意見書第9号

意見書第9号

      労働法制の充実に関する意見書

 近年、産業構造の変化が進む中で、就業形態・就業意識の多様化や、人事管理の個別化・多様化等が進むとともに、労働組合の組織率の低下などと相まって、個別労働紛争が大幅に増加している。
 このような状況の変化に対応して、昨年九月以降、厚生労働省の「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」および「今後の労働時間制度に関する研究会」の報告が取りまとめられ、現在は、労働契約についての包括的な法律の策定に向け、労使の関係者を含む労働政策審議会で審議されているところである。
 両研究会の報告書については、常設的な労使委員会の設置が労働組合の権利を侵害しかねないこと、解雇の金銭解決制度の導入が、使用者の権利濫用につながりかねないこと、また、「新しい自律的な労働時間制度」の導入が、働き過ぎの放置や長時間労働の助長につながりかねないことなど、懸念される問題点も含まれている。
 しかしながら、かつてないスピードで変化する社会経済情勢の中で、人事・労務管理の最適化や、個別労働紛争の未然防止を図るに当たり、労働条件の決定・変更や労働契約の終了などに関して、労働基準法や労働組合法または判例に委ねるという現行制度では不十分であり、労働の入口から出口までの働くルールを包括的に定める労働法制が必要である。
 よって、国におかれては、国会および政府は、労働法制の充実に当たっては、解雇権の濫用、長時間労働の防止など、真に労使の実質的対等性と労働関係における公正さが確保され、労働者が健康で充実して働き続けられる制度となるよう、慎重に検討されることを強く要望する。

以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。

 平成18年6月26日

     奈 良 県 議 会
(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
厚生労働大臣