えに関しては、示されなかったということで、団体側はその点に関してはがっかりされておられました。そういった自然史研究に関しての拠点みたいなものが、生物多様性保全の観点から、県が何らかのものを用意される予定がないのか、全国では極めて少ないのではないかといったような指摘もされていましたけれども、そこはいかがでしょうか。

 

知事:

 全国で極めて少ないというのは何が少ないんですか。

 

記者(朝日新聞):

 奈良県として自然史に関わる資料とかを収集するような博物館や研究拠点が、関西では、京都府は府立のものはないが、京都大学が教育機関としてあり、他の府県に関しては全てあり、関西では奈良県だけがないという指摘があって、そもそもそういった中で自然史博物館を造ってほしいという運動があっての植物標本の寄贈という流れだったと私は理解しております。

 

知事:

 奈良県だけ、関西2府4県で自然史研究の拠点がないというのは事実ですか。

 

教育振興課:

 奈良県だけがというのは、そちらの研究会がおっしゃっているかと思うのですが、例えば今言ったように、京都なら京都大学とかという話もありますので、自治体以外のところも関していうと、そういうことではないのではないかと、県としては認識しているところでございます。

 

知事:

 他の都道府県では、大学等にそういう機関があるということじゃないのですか、そのご質問の意図がよく分からないのですが。近畿2府4県どこも、府県が直営で自然史研究の拠点を設けているんですか。

 

記者(朝日新聞):

 京都府にはないのですが、和歌山県、大阪府などはあってというような中でのお話だったかと私は理解してるのですが。

 

教育振興課:

 全国的に都道府県で自然史系の博物館があるところ、ないところ、それぞれございまして、近畿でいうと京都府、奈良県がございません。中国地方でしたら、島根県、岡山県、広島県、山口県もございません。ほかの地方でもあったりなかったり、まちまちという状況だと認識しております。

 

知事:

 県としては、自然史研究の拠点を設けるという意向は現在のところございません。

 

記者(朝日新聞):

 県としては、その意向はないということですが、他府県が窓口になるなど奈良県の固有の財産と言えるものがどういう形で保全されるのが望ましいのかに関しては、どう考えたらいいんでしょうか。

 

知事:

 植物学の研究というのは、エリアごとにすべきことなのか、国レベルですべきことなのか、私はよく分からないのですが、当然、植物の研究をされる学者の先生というのは、あるエリア限定での植物の生態とかは普通研究されないと私は認識しております。これも私は植物学の専門家ではないので、専門的な質問されてもすぐには答えられないのですが、植物学の研究者は奈良県の植物のことも研究すれば、大阪府の植物も研究すれば、東北の植物も研究すれば、北海道の植物も研究すれば、あるいは、鹿児島県や沖縄県の植物も研究されると思うのです。ですから、奈良県の植物を研究するために奈良県がそのための施設を造らなければならないというのは、学術的に正しいのかどうか。別に奈良県の植物を他府県のそういうところで預かってもらって、他府県の研究者が奈良県の植物について研究するという体制でも支障はないのではないかと思います。すみません、これも私は政治家であって、植物学の研究者ではないので、今の見解には自信がございません。私の言っていることが植物学の研究者の立場からすると、とんちんかんなのかもしれませんが、素人的に考えれば、奈良県の植物は奈良県の研究機関で研究しなければ研究できないというものではないのではない、他府県でも奈良県の植物について研究することは可能ではないかと考えます。

 

記者(朝日新聞):

 県として、現時点で体制を充実させる考えがないというのは、先ほどの民博のときにおっしゃったような、お金をかけるならば、違う政策的なものに比重を置くべきではないかというところ、知事としてのお考え、そこは通底していると理解してよろしいでしょうか。

 

知事:

 おっしゃるとおりです。

 

記者(朝日新聞):

 分かりました。ありがとうございます。

 

司会:

 ほかに質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 幹事社さん、よろしいでしょうか。

 それでは、以上をもちまして知事定例記者会見を終了させていただきます。ありがとうございました。

 

 

 

 

※発言内容については、読みやすくするために質疑テーマごとにまとめています。

また、発言の趣旨を損なわない範囲で文言を整理する場合があります。

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