意見交換会(平成16年5月~7月実施)

「森林環境に関する新たな課税」に係る
意見交換会で頂いたご質問と県の考え方

  奈良県の森林環境を保全するための新たな税制度の導入について、県民の方々やNPOの方々等との意見交換会を実施しましたが、ここで頂いた主なご質問と県の考え方等について紹介します。
  なお、ここでのご意見等を踏まえ、平成16年11月26日に、知事に対し奈良県法定外税懇話会から報告書が提出されました。
(参考) 意見交換会の実施状況
 ○市町村との意見交換会
  平成16年 5月31日(午前)奈良会場 (午後)橿原会場
      〃 6月 1日(午前)桜井会場 (午後)吉野会場

 ○NPOの方々との意見交換会
  平成16年 6月19日(午前)奈良会場 (午後)橿原会場
     〃  6月26日(午前)桜井会場 (午後)吉野会場

 ○県民の方々との意見交換会
  平成16年 7月24日(午後)奈良会場
     〃  7月25日(午前)橿原会場 (午後)吉野会場

(森林の状況)
Q1  県内の森林の状況はどのようになっていますか。

A  県内の森林面積は28万4千haで県土面積36万9千haの77%(全国第6位)、民有林の面積は
   27万haで森林面積の95%となっており、民有林面積のうち、人工林面積は16万8千haで62%
  (全国第7位)となっています。 
   また、人工林の62%が保育・間伐を必要とする45年生以下であり、年間約8千haの森林におい
  て、植林や下刈り、間伐等の保育作業が行われています。
   しかし、近年の住宅建築様式の多様化や林業後継者の減少など、林業経営を巡る厳しい状況の
  下で、保育作業の中の特に間伐作業が十分に行われなくなった管理不十分な森林が増えてきてお
  り、その面積は間伐を必要とする人工林の約30%に及んでいます。

  (参考)
   ・民有林:国以外が所有する森林
   ・下刈り:植栽した苗木の生育を妨げる雑草や灌木を刈り払う作業
   ・間 伐:森林の混み具合に応じて、目的とする樹種の個体密度を調整する作業

Q2    新たな税制度を導入しようとする目的は何ですか。  

A  奈良県の豊かな森林は、林業経営の中でわが国有数のきめ細やかな管理が行われてきました。
  しかし、林業経営を巡る厳しい状況の下で、間伐等の森林整備が十分に行われなくなっており、
   森林の荒廃が進んでいます。
   そこで、新たな税制度は、従来からの林業振興施策に加え、この税収を活用した森林環境を守
  るための新たな施策の展開を図るほか、その取組を通じて県民意識の一層の高まりを期するこ
  とを目的としています。

Q3   「森林環境に関する新たな課税」の方法は、どのように考えているのですか。
A  懇話会報告書では、「森林は県民全体に対し幅広い公益的機能を果たしていることから、課税に
   際しての受益と負担の関係を考慮すると、税負担者も幅広く捉え、県民全体とすることを基本とすべ
  きである」 とされています。
    また、この考え方を基に、新たな法定外税を創設する場合と、既存税目である県民税の均等割に
  において、税率を一定額上乗せする超過課税方式による場合とを比較し、超過課税方式の方が優
  れているとされています。
   これは、新たな税目をつくると県民や企業の方々に、申告・納付、特別徴収といった税を納めて頂
  く上での手間が増えることになることや、超過課税方式の方が、税の管理システムを変更するための
  コスト等により貴重な税収を目減りさせないで済むという考えによるものです。
  
(個人の税率)
Q4 個人の税負担額はどの程度ですか。
A   懇話会では、森林は県民全体に対し幅広い公益的機能を果たしていることから、幅広く県民
  の方々から負担を頂く一方で、過大な負担とならないよう、慎重に検討を頂きました。
     そうした中で、個人の場合、年間500円、月額にして約40円という額は、最近の経済情勢の
  中でも、多くの県民の皆様のご理解を頂ける額ではないかということで、ご報告を頂きました。 
     また、約1,700人の県民の方々のご協力を頂いて実施しましたアンケート調査においても、
  この負担水準は多数の方から許容範囲との回答を頂いており、こうした結果も踏まえて、懇話
  会の提言を頂いたものと考えています。
 

(法人の税負担額)

 

Q5  法人の税負担額はどの程度ですか。

A   懇話会報告において、法人の税負担額は、資本等の金額に応じて定められた現行の法人県民税
  均等割の税率の5%相当額である年額1千円~4万円とされています。
    法人県民税均等割の税率は、それぞれ法人の税負担能力が異なり、また中小法人等には負担
  軽減を図る必要があるため、法人等の資本等の金額に応じて段階的に定められています。
     また、「森林環境に関する新たな課税」に係る県民意見交換会においても「法人の全てが一律の
  負担では不公平感がある」との意見を頂いています。
    このような状況から懇話会においては、法人の税負担額について、現行の税率の仕組み
   を基本とすることとされました。具体的には、資本等の金額が1千万円以下の小規模な法人等
  の場合、その大部分が零細企業等であるため、現行税率の5%相当額である1千円程度と
  され、これを基に、それぞれの区分に応じた税率の5%相当額が適当とされたところです。
     この負担水準であれば厳しい経済状況の中にあっても、経営上過大な負担とならないよう
   配慮がなされたものと考えています。

〔参考〕法人等の県民税均等割の税率

資本等の金額 現行の均等割額
(標 準 税 率)
現行均等割額の
5 % 相 当 額
50億円超 年額 80万円 40,000円
10億円超~50億円以下 年額 54万円 27,000円
1億円超~10億円以下 年額 13万円 6,500円
1千万円超~ 1億円以下 年額   5万円 2,500円
上記以外の法人等 年額   2万円 1,000円

(所得の少ない方等への配慮)

 

Q6  県民税均等割の超過課税方式によると、所得水準に関わりなく一律に課税されます

   が、所得の少ない方等に対してはどのような配慮がされていますか。
A   懇話会報告において、「森林環境に関する新たな課税」の導入に際しては、県民税均等割
  の超過課税方式によることが適当とされています。
    このため、
      1 生活保護法による生活扶助を受けている方
      2 障害者、未成年者、老年者(65歳以上)、寡婦又は寡夫で前年中の合計所得金額
       が、一定額以下の方
     3  前年の合計所得金額が市町村の条例で定める金額以下の方については、現行の非
      課税措置が適用されることになります。
 
(税収規模)
Q7  税収額はどの程度を見込んでいますか。 
A   懇話会報告のとおり、課税方式を県民税均等割の超過課税方式とし、税率を個人につい
  ては年額500円、法人については現行の法人県民税均等割額の5%相当額として試算す
  ると、約3億円になります。
   (注)上記金額は平年度の見込額です。

(新税導入の必要性と税収規模)
Q8  毎年度相当額の林業関係費を使いながら、さらに新税を導入して森林環境の保全を
  行う必要があるのですか。
    また、3億円程度の税収規模であれば、現在の県予算の見直しの中で必要な事業費
  が確保できるのではないですか。

A   これまでも森林の造成・管理や林道整備、林業の担い手の育成、林業機械化の推進等の森林
  ・林業関係施策を厳しい財政状況の下でも精一杯実施してきました。
    一方で、本県においては歳出全般にわたる経費の節減や、職員定数の適正化、知事等特別職
 を含む全職員の給与カット(平成16年度削減額23億円程度)を実施するなど、積極的に行財政
 改革を行ってきたところです。
  
    しかしながら、国・地方を通じて財政状況が一層厳しくなる中で、森林の荒廃状況から、森林環境
 を保全するための新たな施策の展開が必要となっており、このためには、県として新たな財源を求
 めざるを得ない状況となっています。
     今後とも、新税に対し幅広い県民理解を頂けるよう、行財政改革の一層の推進に向け最大限の
 取組を行っていきたいと考えています。 

〔参考〕予算規模や職員定数の状況

 



平成16年度(A) 平成12年度(B) (A)-(B)
一般会計当初予算額(億円)    4,986    5,800   △814
うち人件費    (億円)    1,729    1,815   △ 86
職員定数 ( 人 )    6,606    6,799   △193

(税収使途)
Q9  税収使途について、どのように考えているのですか。
 A   懇話会の報告書では、新税による実施事業として、山村地域の人工林等を対象とした森林環境
   保全事業とともに、里山林等の保全など、平野部の県民の方々にとっても受益を実感できる事業
   であることが適当である旨の考え方が示されています。
      さらに、既存事業継続のための財源とすることなく、森林保全を目的とした新規事業の実施や既
   存事業の制度の拡充に充てることを基本とすべきこととされています。
 
      具体的な事業実施例としては、
     「自然との共生を目指す取組」として、
    1  里山林の機能回復整備
  2 森林環境教育の推進 

     「森林の多面的な機能発揮を目指す取組」として、
    3 森林を守るための普及啓発
   4 森林環境保全のための緊急間伐
                           等が挙げられています。 
   
  今後、この報告書の主旨に沿って、県民の方々から幅広く意見を聞かせて頂きながら、更に検討を
進めて行く予定です。

 〔参考〕 アンケート調査結果
(〈問〉 「森林環境に関する新たな課税」による税の使いみちは、何がよいと思われますか?
(複数回答可)

                                       回答数(選択率)

 

県民が森林に親しむための事業(里山の整備、都市住民と山村住民の交流等) 732(42.2%)
県民の森林保全意識を高めるための事業(シンポジウム、森林環境体験学習等) 444(25.6%)
木材の活用と林業等への理解を図るための事業(県産材の利用促進、廃材のエネルギー資源としての利活用等) 493(28.4%)
森林所有者等が行う森林整備への支援事業(間伐作業の支援等) 506( 29.2%)
県・市町村による放置森林等の整備 636( 36.7%)
放置森林所有者等への森林整備の働きかけを行う事業 309(17.8%)
その他 71( 4.1%)
                計 (延べ) 3,191
(純計) 1,733

(里山林の整備)
Q10   税収使途として、奥山とともに里山保全のための施策を加えるべきと思い ますが、
     どのように考えているのですか。 
 
A   懇話会の報告書では、新税による実施事業の考え方として、山村地域の人工林等を対象とした
  森林環境保全事業とともに、里山林等の保全など平野部の県民の方々にとっても受益を実感でき
  る事業であることが適当であるとされています。 
     具体的な事業実施例としては、都市近郊や集落周辺の手入れがされずに荒廃した里山につい
  て、NPOやボランティア団体等の協力を得ながら、様々な野生動植物の生息・生育の場の保全や
  地域景観を回復するための整備を行う「里山林機能回復整備事業」が挙げられており、今後、この
 報告書の主旨に沿って、さらに検討を進めて行く予定です。

(税収使途と森林所有者の責任)
Q11  森林の管理は、その所有者の責任で行うべきではないのですか。  
 A   これまで森林は、林業経営により適切に整備が行われ、その結果として私たちは森林から様々
  な恩恵を受けてきました。しかしながら、近年の林業経営を巡る厳しい状況の下で、間伐等の森林
  整備が十分に行われず、森林の荒廃が進んでいるのが現状です。 
      このような状況から、森林の持つ多様な公益的機能に着目して、その維持増進を図り森林を健
  全な状態で将来に伝えていくためには、民有林であっても、県民全体の環境資源として保全する
  ための取組を進めることが必要となっています。

(下流府県との関係)
 Q12  森林の便益は河川を通じて下流府県にも及ぶので、県による独自課税を行うことは
   奈良県には馴染まないのではないですか。 
 
 A   国により示された算出方法によりますと、本県の森林が持つ公益的機能の評価額約8,300
  億円のうち約3割が水源かん養機能によるものとされています。この一部分が下流府県の便益
  に供されているので、その全体に占める割合はわずかであり、ほとんどが本県の受益となって
  います。

〔参考〕「森林の公益的機能の評価額(年間)」 平成12年9月林野庁

 

機能の種類 全国の評価額 奈良県の評価額
国土の保全機能 36兆7,000億円 4,567億円
水源かん養機能 27兆1,200億円 2,524億円
保健休養機能 2兆2,500億円 266億円
自然環境の保全機能 3兆7,800億円 427億円
地球温暖化防止機能 5兆1,400億円 581億円
合  計 74兆9,900億円 8,365億円

     「森林環境に関する新たな課税」については、このような点や県の独自課税による課税権の
 制約等を踏まえながら、本県が紀伊半島の中心に位置し、県土面積の77%を森林が占める
 森林県として、森林環境の保全に向けて率先的な取組を行おうとするものです。     
    また、この税収を活用した新たな施策を展開することにより、県内の平野部等における里山
 林の整備や、山村地域における山地災害の防止のほか、環境保全に向けた県民意識の醸成
 や新たな雇用の創出等、幅広い効果がもたらされるものと考えています。

(国との関係)
Q13  森林環境問題は、奈良県のみに止まらず全国的な問題であるので 、国が取り組
    むべきではないのですか。
 
 A   これまで森林は、林業経営により適切に整備が行われ、その結果として私たちは森林から
   様々な恩恵を受けてきました。しかしながら、近年の林業経営を巡る厳しい状況の下で、間伐
  等の森林整備が十分に行われず、森林の荒廃が進んでいます。   
       したがって、このような森林を健全な状態で将来に伝えていくためには、国の施策を待つ 
   までもなく、多様な公益的機能を有する森林は私たち県民全体の環境資源であるという意識
   を高め、これを保全する取組を進めることが重要であると考えています。

(環境税との関係)
Q14  国が導入を検討している環境税との関係について、どのように考えているのですか。
 
 A   国において、現在環境税として議論されているアイデアは、地球温暖化防止のため、京都
  議定書で定められた我が国の二酸化炭素の削減目標6%のうち、森林の吸収量で確保する
  3.9%の目標達成に向けて必要となる追加的財源に充てようとするものです。     
      具体的な方向としては、化石燃料と電気を課税対象とし、家庭やオフィスなどで行う地球温
  暖化防止への対策等と併せ、森林の整備や保全への支援にも活用しようと、環境省が中心
  となって検討されていますが、まだ国としても導入の是非を判断する段階に至っているもので
  はありません。

(「緑の募金」との関係)
Q15  この新たな課税と「緑の募金」との関係はどのようになっていますか。
  
 A   「緑の募金」は、財団法人 奈良県緑化推進協会が「緑の募金による森林整備等の推進に
  関する法律」に基づき、善意の寄附をお願いしているものです。     
      県民の方々から頂いた「緑の募金」は、これにより、苗木の配布、緑化コンクールの開催な
  ど緑化のため普及啓発や、小・中学校やボーイスカウト・ガールスカウトによる“緑の少年団”
  を育成し、その緑化実践活動に対する支援を行うなど、 緑化の推進に特化して活用され
  ているのが現状です。 
    これに対し、今回の新税の導入は、近年の森林の荒廃等を踏まえ、里山林の機能回復
   や公的関与による放置森林の間伐など、これまでの県や「緑の募金」による実施事業とは
   異なった、森林環境を守るための新たな施策の展開等を図ろうとするものです。

(施行時期)
Q16 いつから施行する予定ですか。
  
 A   「森林環境に関する新たな課税」の導入に係る今回の懇話会報告は、県民アンケートや意見
  交換会等を通じて頂いた幅広い意見を踏まえ取りまとめられたものです。今後、この報告を踏ま
  え、また平成16年12月県議会での議論等に基づいて、県として速やかに対応を進め、出来る
  だけ早い時期に条例案を県議会に提案しようと考えています。

  
 



    
   






 

  

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