意見書第7号

意見書第7号

          ライドシェアの導入に反対し、安心・安全のタクシーを求める意見書

政府は、昨年7月、内閣官房IT総合戦略室長の下に、「シェアリングエコノミー検討会議」を設置し、11月に中間報告をまとめた。そして「規制改革推進会議」も、「需給の構造変化を踏まえた移動・輸送サービス活性化のための環境整備について」をテーマに、一般のドライバーが料金をとって自家用車で利用客を送迎するいわゆるライドシェアの導入に向けた議論を進めている。
 ライドシェアは、道路運送法で禁止されてきた「白タク」を合法化するものであり、①二種免許や運行管理も不要とされ、利用者の安全・安心が脅かされること、②地域公共交通を弱体化し、既存のタクシー事業を崩壊させる、③公共交通ではないことから、需給状況によっては運賃が変動すること、④24時間稼働の保証がなく、夜間の利用で特に女性・高齢者は利用しづらくなること、⑤事業主体(プラットフォーム)は一切運送に関する責任は持たず当事者間での解決となることなど多くの問題点がある。
 また、ライドシェアは、Uber(ウーバー)などの配車アプリサービスを利用するが、事故の補償、暴力や暴行事件、運送対価のトラブルなど運転手と利用者間の問題があり、さらにウーバーに登録している運転手がウーバー社に対して雇用関係の有無や地位確認などで集団訴訟を起こしている問題もある。多くの問題点を有するライドシェアが無秩序に容認されれば、経済合理性に過度に重きを置いた経営などにより、利用者の安全が担保されない事態が常態化するおそれは否めない。
 また、ウーバーは、欧米や中国などを中心に急拡大しているが、サンフランシスコでは地域最大のタクシー会社「イエローキャブ」が倒産に追い込まれている。ライドシェアが日本全国に普及すれば、タクシーの産業基盤が奪われるにとどまらず、路線バスや鉄道を含めた地域公共交通の存立を脅かすこととなっていくのは明白である。
 タクシーは、介護や通院、買い物の足など、地域生活には欠かせない「ドア・ツー・ドアの公共交通機関」であり、市民等にとって安心・安全で快適・便利な交通機関として、日常生活や地域の経済活動を支える役割を担っており、高齢化社会が進む中、タクシーへの期待も高まっている。世界一のサービスと安心・安全を標榜する日本のタクシーの現状を見れば、ライドシェアを導入するのではなく、国際的に良質で安全なタクシーをこれからも守っていく観点が大事である。
 よって、国会及び政府におかれては、次の措置を講じられるよう強く要請する。

1 市民の安心・安全に極めて大きな懸念のあるライドシェアを導入しないこと。
2 公共交通の役割を担っているタクシーが、より安心・安全で快適・便利な交通機関として利用することができるよう、改正タクシー特措法によるタクシー事業の適正化・活性化をはじめ必要な諸施策を講ずること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

   平成29年7月3日
                                 奈良県議会



(提出先) 衆議院議長
      参議院議長
      内閣総理大臣
      内閣官房長官
      総務大臣
      国土交通大臣
      内閣府特命担当大臣(規制改革)