意見書第17号

意見書第17号

          B型肝炎・C型肝炎患者の救済に関する意見書

 わが国には350万人のB型・C型肝炎感染者・患者がいると推定され、その大半は集団予防接種や治療時の注射針・筒の使い回し、輸血、血液製剤の投与などの医療行為による感染が原因とされる。このような感染被害の拡大を招いたことに対する「国の責任」と、肝炎患者を救済する責務を明記した肝炎対策基本法が平成22年1月に施行された。
 しかし、今なお、多くの患者が肝炎の進行と高い医療費負担などに苦しめられ、毎日約120人もの肝炎患者が亡くなっている。「特定C型肝炎ウイルス感染者救済特別措置法」、「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別特措法」が成立し、裁判を通じて補償・救済されるしくみができた。しかしカルテや明確な証明が必要なため、裁判で救済されるのはほんの一握りにすぎない。C型肝炎患者の多くを占める注射器の使い回しや輸血が原因の患者、母子感染ではないとの証明などができないB型肝炎患者の大半には補償・救済のしくみがない。医療費が払えずに治療を断念せざるをえず、重症化し、命の危険にさらされる患者も少なくない。
 このように現行法によって法的救済、補償を受けられる患者はごく一部であり、注射器の使い回し、輸血、薬害によるB型、C型肝炎患者に対して、国が感染被害を償い、いつでも、どこでも安心して治療を続けられるために、肝炎治療と生活を支える公的支援制度を確立することが求められている。
 よって国におかれては、次の事項について強く要望する。
                                                                              
1 肝炎対策基本法に基づき患者救済に必要な法整備、予算化を進め、B型・C型肝炎患者が適正な救済を受けられることを旨とした救済策を実施すること。
2 肝炎治療薬、検査費、入院費への助成をはじめ、肝炎治療費への公的支援制度を確立するとともに肝硬変、肝がん患者への障害者手帳の交付基準を改善すること。
3 治療体制、治療環境の整備、治療薬・治療法の開発、治験の迅速化などを図ること。
4 肝炎ウイルスの未検査者、ウイルス陽性者への未治療者の実態を調査し、早期発見・早期治療につなげる施策を講じるとともに、B型・C型肝炎への偏見差別の解消、薬害の根絶を図ること。
5 医原病であるB型・C型肝炎による死亡者には一時金、感染者・患者には健康管理手当・支援金を支給する法制度の確立によって感染被害が償われ、持続的に治療を続けられる環境を整備すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 
  平成24年12月14日

                           奈 良 県 議 会

(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
厚生労働大臣