意見書第6号

意見書第6号

            奈良少年刑務所(旧奈良監獄)の整備活用に関する意見書

 今年3月末をもって閉鎖された奈良少年刑務所の建造物は、1908年(明治41年)に奈良監獄として建てられたものです。これは明治時代、国が監獄施設の近代化をめざして建てた全国の「五大監獄」(奈良、千葉、長崎、鹿児島、金沢)の一つで、施設がほぼ完存している唯一の建造物群です。
 同建造物は、著名な建築家・山下啓次郞氏が設計した洋風の重厚な造りが特徴で、使用されたレンガはすべて当時の受刑者が木津川のほとりのレンガ工場で焼いた「手作りレンガ」といわれており、独特の風合いがあります。奈良県教育委員会が2014年にまとめた「奈良県近代化遺産総合調査報告書」によると、「竣工時の様態をよく残している。日本の近代化の一側面を示す遺構として貴重である。」と評価されており、今年2月に国の重要文化財に指定されました。
 旧奈良監獄は100年以上にわたりその役割を果たしてきましたが、戦前の時期には、平和と民主主義を求めた人々も収監された歴史があり、その歴史を風化させずに後世に語り継ぐことは意義深いことではないでしょうか。
 法務省は同施設の耐震改修・史料館運営・付帯業務等を内容とする「旧奈良監獄保存活用事業」を発表し、5月16日、同事業の優先交渉権者にソラ―レホテルズアンドリゾーツを代表企業とする「ソラ―レグループ」を選定しました。史料館が併設された「監獄ホテル」計画として注目を集めています。史料館の展示内容を充実したものにするためには、文化遺産としての建造物の値打ちとともに、歴史的な経過を示すことが大切ではないでしょうか。
 政府におかれましては、同施設の整備活用に当たって、事業者に対し歴史展示に資する情報を提供することを求めます。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

   平成29年7月3日
                                     奈良県議会


(提出先) 衆議院議長
      参議院議長
      内閣総理大臣
      内閣官房長官
      法務大臣
      文部科学大臣