意見書第3号

意見書第3号

       石綿疾患の労災認定事業場名の公表の継続を求める意見書

 2005年6月のいわゆるクボタショックのあと、石綿関連企業の中で多くの石綿肺がん、中皮腫の患者が発生していることが、マスコミ報道や企業、業界団体の情報開示によって明らかにされた。このことが、多くの患者、家族、遺族が、「病気の原因がアスベストであること」、「仕事や住居など石綿にどこで暴露したのか」に気がつき、救済と補償を求めることにつながった。直接の当事者だけが気づくのではなく、知り合い、元同僚、医師、看護師などから「あなたのお父さんは、アスベストが原因ではないのか」「あそこで仕事をしていたことが原因ではないのか」と声をかけられたことで、労災請求や救済給付申請につながった方は数知れない。中でも、厚生労働省による2004年度以前の肺がん、中皮腫にかかる労災認定事業場名は、社会的なインパクトが最も大きいものがあった。社会全体が石綿被害に気づき、補償、救済の重要性に目を向けた最大の要因は、こうした情報公開にあったことは誰の目にも明らかである。
 2005年度以降の労災補償状況をみると、2005年度の支給決定件数が722件(肺がん219件、中皮腫503件)、2006年度は9月までで840件(肺がん328件、中皮腫565件)、合計1,566件に達している。一方、2004年度以前の労災認定事業場で公表されたのは、認定件数640件にかかる415事業場であり、船員については、3事業場、4件(中皮腫)が公表されている。
 2005年度以降の認定件数は、すでに公表された件数の2倍以上にのぼっている。公表の趣旨を踏まえれば、2005年度以降の労災認定事案についても引き続き事業場名等が公表されるべきである。しかし、厚生労働省、社会保険庁は労災保険、船員保険にかかる認定事業場名を未だ公表していない。患者団体、市民団体等の要請が行われているにもかかわらず公表されていないのは、誠にゆゆしきことと言わざるを得ない。
 よって、国におかれては、2005年度以降について労災認定事業場名等の情報の公表を継続して行われることを強く要望する。
 
  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

   平成19年3月16日

                           奈 良 県 議 会 

(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
厚生労働大臣