防災・減災、国土強靱化のさらなる推進を求める意見書
近年、我が国では自然災害が激甚化・頻発化しており、令和6年能登半島地震では、人的被害及び住家被害や、道路や電気・水道等の生活インフラにも甚大な被害が発生した。加えて、半島という地形的な特徴から交通アクセスが限られ、被害状況の把握や救援、物資搬入に多大な支障が生じたことから、防災・減災に向けた国土強靱化の推進は、これまで以上に重要な課題となっている。
近い将来、高い確率で南海トラフ地震が発生すると予測されている中、奈良県においても他人事ではなく、南海トラフ地震など大規模自然災害が発生すれば、能登地方と同様に県南部地域等では土砂の崩落等による道路をはじめとするライフラインの寸断によって救援救助活動が長期化することが心配されている。加えて、本県平野部には奈良盆地東縁断層帯等が存在し、大地震発生に伴う被害も心配されている。
また、令和5年12月に吉野郡下北山村の国道169号において、2名が死傷する斜面崩壊が発生し長期に渡って通行止めとなる等、南部・東部地域を中心に、依然として災害に脆弱な道路が多数存在し、頻繁に通行規制を実施せざるを得ない状況にある。
その中、国の方では災害発生時から緊急災害対策派遣隊(TEC―FORCE)の活動により、被災自治体が行う被災状況の把握、被害の拡大の防止、被災地の早期復旧等に対する技術的な支援を円滑かつ迅速に実施していただいたり、令和6年6月には、国の権限代行による災害復旧事業について、別線トンネルルートによる本格復旧の決定、また本年4月には早期復旧に向けた体制強化を図るため、「奈良県南部災害復旧対策出張所」を開所していただくなど、多方面にわたりご尽力頂き、誠に感謝申し上げる次第である。
災害リスクや地域の状況等に応じてハード対策とソフト対策の両面から着実に実施してきたところであるが、本県においては、対策が必要とされる箇所は今なお多数存在するため、引き続き断続的に防災・減災、国土強靱化対策を効果的かつ集中的に取り組んでいく必要がある。
よって、国におかれては、防災・減災、国土強靱化対策を計画的かつ更なる加速化・深化を図るため次の事項について、措置されるよう強く要望する。
一 国土強靱化実施中期計画を踏まえた関係予算については、予算編成過程で資材価格等の高騰等の影響を適切に反映し、
頻発する災害も踏まえ、通常予算とは別枠で必要な予算を満額確保すること。
二 社会資本の適切な整備及び管理に加え、激甚化・頻発化する大規模自然災害に即応するため、国の地方整備局を含め、
現場に必要な人員の確保や体制強化、必要となる資機材の更なる確保に取り組むこと。
三 令和7年度末に期限を迎える「緊急自然災害防止対策事業債」及び「緊急防災・減災事業債」については、国土強靱化に
資する取組であるため、期限を延長し、対象を拡充すること。
四 建設業における働き方改革の推進など、インフラ整備の担い手となる人材の中長期的な確保に向けた取組を強化するこ
と。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年12月15日
奈良県議会議長 田中 惟允
(提出先)
衆議院議長 殿
参議院議長 殿
内閣総理大臣 殿
内閣官房長官 殿
総務大臣 殿
財務大臣 殿
国土交通大臣 殿
国土強靱化担当大臣 殿
内閣府特命担当大臣(防災 海洋政策) 殿
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